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葉山のビーチで宝探しイベント開催
景品は海の家のかき氷やライフセーバー体験!
2016/08/05

「シーバードデイ 2016 宝を探して海へ出よう」 葉山ライフセービングクラブ 2016.7.31

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今年でクラブ設立30周年を迎える葉山LSCは、
神奈川県内でも素朴な雰囲気が残る、
葉山町内の3カ所の海水浴場をパトロールしている。

同クラブが7月31日に開催したのが、
「宝を探して海へ出よう」という海水浴客向けのイベント。

ライフセーバーとの距離が近くなる楽しいイベントを取材した。

文・写真=LSweb編集室




楽しみながらの啓蒙活動

LSweb 「シーバードデイ2016 宝を探して海に出よう」は、葉山LSCがパトロールする森戸海岸、一色海岸、大浜・長者ヶ崎海岸の3つのビーチで、隠されたカプセル探し、監視所に届けると景品と交換してもらえる、という誰でも参加できるイベントだ。

 日本財団がサポートする「海と日本プロジェクト」の一環として行われ、景品には海の家のかき氷や地元で人気のショップグッズのほか、同クラブが所有する水上バイクに同乗してのパトロール体験や、レスキューボート体験など、ライフセービング活動の周知も兼ねたプログラムになっている。

 この日のために用意したカプセルは3浜合計で600個。もちろん、景品もクラブメンバーが海の家やショップなどに1軒1軒に声をかけ、集めたものだ。

 「海に遊びに来た人が誰でも参加できるように、単純で楽しいイベントを考えました。広報にも力を入れて、ラジオで告知したり、地元の小学校に張り紙をしたり、町内の全戸に回る回覧板にも掲載してもらいました」と話す葉山LSC代表の加藤智美さんらの努力が実り、当日は大勢の海水浴客がビーチでのカプセル探しに夢中になり、浜によっては監視所前にカプセルを見つけた人の行列ができる盛況ぶりだった。
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 カプセルの隠し場所は監視タワーやレスキューボードのそば、あるいはライフセーバーのポケットの中という場合あり、海水浴客とライフセーバーが自然に触れあえる工夫も。

 また景品交換の際には、クイズ形式で海の危険やライフセービング道具の知識を伝授するなど、水辺の安全を守るライフセーバーらしい試みが随所に見られた。

水上バイクでパトロール体験

LSweb 景品の中でもひときわ人気が高かったのが、水上バイクに乗ってのパトロール体験だ。

 水上バイクが当たったと分かると、子どもたちはもちろん、若者も目を輝かせ、子どもと一緒に遊びに来ていた大人も興味津々。水上バイクに乗るのは初めてという人がほとんどで、誰もが興奮した様子だった。

 もっとも、パトロールも兼ねての同乗なので運転速度はスロー。しかし、ドライバーとして水上バイクを運転していた同クラブの利根川大道さんは、ちょっと物足りなさそうな雰囲気を察知すると、アクセルを開いて沖へ疾走するなどサービス精神も見せていた。

「この体験がきっかけになって、ライフセービングに興味を持ってくれたらすごく嬉しいです。クラブに入ってくれる、な〜んていう人が出てくれることを狙っているんですけどね」と笑う加藤さんは、精力的に各浜を水上バイクで回っていた。

 毎年、葉山の海に遊びに来るという5年生の男子は、「水上バイクに乗るのは初めて! もっと飛ばすかと思ったけど、パトロール中って聞いて納得した。途中で海水浴客に注意したよ」と楽しそう。
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 藤沢から家族で遊びに来たという小学6年生女子の仲良し2人組は、「葉山の海は水がきれいだから好き。水上バイクにもまた乗りたいな」と、笑顔で話してくれた。

 葉山の海水浴場は浜ごとに特徴がある。町の中心部に近く賑やかなのが、一番広く遠浅の森戸海岸。葉山御用邸の前に位置する一色海岸は、背後の丘陵地帯が迫り落ち着いた雰囲気だ。
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 ユニークなのが大浜・長者ヶ崎海岸。隣接する2浜のうち、大浜海岸はSUPやアウトリガーカヌー、水上バイクなどのマリンスポーツ優先のビーチで、海水浴場には指定されていない。

LSweb 一方、こぢんまりとした長者ヶ崎海岸は全面が海水浴場で、左手にヤリ島、沖にエビ島といった岩場があり、海洋生物が間近で見られるファミリービーチだ。

 今年、大浜・長者ヶ崎海岸の監視長を務める田中博章さん(中央大学3年生)は、「長者ヶ崎海岸はリピーターの多いビーチだと思います。駐車場からのアクセスも便利で、BBQもできるので、家族連れが多いですね。沖に岩場あがるので生き物がたくさんいて、楽しいですよ。
 その替わり、切り傷やウニのトゲによるケガなどが、他の浜よりも多いかもしれません。それと、急に水深が深くなるドン深の海なので、そのことをしっかり頭に入れて監視をしています」と、日焼けした顔で話してくれた。

 葉山LSCがパトロールする3浜の今年の海水浴期間は8月31日までだ。
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ライフセーバーのための気象予報講座⑫(最終回)
この夏、『ローカル』になる!
2016/07/15

Weather Information for Lifesavers⑫

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九十九里LSCの松永 祐さんによる好評連載「ライフセーバーのための気象予報講座」は今回が最終回となる。

天気のメカニズムを知り、天候の変化を察知することは、ライフセーバーにとって大事なスキルの一つだ。

夏季のパトロールに、日々の練習に、安全で楽しく活動するために、じっくり読んで役立ててほしい。(LSweb編集室)


文・写真=松永 祐(九十九里LSC、サーフ90鎌倉LSC)




パトロールシーズン、到来!

