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パトロール現場訪問 2016年 夏 Vol.02
千葉県勝浦市・守谷海水浴場
2016/08/12

2016 Summer 勝浦LSC

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全国的に真夏日が続く今年のお盆シーズン。

太陽は朝からギラギラと容赦なく照りつけ、立っているだけでも汗がダラダラしたたり落ちる毎日だ。

そんな中、全国各地の海水浴場では“無事故”を目指して、大勢のライフセーバーたちが活動している。

夏真っ盛り、ライフセーバーたちの奮闘ぶりを紹介しよう。



文・写真=LSweb編集室
special thanks to Yu Matsunaga






房総半島の老舗ライフセービングクラブ

LSweb 534kmにわたって海岸線が続く千葉県。その南半分は南房総国定公園に指定されている。国定公園内でも特に海の景観が美しく特徴的なことから、海域公園に指定されているのが勝浦一帯だ。

 勝浦市は県内第2位の漁獲高を誇る勝浦港を中心に、漁業や農業などが盛んな自然豊かな地域で、今年で市政施行58年周年を迎えた。
 市内の下本町通りと仲本町通りで開かれる朝市は、なんと戦国時代の天正19(1591)年から400年以上も続く「日本三大朝市」の一つだ。

 勝浦と言えば、日本有数の水揚げ高を誇るカツオが有名。市の公認キャラクター「勝浦カッピー」にもなっている。
 勝浦と聞いて「タンタンメン」を思い浮かべる人も多いかもしれない。そのルーツは約50年前。漁師さんや海女さんが、寒い海仕事の後に冷えた体を温めるために食べたメニューと聞けば、同じ海を活動の場とする全国のライフセーバーも一度は食べてみたくなるはずだ。

LSweb そんな勝浦市では今年、勝浦中央、鵜原(うばら)、守谷(もりや)、興津(おきつ)の4つの海水浴場が開設されている。

 そこで活動するのが国際武道大学ライフセービング部とそのOB、OGを中心とした「勝浦ライフセービングクラブ」。創立30周年になる、房総半島で最も早く活動を始めたライフセービングクラブだ。

 勝浦LSCは市内の4浜と、隣町の御宿町にある屋外プール「ウォーターパーク」のガードを行っている。学生ライフセーバー約40人、社会人を加えると80人近いアクティブメンバーがいる大所帯のクラブである。
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町の活性化を担うライフセーバー

LSweb 8月最初の日曜日、夏休みを楽しもうという家族連れや若者で、房総半島の海沿いの道はどこも大混雑。特に海岸線近くまで山が迫る勝浦市内は道幅が狭いこともあり、海水浴目当ての行楽客を乗せた車で大渋滞が発生していた。

 それでもなんとか守谷海水浴場に到着すると、そこは砂浜が見えないほどのビーチパラソルの花、花、花!
 あまりの混雑ぶりと、台風の影響で高波が押し寄せる状況を見て、ライフセーバーに声をかけるのがためらわれたのだが、なるべくパトロールの妨げにならないようにと、手短に話しを聞くことにした。

 応えてくれたのは、国際武道大学4年の田中陽大監視長だ。

LSweb 「今日はこの夏一番の賑わいです。守谷海岸の海水浴客は約2万人というところでしょうか。ここは岩場や磯のある美しい入り江で、家族連れから若い人まで人気があります。監視タワーは4つ。今日は15人体制でガードをしています」

 勝浦LSCでは学生ライフセーバーは1〜2年の間はいろいろな浜でのガードを経験し、3〜4年生になると固定浜でのパトロール活動を行う。各浜の監視長を務めるのは最上級生の4年生たちだ。

「海水浴場のほぼ中央に川が流れ込んでいます。そこを中心に海に向かって左側を第1エリア、右側を第2エリアと呼んでいますが、第1エリアは波打ち際から一旦深くなったあとに浅くなり、再び深くなるという、カレントが発生しやすい地形です。子どもなど、スッと流れてしまうことがあるので目が離せません」

