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2012夏 パトロール浜訪問
和田浦海水浴場
2012/09/14

快水浴場百選に選ばれた
磯遊びも楽しめるファミリービーチ

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千葉県南房総市にある和田浦海水浴場は、
環境省による快水浴場百選にも選ばれた
風向明媚な場所だ。
太平洋に面しているが、
岩に囲まれたエリアは波も穏やか。
ビーチだけでなく、
磯遊びもできるとあって、
家族連れにも人気が高い。
この浜の安全を長年にわたって見守っているのが、
「和田浦ライフセービングクラブ」の面々。
その母体は日本体育大学ライフセービング部である。

2012-8 千葉県・和田浦海水浴場


文・写真=LSweb編集室





日体大LSCの伝統が受け継がれる浜

 和田浦海水浴場が選ばれた快水浴場百選とは、2006年に全国各地にある海水浴場の中から、環境省が優良と認めた100カ所を選定したものだ。
 選定の基準は、水質が良いこと、水辺が清潔であること、周辺施設や交通アクセスなどの利便性に富むこと、生態系への配慮がなされていること、そして水難事故に対する対策がなされていること、となっている。つまり、和田浦海水浴場は景観が美しいだけでなく、安全なビーチであると環境省から認められたわけなのだ。
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 今年、この浜の警備長を務めたのが日体大LSC26期にあたる4年生の佐藤良太さん。同じく4年生の市川恵理さんも、学生最後の夏を和田浦で過ごした。
 
 「和田浦は日体大LSCの学生ライフセーバーが活動している6浜のうちの1つです。私たちの学校の場合、基本的に1年の時に入った浜で4年間を過ごします。だから私は今年、和田浦4年目です。今年は学生が10人。海水浴期間中は卒業したOB、OGの方たちも顔を出してくれます」
 と市川さん。

 1年生は、先輩たちから各浜のことを教えてもらう「浜調査」と呼ばれる期間を経て、自分が活動したい浜を第1希望から第3希望まで申告。6月中旬までには「浜振り分け」で所属する浜が決定し、夏のパトロールを行うという段取りになっている。
 各浜の警備長は4年生男子が務めるのが日体大LSCの伝統。さらにディレクターという立場でOBが現場を統括している。
 取材時は、5年前に日体大を卒業し、現在は教員として働く21期の松原正阿さんがディレクターを務めていた。
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 「遊泳エリアは岩に囲まれていることもあり波が穏やかですが、遊泳エリア外は良い波が立つことで、サーファーにも知られています。ガードが終われば波のあるコンディションで練習できる、というのも和田浦の魅力ですね」
 と話す松原さん。
 
 和田浦の警備長は代々、背中に「WADA WAVE」のロゴが入ったウォームジャケットを受け継いでいるそうだ。
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岩場が多いのでトランシーバーが大活躍

 「砂浜だけでなく磯遊びもできるため、家族連れが多いのが和田浦の特徴です。リピーターも多いですね。今年も来たよ! と声をかけてくれるお客さんもいるんですよ」
 と言う市川さんは、続いて浜の特徴をこう説明してくれた。

 「海の家は一軒だけ。だからお昼はいつもお世話になっています。沖に岩が点在していますよね。岩と岩の間は波の通り道になっているので、潮の流れが速い場所もあります。また岩場の裏側など、ビーチから死角になる場所も多いので、ガードには神経を使います。それから、トランシーバーをとても良く使う浜だと思います」
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 岩にはそれぞれ名前がある。櫓(やぐら)の下、水揚げ場(みずあげば)、三石、四角、親子、だるま……。呼び名の由来までは聞かなかったが、えりちゃん、と呼ばれる岩もあるそうだ。
 
 和田浦に入った1年生ライフセーバーは、まず岩の名前を覚えることが大事だ。なぜなら、ビーチよりも一段高い場所にあるタワーからは、遊泳エリアの様子が良く見える。例えば、そこから巡回中のライフセーバーに「水揚げ場で磯遊びをしている男の子が裏手に回ろうとしている」と呼びかけたとしよう。岩の名前を覚えていないと迅速に行動が起こせないのだ。
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 「機材の取り扱いがとても厳しい浜、という伝統もあります。細かいことまでうるさく言います。自分が1年の時には、内心、なんて細かいんだろうと思っていましたけれど、今は先輩方の気持ちが良く分かります。
 和田浦で活動する時間が長くなるほど、地元の方とも親しくなり、この浜に愛着が湧きます。そして絶対に事故を起こさない! という気持ちが強くなっていくのです。学生最後の夏、悔いがないように過ごしたいです」
 と、海を見つめる市川さん。