 いよいよ7月。
 2016年は偏西風が蛇行していて梅雨明けが遅れ気味ではあるが、本州でも本格的に海水浴場が開設し始めている。ライフセーバーにとっては一年の集大成を見せる本番の季節だ。

 とはいえ、実際にやらないとわからないことも多く、勉強の日々でもある。今年はそこに天気予報も付け加えてみよう。意識的に2カ月間、毎日同じ海を見ていれば、そんじょそこらの気象予報士よりも細かい海の表情を理解できるはずだ。

あなたの浜の予報士に

LSweb 少しおさらい。

 テレビなどの天気予報で気象予報士が説明しているのは、地球規模から直径数キロメートルという大きなスケールの現象を対象としているため、大雑把にならざるを得ない。
 この予報で使われるのが、先に紹介した気象衛星、天気図、気象庁スーパーコンピューターのシミュレーションなどである。

 一方、海水浴場は大きくても横幅1~2キロメートルであり、遊泳者が遊ぶ範囲はせいぜい横幅数十メートルという、地球規模と比べたら小さなスケールだ。
 ここで使われるのが、みなさんの「目」「体」「毛」そして「アタマ」である。

 既に数回書かせていただいているが、ローカルになるための一番の障害は、大きなスケールと小さなスケールのリンクができていないことだ。

 この夏、このギャップを埋める工夫をして、是非地球規模から毛レベルまでをつなげてほしい。

 ただしそれはすごく手間のかかることではない。日々の取組みをほんの少し発展させるだけで、埋められるのだ。

 アタマではわかったけど……何をすればいいの? と思ったら、次のことを日々ほんの少しでも実践してみよう。

まず、去年のノートを見てみよう

 もちろん、去年よりもより良い監視をするために、夏の準備段階で皆さんよく読みなおしていることだろう。改めて天気の視点でもう一度読み直してみてはどうか。

 毎日の風向風速・波のブレイクの位置・流れ・海中での人の寄り具合・それらが変わる時間帯、潮汐による変化がどの程度書(描)かれているだろうか。

 逆にその他のガードの反省点はどの程度書かれているだろうか。ノートに記載されている項目が多いほど、より良いパトロールのために意識的に改善してきたはずだ。

 過去を振り返ると、よほど思い出に残っている日以外は、いつどのような天気だったかを憶えていることは無いだろう。早速、「記録をする」ということを軸に、天気についても取り組もう。

朝起きたら……

LSweb 起きたらすぐに海に入りたい! と思うかもしれないがちょっと待った!

 海に行く前にスマホで雲画像、天気図、最寄りのアメダス観測情報の3点セットは最低限確認しよう。

 ここで、低気圧が北にあるから南風かな? 等圧線がたくさんあるから風は強そうかな? 晴れるから海風が強まるかな? と、少しでもいいから昼間の風景を寝起きの時点で想像しよう!

 「お気に入り」に設定してすぐに画面が出せるようにしておけば、探す手間も省けてすぐに海に行ける。

 余裕があれば、ここに波情報を加えてみよう。ただ、波情報を見るのなら「腰・腹」等の文字情報だけでは不十分。シミュレーション動画があればそれも一緒に見て、どの方向からうねりが来るのか、そのうねりと天気図の関係性まで見ておきたい。

 毎日一瞬見るだけで、一瞬考えるだけで大きく違う。使う時間は5分でもOKだ。

朝礼で

 ラジオやお天気サイトの解説情報を読み上げて、天気マーク以外の情報を共有しよう。予報だけではなく、「大気の状態が不安定」といった夕立のヒントも拾う事が重要だ。

 読み上げるには3分もあればじゅうぶんだろう。ここまでに、気象予報士が普段見ている大きなスケールの情報を入手しておこう。

“毛”が重要

LSweb 監視時間中、ライフセーバーの皆さんは一日に数回、五水チェック(地形や流れの確認)のために海に入るはずである。もちろん、強い流れ、強い風があれば、その結果は風下を重点化するといったガード体制へ反映される。

 今回のポイントは、いかに風や流れが弱い状況下でも感じ取れるかということだ。

 微妙な変化、微妙な流れの有無が、天気図などと関連することもある。流れや風がないからいいじゃん、とは決して思わないでほしい。
 例えば、キリが晴れる直前や夕立雲が近くにある場合、潮が動く直前等には、風や海水の流れがほとんどないという状態もあり得る。