「快水浴場百選」と「日本の渚百選」をダブル受賞している風光明媚な守谷海水浴場。沖合170mにある鳥居が目印の渡島は、大潮の時には岸と陸続きになるそうだ。

「第2エリアは渡島までの海底が岩場になっているので、切り傷などのケガに注意をしています。
 普段は水の透明度が高く、変化に富んだ浜なので子どもから大人までいろいろ楽しめるのですが、今日は波が高いので、緊張しますね。週末ということもあり、社会人の先輩方がガードに入ってくれているのが心強いです」
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 通常、朝練や夕練は勝浦中央海水浴場で行っており、浜と浜の行き来には原付バイクが活躍するのだとか。勝浦の町で原付バイクに乗る日に焼けた人を見かけたら、たぶんきっと水辺の安全を守るライフセーバーに違いない。

★☆ 守谷海水浴場 ☆★
開設期間:7月16日〜8月21日
遊泳時間:8時〜17時

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パトロール現場訪問 2016年 夏 Vol.01
千葉県南房総市・和田浦海水浴場
2016/08/10

2016 Summer 和田浦LSC

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2016年のお盆シーズンに突入した。

ライフセーバーにとって1年で最も忙しく、最も気の抜けない1週間だ。

照りつける太陽、吹き抜ける熱風、遠くの雷鳴、南の海上で発生する台風……。

各地でガードに勤しむライフセーバーたちの様子をお届けしよう。




文・写真=LSweb編集室
special thanks to Yu Matsunaga





日体大LSCが管轄する6浜の一つ

 東京湾と太平洋に面した千葉県は、全国有数の海水浴場開設県だ。千葉県が発表した昨年度の資料を見ると、県内の19市町村に計68カ所の海水浴場があることがわかる。

 そのうちの一つが、県南東部の南房総市・和田浦地区にある和田浦海水浴場。環境省が選定した「快水浴場百選」にも選ばれている。

LSweb この浜をガードするのが、日本体育大学ライフセービング部員と、そのOB、OGが中心となって活動する「和田浦ライフセービングクラブ」だ。

 同クラブの監視体制は、大学4年生がパトロールキャプテンを務め、社会人が学生をバックアップするディレクター職に付くというスタイル。

 今夏のパトロールキャプテンは藤井尊史さん、取材時は今年3月に卒業した山口祐太さんがディレクターとして全体を統括していた。
 彼らの下、前線でパトロールに当たるのが下級生から上級生まで5人の学生ライフセーバーたちだ。

多彩な海遊びができる浜

 では、和田浦の特徴を藤井キャプテンに教えてもらおう。

LSweb 「和田浦海水浴場の特徴は磯や岩場があることです。岩の周りは流れがありますが、その内側は通常、波が穏やかで子どもにも遊びやすい場所になります。
 またビーチの南側には磯があって、そこは生き物がたくさんいます。いろいろな楽しみ方ができるのが和田浦の海ですね」

 海水浴客の多くがファミリー層で、リピーター率も高いことから、お客さんとライフセーバーの距離が近いのも特徴の一つだろう。

「事故が起きないようにというのが大前提ですが、海の楽しさが伝えられるように一人一人に声をかけるようにしています。例えば、磯にいる生き物を教えてあげて、磯に行く時には足を切ると危ないから必ずサンダルを履いてね、と伝えたり。
 僕たちは水流チェックと呼んでいますが、水質やカレントの状況を確認するだけでなく、どこにどんな生物がいるかもチェックしているんですよ」

 丁寧な声賭けが功を制し、切り傷など、ファーストエイド(FA)の受傷者は年々減っているそうだ。

LSweb 「今日は台風5号の影響で波が高く、午後1時半に遊泳禁止にしましたが、穏やかであれば海の透明度は本当に高く、小魚もたくさんいます。割り箸とたこ糸を使ってハゼ釣りをするのも楽しいですよ!
 遊泳区域外は良い波が立つエリアなので、朝々練では波乗りを楽しむことあります。正規の朝練は6時から。夕練は終礼後、17時ごろから行っています」

 遊泳エリア外はパトロール区域ではないが、気になることがあれば自転車を飛ばしてチェックしに行くのだとか。

 また、3年前からは地元の市立和田小学校で夏休み期間中に「水辺の安全教室」を行うなど、活動の幅を広げている。

「それが縁で、学校のプールを使用したトレーニングをさせてもらえるようにもなりました。毎日、浜に遊びに来てくれる小学生もいて、すっかり仲良くなりましたよ」と話すのは、藤井キャプテンをサポートする同期の長野文音さんだ。
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 漁業と花作りが盛んな和田浦は、全国でも4カ所しかない捕鯨基地の一つという顔を持っている。
 漁期はライフセーバーが活動するのと同じ夏で、小型のツチクジラを捕獲する沿岸捕鯨漁が行われている。パトロール期間中にクジラがあがると、新入生を中心に見学に行くのも恒例行事だそうだ。