 その横で同じように真剣な表情で浜を見つめるのが唯一の3年生で、来年、警備長になることが決まっている松竹賢太さんだ。
 「先輩たちが守ってきた浜。来年も事故なく、お客さんに楽しんでもらえるようがんばります」
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 和田浦の伝統は、脈々と受け継がれているようだ。





2012夏 パトロール浜訪問
横浜海の公園
2012/09/01

広い砂浜と波静かな海が広がる
横浜市内唯一の海水浴場

東京湾に面した横浜海の公園は、
埋め立て事業の一環として横浜市が整備した人工の海浜公園だ。
園内には運動公園やバーベキュー場、親水広場、
ビーチバレーコート、ウインドサーフィン用の艇庫などがあり、
一年を通して人が集まる市民の憩いの場所。
夏季には、横浜市内唯一の海水浴場もオープンする。
ここで活動するのが「横浜海の公園ライフセービングクラブ」だ。

2012.8 神奈川県・横浜海の公園

文・写真=LSweb編集室





広大な遊泳エリアをカバーするために
監視はバディ制、PWCやIRBもフル活用


 横浜市金沢区にある横浜海の公園は、約1kmにわたって続く人工ビーチが目玉の海浜レジャー拠点。潮干狩りのメッカとしても知られている。東京湾に面してはいるものの、八景島と追浜の埋め立て地の奥に位置しているため、波は常に穏やか。家族連れやグループで遊びに来た人たちも、安心して過ごせる環境を提供している。
 
 千葉県から運んだ砂を入れたビーチは、満潮時でも波打ち際からの幅が60mもあり、大潮の干潮時ともなればその幅が約200mまで広がるそうだ。海水浴期間は毎年7月中旬から8月下旬まで(2012年は7月14日〜8月31日)。シーズン中は、ウインドサーフィンが出入りする南側の一部をのぞき、1kmの砂浜ほぼ全域から、沖き合い約100m付近までが遊泳エリアとなる。
 
 8月の最終土曜日。恒例の金沢祭りと花火大会を目当てに、大勢の人が集まる中、日に焼けたライフセーバーたちが炎天下でのガードを続けていた。横浜海の公園LSCの代表を務める、小関大輔さんに話を聞いた。
「ここの海は通常、ご覧のようにまったく波が立ちません。外海に面した海水浴場ならば、遊泳区域内であっても波が崩れる場所より沖にはなかなか行かないものですが、見た目がプールのようということもあり、ここでは遊泳区域全体に海水浴客が散らばって遊びます。遊泳区域そのものもとても広いということもあり、PWCとIRBは必需品です」
 
 同クラブは現在、PWC(水上オートバイ)とIRB(船外機付きのインフレータブルボート)を各2台導入し、ガードに当たっている。
「浜にいると、遊泳区域ギリギリで泳いでいる人の頭は親指の先ぐらいにしか見えないので、沖のブイと見分けが付かない時もあります。ですから、常に遊泳ブイの際のあたりでPWCとIRBを使った監視を行っています。見落としがないように、タワーでの監視も基本的に2人一組のバディ制を採用しているのですよ」
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 小関さんから話を聞きながら気になったのが、波打ち際に大量に打ち上がっている黄緑色の海草類だ。
「アオサとアマモです。アオサは八景島の沖に根があり、風向きによってちぎれたものがこのエリアに流れてきます。アマモは近年、水質改善のために環境保護団体が植えているものなのです。遊泳エリアの沖に移植しているのですが、最近は遊泳エリア内まで増殖してきているようですね。水質改善という意味では確かに効力があると思います。しかし、海水浴場としては良いことばかりとは言えないこともあるのです」
 と小関さん。LSweb

 例えば、波打ち際に打ち上がったアオサで滑って転んだり、その下に貝殻などがある場合は足を切ったり、また潮が引いている時には水面ギリギリまでアマモが生い茂り、泳ぎに支障をきたすこともあると言う。
「自然のものですから共存しなければいけないのですが、悩ましい存在であることは確かです。PWCやIRBの運転にも気をつかいますしね」


集客人数は海水浴より潮干狩りが多い
4月の第1週から週末のガードを開始


 「横浜海の公園は潮干狩りで有名です。初春の大潮の時には、2万人、3万人と人が集まります。1日の人出は、海水浴シーズンよりも潮干狩りの時のほうが多いのです。遠浅の海ですから、大潮の時には砂浜が広大になります。でも潮が満ちてくるスピードも速いので、貝を掘っていた中州から岸に戻る途中に深くなっている場所があり、そこで足を取られたり、ということが起こります。そこで、4月から週末のボランティアガードを始めているのです」LSweb
 と小関さんは続ける。