 また、風がほとんどない状態でも、体が濡れていれば、どこから吹いているかわかるはずだ。毛の動きで微々たる海水の流れも感知できるはずだ。「ほとんどない」では終わらせず、「ほとんどないが微妙にこっち!」がわかるくらい観測精度を上げられるようにしたい。

 これにはいつもより少し立ち止まる回数を多くしたりして、一日あたり追加で5分程度かかるかもしれない。

自分の立ち位置を要確認

 せっかく体で風や海水の流れを感知できても、正確にコンディションを把握できる位置に居なければ重要なサインを逃す可能性がある。

 先輩からは360度目を付けて浜も海と同じように監視しなさい、と習っているかと思う。その際に、背後に建物があるなど、風や空を遮っているものがないか、よく確認しておこう。

 背後が壁で、いつの間にかオフショアになっていた、なんて事があったら、ライフセーバーでしか感じ取れない重要なサインを早速逃していることになってしまう。ついでに、縦方向にも360度目を付けて、雲の動き、旗のなびき方、木の揺れ具合等も見えるようになるとより良い。

ノートには“図”が重要

LSweb このように1日で体感したことは、必ず図としてノートに残しておこう。図は文字より描く時間が短縮できるし、微妙な向きまでしっかりと記載できる。

 例えば、海に向かって右から左の風が吹いていた場合。海岸線にぴったり並行に右から左なのか、やや沖に向いて吹いているのか、やや岸に向いて吹いているのか、この微妙な違いで波の形や監視のポイントが大きく異なってくるはずだ。今年はこの微妙な違いまで気を遣って認識してもらいたい。

 もちろん、走り書きでも絵が水でにじんでいてもよい。後で見返した時に気象条件とその日の海水浴場の雰囲気が同時に思い出せればより良いだろう(読めないのは、もちろんダメ)。

 1日数回ノートに記録すると、全部で合計7分くらいはかかるかもしれない。

変わり目を逃さない!

 もちろん、忙しい日やライフセーバーの人数が少ない日は、いちいちノートに書き留めておくことはできない。そんな時は、「変わり目」だけでも確実に記録しておこう。
 代表例としては風向きの変化、海の流れの変化。もちろん、それが発生した時間の記録も不可欠だ。

 何かとドキッとする「変わり目」も、何らかの傾向があるかもしれない。毎日の記録からなら把握できるはずだ。

寝る前に……

 もう一度、スマホで朝見た資料を見てみよう。

 今日の監視時間にノートに書き留めた変化は、天気図や朝の気象情報からも想定できそうか。または、いくらかズレたものだっただろうか。

 もし天気図と実際のズレが毎日続くようであれば、それがその海水浴場固有の特徴である。逆に言うと、天気図が読めれば、そのズレを考慮することにより、監視する海水浴場でのより正確な予測が出来るということでもある。ここで、目指す「ローカル」が見えてきた。

 眠い目をこすりつつ、一日の最後に5分だけでも頑張ってほしい。

「1日20分」でローカルに

LSweb 1日当たり合計約20分だけ天気のことを考えるだけで、ひと夏終わった後にはかなり担当海水浴場のイメージができようになるに違いない。

 過去11回の連載で、いろいろな気象観測機器や予測の方法を説明してきたが、浜に立てば、みなさんの体が気象観測機器、アタマがスーパーコンピューターだ。

 そこで出た結果をその都度毎日記録し、その傾向を知ることが、海水浴場レベルの規模の気象状況を把握する重要な方法である。特に監視を始めたばかりの人たちにとっては、海や風を読めるようになるための非常に有効な手段でもある。

 一方、監視が連続する場合、監視中は絶えずお客さん対応があり、それ以外の時間帯に朝練から夕飯や反省会までをこなすと、なかなか時間に余裕がない。
 監視長の方々は少し気を遣っていただき、チームでぜひこの20分を捻出してほしい。そうすれば、学生のうちから『ローカル』的に呼ばれることができるだろう。

 さて、この夏、みなさんの海はどのような表情を見せてくれるだろうか。今から想像するとワクワクが止まらない☆


☆★ ライフセーバーのための気象予報講座 連載一覧 ☆★

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第1回:ローカルになろう!プロローグ


第2回:雲と雨の話


第3回:天気図の見方


第4回:積乱雲の話


第5回:台風


第6回:全日本直前情報


第7回:暖冬とエルニーニョの関係


第8回:低気圧その1


第9回:低気圧その2


第10回:海風と陸風


第11回:梅雨と夏


第12回:ローカルになろう!エピローグ


    
 
[プロフィール]

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松永 祐(まつなが・ゆう)

九十九里LSC/サーフ90鎌倉LSC所属のライフセーバー。

大学4年時の2005年に気象予報士資格(第5292号)を取得。
海洋研究開発機構(JAMSTEC)に勤める海のエキスパートであり、競技会を支える安全課のメンバーの一人でもある。


 
    





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浮いて待て!が合言葉
夏休み前に開催された水辺の安全教室「絆プロジェクト」in 辻堂
2016/07/13