「今日(8月7日)はOB、OGの方を囲んでの食事会が予定されています。卒業しても先輩たちに顔を出してもらいたいので、お会いできるのが楽しみです。そしていつでも気軽に立ち寄ってください」と声を揃えた学生ライフセーバーたち。

 パトロールに、トレーニングに、伝統校らしく随所に“日体大スピリット”が受け継がれている和田浦LSCだった。

★☆和田浦海水浴場☆★
開設期間:7月22日〜8月21日
遊泳時間:9時〜16時30分

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ヒラッパーズママの
ベーシックサーフライフセーバー資格・取得奮闘記
2015/07/02

Let's Challenge to take a qualification of Basic Surf Lifesaver 

Be a Lifesaver!


LSweb海水浴シーズンを翌月に控えた6月の週末。

神奈川県ライフセービング連盟が主催する「ベーシックサーフライフセービング講習会」の受講生の中に、2人の既婚女性の姿があった。

湘南ひらつかライフセービングクラブのジュニア部「ヒラッパーズ」に子どもたちが所属する、奈良部真弓さん、久保田恵里子さんだ。

なぜ奈良部さんと久保田さんはライフセーバー資格を取得しようと思ったのか? 周りの反応は?

そして講習会の様子は? ライフセーバー資格取得に挑戦した2人のママたちの奮闘記を、奈良部さんのレポートでご紹介しよう。(LSweb編集室)

文=奈良部真弓・写真=橘川克巳(湘南ひらつかLSC)




「まず申込み」で始まった

LSweb 知り合いの紹介で、子どもが湘南ひらつかLSCのジュニア活動に参加するようになったのがライフセービングとの出会いだった。

 子どもの活動に付き添ううちに、ビーチフラッグス練習の時にフラッグを立てたり、サーフ練習の海上目標物として海に浮かんでいたりと、子どもと一緒に楽しい経験をさせてもらうようになった。

 その手伝いの中で、子どもが同じ活動をしている母親同士、お互いに「安全にできているのか」「もう少し手伝えることはないのか」と考えるようになり、一度きちんと勉強しようという結論で意気投合したのが、今回ベーシックサーフライフセービング講習会を受講した2人の母の受講動機だ。

 海のシーズンがオフになったばかりの秋に受講を決心し、翌春に動き始めたのだが、受講したかった日程が既に満席で予約できなかったり、ジュニアの大会と日程が重なっていたりと、あっという間に何もしないまま1年が過ぎていた。

 決心から2年目の今年。

 満席になる前に「まず申し込み」の声を掛けてくれたのが久保田さんだった。2人でスケジュールを決め、早々に申し込みをしたのは、お互いにひとりでは少し心細かったからだ。

LSweb そんな熱い気持ちの母たちとは裏腹に子どもたちは意外に無反応で、「へー」とか「そーなのぉ」という気のない返事。

 奈良部家では「お母さんには無理だよ」と、いかに自分がすごいのかをアピールしているともとれる反応だった。

 人ごとなのか、無関心なのか、親としてはとても複雑な気持ちだったが、「一人で海に行くのはどーなのかな?」という発言は、どうやら羨ましさも少し混じっていたようだ。

 受講直前には「お母さん死なないでね」という発言まで出てきた。“そんな危険なことではないよ”と内心思いつつ、そんな風に心配してくれることがほほえましく、ちょっとした収穫だった。

 しかし講習が始まってすぐに、子どもたちのすごさが身にしみることとなった。

 今まで普通にできていたはずの“泳ぐ”というとても単純なことが、母たちにはとても難しいのである。体力的にではなく、明らかに経験不足なのである。

 そのことに打ちのめされてからは、毎回家に帰って子どもに相談である。子どもたちは少しも茶化すことなく、自分の持てる技術や経験を教えてくれ、「無心で泳ぐ」というメンタル面までもアドバイスしてくれた。