 1988年から活動を続ける同クラブのメンバーは100人近くいるが、社会人が多いため、海水浴期間中にガードに入れるメンバーはだいぶ少なくなる。学生は玉川大学、神奈川大学、国士舘大学、法政大学など複数校のライフセービングクラブから参加。そこで、ガード技術の習得と練習、親睦を兼ねた週末ガードを、毎年、4月から行っているというわけなのだ。

  「4月からのボランティアガードは“マイト”と呼んでいます。Marine Activity Training Educationの頭文字をとってMATE。発音はオーストラリア流にマイトです。夏に向けたトレーニングを兼ねた集まりですね。1980〜90年代からにライフセービング交流で日本に来たオーストラリア人ライフセーバーが伝えてくれたもので、今でもこの名称が残っているのはうちのクラブぐらいではないでしょうか」
 と話すのは、同クラブの事務局長を務める座間吉成さんだ。

  「ここでのガードは、この浜ならではの経験とスキルも必要になってきます。夏の第一目標は無事故で終わらせることですが、先輩から教えられたことをしっかり引き継ぎ、後輩に繋げていけるよう、これからもがんばっていきたいです」
 と真っ黒に焼けた顔を引き締めるのは、今年、監視長を務めた玉川大学4年生の多田創一さん。
 
 その横で、同じように日に焼けた座間さんはこう言う。
「一頃に比べると、海水浴客の数は減っています。しかし、マリンスポーツや海浜でのレジャーなど、年間を通して海に来る人の数はむしろ増えているのではないでしょうか。海の公園という場所柄を考えれば、夏季だけでなくもっと幅広い用途に応じたライフセービング活動ができればと考えています」

 親水を目的とした市民の憩いの場である、横浜海の公園。ここを活動拠点にする同クラブの今後の取り組みにも注目していきたい。
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湘南OWS2012をライフセーバーがサポート2012/08/26

2012.8.25-26.逗子海岸、鎌倉七里ヶ浜、藤沢片瀬江ノ島東浜

夏休み最後の週末となる8月25,26日の2日間、「湘南オープンウォータースイム2012」が開催された。
湘南地域でも沖縄に接近中の超大型台風15号の影響が心配されるなか、25日の初日を迎えた。

文・写真=LSweb編集室




真夏のイベント、湘南OWS


 8月25日土曜日。まだ午前9時をまわったばかりだというのに、照りつける太陽が容赦なく肌を刺す暑さのなか、原付バイクにまたがり片瀬江ノ島東浜へ。
 8月最後の週末となる25、26日の両日、湘南のサマーイベントとしてお馴染みとなった「湘南オープンウォータースイム(湘南OWS)2012」が開催されるのだ。
 
 オープンウォータースイミングは、海や川や湖をフィールドとした水泳競技で、波や風、流れなど自然の力と対時しながらタイムを競うスポーツ。2008年の北京オリンピックから正式種目になっており、今夏のロンドン五輪でも各国のスイマーがしのぎを削った。
 
 湘南OWSの初開催は2004年。以来、今年で9回目を迎えた。主催は、地元NPO法人の湘南マリンオーガニゼーションが行っている。
 同大会は、毎年8月下旬の週末、逗子・鎌倉・藤沢の3市の海岸にスタート・ゴールを設けて行われる。2日間で行われるエントリー種目は、OWS10km、OWS2.5km、フィンスイム2.5km、江ノ島及び逗子海岸の800mスイムツアー(集団泳)だ。
 
 大会スタッフは総勢約500人で、陸上の運営ボランティアのほか、海上ではヨット、シーカヤック、水上オートバイ、その他の船舶が万全を喫して安全確保に当たっている。その中心となって活躍しているのがライフセーバーたちだ。日頃、各浜で行っている監視パトロールの経験を生かし、全国各地で開催されるこうした海や水辺での各種イベントのサポートを行い、安全確保に努めているのである。
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ライフセーバーは欠かせない存在

 東浜に着くと、いきなり聞き覚えのある元気な声が耳に飛び込んできた。ライフセービング競技会でお馴染みのスポーツDJ山本ゆうじさんの声だ。LSweb
 早速、挨拶を交わすと海のコンディションについて訪ねてみる。この日、沖縄に接近中の大型台風15号の影響で、東日本沿岸も波やうねりが高くなるという予報がでていたのである。
「さっき顔見知りのライフセーバーに確認したら、沖はかなりうねりがあるらしい。ここ東浜湾内もそのうねりが入ってきていて、引き波が強くなっている状況だからちょっと泳ぎにくいみたいだね」と、ゆうじさんが教えてくれた。
 ライフセーバーに声をかけて事前にコンディションを確認しておくなんて、さすが。ライフセービング界に馴染み深いゆうじさんらしい。この後も、OWSの実況DJの合間にさり気なくライフセーバーたちの活動をアピールしてくれていた。
 