2016.7.3 神奈川県・辻堂海浜公園ジャンボプール

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7月最初の日曜日、神奈川県藤沢市の辻堂海浜公園ジャンボプールにて「絆プロジェクト〜水辺の安全を一緒に学ぼう〜」が開催された。

夏季運営前の大型プールを利用して水辺の安全を学んだり、いざという時の対処方法を親子で体験できるこのイベント。

4回目の今年は、定員一杯の400人近い参加者が集まった。



文・写真=LSweb編集室





いざという時に役立つ実体験

LSweb 湘南ウォーターセーフティ協会が主催する「絆プロジェクト」は、東日本大震災の教訓を元に2013年から続く地域密着型の体験イベントだ。

 流れるプールや波の出るプールなどの設備が整った、屋外の大型プールを貸し切り、小中学生(小学生低学年がメインターゲット)とその保護者を対象に4つのプログラムを体験学習していくもので、地元の消防所などとも協力して行われている。

 当日体験できるのは以下のプログラムだ。

① 波乗り体験:波の出るプールでニッパーボード遊び
② 浮いて待て:流れるプールで着衣泳やペットボトルを使っての浮き身を体験
③ 君もライフセーバー:救助の基本を学んだ後に流れるプールで救助体験
④ -1みんなでトライ:子ども対象の応急処置体験
 -2蘇生法訓練:AEDなどを使用した大人対象の蘇生法訓練

LSweb 子どもたちに一番人気なのは、もちろんニッパーボードでの「波乗り体験」。これは詳しく説明する必要もないだろう。

 子どもたちが歓声を上げるこのプログラムの講師役、波崎SLSCの村井亜紗子さんは、
 「存分に楽しんでもらった上で、波の威力を感じてもらい、ひっくり返るなどの体験を通して、(海や水辺の怖さを)注意喚起ができればと思っています。
 このプログラムを通して、湘南という恵まれた地域にいる人たちに、海の楽しさを知ってもらえれば嬉しいですね」と話す。

 絆プロジェクトの運営には、毎年たくさんのライフセーバーが関わっている。こうしたスタッフの絆も、回を重ねるごとに強まっているようだ。

 子どもも大人も真剣に取り組んでいたのが「浮いて待て」のコーナー。

 講師である安倍 淳さんは、地元の宮城で震災を経験した。その時の教訓から、水に浮いていられるこことの大切さと、その浮き方を指導している。
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 力を抜くこと、肺になるべく空気を溜めておくことなど、体を浮かせるにはいくつかのコツがある。しかし知識はあっても、いざという時にできるとは限らない。体験してみないと、とっさの時にはなかなか対処できないものだ。

LSweb 絆プロジェクトの大前提は「まずはやってみる」こと。
 ここでは着衣での浮き身だけでなく、ペットボトルを使って浮く方法など、全員が水に入りスタッフのアドバイスを聞きながら体験していた。

 このプログラムが秀逸なのは、流れるプールで実体験できること。
 海にしろ、川にしろ、水難事故は流れのある場所で発生することが多い。より実戦にそった環境で経験値を積むことができるというわけなのだ。

 保護者の一人は「ペットボトルで浮くと分かっただけでも安心感に繋がりました」と口にしていた。

地域の絆を深めて減災に

LSweb 流れるプールで行われたもう一つのプログラムが「君もライフセーバー」だ。

 水難事故で多い二次災害に遭わないために、ここでは水に入らずに救助する方法を体験してもらう。

 講師の吹田光弘さんは、海水パンツとパトロールキャップが抜群に似合うライフセーバー。
 よく通る声とダイナミックなジェスチャーで、棒や浮き具などを使った救助方法、ヒューマンチェーンのやり方などをデモンストレーションする。

 デモンストレーションが一通り終わり、「自分の身は自分で守るのが基本だよ。でも友だちが助けを求めていたら? みんなで協力して助けてあげよう」と教えていると、絶妙なタイミングで「浮いて待て」のグループが流れるプールの上流から流れてくるではないか。

 子どもたちはプールサイドから「これにつかまって〜」と浮き具を投げ入れ、あるいは「がんばって、今助けるからね」と声をかける。少し下流では、大人たちがヒューマンチェーンを使って救助活動をしていた。
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 浮いて待っていれば助けが来る、というポジティブな体験をしてもらうことも、プログラムの大事なコンセプトだ。

 大人と子どもが唯一、別々に行うのが「蘇生法訓練」と「みんなでトライ」。

 大人たちは現役の救急士から直接、心肺蘇生法とAEDの使い方の講習を受け、子どもたちはみんなでがんばりながら、命の大切さを知ってもらうプログラムになっている。
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「みんなでトライ」のプログラムを担当する講師は、元消防学校体育教官の鎌田修広さん。もしお母さん、お父さんが倒れていたら? という問いかけから、心臓マッサージで救える命があることを学び、硬式テニスボールを使った心臓マッサージ体験へ。

LSweb 救急車が駆けつけるまで心臓マッサージを続けるという設定で、約10分間、テニスボールを押し続けるのだが、小学校低学年の子どもたちにはかなりハードなメニューだ。手は疲れる、膝は痛くなる、息も上がってくる。