LSweb 同じ目線で共通の話ができるようになったのか、という親としての喜びも、嬉しさもひとしおであるが、実はそれどころではなかった。

 教えてもらったことを翌日の講習で試し、少しでもレベルアップするように努力をするしか、受講生仲間の高校生たちに近づく方法がないのである。

 実は私たちの受講仲間は、なんと高校生だったのだ。
 もちろん一緒に受講している彼らにもアドバイスを求めた。同じ時間に同じ海に入る仲間として、波の判断はジュニアから経験している彼らの方が数段詳しい。

 多感な年ごろの男子高校生と女子高校生は、いやな顔一つせずにいつでも丁寧に答えてくれたので、我が子もこんな風に育ってくれればいいなと思うことが多々あった。

海での実習に苦戦

LSweb 最初の2日間は午前中に座学、午後に実習というスケジュールで行われた。

 座学で学んだことを海で実習するのではない。座学はあくまでも波の事や気象の事、ライフセーバーとしての対応方法など基本的なことを学ぶのである。そして実習はそのまま海で習って海で実習するのである。

 ボディーサーフィンも、レスキューボードもジュニア活動のお手伝いで乗ったことはあったが、少しでも波があると途端にてこずる。

 浮いている溺者役のところに行くのも、高校生と比べると1分、2分と余計に時間がかかる。

 “浮いているのが自分の子どもだったら”と考えて常に真剣に取り組むのだが、それでもボードごと波にのまれて溺者を落としたり、なかなかチューブのフックが止まらなかったりと失敗の連続である。

 そんな1日の締め括りに行うランスイムランは、予想通り苦戦した。

LSweb 1日目はフルウェットを着込んでチャレンジしたが、2日目は邪魔なウエットを脱いで水着で挑んだ。寒いとか、恥ずかしいなどと言っているわけにはいかない。すでに落ちこぼれそうな母たちは、1日目と同じ失敗をするわけにはいかないのだ。

 そんな母たちを尻目に、男子高校生は水着とラッシュガードだけで、2日目の実習を受講していた。
 「寒い」とは言っていたが、大人にはちょっと真似できない判断だ。もちろん、ウエットは彼らにとっても泳ぎにくい邪魔ものだったのだろう。

 3日目も午前中に座学、午後に実習を受けた。

 三角巾の使い方もこの日初めてだ。

 前の週の2日間とインストラクターが代わり、男子高校生に大うけの”ノリ”で講義が進む。インストラクターそれぞれが個性的で、とても魅力的だと思った。

 3日目の海実習は、前の2日間の復習。動作を一つずつ確認しながら、確実に体と頭に手順をたたきこんでいく。そんな中で、意外に男子の方が溺者の扱いがやさしいのには驚いた。

いよいよ最終日!

LSweb 最終日は検定だけ。3日間のすべてを出し切って、全員合格して終わりたい。

 あいにく朝は風が強く、波が不規則に崩れるコンディションだ。

 いつものように座学から始まると思っていたら、朝から実技のテストだという。心の準備ができていなかったが、ランスイムランが最後だと一日中落ち着かないので、早々に終わらせることに賛成した。

 みんなでボードを運びながら「オンショアだね」「白波が立つから溺者を見失うね」と、座学での復習もしながら海を見た。

 午前中の方が風と波が強いのは、今までの3日間と同じだ。実技を午後にすればよかったかなと、少し後悔した。しかも曇天で気温も低めだ。それでも1週間前より水温が温かくなっているのを肌で感じた。

LSweb たくさんのサーファーをよけながら、次々と実技をこなす。

 初日にしでかしたような失敗を繰り返すわけにはいかないので、一つ一つとても慎重だ。ランスイムランまで全力で慎重に力を出し切った。最後のランは全力疾走で駆け込んだので、初日のランスイムランより少しまともにゴールできたと思っている。

 そのあとの昼食は心おきなく、お腹いっぱいに食べられた。一仕事終えた後のほっとした食事だ。

 午後からは学科と三角巾をそつなくこなし、4日間にわたる講習会を無事終了。

 晴れ晴れした気持ちと同時に、受講生5人が一緒に集まるのはこれが最後なんだと思うと寂しくなった。みんなで「また海で会おうね」と口にして別れた。

 今回受講した講習会は、土日を2週使う4日間のスケジュール。前日の疲れを残さないように、家の事も早々に子どもより早く寝て万全を整えた。

 とはいっても講習会はたった4日間しかない。必ず終わる4日間に、“やれるかな?”という不安だけは最初からなかった。そのあたりの楽観的な考え方ができるのが母親2人の共通点かもしれない。LSweb

