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海食快潮!
ライフセーバーのための食事学①
2015/08/07

Food and nutrition for Lifesaver①

LSwebパトロールシーズン真っ盛りだが、ライフセーバーの皆さんは連日の猛暑で夏バテしていないだろうか?

夏バテすると食事がのどを通りにくくなる。でもガードは体力勝負。これからピークシーズンを迎えるライフセーバーにとって、元気でしっかり活動するためには、きちんとした食事を取ることが大切だ。

そこでライフセーバーであり、管理栄養士でもある館山サーフライフセービングクラブの篠田敦子さんに、ライフセーバー向けの食事方法を伝授してもらうことにした。

題して「海食快潮!」

海で活動するために知っておきたい食事学の知識を身につけ、快適に潮(波)に乗ろう! ということで短期集中連載をスタートしよう。(LSweb編集室)

文=篠田敦子(館山SLSC)




食べものが身体を作る!

 皆さんご存知の通り、身体は食べたものでできている。

LSweb ライフセーバーも、ハイパフォーマンスチーム(HPT)のメンバーも、いつもお世話になる地元の人たちも、皆、食べたもので身体が作り上げられていく。

「皆さんは、昨日何を食べましたか? 一昨日何を食べましたか?」

 もう一回言おう。身体は食べたものでできているのだ。素早く走る脚は、数か月前に食べた肉、力強くパドリングする上半身は羽が生えた鶏肉かもしれない。

 では、何のために食べるのだろうか?
 
 毎日トレーニングでよく体を動かしているメンバーもいれば、就職活動でもどかしい思いをしている大学生もいるかもしれない。

 皆さんの食べたものは、よく噛むことや胃の働きで分解・消化され、小腸から吸収されて、肝臓でエネルギーに代謝される。ここで初めて食べたものがエネルギーになる。エネルギーは皆さんの元気を生みだすものだ。

 5大栄養素という言葉を聞いたことがあるだろうか。LSwebベーシックライフセーバー資格を所有されている人は講習で習ったはずなのだが、食べ物の中でエネルギーを発するのは糖質(≒炭水化物)、タンパク質(肉・魚・卵・大豆製品)、脂質(油と脂)の3つの栄養素だけ。その他のビタミンやミネラルはエネルギーを持たず、からだの調子を整えたり、エネルギーを作り出す手助けをしている。

 糖質、タンパク質、脂質は、唾液や胃から出される消化酵素の働きにより細かく消化され、小腸で吸収されたのちに肝臓でエネルギーの直接的なもとになるグリコーゲンにつくりかえられる。これを代謝という。その過程で、ビタミンやミネラルが必要になるのだ。

 ビタミンやミネラルの多くは、各種野菜やきのこ類、海藻類、丸ごと食べられるような小魚や小エビにふくまれている。

 「おにぎりだけ」や、「肉だけ」では、エネルギー摂取できていても、身体の中でうまくつくりかえることができず、結果として疲れがうまく取れなかったり、内臓が疲れてしまったりする。

 プロテインなどのサプリメントを購入しているライフセーバーもいるかもしれない。しかし、サプリメントは補助食品だ。基本になる食事がおろそかになっては元も子もない。

 猛暑が続く毎日。多くのライフセーバーが、監視活動やトレーニングなどをこなしながら、日々の生活を送っているはずだ。それなのに昼食は「コンビニのおにぎり2個だけ」という話もちらほら聞く。

 これで皆さんのライフセービング活動はつとまるだろうか? しつこいようだが、もう一度言おう。身体を作っているのは食べものである。

 日頃の活動をより充実したものにするためにも、この夏は食べ物を見直してほしい。そのヒントをこれから数回に分けて紹介していこう。



    
 
[プロフィール]
篠田敦子(しのだ あつこ)