 それでも鎌田さんの叱咤激励に応え、全員が1、2、3、4……と声を出し、必至の形相でテニスボールを押し続け、無事、救急隊に引き継いた。疲労困ぱいで「つかれた〜」と言いながらも、子どもたちの顔にはやりきった自信の表情が浮かんでいた。

 ところで、相模湾沿岸地域では、震源や地震の規模にもよるが、最大で10m程度の津波が最短10分程度で襲来することが予想されている。地域全体で災害に強くなるためには、住民同士の協力が必要不可欠だ。
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 「絆プロジェクト」は親子での参加が基本だが、他人の子どもでも見守ったり、助けたりできるように、また近所のおじさんやおばさんとも協力できるようにと、現地では親子がなるべく別のグループに配置されるよう工夫されている。

 プログラム全体を統括するのは、30年以上にわたり水辺の安全を指導し続けている豊田勝義さん。

LSweb 「大人も子どもも、まずは実際にすべてのプログラムを体験してもらうことが大事だと思っています。湘南という地域柄、マリンスポーツに親しんでいる人も多いので、こうした体験はきっと何かの役に立つでしょう。また、住民同士の関係が深まり、お互いに関心を持つことができれば、きっと減災に繋がるはずです」と、絆プロジェクトの意義を話してくれた。

 もうすぐ夏休みも始まる。海はもちろん、プールに出かける人も多いはずだ。そこで最後に、豊田さんに聞いたプールで気をつけたいポイントを紹介しよう。
 水辺で楽しく過ごすための参考にしていただければ幸いだ。


    
 
☆★ 気をつけよう!プールの死角はこんなところ ☆★

LSweb① 事故が起こりやすいのは水深差のあるプール。最初は浅いところにいたのに、遊んでいるうちに水深の深い場所に行ってしまい、足がつかずにパニックになるケースなどが多い。だんだん深くなるプールや、中央部が深いプールは特に注意が必要。

② 小さい子どもの場合、水面と地面の違いを認識していなことがある。保護者や兄弟の後を追っている時、誰かのところに行こうとした時など、陸続きのつもりで歩いてプールに落ちる場合がある。

③ 真水は海水に比べて浮力が少ないため、水面でバシャバシャすることなく溺れることもある。姿が見えなくなった場合は、水面だけを探すのではなく水中いる可能性も考える。

④ 近年は少なくなったが、排水口や流水ポンプなどの柵が外れていたり、不具合がある場合は不用意に近づかず、監視員に教える。


 
    

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ライフセーバーのための気象予報講座⑪
梅雨と夏
2016/06/15

Weather Information for Lifesavers

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6月になった途端、次々と梅雨の便りが届くようになった。

しばらくの間はジメジメとした天気が続くことになる。

梅雨が終われば、いよいよライフセーバーの出番となるわけだが、今のところ空梅雨気味で真夏の水不足も気になるところ。

さて、今年はどんな夏になるだろうか?

早速、九十九里LSCの松永 祐さんに解説してもらおう。(LSweb編集室)

文・写真=松永 祐(九十九里LSC/サーフ90鎌倉LSC)





不平等な四季

LSweb 各地で資格講習会やライフガードテストが本格化するとともに、夏の足音が聞こえてきた。しっかりと暑い夏が来るかどうかはライフセーバーにとっては死活問題。というわけで、今回はどのように日本に夏が来るのかを見てみよう。

 ライフセーバーたる者、自らが活躍する季節の気圧配置くらい知ってないと……ね!?

 ところで、ライフセーバーなら必ず一度は思ったことがあるのではないか。“四季”と呼ぶからには、均等に3か月ずつ季節を配分してほしい……と。

 しかし、夏と冬は不平等である。12月から3月まで雪は降る。3月中旬頃から本州で桜が咲き始めると春が来た感じになり、青葉が茂る6月初め頃まで春の代名詞ともいうべき“新緑の季節”が続く。
 
 その次が夏なのだが、その前に問題がある。“梅雨”だ。

 東海地方から東北地方の太平洋側にかけては、しとしととした雨が続き、5月よりも肌寒い日もある。四国や九州地方では大雨が降ったりする。青い空、沸き立つ雲、照りつける太陽……という夏のイメージとは程遠いだろう。

アメ010 梅雨は約1カ月半も続き、夏休み直前の7月下旬まで続くことが多い。その後“本当の夏”が来たと思ったら、8月下旬にもなると台風が近づいてきたり、秋雨前線が出現したりして、涼しい日が現れ始める。

 秋の次は冬になるのだが、“暖冬”といえどもコートを着ない冬はないだろう。ところが、“冷夏”の年は雨ばかりで、短パン、Tシャツでは過ごせないほど寒い日が続く年がある。