 4日間の講習では3人のインストラクターに教わることができた。みんなそれぞれに経験を積んでいるスペシャリストで、ガードの体験も豊富にあり、毎回色々な浜の話が聞けてとても楽しかった。

 これから夏になり、受講生もインストラクターもみんなそれぞれの浜で大活躍をするのだと思うと、平塚だけでなくほかの浜に遊びに行く楽しみもできた。

 母たちは当初の目的通り、ジュニアの活動をどう手伝えるのか、これからの活動もとても楽しみである。

    
 
インストラクターから一言

 ベーシックサーフライフセービング講習会の主な受講生は大学1年生。その中でこの2人はちょっと異色といえる。ましてや今回は、高校生が受講生の中にいた。

 はっきり言おう、年齢的に大丈夫か? と一瞬、心配になった。

 しか~し、それはまったくの杞憂で、むしろこの2人が他の高校生たちを引っ張ってくれた。それは学科での雰囲気もしかり、準備から練習中のフィットネスに至るまで。IMG_2004a

 世の中の女性が、特に主婦の方が元気であれば世界は明るくなり、みんなが笑顔になれる。

 2人の活動は平塚の海を元気にし、訪れる遊泳者の安全を守ることはもちろん、笑顔にもしてくれるだろう。これからのシーズン、現場での活躍が大いに楽しみだ。

 奈良部さん、久保田さん、ベーシックサーフライフセーバー資格合格、おめでとうございます! また海で会いましょう。

インストラクター 原 伸輔


 
    





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今夏も社会人ライフセーバーが大活躍!
辻堂海水浴場
2014/09/02

Tsujido Lifesaving Club 2014

2014年、夏のパトロールシーズンが終わりを迎える。LSweb

今年、神奈川県下の湘南海岸では、それぞれの地域の海水浴場によって様々な条例や自主規制などが行われた。

また、8月のお盆を前に台風11号の影響も受けた。それでも、多くの人で賑わいをみせた湘南のビーチ。

そんな湘南エリアの中で、周りの喧噪をよそに比較的のんびりできる浜が、辻堂海水浴場である。

この地元密着型のちいさなビーチをパトロールしているのが「辻堂ライフセービングクラブ」のメンバーだ。


文・写真=LSweb編集室





社会人ならではの苦労とメリット

 神奈川県藤沢市の辻堂海岸。LSweb
 
 湘南のサーフポイントでもあり、地元のサーファーが多く比較的ローカル色の強いビーチである。

 そんな海岸の一角にあるのが辻堂海水浴場だ。
 江ノ島や烏帽子岩も間近に見えて“これぞ湘南”という立地条件ながら、鎌倉の由比ヶ浜や江ノ島の片瀬海岸と比べ、どこかのんびりとした雰囲気を感じるこぢんまりとした海水浴エリアである。
 
 この辻堂海水浴場で監視パトロール活動を行っているのが「辻堂ライフセービングクラブ」だ。
 1996年の夏から活動を始め、今年で18回目の夏を迎えた。クラブの登録メンバーは40人ほどいるが、夏のパトロールは、15,6人のメンバーが中心となって行っている。

 このクラブの特徴は、なんといっても社会人中心で活動しているところだろう。組織運営はもちろん、夏の監視活動もほぼ社会人主体で回している。その割合は、およそ9:1で学生の数が圧倒的に少ない。
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 取材に伺った8月中旬の平日、この日監視活動に従事していたのは全部で4人。そのうちクラブ代表を務める中川 健さんをはじめ3人が社会人、1人が学生という体勢で行われていた。

 ちなみに唯一の学生メンバーとして入っていた垂水洸稀さんは、近隣の大磯ライフセービングクラブで副監視長を務めていて、辻堂LCのメンバーではない。

 この日、たまたま神奈川ライフセービング連盟(KLF)が行っている「パトロールネットワーク(パトネット)」加盟クラブの交流活動の一環として辻堂へ1日監視メンバーとして参加していたのである。そんなわけで、辻堂LCのメンバーだけを見ると、この日も100パーセント社会人という構成であった。