LSwebJLA公認サーフインストラクター 館山SLSC所属
元ライフセービング世界大会日本代表(2000シドニー大会)
管理栄養士/健康運動指導士

東海大学体育学部入学とともにライフセービングを始め、湘南校舎(CREST)在学時は、神奈川県内の海水浴場やプールでパトロール活動を行う。
現在は館山SLSCのメンバーとして、夏期のパトロール活動のほかトライアスロンやオープンウォータースイムのガード、小中学生へのライフセービングプログラムにも携わり、水にかかわる多くの人が、安全に楽しく活動できるよう努めている。東海大学卒業後、栄養士の専門学校に再入学。その後管理栄養士に合格し現在に至る。


 
    





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ライフセーバーのための気象予報講座③2015/08/03

Weather Information for Lifesavers③

LSweb学生ライフセーバーも一斉に海へと向かう8月。

それにしても、今年の夏は先に発表された
「それほど暑くならない」という長期予報とは裏腹に
全国的な猛暑、酷暑に見舞われている。

なんでこんなに暑いの!?
という疑問の答えは、実は天気図の中にある。

ライフセーバーであり気象予報士でもある
九十九里LSC所属の松永 祐さんによる好評連載
「ライフセーバーのための気象予報講座」
3回目は天気図の見方について解説してもらおう。(LSweb編集室)


文・写真=松永 祐(九十九里LSC/サーフ90鎌倉LSC)






LSweb 久しぶりにこの記事を読んだ皆さん、また空を見てみよう。今日はどんな空の色で、どんな雲が浮いているだろうか。

 前回の記事で、
・雲は空気を冷やせばできる
・空気を冷やすには、その空気を寒いところに持っていくか、空高く持ち上げればよい
 ということがわかった。

 では、いつ、どこでこのような空気の動きが発生し、雲を作るのだろうか。

 遠く思いをはせる地の空はどのようになっているだろうか。そこで「天気図」の出番である。

 さすがに皆さんどこかで見たことがあるだろう。そう、あのぐるぐるした線がたくさん書かれている地図だ。

 今回はそこに描かれる主要な役者たちを紹介しよう。この役者たちが、空気を縦に、横に移動させ、雲を作ったり消したりするのだ。

 実はこれ、サーフライフセービング教本にも記述があり、講習会で習っているはず……なのはここだけの話しだ。

気圧って何だ?

165412 また難しいところから……と思うかもしれないが、海水浴場のコンディションを大きく左右する風と切っても切れない関係なのが、この「気圧」である。省略しないで言うと「空気の圧力」となる。

 標高が低い低地では、人差し指の爪の上(1㎠あたり)に1kgの重りが乗っているのと同じ「1気圧」という大きさの気圧がかかっている。

 しかし、皆さんは普段、この圧力を感じることはないだろう。生物はこの圧力に適応して数億年間にもわたりゆっくりと進化してきたからだ。

 水の中に入ると、もっとよくわかる。深く潜れば潜るほど、耳がキーンとして肺が押される。これは体の上に乗っている水が増えることで体が押さえつけられているのだ。これが、水圧である。上にたくさん水があって、押される力が強いほど、「水圧が高い」ということになる。

 このイメージのまま、海底を地面、水面を宇宙に置き換えたものが、今私たちが生活している空間である。

天気図に書いてあること

天気図a 「天気図」といっても、晴れとか雨とか書いてないじゃないか! と思う人が多いかもしれない。確かに天気図には、どこが晴れるか、どこで雨が降るかなんていうことは一切書いていない。

 その代わり、「高」とか「低」とか、線とか数字が地図に書き込まれている。天気の図とはいえども、ここには気圧の分布しか書いていないのだ。

 そして皆さんがよく見るこの天気図は、地上(標高ゼロメートル)のものである。たったこれだけの情報をもとに、皆さんは晴れとか雨とかの天気を推測していかなければならない。
 つまり、天気図とは“天気を推測する図”とするのがより正確な言い方なのだ。