 このように本州で“本当の夏”は1カ月程度と短く、さらに夏が来ない年もあるのだ。なぜ日本の夏はこのようなライフセーバーにとってイジメともとれる状況なのだろうか。

 天気図も読めるようになったことだし、少し大きいエリアの話をしてみよう。

梅雨前線の動き

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図-A

 梅雨には「梅雨前線(ばいうぜんせん)」という前線が登場することを、皆さんご存じだろう。

 5月中旬になると、沖縄付近で雲の帯(図A)として見え始める。その頃から夏の半分を費やしてしまう梅雨が始まる。
 
 そしていつ梅雨明けになるのかは、この前線の挙動にかかっている。

 皆さんは理科の授業で、「オホーツク海高気圧と太平洋高気圧の間にできて、少しずつ北上し、7月になくなる。」と習った記憶がわずかに残っていると思う。おおよそこのような動きをするのだが、そこには何人かの役者が居るのだ。

オホーツク海高気圧

 梅雨前線の行く手を阻む、北海道の東を中心とした高気圧である(図B)。直径は1,000kmと太平洋高気圧に比べると非常に小さい。特に本州が梅雨前線の北側のエリアに入る梅雨前半はこの高気圧の影響を受けることが多い。

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図-B

 関東から東北では、まったく夏らしくない寒い雨の日が続くことがあるが、原因はこの高気圧である。天気図を見ると、前回お話ししたように関東に「北東の風」が吹く気圧配置になっているのがわかるだろう。

暖かく湿った空気

 一方、東海から九州の方々はそこまで寒い思いをした経験は少ないはずだ。むしろジメジメして大雨が気がかりである。高気圧の中心は風が弱く天気がよいのだが、その周辺は時計回りの風が吹くと以前お話しした。

 この季節の日本の南の海は海水温が高い。

 その上を数千kmにわたり風が旅してくる。すると海から大量の水蒸気を吸収することができる。そのまま等圧線に沿って西日本に突っ込んでくる(図B)。山の南側で雨が多くなるのは、南側からこの空気が山にぶつかり、上昇するためだ。

天気図には見えない影の役者:偏西風

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図-C

 偏西風は、上空10kmあたりに中心を持つ強い西風である。

 北からの寒気も南からの暖気も、この偏西風の手前までしか南北に進むことができない。それに伴い発生する低気圧や高気圧は、偏西風に運ばれるため西から東へと進む。さらに、偏西風は梅雨の時期になると、中国大陸から水蒸気を運んでくる。この偏西風の吹いている場所の変化が、梅雨明けに大きく影響する。

 上空10kmというとものすごく空高い所だと思うが、中国大陸には、8,000m級の山が連なるヒマラヤ山脈や、標高6,000m程度のチベット高原が広がっている。
 偏西風とはいえ、これらの高地を飛び越えることができず、迂回しなければならない。6月初めの梅雨入りの頃(図B)には、偏西風は南北2つに分かれて吹いている。特に南側のルートが水蒸気を本州に運ぶ影の役者だ。

 それが7月頃(図C)になると、チベット高原の気温が上がり、北側のルートのみになる。すると、水蒸気が運ばれなくなり、南からの暖かい空気がより北まで進むことができ、梅雨明けとなる。

新キャラ、続々登場!

LSweb 実は、梅雨前線の挙動はまだ解明されていない部分もある。

 たとえば、西日本で時々発生する大雨は、さきほどお話しした数千km旅してきた水蒸気を含む空気と、中国の田園地帯から水蒸気を得た空気がぶつかる所や、暖かい黒潮のすぐ北の海面水温が大きく変化するエリアで発生することが分かってきた。

 また、九州の北側に広がる黄海の海面水温の変化(水深が浅いため6月末頃から水温が急上昇)とその上にできる局地的な高気圧が、梅雨前線の北上と連動しているという現象も発見されてきた。

 今後、黒潮、黄海高気圧といった新たな役者も参戦してくるだろう。

夏はどこまで?

DSC_2245a 先ほどから登場している「太平洋高気圧」の紹介がまだだった。

 皆さんがよく聞く、夏の主人公というべき「太平洋高気圧」というのは、より正確に言うと「北太平洋高気圧」と呼ばれ、太平洋の北半分を覆う直径5,000km以上もある巨大な高気圧である。

 そして、その中心は日本のはるか東の日付変更線の近く。つまり、日本はこの高気圧の端っこに位置していて、ギリギリ夏になっている、という状態なのだ(図C)。

 これが日本のライフセーバーの活躍期間を短くしてしまう四季の不公平感を出している。夏の端っこに居るということは、この高気圧の力の微妙な変化で、すぐに夏が去ってしまうということだ。
 
 では、北太平洋高気圧の力を決めるものは何か。このような大きいものを動かすカギは、天気の話とはいえ、海の影響が非常に大きい。

エルニーニョとラニーニャ

 エルニーニョ現象。この言葉は異常気象の代表例として有名になった。これは、日本からはるか遠く、南米ペルー沖の海水温が普段より高くなり、それに伴い赤道付近の上昇気流の位置がずれることで、日本に冷夏・暖冬をもたらす現象だ。

 さきほどもお話しした通り、エルニーニョの発生により太平洋高気圧の範囲が少しずれると、そもそも夏の端っこだった日本には暖かい空気が届かず、秋の空気やそれとの境界(前線)が発生し、夏がなくなってしまう。この細かい話はインターネット検索するとすぐに出てくるので、皆さんも調べてみよう!