 代表の中川さんも都内で鍼灸院を営む傍ら、夏の間は足繁く辻堂まで通って監視パトロールに励んでいる。LSweb

 「社会人中心で苦労するのはやはり平日のシフトを組むことです。2014年の辻堂海水浴期間は、7月5日から8月31日までのおよそ2ヶ月と開催時期が長いので、特に7月は悩みます。
 私の場合は自営なので木曜日と日曜・祝日を定休日にして平日でも入れるように調整していますが、社会人の場合、仕事はもちろん、家庭のこともありますから全ての休みをライフセービング活動に費やすこともできず、やりくりはなかなか難しいですね」

 それでも中川さんは、学生だけでなく、あえて社会人ライフセーバーにもどんどん参加して貰いたいという。

 「辻堂のようなローカルで小さな海水浴場では、お客さんに対して事前に注意を即す意味とライフセーバーが控えていますよというアピールを兼ねて、積極的にこちらから声掛けをしていくように心がけています。
 社会人の皆さんは、仕事を通じて人との接し方やその場その場での臨機応変な対応力が備わっていますので、場の状況に応じて上手に声掛けができるように思います。一番いいのは、学生と社会人が適度に混ざり合ったシフトが組めるとお互い刺激し合って高められるのではないかと思います。
 昔、ライフセーバーをやっていたが、随分と遠ざかってしまったというような人もぜひもう一度クラブに戻ってきて貰いたいですね。もちろん、学生の皆さんもウェルカムです!」
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 今回、パトロールに参加していた川口康邦さんと池田智昭さんも一度活動から離れていた復帰組だという。

 川口さんは日体大のトライアスロン部出身。仕事が忙しく離れていたが、35歳の頃に復帰して夏の監視パトロールをサポートしている。

 池田さんは、看護師という職業柄、クラブ内での保健担当で主に力を発揮している。本人曰く、泳ぎの方はあまり自信がないので、その分、自分のできる範囲でクラブや仲間に貢献できるように協力していければ、と語る。
 この日も、エイに刺されたという遊泳者が監視所を訪れたが、池田さんが気軽に話しかけながら手早く処置したことで明るい笑顔を取り戻した。
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 仕事を持ち、家庭もあって、その中で時間をやりくりしてライフセービング活動を行う社会人メンバーたち。そうした苦労や努力を知っているからこそ、年齢や経験など関係なく、お互いが認め合いフォローし合って活動できるのだと思う。

 そんな社会人中心のクラブは、夏の監視パトロールだけでなく、今までにない新しい試みにも挑戦している。その一つが、クラブ初のジュニア向けイベントの開催だ。

 「辻堂ライフセーバー体験教室 〜これで君もライフセーバーの仲間入り!!〜」と銘打ち、小学1年生から4年生を対象としたイベントとして、IMG_6152 

・子どもたちに海の楽しいところ・危険なところを知ってもらいたい!
・ライフセーバーを知ってもらいたい!
・何よりも・・・夏の思い出をつくってもらいたい!

というクラブの思いから企画され、8月9日の初開催を前に着々と準備が進められていた。

 しかし、直前にやってきた台風11号の影響で中止となってしまい、参加を楽しみにしていた子どもたち、それに企画したクラブメンバーもさぞ残念だったことだろう。
 来年こそはぜひ成功させて、辻堂LCの恒例イベントとして定着するよう期待したい。


 今年も無事故で終わりを迎えた辻堂ライフセービングクラブの皆さん。

 そして、全国各地のビーチやプール等で監視パトロールに携わったライフセーバーをはじめ、各ライフセービングクラブ、関係各所の皆さんに敬意を込めて・・・〝ありがとう! 2014年・夏〟








2013夏 パトロール浜訪問
西伊豆ライフセービングクラブ
2013/08/26

夕陽の美しい景勝地で
6浜をパトロール中!

