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第25回全日本ライフセービング・プール競技選手権大会
2012/08/24
2010.5.19-20神奈川県・横浜国際プール
館山SLSC、総合優勝!
西浜SLSCがSERC二連覇
25回目を数える全日本プール競技選手権が、横浜国際プールで開催された。
四半世紀を迎えた記念すべき大会には、45チーム、547人が参加。
熱気に包まれた会場では、大会記録、日本記録が続出した。
文・写真=LSweb編集室
日本記録、大会記録が連発!
個人競技男女各6種目、リレー競技男女各3種目、そしてラインスローとSERCで競われた全日本プール競技選手権では、8個の日本新と7個の大会新が記録された。記録ラッシュの先陣を切ったのは、女子200m障害スイムの坂本佳凪子(西浜SLSC)だ。昨年、国際大会のジャーマンカップで自身が出した日本記録を、2秒あまり縮める2分16秒91でゴール。高校3年生、伸び盛りの坂本がどこまで記録を伸ばすことができるか、今後の活躍も非常に楽しみだ。
女子でもう一つ日本記録を更新したのが、女子100mマンキントウ・ウィズフィンの水間菜登(勝浦LSC)。昨年の大会で同種目の日本記録を出した水間だが、今大会では自己記録を1秒弱更新し、1分05秒80を記録した。体格的にも恵まれた水間だが、強さの秘訣はそれだけではない。レスキューチューブの扱いがうまく、トランジットを素早くこなせる器用さを持つ。3月に大学を卒業、環境が変わった中でも安定した強さを見せてくれた。
男子は個人競技で5個の日本新記録が生まれた。まず、男子200m障害スイムで前田健輔(西浜SLSC)が2分02秒86を記録し優勝。4年ぶりに日本記録を更新した。大学時代、競泳部で活躍していた前田。社会人になり以前から興味にあったライフセービングの世界に飛び込んできた。それから3年。「目標は2分を切ることだったんですが……」と言いつつ、日本新記録達成に笑顔を見せた。「昨年10月に行われた全日本では、サーフレースで実力の差を感じました。今年はまずプールで結果が出せたので、海でも良い結果が出せるようにがんばります」と言う前田だ。
男子100mマネキンキャリー・ウィズフィンで、52秒55の日本記録をマークしたのが西山 俊(湯河原LSC)である。2年前に日本記録を樹立したこともあり、西山はこの種目を得意とする。さらに、豪州ゴールドコーストでの武者修行から帰ってきたばかりとあって、活躍は当然のことと思われたが、本人曰く「不安でいっぱい」だったのだとか。
「オーストラリアではプールの練習ができず、マネキンもほとんど触っていませんでした。それにオージーは皆、速くて、勝つことができなかったんです。だからなんというか、勝つ感覚を思い出せなくて……。林(昌広)さんのアドバイスで気持ちを切り替えることができ。記録が出せたことは本当に良かったです」と嬉し泣きした西山だった。
男子100mマネキントウ・ウィズフィンで57秒61を叩きだし、日本記録を更新したのが、館山SLSCの新鋭、24歳の鈴木陵平だ。鈴木は「競泳をやっていたこともあり、競技に興味を持ってライフセービングを始めるようになりました。でも始めてみるとそれだけの活動ではない。世界が広がりました。自分の得意分野で結果が出せれば、すべてのことに積極的に関われるようになりますね」と、メダルを手に話してくれた。
その鈴木と4月からチームメイトになったのが、今年3月に大学を卒業した清水雅也(館山SLSC)。学生時代から活躍していた清水だが、今大会では男子50mマネキンキャリーと男子200mスーパーライフセーバーの2種目で、日本記録を更新する勢いを見せた。50mマネキンキャリーは自身の持つ日本記録を0秒21上回り、32秒13をマーク。200mスーパーライフセーバーでは、大学の先輩であり、師匠と慕う、林 昌広(御宿LSC)が持つ記録を3秒近く縮め、2分24秒00で優勝した。