 やっぱり難しいよーと思っても、諦めるのはまだ早い! 連載の2回目とこの図を合体させると、天気図の中に晴れマークや雨マークが描けてくる。

天気図の2トップ・高気圧と低気圧

LSweb 高気圧と低気圧。この言葉を聞いたことのない人はいないと思う。

 高気圧とは、周囲に比べて地上で気圧が高い部分である。さきほどの水圧と同じように、周囲よりも上からぎゅっと空気が押し込まれているのだ。さしずめ朝の満員電車のように。

 こんなに混んでいるところには居られないよ! と思ったあなたはどうするだろうか。地面を掘って逃げるわけにもいかず、空高く舞うこともせず、ドアが開いたら横方向に動きホームに降りるだろう。

 詰め込まれた空気も一緒で、横方向に移動する。電車は人が降りたら空いてしまうが、空気はまだ空高くにたくさんあるため、減った分は上から空気が補充される。そうするとまたギュッと詰め込まれて、あふれた空気が横に広がっていく……この繰り返しが高気圧である。

 空気は縦にも横にも動く。連載2回目のおさらいによれば、確か、地上のほうが上空より気温が暖かかったはずだ。空の高いところから降りてきた空気は、地上付近で暖まるため、雲はできない。つまり、高気圧があるところには晴れマークが描けるのだ。

 低気圧はどうだろうか。高気圧の逆で気圧が低い、つまり空気が少ないところである。LSweb少ないから補充しないと! ということで、周囲の空気が低気圧に呼び寄せられる。ただ、少ないのは地上だけではなく、その上空でも不足している。呼び寄せられた空気は、上空の空気の補充にも使われる。その分、また地上に空気を補充して……という繰り返しだ。

 地上の空気が空高くに上がっていくのだから、温度が冷えて雲ができる。つまり、天気が悪いのだ。正確には、低気圧は単なる空気が吸い込まれていくものではなく、場所によって気象状況は大きく異なる。この低気圧の細かな性格は、定期的に低気圧が来る秋に勉強することにしよう。

 このようにして発生する高気圧から吹き出す空気や、低気圧に向かう空気のことを、皆さんは「風」として認識している。

 では、いつどのようにして空気が足りなくなるのか? と思う人もいるかもしれない。実際は、地球レベルの熱収支から地形分布までいろいろな原因があり、それに誘発されるさまざまな空気の循環が存在する。それはまた機会があったら説明しよう。

風はまっすぐに進まない

LSweb さて、地上で高気圧から吹き出した風は、そのまま低気圧に向かうのだろうか。実は違う。

 皆さんは湯船の栓を抜いたときに、排水口に渦ができるのを見たことがあるはずだ。まっすぐ進んで落ちればいいのに、と思うかもしれないが、ぐるぐると渦を巻いて排水口へ向かう。

 これは地球が自転しているため、進路を右へ曲げる力が働いているように見え、渦になるといわれている(湯船の問題は、実際は様々な細かい現象が重なり、奥深い現象のようである)。

 これと似たように、高気圧から吹き出された風はどんどん右に曲がり、結果的に高気圧の周りでは時計回りの回転をする。

LSweb 低気圧に吹き込む風に対しても、まっすぐ吹き込みたいのに右に曲げられた結果、風は反時計回りの回転をする。高気圧も低気圧も、大きな渦巻きなのだ。

 よくどっち回りだっけ? とあやふやになる人がいる。オーシャン競技のレースのブイを右に曲がるのと同じで、風も右に曲がると覚えておこう!