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入り組んだリアス式海岸線が続く、風光明媚な伊豆半島西岸。

そのほぼ中央に位置する西伊豆町で、夏季の海水浴場をパトロールするのが「西伊豆ライフセービングクラブ」だ。

“夕陽百選”にも認定された美しい海辺に、ライフセーバーたちを訪ねた。


2013.8 静岡県・賀茂郡西伊豆町


文・写真=LSweb編集室





合宿所は廃校となった中学校


LSweb 西伊豆LSCの設立は2001年。昨年までは西伊豆町内の大浜海水浴場、乗浜海水浴場、黄金崎クリスタルパーク、深田海水浴場(宇久須クリスタルビーチ)の4浜で監視業務を行っていたが、今年から浮島海水浴場と田子瀬浜海水浴場の2浜が増え、全部で6浜の監視をすることになった。

 西伊豆の海岸線は変化に富んでいる。それを象徴するかのように、監視する6浜のうち3浜は砂のビーチ、残り3浜は岩場やゴロタ石の浜といった具合だ。水深も急に深くなる場所が多い。しかし、水の透明度は関東近郊の海水浴場ではピカイチで、スノーケリングや磯遊びを目当てに訪れる人も大勢いる。

 浜ごとに地形や環境、客層が違う難しいコンディションで、夏季パトロールの中心となっているのが国士舘、順天堂、帝京、成蹊、成城、杏林、実践女子、東女体、日女体などに通う34人の学生ライフセーバーたち。
 そこに社会人ライフセーバーが合流し、メンバー一丸となって活動している。

 東京近郊をベースにするライフセーバーたちが一夏を過ごすのが、宿舎として提供されている田子地区の旧田子中学校だ。統合により廃校となった校舎の一部を借り受けているため、スペースには余裕がある。女子部屋と男子部屋はもちろん別々。畳をひいた教室には冷房も完備されている。男子部屋は元音楽室ということでオルガンまであった。台所兼食堂は元家庭科室、元理科室はトランシーバーなどの機材を手入れしたり、FAキットの準備をする作業場として利用。
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 さらに、今年はメンバーの一人が自宅からトレーニングマシーンを持ち込み(宅配便の費用は男子部員の割り勘)、トレーニングルームも作ったそうだ。夜中にトイレへ行くのはちょっと怖そうだが、廊下を走っても注意されないし、体育館で球技大会もできるというから、きっと楽しい合宿生活をおくっているのだろう。
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 ところで、今年は全国各地で豪雨による災害が発生しているが、ここ西伊豆町でも夏休み直前の7月18日に豪雨による土砂崩れが発生。人的被害はなかったものの、200戸近い家屋が床上・床下浸水に見舞われ、また大量の土砂が町内を流れる川を経由して海へと流れ出した。そのため夏休み前半は多くの海水浴場で水が濁り、海水浴客の人数も例年より少なめだった。

 ちなみに、宿舎である旧田子中学校の校庭が土砂の一時置き場となったため、クラブメンバーも交代制で毎朝、パトロールに行く前に土砂の片付けをおこなった。


黄金崎クリスタルパーク海水浴場

 西伊豆LSCがパトロールする浜の一つ、黄金崎クリスタルパーク海水浴場は、西伊豆町宇久須地区にある海浜公園内にある海水浴場。公園内にはガラスミュージアムやキャンプ場もあり、夕日スポットとしても知られる場所だ。
 
 駐車場から斜面を下りたところに、岩場に囲まれた入り江がある。その中央付近が海水浴場で全長は約100m。波は穏やかだがゴロタ石の浜なので、浜辺を歩いて監視するビーチパトロールではなく、レスキューチューブを持って水の中で監視するチューブパトロールや、ボードで沖から監視するボードパトロール中心のガードをおこなっている。

LSweb 入り江へのアクセスは一カ所しかないため、そこに監視タワーを設置すれば人の出入りがしっかり把握できる。そのタワーに陣取るのが、今年、黄金崎のキャプテンを務める国士舘大学3年の小西川真凜さんだ

「浜を訪れたすべての人に声をかけられるのが、ここの特徴です。こんにちは! という挨拶と同時に、“今日は潮がこう流れています” “磯場の向こう側は死角になるので注意してください” などと伝えることができますよね。ライフセーバーがいると知っていてくれれば、何かあった時の対応が違います。“今日はどこで魚が見えますか?” など、お客さんのほうから声をかけられることも多いのですよ」