 大会初日となる25日は、OWSのメインである10キロスイムが、午前9時に逗子海岸をスタート。その他に、江ノ島と逗子海岸で800mのスイムツアー(集団泳)が何度か行われた。こうしたマリンイベントでもっとも気を遣うのが参加者の安全確保だろう。
 特に大勢のスイマーが一斉にスタートするOWSともなれば、海上での監視体制は非常に重要な役割を担うことになる。そんな現場にライフセーバーは欠かせない。

 湘南OWSでは、海上でのガード体制の要としてライフセーバーたちが大勢サポートしている。もちろん、水上バイクや救助艇もしっかりフォローしている。しかし、参加スイマーのすぐ側を監視サポートできるのは、レスキューボードを操るライフセーバーだけだ。つかず離れずパドリングでボードを操作する技術と体力、片時も気を抜かず監視し続ける集中力は、やはり日頃の鍛錬の成果であり、ライフセーバーのなせる技なのだ。
 同大会では、過去の経験もふまえ、ライフセーバー以外にも、OWSの安全対策に関するガード体制と役割分担、万が一、事故が起きた際のエマージェンシーシミュレーションなど、リスクマネジメントに関するすべてにおいて周到に検討し用意されていた。大会関係者の、目に見えない部分での安全対策への真摯なこだわりが感じられた。

 老若男女問わず誰でも気軽に参加できる800mスイムツアーがゴール地点に近づいてきた。ナブラのように見える集団は、随分と大きく前後に伸びている。その要所要所にライフセーバーが付き添っている。そのポジショニングがこれまた絶妙な位置取りなのだ。遠くから見ると一目瞭然に分かる。
 波打ち際は、うねりの影響で時折、大きな砕け波がやってくる。800m近く泳いだスイマーにとって、この波のパワーは結構キツイはずだ。ヘトヘトになりながら最後の力を振り絞って頑張るスイマーたちを励ますライフセーバー。
 そして最後の一人がゴールを抜けるまでしっかりとフォローし、浜に上がるのを見届けると、やっと自分たちもボードから降りたのだった。
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 ライフセーバーは、縁の下の力持ち的な存在である。しかし、その果たしている役割は、非常に価値のあるものだ。
 ライフセーバーたちが真剣にスイマーをサポートする姿は、今日、湘南オープンウォータースイムに参加したすべてのスイマーに大きな安心感を与えていたに違いない。

追記:8月26日(日)の湘南OWSの全種目は、海象の悪条件によるうねりと高波により、スタート前に中止が決定した。本大会は、多くの参加者及びスタッフが集まり、海という自然の中で実施されている。こうした環境の中でレースを行うにあたって、何よりも最優先されるのが、参加者全員の安全であることはいうまでもない。湘南OWS安全委員会の適切で毅然とした判断は見事である。
 
 参加者の皆さんにとっては少々残念だったと思いますが、また来年、チャレンジできるよう願っています。






ガードを支える人々
その1 救護所の看護師さん
2012/08/16

神奈川県藤沢市 片瀬東浜海水浴場・救護所 増渕千晶さん

夏の海水浴場。
ライフセーバーはさまざまな人たちと協力しながらパトロール活動を行っている。
彼らの活動を影ながら支える人たちをクローズアップしてみよう。
まずは救護所の頼れる看護師さんをピックアップ。