今年の夏は?

LSweb 気象庁では、毎日の天気予報の他に、1カ月予報を毎週木曜日に、3カ月予報を毎月25日に発表している。これは、晴れ・曇り・雨の予報ではなく、その期間中の「通常からどれだけずれているか」のおおよその傾向を表したものである。

 2016年の夏のものは、5月25日に発表された。それによると、西日本を中心に気温が高くなる傾向が出ている。暑くなると聞けば、安心してガードの準備ができるだろう。

LSweb ただし、今のコンピューターでのシミュレーションでは3カ月分の具体的な天気は予測できない。局地的な寒気の滞留により数日間レベルで天気がぐずつくかもしれない。暑くなる期待をしつつ、さきほどの役者の挙動をみなさんもよく見ておこう!

 さて、今年も夏が間近に迫っている。海水浴場開設に向けた準備や練習は大詰めに違いない。

 この約1年でお天気講座を読んだ皆様は、天気予報の武器をいくつか使えるようになったはずだ。

 次回はいよいよ最終回!「ローカル」になるためにそれらを早速活用してみよう!


※典型的な例を基に、現象を簡略化して解説しています。少しの気圧配置の違いでコンディションが異なる可能性もあるので、海に入る際やメンバーを指導する際は状況の変化等に十分ご注意ください。



    
 
[プロフィール]

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松永 祐(まつなが・ゆう)

九十九里LSC/サーフ90鎌倉LSC所属のライフセーバー。

大学4年時の2005年に気象予報士資格(第5292号)を取得。
海洋研究開発機構(JAMSTEC)に勤める海のエキスパートであり、競技会を支える安全課のメンバーの一人でもある。


 
    





LSweb
ライフセーバーのための気象予報講座⑩
海風と陸風
2016/05/16

Weather Information for Lifesavers

LSweb

ゴールデンウィークが終わったと思ったら、
急に日差しが急に強くなったようだ。夏はもうすぐそこ……。

というわけで、本格的な夏を迎える前に
ライフセーバー必読の気象予報講座をお届けしよう。

今回も九十九里LSCの松永 祐さんが分かりやすく解説してくれるぞ。(LSweb編集室)




文・写真=松永 祐(九十九里LSC/サーフ90鎌倉LSC)




海風は夏の香り

 5月ともなれば新勧海練、講習会などとイベントが盛りだくさん。そして本州ではようやく暑苦しいウエットスーツからも解放され、風や水を肌で感じられる季節となる。

LSweb 海練を終えた夕方、夏を先取りしたような潮の香りが漂うことがないだろうか。今回は夏先取り気分を手助けしてくれる海風と陸風のお話である。

みんな知っているはず!? 海風と陸風

 ビーチに立ったことのあるライフセーバーであれば、海風と陸風のことは当然、知っているはずだ。基本中の基本である!

 ベーシックサーフライフセーバー講習会で取り上げる天気の話は少ないとはいえ、必ずこれには触れられるはずだ。基本的なことは日本ライフセービング協会発行の『サーフライフセービング教本』47ページで復習しよう。

 海と陸の温度差から発生するこの風の変化は、夏を待たずしてすでに5月から起こっている。

十人十色の海風と陸風

DSC_0227 しかしよく思い出してほしい。夏の晴れた日、午後の海風は毎日真正面から吹いていただろうか。

 日々発生する海風と陸風の規模は小さい。この現象が起こる範囲は、陸側には数十km、海側には10km程度の現象である。

 前回取り上げた低気圧が1,000km以上の大きさであることと比べると、かなり小さいことがわかるだろう。規模が小さく、時間による変化が大きい現象は、地域による特性が大きい。

 全国各地で活動するライフセーバーの皆さんには申し訳ないが、また関東地方の例をもとに、そのバリエーションの多さをみてみよう。そしてこの夏、皆さんのビーチでも海風と陸風の特徴を調べてみよう!

風はビーチの背後を「陸」と認識していない

DSC_1612 関東平野は奥行きが100km以上もある、日本でトップクラスの大きさの平野である。おおまかに見ると6角形をしており、北側から西側にかけては越後山脈、関東山地(丹沢含む)があり、東側から南側にかけては鹿島灘、九十九里、湘南・西湘エリア(相模湾)が広がる。

 そして、特に夏になると内陸の埼玉県や群馬県では気温が上がる。記録的な高温を伝えるニュースを聞いたこともあるだろう。また、このような日は山に登ってもかなり暑い。

 海風はこの内陸部や山を目指して吹きこんでくる。そうすると、ビーチによってさまざまな方向から吹く海風が生まれてくるのだ。さらに、関東平野の周りには3方向に海があり、2方向に山がある。この地形ゆえに、時と場合によって吹き方も変わってしまうのだ。

