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第5回全日本ユースライフセービング選手権大会 競技会レポート 中学生編
2013/06/11
The 5th Japan National Youth Lifesaving Championships
北は岩手から、南は沖縄まで
20チーム211人が参加したユース全日本
6月9日、千葉県南房総市の岩井海岸で「第5回全日本ユースライフセービング選手権大会」が開催された。
年々規模が拡大するこの大会。今年は関東地方を中心に、岩手、山形、そして沖縄から、200人を超える中高生が参加した。
2013.6.9 千葉県南房総市・岩井海岸
文・写真=LSweb編集室
個人・団体合わせ、計16種目を実施
東京湾に面した岩井海岸は、遠浅で波も比較的穏やかなことから、臨海学校や海浜実習が盛んに行われる場所だ。海水浴シーズンは、日本体育大学LSCとその卒業生を中心とした、岩井LSCがガードを行っている。大会当日も、日体大LSCのコーチやメンバーが集まって自主練習を行っていた。
その岩井海岸で初開催となったのが、中学生、高校生を対象としたユースライフセービング選手権だ。この大会、元々はジュニア(小中学生)でもなく、大学生でもない、ライフセービングに接する機会の少ない高校生たちに、ライフセービングの楽しさを知ってもらいたい、続けてもらいたいと、JLA学生委員会が立ち上げた「高校生プログラム」から発展したもの。だから今回も、大会運営の随所で学生委員たちが奮闘していた。
また、強化指定選手であるハイパフォーマンスチームのメンバーたちも、ビーチフラッグス会場でトンボをかけたり、競技運営に携わったりして大会を手伝っていた。普段は競技する側の彼らが、オフィシャルからの指示でいそいそと働く姿は新鮮。また、憧れの強化指定選手を間近で見ることができたユースの中には、一緒に写真撮影してもらい、はにかんだ笑顔を見せる子もいた。
そんな和やかな場面も数多く見られたユース選手権だったが、勝負は真剣そのもの。大人も顔負けの接戦が繰り広げられた。
中学1年生を対象としたフレッシュマン男子ランスイムランでは、下田LSCの土屋俊輔選手、木下龍太郎選手がワンツーフィニッシュ。2人は続くフレッシュマン男子ビーチフラッグスでも1位、2位と活躍した。
フレッシュマン女子ランスイムランでは、湯河原LSCの室伏郁花選手が後続に差をつけて優勝。彼女は中学3年生までがエントリーした、ニッパーボードレースでも優勝するなど、将来が楽しみな活躍をしてくれた。
フレッシュマン女子ビーチフラッグスでは1位が吉武華梨選手、2位が石井優愛選手、3位が原 香織選手と1〜3位までを成城学園LSCが独占した。幼稚園から大学院までを擁する成城学園では、近年、学内でライフセービングが人気で、部員数も増加の一途をたどっているそうだ。今大会にも中学、高校合わせて74人がエントリーした。
中学まではバレー部と女子バスケットボール部で活動していたという、同学園の高校2年生女子4人に、なぜライフセービング部に入ったのかを聞いたところ、「ライフはほかの部活となんか違う。応援したくなる部活っていうか……」という答え。
「でも最初は水着でやるのがすごく恥ずかしかった! 水に入る直前まで、ずーっとタオルを巻いていたもん。えっ今? 今は平気。慣れた(笑)。男子も慣れたんじゃないかな。でもね、今年の1年生は恥ずかしくないみたい。だって、みんなスタイルいいんだもん」と言いながら、後輩たちに声援を送っていた。
中学生男子のサーフレースとニッパーボードレースで優勝したのは、西浜SLSCの皆川貴海選手だ。小学生のころからジュニアプログラムに参加し、最近はニッパーボードではなくマリブボードで練習しているという、長身の中学3年生。遠浅の岩井海岸の地形を利用し、ウェーディングやドルフィンスルー、バニーホップなどを軽々こなし、スタートからフィニッシュまで安定した力を発揮した。
レース後、「今日は久しぶりのニッパーボードで、戸惑った。マリブとは浮力も違うし、うねりをつかむのがちょっと難しかったかな」と話してくれた皆川選手だった。