 高気圧から吹き出して右に曲がれば時計回り、低気圧に吹き込もうとして右に回れば反時計回りになる。

 ここで、天気図のもう1つの役者であるぐにゃぐにゃした線を見てみよう。

 これは「等圧線」と呼ばれ、同じ気圧の部分を線で結んだものである。右に曲げられた風は、この線に沿って吹くと思ってよい。この線は風の向きも表しているのだ。そして、この線の間隔が近いほど、気圧の差、つまり空気の量の差が大きく、強い風が吹く。

日本付近では西から東へ

 高気圧や低気圧は、どこから来てどこに向かうのだろうか。そのカギは「ジェット気流」と呼ばれる、飛行機が飛ぶ上空10kmくらいの高さに吹く強い西風だ。低気圧や高気圧はジェット気流に乗って日本上空にやって来る。

「夕焼けは(翌日)晴れ」というのは、日が沈む西側に高気圧により雲がないエリアが広がっていて、翌日はその高気圧が頭上に来ることを表している。


LSweb 今年も夏が来た。

 皆さんライフセーバーの出番である。連日の猛暑で体力的に厳しい日々だが、今週末の天気はどうだろう? と心配になったら、天気図を見てみよう。

 天気図が読めるようになれば、しばらく晴れが続くのか、雲が出て少しは過ごしやすくなるのかわかるはずだ。

 次回はライフセーバーなら絶対に知っておきたい「雷」について解説しよう。

*一部、現象を簡略化して説明しています。


    
 
[プロフィール]

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松永 祐(まつなが・ゆう)

九十九里LSC/サーフ90鎌倉LSC所属のライフセーバー。

大学4年時の2005年に気象予報士資格(第5292号)を取得。
海洋研究開発機構(JAMSTEC)に勤める海のエキスパートであり、競技会を支える安全課のメンバーの一人でもある。


 
    





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ライフセーバーのための気象予報講座②2015/07/07

Weather Information for Lifesavers②

LSweb7月は海開きのシーズン。

全国各地で順次、海水浴場がオープンする。こうなると気になるのがお天気だ。

しかし、梅雨明けした沖縄地方をのぞき、全国的に梅雨本番の天候が続いている。

今年の梅雨明けはいつ頃になるのかな?

ライフセーバーであり気象予報士でもある九十九里LSC所属の松永 祐さんによる好評連載、「ライフセーバーのための気象予報講座」の2回目は雨を降らせる雲について。
(LSweb編集室)

文・写真=松永 祐(九十九里LSC/サーフ90鎌倉LSC)




上を向いて歩こう

LSweb 今、この記事を読んでいるあなたは、パソコンのモニターやスマホの画面を眺めているはずだ。

 スマホの普及に先行き不透明な世の中が重なり、目線が下向きになりがちな昨今だが、少し意識をして顔を上げてみよう。

 ビルの間や窓の外に少しでも空が見えていないだろうか。そしてその空には、どのような雲があるだろうか。

 すがすがしい青空にクジラ、わたあめ……と楽しみながら雲の形を観察できる日はまだいい。

 しとしと雨が降る日、どんよりとした日、ジリジリと太陽が照りつけている日などは、気分も下向きかもしれないが、そんな日にも顔を上げて空を見てみよう。

 そのたびに違った形の雲ができているはずだ。

クジラさん、なぜそこに居るのかね?

 なぜ、空にクジラみたいな雲があるのか。そこにはしっかりとした理由がある。

 雲の材料は小さな水滴である。いろいろな条件によって、そこに小さな小さな水滴が集まり、地上から見ると白い雲に見えているのだ。weather02

 水滴の直径は大きいもので0.01ミリメートル程度といわれている。この小さな水滴の集まりの中に入ると、遠くが見えず自分の周りが真っ白になり、人間は「霧」として認識することになる。

 しかし、日常生活でこのような小さな水滴(霧)に取り囲まれたことは、そう頻繁にはないだろう。クジラやわたあめのような雲を頭の上に浮かべるためには、何も見えないところからこの小さな水滴を作らなければならない。

 ではどうやって小さな水滴を作るか?
 キーワードは、「空気を冷やす」だ。

温度と水の切っても切れない関係性

 まず、雲の材料である水の性質を見てみよう。LSweb

 小学校や中学校の時に「水」は固体・液体・気体の3種類に化けることを習っただろう。液体の水は皆さんが活動するメインフィールドにたくさんあるので簡単にイメージできるはずだ。

 では、気体の水はどのような状態なのだろうか? こんな視点で見てみよう。

「水」は水素(H)と酸素(O)から構成された水分子(H2O)というものからできている。

 水分子の大きさは0.00000038ミリメートル。んーーー小さいっ! 見えない!