文・写真=LSweb編集室




5 歳の男児が熱中症に

晴天で青旗。絶好の海水浴日和の8 月のある日、神奈川県藤沢市の片瀬東浜海水浴場は、海水浴を満喫するグループや家族連れで賑わっていた。
同浜でパトロール活動を行う西浜サーフライフセービングクラブ(西浜SLSC)の監視所に、「子どもの具合が悪くなった」と女性がやってきたのはお昼前のこと。すぐに併設の救護所に待機する女性看護師が、女性におぶわれた男の子の様子を診察した。
「体が熱いですね。熱中症かな。救護所のベッドで少し様子をみましょう」
と声をかけたのは、海水浴場開設期間中に数日間、ボランティアで救護所に勤務する看護師の増渕千晶さんだ。
増渕さんは氷枕を準備しならが、持病の有無や今日の体調、何時から海に来ているのか、また朝食を食べた時間や量、水分の補給具合などをテキパキとお母さんに質問する。熱を測ると38 度5 分。いろいろな状況を判断して、やはり熱中症だと判断すると、冷静に処置を続けていった。
大人が熱中症になった場合、意識がしっかりしているのならば、日影で休息しながら水分補給をし、濡れタオルや氷のうで脇の下や首筋、額などを冷やすことで改善が見られる場合が多い。汗をかいたり、排尿することでも体温が下がるので、水分を十分に補給し、強制的にトイレへ行くのも効果があるそうだ。
しかし子どもの場合は、注意深く観察を続ける必要がある。大人に比べ体力のないため、容体が急変する可能性があり、また回復したように見えても、夜中に再び容体が悪くなりこともあるからだ。この日、救護所にやってきた男の子も、意識はあり、水分補給もできる状態だったが、氷枕を嫌がり、おしっこも(汗も)出ないため、熱が下がらない状態が1 時間ほど続いた。
「氷枕を嫌がるのは、体温が高いために氷枕が冷たすぎて痛いからだと思います。おしっこが出るといいですけど、水分補給してもトイレに行きたくならないというのは、ちょっと心配ですね」
と増渕さん。海で遊ぶことを楽しみにしていた男の子にはかわいそうだが、この日は病院へ行き、点滴を打ってもらうのがいいとお母さんにアドバイス。お母さんも納得して帰宅することになった。

マリンスポーツが取り持つ縁

増渕さんは普段、高齢者の医療現場で働いている。海水浴場の救護所でボランティアをするようになったのは、趣味で熱中するマリンスポーツがきかっけだった。
長年、年間を通して片瀬海岸でウインドサーフィンを楽しむ増渕さんにとって、ライフセーバーは夏の風物詩であり、献身的な活動には敬意を表していたものの、自分がライフセーバー側の人間になるとは思っていなかったそうだ。ところがひょんなことから、西浜SLSCのライフセーバーと知り合い、ぜひ手伝ってほしいと頼まれたことがきっかけで、昨年に続き今年もボランティアスタッフとして救護所に顔を出すことになった。
「私は海水浴期間中、本当に数回しか救護所に来ませんから、あまりお話しできるような立場ではないのですよ」
と言う増渕さんだが、救護所にいることで勉強になることは多いと話す。
「これまでは遊ぶ側の人間として海に来ていましたが、ライフセーバーたちのお手伝いをするようになって、守る側の人たちはどういう思いで行動し、どんな活動をしているのかを知ることができました。ある意味、とても新鮮な体験でもあり、人間を含めた海を取り巻く環境について、再認識することができたと思います」
それに、
「救護所には医師がいませんから、ここでできることはあくまで応急処置です。でもライフセーバーの中には、消防士として救急現場の最前線に立つことを職業としている人もいますから、特に西浜SLSCの場合は多いので助かっていますよ。軽傷の人には明るく、元気に、フランクに接する彼らの姿を見ていると、お手本にしたいくらいです」
と続ける増渕さんだが、親身になってテキパキと応急処置をする姿と、安心感を与える笑顔は、さすが看護師さんだと感服した。


海水浴を楽しむために

頼れるライフセーバーや、優しい看護師さんが対応してくれるからと言っても、救護所のお世話にならないほうがいいに決まっている。そこで看護師である増渕さんから、海水浴を楽しむためのアドバイスを伺った。

●水分補給は定期的に
熱中症を予防するためにも水分は意識的に補給するように心がける。海水浴場ではトイレに行くのが不便な場合もあるが、がまんするのはよくない。水分の補給をしっかりして、トレイにもきちんと行くようにしたい。
●アルコールの飲み過ぎに注意
アルコールを飲んで海に入る危険性は以前から指摘されているが、飲酒した状態で熱中症にかかると、アルコールを飲んでいない時よりも重症化することが多い、ということも肝に銘じておこう。
●切り傷、擦り傷を甘く見ない
普段ならたいしたことのない切り傷や擦り傷でも、雑菌を含む海水や砂に触れると化膿することがある。例えば、新しいサンダルを履いて海に来たら靴擦れができた、というような場合は、ばんそうこうやテーピングなどで保護してから海に入るようにしたい。救急グッズは救護所に常備されている。
●クラゲに刺されたら
救護所で手当てをする応急処置の件数で1、2 を争うのがクラゲによる被害。クラゲの種類によって症状が大きく変わってくるので、クラゲに刺されたと思ったら、救護所(ない場合は警備本部など)で治療してもらうことをおすすめする。










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