海での経験値の差が、そのまま順位に現れるのがユース世代といってもいいだろう。サーフレース中学生男子の部に参加した、世田谷スイミングアカデミーの板場貴大選手は、ジュニアオリンピックの標準記録を突破した選手だが、今回はサーフレース6位という結果に終わった。
刻々と変化する自然環境の中で行われるのが、ライフセービング競技の楽しさであり、難しさでもある。ホームゲレンデとは勝手が違うこともたくさんあるはずだ。
「岩井の海はずっと浅かったので、本当はドルフィンスルーをすれば良かったんだけど、僕が練習している熱川の海はすぐ深くなるので、ウェーディングとか、ドルフィンスルーの練習があまりできない。それで今日は苦戦しちゃった」(日馬孝昌選手/熱川LSC)
「サンセットビーチは沖にリーフがあるので、波がない。特に夏は全然ない。今日は波がある環境だったので、少し緊張した」(與那嶺瑠奈選手/北谷公園サンセットビーチLSC)
「海で練習すること自体が少ないし、学校のプールは水泳部が使っているので、そこもあまり利用できない……。今日の結果は惨々だったけど、海に入れて楽しかった」(市村直也選手/攻玉社LSC)
「いやぁ〜それでも恵まれているよ〜。東北はまだ寒くて海に入れないからね」と話すのは、中学生、高校生1人ずつを引率してきた盛岡LSCの松原浩一代表だ。
プールでの強化練習をへて、この大会に参加した中学生の鈴木愛香選手は、サーフレース中学生女子で見事2位。1位の選手との差は僅かだった。残念だったのは、時間の関係で表彰式まで残れなかったこと。ほかの選手より一足早く、銀メダルを手に帰路へとついた盛岡チームだった。
このレースで1位となったのは、下田LSCの今村麻香選手。
「スタート直後は前に人がたくさんいて、ちょっと焦っちゃった。ブイを回るころに少し人が少なくなって、自分が前に出たというよりは、皆が後ろにいったという感じだったかな。盛岡の選手がずっとリードしていたけれど、ランでがんばって走って抜くことができた」と笑顔を見せた。
下田LSCでジュニアを担当するのは、坂部 悠・琢兄弟。
「下田LSCの場合、学校の部活や習い事を優先してジュニアプログラムを運営しています。ただ、僕たちは地元の人間ですし、子どもたちも地元の子なので、練習したいという希望があれば朝練などしています」
自身も下田LSCジュニア出身だという坂部さん。天候に応じて浜が選べるのも、下田の利点だ。
中学生男子のビーチフラッグスは、西浜SLSCの並松竜太郎選手、同じく西浜SLSCの和田拓海選手、そしてバディ冒険団LSCの森野郁也選手がメダルの色をかけた戦いを演じた。
西浜SLSCにはビーチフラッグスの第一人者、植木将人さんや、その次を狙う小田切伸矢さんなどなど、この道のスペシャリストが多数いる。そんな環境からか、同クラブにはビーチフラッグスの強い中学生が多いが、今回は仲間同士、切磋琢磨する環境に森野選手が割って入り2位を獲得。優勝は並松選手、3位は和田選手だった。
一方、中学生女子のビーチフラッグスは、館山SLSCと下田LSCがベスト5を独占した。その中で最後のフラッグを手にしたのは、館山SLSCの高山萌々選手だ。学校の陸上部に所属しているという高山選手は「今日は、飛び込んでしっかりフラッグをつかむことと、スタートの反応が良くきた」と自分のレースを振り返った。
館山SLSCには、自身もビーチ競技の選手として活躍する石川智也コーチがいる。コーチの熱心な指導と、今年から中学生女子3人で練習ができるようになった環境が、高山選手の飛躍に繋がったようだ。
1kmビーチラン中学生男子では、山形LSCの武田凉平選手と、二宮LSCの小又忠士選手によるデッドヒートが、最後の最後まで続いた。文字通り抜きつ抜かれつのレースの末、胸の差で先にゴールに飛び込んだのは武田選手。その瞬間、山形応援団から大歓声が沸いた。
片道500km、往復1000km。マイクロバスを運転し、選手たちを引率してきたコーチ、保護者の疲れも一気に吹き飛んだ瞬間だった。
団体競技のビーチリレー中学生男子は西浜SLSC、ビーチリレー中学生女子は下田LSCが優勝。スイム→ボード→ランと繋いだタップリンリレーは、男子が下田LSC、女子が館山SLSCの優勝で幕を閉じた。
★LSユース・レポート高校生編へ続く……。
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