 これが単独かつ高速で空気中を自由に飛び回っている。飛び回るスピードも速すぎて見えない! これが「気体の水」である。

 皆さんを取り囲んでいる「空気」と呼ばれているものも、同じように酸素や窒素の目に見えないくらい小さな分子が飛び回っているのだ。
 元気に飛び回っていられるのは、たくさんのエネルギーがある、つまり温度が高いためだ。

 この温度が高い(暖かい)空気を冷やすと、エネルギー不足により一部の水分子が飛び回れなくなり、くっつき始める。

 飛び回れない水分子がたくさんくっついて目に見えるようになったものが液体の水である。

 温度が低ければ低いほど、元気に飛び回れる水分子は減り、液体の水がたくさん現れる。こうしてできた液体の水がぷかぷかと空を漂っていると雲として見えるわけだ。

 つまり、温度が高いほど空気には“気体の水”が多く含まれ、低いほど少ない。LSweb

 そういえば、人間も同じかもしれない。

 10月頃まではたくさんのライフセーバーが元気に砂浜を走り回っていたが、気温が下がるにつれ寒がりの人から順に体の動きが鈍るとともに、元気に海に入る人数がどんどん減る。さらに寒くなるクリスマス頃には、誰かとくっつきたくなる。

 走り回るライフセーバーが気体で、動きが鈍くなりくっついてしまった人が水滴で、その水滴がクリスマス・イルミネーションの下にたくさん集まったのが雲……というわけだ。

空気は上下にも動く

080274a 空気を冷やせば、雲ができることはわかった。ではどうやって冷やそうか。

 地球は主に2つの方法で雲を作る。

 1つ目は、寒いところに暖かい空気を横移動させればよい。

 九州のジメジメ蒸し蒸しした空気を袋に入れて電車で運び、北海道最北端の稚内まで持って行けば、雲ができる(実際には袋の内側がびしょびしょになるだけだが)。

 冬、窓ガラスに向けて息を吹きかけると窓ガラスが曇るのも同じ原理だ。
 
 体温で36°Cに暖められた湿気の多い空気が、窓ガラスに触れた瞬間に0°C程度まで冷えて、液体の水(雲の水滴)が出てくる。しかし、これでは頭の上にクジラやわたあめを浮かべることはできない。

 2つ目の方法は、手元にある空気を高い所に持って行く方法だ。

 夏に山に登ると、風が涼しくて気持ちいいと感じる。標高が高い山の上は、皆さんが住んでいる平地よりも気温が低い。同じように、空も高いところほど気温が低いのだ(気温が低い理由はいくつかあるが、ここでは省略)。

LSweb 手元の空気を空高くに持って行く。そうすれば、さきほどの水の変化により頭の上にクジラを作ることができる。

 しかし空気を空高く持って行くためには、エレベーターもクレーンも使えない。そこで地球が使ったのは「熱」である。

 例えば、カップラーメンにアツアツのお湯を注ぐと、湯気がもくもくと上がるだろう。バーベキューをした時も、炎や火の粉が上へ上へと舞い上がっているのも見たことがあるはずだ。

 これは空気が暖められ、上昇する流れに火の粉が混じっているのだ。逆に、クーラーの冷気が足元から来るように、冷たい空気は下へ下へと向かおうとする。

 ライフセーバーの皆さんは、パトロールログに「南風」とか「西風」と書いていると思うが、これは横方向の空気の動き。

 これに加え、まわりより暖かい空気が空高くに上昇し、温度が下がり、水滴ができるという縦方向の動きよって雲が作られているのだ。


 空気はさまざまな動きをする。では、どこでどのように動くのか。さらにこの梅雨のどんよりした雲はいつまであるのか、台風はどれだけ強まっているのか。頭の上だけではなくもっと広い視点でこれを読み取ってみよう。