 遊泳エリアの外側には、スノーケルにぴったりの場所も点在する。

「私だって、魚がいれば見たいと思いますし、磯遊びの楽しさも知っています。だから海が荒れて本当に危ない状況でなければ、ダメとはいいたくないのです。だからこそ、声かけは大事だと思っています。これは今年から私が始めたことなのですが、ディズニーランド方式で、お客さんはゲスト、声かけはトークと言うようにしています。右手の岩はビックサンダーマウンテン、その手前の岩は富士山と呼んでいます。形が似ているでしょう? 楽しく、安全に! をモットーに活動しています」

 波打ち際から近い場所で魚を見ることができれば、それ以上沖には行かないという考えから、魚の餌付けもしているそうだ。これも、楽しく安全に遊んでもらうための工夫だろう。またゴロタ石の浜という特徴を活かし、石を持って海底を歩くロックトレーニングも行っているとか。海底の地形や生き物の動向も分かり、まさに一石二鳥というわけだ。
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乗浜海水浴場

LSweb 西伊豆LSCでは、3年生がキャプテンとして一つの浜に固定で入り、2年生は補佐役としていくつかの浜を担当、1年生はすべての浜を回っていろいろなパトロール方法を学ぶ方式を採用している。

 遊覧船ツアーが人気の堂ヶ島公園の南側に位置する乗浜海水浴場は、点在する小島の内側に広がる波静かな砂浜の海水浴場だ。西伊豆LSCが監視する海水浴場の中では、大浜海水浴場と並び最も海水浴客の多い浜でもある。今年、この浜のキャプテンを務めているのが日本女子体育大学3年の菱沼亜彩さんだ。

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「乗浜は台風の時でも波高がヒザからモモぐらいにしかならない、本当に穏やかな浜です。西伊豆の中では数少ない砂浜ということもあり、また回りに民宿や旅館が多いこともあって家族連れが多いビーチですね。ただ、海が穏やかだからか、一人の保護者が複数の子どもを見ていることが多い浜なのです。でも急に深くなる地形なので、はやり注意は必要。声かけもしつつ、注意しすぎるのではなく見守るような監視を心がけています」

 浜の西側には磯場もある。また海岸線を巡るシーカヤックなどが遊泳エリア近くまで接近することもあるそうだ。

「磯場には死角があるので気をつかいます。でもビーチから死角になっているところのほうが水がきれいで、魚などもたくさんいるので、誰だってそちらへ行きたくなりますよね。その磯場側からシーカヤックなどが湾内に入ってくることが多いので、レスキューボードで巡回しながら磯遊びのお客さんと、マリンスポーツを楽しむ人の両方に声かけをしています。
 それから、西伊豆は役場の人がとても協力的で、例えばエリア内での火気使用は禁止ですが、守ってくれないお客さんがいるとしますね。そういう時には役場の人が日に何度も足を運んで対応してくれます」
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 堂ヶ島といえば、西伊豆屈指の夕日スポット。1日の監視が終わり、小島が赤く染まって、やがてシルエットになる時間はライフセーバーたちにとっても心休まる瞬間だろう。ところが、その前には気の抜けない時間帯がある。

「午後になって日が傾いてくると、逆光がすごくて大変。本当に見えないのです。だから午後になると、必ず一人はレスキューボードで沖からパトロールするようにしています。沖からなら順光ですからね。お盆の時など遊泳客が多い時は、ずっとボードで出っぱなしになり、体力的には厳しいと思いますが、私はクラブの浜の中ではノリ(乗浜)が一番好きですね」

 というキャプテンの横で「僕は浮島が一番好き」と言い、キャプテンにちょっと睨まれてしまったのが、杏林大学2年生の毛利圭汰さんだ。
 
 LSweb浮島海水浴場と、田子瀬浜海水浴場は今年から新たに監視することになった浜。最初は“お手並み拝見”という感じだった地元の人も、“ライフセーバーは注意するからうるさいな”と思っていた海水浴客も、今では彼らの活動を認めてくれ親しく接してくれるそうだ。

 この2つの浜は宿舎からも近い。廃校となった中学校から、自転車を漕いで毎朝やってくる、元気で礼儀正しいライフセーバーたちは、若者が少なくなった町に活気も運んでいる。地元の人が好意を持つのは、ある意味当然のことだろう。

西伊豆で夏を過ごしたライフセーバーの皆さん、西伊豆は決して交通の便が良い場所とは言えないけれど、夏が終わっても、大学を卒業しても、美しい夕日と地元の人に会いに西伊豆へ足を運んでほしい。










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