天気図とも連動する海風

 そんな気まぐれな海風は、どこからどこに吹くのだろうか。実は天気図と照らし合わせるとおおよそ見当がつくことが多い。典型的な3つのパターンを紹介しよう。

 連載の第3回で天気図の見方を解説した。しかし、ライフセーバーはただ天気図が読めるだけではダメで、そこに今回の海風・陸風の吹き方を重ねられるようにならなければいけない。

A陸風と海風(関東)_純粋南型 海風・陸風が予測できないと、実際のコンディションは予想と大きく異なってしまい、波選びで風をかわせるポイントや、遊泳客の流される方向を間違えてしまうことになる。

 風向きを決めるポイントは、高気圧の位置と内陸部の晴天だ。個別に見ていこう。

-純粋南風型-

 夏に最もよく見られるパターンである。相模湾や南房総から南風が入り、まっすぐ北を目指す。

 この時の典型的な天気図がAだ。本州の真上や南側に高気圧があり、関東付近の等圧線を見るとおおよそ南西から北東へと風が吹きそうである。

 ただし、海風は地形の影響もあり、真南から吹く傾向である。一見、真夏の太平洋高気圧が強い時には、天気図だけを見ると等圧線が本州に1本程度しかないため、風が弱そうな気がするが、内陸部が晴れていると、午後にはこの南からの海風がかなり強く吹く。逆に朝は風が弱い。

 そのため、南向きのビーチでは教科書通り午後になると正面から風が吹くが、西向きや東向きのビーチでは横から風が吹く。

-南東型-
B陸風と海風(関東)_南東型
 九十九里方面から風が入り、少し左向きにカーブしながら関東平野の西側の山に進むパターンだ。

 南風型よりも気温は上がらない。そして、この風が吹く典型的な天気図がB。高気圧が日本の東側にあって、西に気圧の低い部分(例として台風を描いた)がある。

 この天気図の等圧線をたどっていくと、関東には南東から風が入るように読める。先ほどと同様、等圧線の数が非常に少なく風は弱そうだが、この傾向にしたがって午後になると海風が便乗し、風速は強くなる。

 この場合、東向きの九十九里では正面から風が吹くが、湘南などの南向きのビーチでは左から右への風が吹きやすい。そして問題なのが西向きのビーチ。オフショアになるため、浮き輪で遊ぶ人が浜に帰って来づらくなるので、注意が必要だ。

-北東型-

 鹿島灘から風が入り、関東平野の西側の山に進むパターンだ。場合によっては、そのまま湘南方面に風が抜けることもある。

C陸風と海風(関東)_北東型 この場合、先ほどまでの2つの例とは異なり、晴れたとしてもあまり気温は上がらない。このパターンの典型的な天気図はC。関東の北側に高気圧が偏っている。天気図上からも関東付近では東よりの風が吹くことが読み取れるだろう。

 そしてこのCの気圧配置の時には、まだ特徴がある。鹿島灘と九十九里の間には海水温が大きく異なる海域があり、この北側は海水が冷たい。この北東の風は冷たい海の上を吹いてくるため、冷たく湿っている。そして冷たいため、上昇できず、関東の西側の山にぶつかってしまう。すると、日本全国晴れているのに、関東地方だけ曇ってしまう。

 東北地方に天候不順をもたらす「やませ」という言葉を聞いたことがあるかもしれないが、これと同じような現象である。ちなみに、この風は内陸の気温よりも常に冷たいため、夜になってもなかなか止まらない。特に東側のビーチで朝イチにイイ波を狙おうとしている時には注意が必要だ。

 もちろん、これら3パターンの中間的なものもあるため、必ずここで説明した通りの風が吹くとは限らない。ある程度は予想しつつも、実際のビーチで風をしっかり感じよう。

決め手は皆さんが見ている海のすぐ裏

KATAKAI Evening Session_001 さて、ここまで典型的なパターンをお話ししたが、ビーチによってさらに細かく状況は異なる。諸先輩からは代々「海だけじゃなくて浜も見なさい!」と教えられてきたと思うが、浜側を細かく見たことがあるだろうか。

 どの方角に山があって、どこを風が通りそうか。特に山に囲まれたビーチでは、遊泳エリアの左端と右端で風の強さや微妙な向きが違うことがある。
 天気図、海風が吹く条件、細かい周囲の地形などを頭にインプットして、海を見てみよう。

 潮の香りが漂う夕方の海を前にこの季節に思うことといえば、今年の夏は暑くなるのか……? ということだ。

 次回は、ライフセーバーの死活問題、梅雨と夏の天気の特徴を見てみることにしよう!


※典型的な例を基に、現象を簡略化して解説しています。少しの気圧配置等の違いでコンディションが異なる可能性もあるので、海に入る際やメンバーを指導する際はご注意ください。


    
 
[プロフィール]

LSweb
松永 祐(まつなが・ゆう)

九十九里LSC/サーフ90鎌倉LSC所属のライフセーバー。

大学4年時の2005年に気象予報士資格(第5292号)を取得。
海洋研究開発機構(JAMSTEC)に勤める海のエキスパートであり、競技会を支える安全課のメンバーの一人でもある。


 
    










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