 これが読み取れるようになれば、おのずと天気の変化も分かるようになる。空気の動きを読み取る材料のひとつが「天気図」だ。次回はいよいよ天気図の出番である。

 その前に……もう一度空を見てみよう。この記事を読み始める前と何か変化はないだろうか?
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[プロフィール]

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松永 祐(まつなが・ゆう)

九十九里LSC/サーフ90鎌倉LSC所属のライフセーバー。

大学4年時の2005年に気象予報士資格(第5292号)を取得。
海洋研究開発機構(JAMSTEC)に勤める海のエキスパートであり、競技会を支える安全課のメンバーの一人でもある。


 
    





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オーシャンフェスタ館山、盛大に開催!
ハワイ行きのチケットを手にしたのは?
2015/06/26

OCEAN+FEST TATEYAMA 2015.6.20-21

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大人も子どもも、男性も女性も、エキスパートもビギナーも、誰もが楽しめるイベントとしてすっかり定着した「OCEAN+FESTA TATEYAMA」が、今年も千葉県館山市の北条海岸で開催された。

爽やかに晴れ上がった初日は一般の部、少し肌寒い天気となった二日目はエリートの部が行われ、今年も豪華賞品をかけた熱くて楽しいバトルが繰り広げられたのだった。

当日の模様を、館山サーフクラブの佐藤和伯さんのレポートでお届けしよう。(LSweb編集室)

文・写真=佐藤和伯(館山SC)





30チームが参加した、アウトリガーカヌー

LSweb 去る6月20、21日、千葉県館山市北条海岸にて「OCEAN+FEST TATEYAMA」が大盛況のなか幕を閉じた。

 今年9回目を迎え、年々盛り上がりを見せているこのイベントには、2日間で700人を超える参加者が集まってくれた。

イベント内容は大きく分けて以下の3つ。

・キッズプログラム(体験会&ファンレース)
・一般レース
・エリートチームレース

 この中で最近大人気なのがキッズプログラムだ。

 数年前から、子どもたちにチャレンジの場を提供しているNPO法人「キッズ・セーバー」とコラボレーションすることで、年々、参加者が増え規模が拡大している。

 キッズプログラムでは、ライフセービング体験会を行い、その後にレースを行うのだが、はじめは「砂がつくのが嫌」とか、「水がしょっぱいから海に入りたくない」など話しをしていた子どもたちが、5分も経つと環境に慣れ、笑顔で楽しんでくれる。子どもたちは、やっぱり遊びの天才だと感じる瞬間だ。

 一般レースも近年、参加者が右肩上がり。特に盛り上がりを見せているのがアウトリガーカヌーだ(今イベントでは4人乗りを使用)。
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 アウトリガーカヌーは初心者でも簡単に乗れるが、実は非常に奥が深く、漕ぎ手の息がピッタリ合わないと進まない、チームワークが鍵を握る競技である。

 今年は過去最高の30チーム以上がエントリー。
 その頂点に立ったのは「チーム豊田組」で、二連覇を達成した。豊田組のメンバーは、ドラゴンボートレースなどで日本一を経験しているパドルのスペシャリスト。息の合ったさすがの漕ぎを見せて優勝を果たした。

 そして2位に入ったのが、館山SCのジュニアママたち!
 ママというから、当然パドラーは全員女性で、数年前から練習を重ねての快挙は本当にすごかった。対象的な2チームが優勝、準優勝というのもこの競技の魅力である。

 他にも現役力士の大岩戸関が参加したビーチ相撲や、ビーチ綱引き、SUPなど盛り沢山のプログラムで、各レースそれぞれで熱いドラマが生まれた。
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Team za+costes優勝!