「スーパーライフセーバーでは23秒台を狙っていたんです。最後にマネキンを巻くところでちょっとミスっちゃって……。でも林先輩の記録をずっと抜きたいと思っていたので、目標が一つ達成できたのはうれしいです」と言う清水には、更なる記録挑戦を期待したい。
東京消防庁が見せたプロフェッショナルの意地
リレー競技では、女子4×50mメドレーリレーで日本体育大学LSCが1分51秒62、女子4×25mマネキンリレーで日本大学SLSCが1分38秒21で大会新記録をマークした。また男子4×50m障害物リレーでは日本大学SLSCが1分46秒76、館山SLSCが1分46秒80でともに大会記録を更新。男子4×25mマネキンリレーでは、館山SLSCが1分17秒39の日本新記録で優勝した。
男子4×50m障害物リレーで優勝した日本大学SLSC。アンカーを務めた大学2年生の深澤宏理は、「高校まで競泳をやっていので、自分のスキルが生かせたらとライフセービング部に入りました。今回はリレーで貢献できて嬉しいです。でも海ではなかなか思うように泳げず、そこが難しくまた面白いところでもあります」とコメント。過去、何人もの日本代表選手を輩出した同クラブ。チームメイトに揉まれることで、オーシャン競技の実力も上がってくるはずだ。
記録には届かなかったが、男子4×50mメドレーリレーと男子4×25mマネキンリレーの2種目で表彰台に上ったのがレスキューのプロ集団、東京消防庁LSCだ。1位との差わずか0秒85で3位となったメドレーリレーで、アンカーとして猛烈な追い上げを見せたのが、チーム最年長の菊地 太。レース直後に話を聞くと、「若いものに……」と言ったきり息が続かない。てっきり、若い世代には負けたくない、と言うのかと思ったら、「若いものを世界に行かせてやりたいんです!」と言葉を続けた。
ところで、今大会で一つ残念だったのはマネキンキャリーの泳法で失格が多かったことだ。主催者であるJLAに取材したところ、男女50mマネキンキャリー参加者全296人のうち、マネキンの水没またはマネキンの喉、口、鼻をふさぐなどして失格になった選手が96人もいる。1秒でも早く溺者を救う、というライフセービング理念に照らし合わせれば、記録更新は素晴らしい。だからといって失格者が続出しては本末転倒だと言わざるをえないだろう。記録と正確なレスキューを両立してこそ、ライフセービング競技といえるのではないだろうか。
最もライフセービング競技らしいといえるのが、水難事故の現場を再現し、90秒以内という制限時間に4人のライフセーバーがどう救助活動を行うかを採点する、シミュレーテッド・エマージェンシー・レスポンス競技(SERC)だ。今回は、海水浴場で離岸流が発生し、水難事故が発生したというシチュエーションで、35チームがレスキューを行った。
採点ポイント222点で優勝したのは、植木将人、長竹康介、小林 海、皆川綾菜の4人がチームを組んだ西浜SLSC。小林、皆川と10代の選手が2人いるため、「いろいろな場面を想定して練習をしましたが、本番ではとにかく基本に忠実にということを心がけました」と植木。小林、皆川は「やっぱり上がってしまいました。こうすれば良かったということもたくさんあります」と、あっという間の90秒だったことを明かしてくれた。
2位は菊地 太、本多辰也、落合慶二、小出大祐の4人で出場した東京消防庁LSC。救助者の数では西浜SLSCを上回ったがポイントは201点だった。3位は192点で、安達和也、大谷翔一郞、難波優介、園田 俊がチームを組んだ流通経済大学LSCが入った。
総合優勝は98ポイントを獲得した館山SLSC。クラブ設立から7年目での快挙となった。社会人が多い同クラブを牽引してきた飯沼誠司は、「今まではベテランが引っ張っている感じでしたが、今回は若手が活躍し、優勝を後押ししてくれました。嬉しいですね」と笑顔。「ただSERCが20位など、反省点や今後の課題も見つかりました。夏に向けて、ガード体勢もしっかり強化したいと思います」と話してくれた。
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