 2日目はエリートチームレースの「OCEAN+Z9」を開催。
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 これは、4人1チーム(男3人女1人)でオリジナル種目を含めた5レースを戦い、総合優勝を決めるチームレースだ。

LSweb 参加チームの顔ぶれは、大学カヌー日本代表、ライフセービング日本代表、スイムのスペシャリスト集団など、実力派揃いのトップアスリートばかり。その中で頂点に立ったのは、三井結里花選手、西山 俊選手、久保亮介選手、そして飯沼誠司選手がチームを組んだ「za+costes」だった!

 優勝チームには、特別協賛のフランシストモークス様からチーム全員へのハワイチケットをはじめとした豪華賞品、さらには館山知事杯が贈られた。

 2日目にはキッズレースも行われ、大人顔負けの白熱したレースが繰り広げられた。

 キッズレースでは、子どもたちだけでなく保護者も含め会場全体が一つになるような、感動的なシーンをいくつも目にすることができた。
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 イベントを重ねるごとに人との繋がりができ、笑顔の輪が広がることを実感するOCEAN+FEST TATEYAMA。

 いつも多大なるご支援を頂いている、館山市役所、協賛会社、ボランティアスタッフ皆様、本当にありがとうございます。

 来年は10周年記念イベントとなるので、更に多くの方に館山を訪れてもらい、楽しんでもらえるようにパワーアップしますので、ご期待ください (^^)

 関係した全ての皆様に感謝です、ありがとうございました\(^o^)/。。。
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ライフセーバーのための気象予報講座①2015/06/11

Weather Information for Lifesavers

LSwebライフセーバーにとって、明日の天気は常に気になるものだ。

夏季のパトロール期間中はもちろんだが、普段の日だって快晴で良い波が立っていると聞けば、授業中だろうが、仕事中だろうが、ソワソワしてしまう。

この状態は明日まで続いてくれるのだろうか?

こっそりスマホのアプリを起動しチェックした経験、アナタにもあるのではないだろうか。

ライフセービングと天気予報は切っても切れない関係なのである。

そこで、ライフセーバーであり気象予報士でもある九十九里LSC所属の松永 祐さんから、ライフセーバーならぜひとも知っておきたい、気象に関する基礎知識を解説してもらおう。

ライフセービング活動に役立つ情報満載!である。(LSweb編集室)

文・写真=松永 祐(九十九里LSC/
サーフ90鎌倉LSC)




君も“ローカル”になろう!

LSweb 「IRBは空を飛べるかね?」
 
 競技会が近づくと、随所からこのような趣旨のメッセージが私のところに届く。

 この暗号のようなメッセージを送ってくるのは、一部の競技会主催者であるが、海を相手にするライフセービング活動に関わっていれば、競技会だけでなく、監視活動、練習等で、当日のコンディションがどうなるか知りたいと思うのは皆同じのはずだ。

 天気予報は気象予報士が難しい計算をして天気図を作り、発信していると思うかもしれないが、そのような“難しいところ”を抜きにしても、いくつかのツボを押さえれば、だれでもある程度は予測できるようになるのだ。

 今回から数回にわたってみんなで予測できるようにしてみよう。

天気予報の仕組み

LSweb そもそも、毎日見る天気予報はどのようにしてできているのだろうか。

 コンピューターがない時代は、「観望天気」といって空や生物の動きの変化を見て、明日は晴れるのか、雨が降るのかを予想していた。

 「月に暈(かさ)がかかると雨か曇り」といった言い伝えなど、いくつか聞いたことがあるだろう。

 コンピューターが発達し始めると、気温や湿度といった空気の状態を数値化し、その動きを計算すること(シミュレーション)により、将来の予測をするようになった。

 ただ、最初の頃は今より断然コンピューターの性能が悪かったので、数百km単位の予測しかできなかったようだ。
 イメージとしては、東京の気温と大阪の気温の予想はできるけれども、その間の名古屋や静岡や横浜の気温はわからない、といった粗っぽさだ。

 近年では「スーパーコンピューター」という、個人のパソコンとは比べ物にならないほど大量の計算をするコンピューターが発達し、沢山の計算をすることによってどんどん細かい情報を出せるようになった。

LSweb 皆さんがよく気にする「明日の天気」の予報は、気象庁のスーパーコンピューターが5km毎の空気の状態(温度、湿度、風向、風速はどうなっているか)をシミュレーションし、その結果描かれた天気図を基に発表されているのだ。

 5km毎の状態がわかると、例えば東京駅と羽田空港のコンディションの違いはしっかりと把握できる(実際に大きく異なる)。

 さらに、今年の7月11日からは、気象衛星も新しいものに切り替わり、天気予報でよく見る雲の画像が2km毎の解像度になるなど、より正確な天気予報ができるように、さまざまな取組が進められている。

 ただ、「5km」や「2km」と聞いて、ライフセーバーの皆さんは違和感がないだろうか。

天気図と海水浴場のギャップ

LSweb 多くの気象予報士は、このようにしてできた天気図や気象衛星の画像等を基に、明日や明後日の天気を予想する。もちろん、皆さんが目にする天気図以外にも、空高いところの天気図といった専門的な天気図も参考にしている。

 その結果が、テレビの天気予報番組であり、スマホで見る天気予報コンテンツとなるわけだ。

 ところで、その天気予報に皆さんが監視や練習をする海水浴場ごと、あるいは競技会会場といったピンポイントの情報はあるだろうか。

 実は今の気象庁のスーパーコンピューターでは、そこまで細かいシミュレーションはできないのだ。

 一方、ライフセーバーの活動範囲はどうだろうか。

 競技会であれば、幅75m程度、沖へ膝の深さから最大316m。海水浴場も横幅1kmもないところが多いのではないだろうか。

 ライフセーバーの皆さんはその規模のエリアの中で、毎日の波や風、陽射しや気温の変化に臨機応変に対応していかなければならないのだ。気象庁が発表する天気予報と、ライフセーバーの活動範囲はスケールがまったく違うといっていいのだ。

じゃあ誰が海水浴場の予報をする?

 ここまで読めばお気づきかもしれないが、海水浴場に適した予報ができるのは、毎日海を見ているライフセーバーの皆さんしかいないのだ。

 いくら気象学の知識がある気象予報士がいたとしても、現場の風景(地理や地形)を知らない人には、ビーチの管理に必要な現場レベルの予報はできない。裏山への風の微妙な当たり具合で風向が変化したり、波打ち際の地形によって波の崩れ方が変わったりするのだから。

LSweb むしろ、ライフセーバーの皆さんには「天気予報」ではなく「風景予報」ができるようになってほしい。

 晴れ、曇り、波がある、程度ではなく、陽射しで砂浜はまぶしいのか、海面がどの程度ザワついていて、人が入ったらどの程度流されて、エリアフラッグがどの程度風になびいていて……といった具合に。

 できれば、数時間後のものではなく、明日・明後日の風景を。そうすれば、さらに状況を先読みして、状況の変化に対応できるはずである。このような現場レベルの予報はオフィスにいる気象予報士ではまずできない。

 だから天気においても、広範囲の予報から現場レベルの予報へと、気象予報士からライフセーバーへの「予報のリレー」ができたらいいなと思っている。これを読んだあなたにはぜひ、このリレーに加わってほしい。

 みなさんが夏に活動をする海水浴場の近くには、波に詳しい通称“ローカル”という人たちや地元の漁師さんがいるだろう。やたらとイイ波を当てるこの人たちは、このリレーが自分でできているのだ。

 では、どのようにして自分の海水浴場の予報をすればよいのだろうか。次回から、そのポイントを順番にご説明しよう。

    
  [プロフィール]

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松永 祐(まつなが・ゆう)

九十九里LSC/サーフ90鎌倉LSC所属のライフセーバー。

大学4年時の2005年に気象予報士資格(第5292号)を取得。
海洋研究開発機構(JAMSTEC)に勤める海のスペシャリストであり、競技会を支える安全課のメンバーの一人でもある。

 
    










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