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———今回の状況設定のポイントは?
今回の特徴を一言でいえば、対処しなければならない案件が多かったということでしょう。率直に言って、難しかったと思います。
海水浴場で起こるような事故を想定していったら、この数になったわけですが、ゴールデンウィークに新潟で4人が亡くなる事故が起こったことも踏まえ、遊泳区域外にも演技者を配置しました。
新潟の例を出すまでもなく、事故は海水浴場以外の場所で発生することが多く、またライフセーバーなら誰しも、BBQをしている人たちに注意をするため遊泳区域外をパトロールしたり、岩場で足を切った人の手当てをしたことがあると思います。
また今年は世界大会の年。日本代表は過去にSERCでメダルを獲得していますから、そういう部分の強化にも繋がればと、日本代表コーチの佐藤文机子さんにワーキンググループへ参加してもらいました。
彼女から、世界大会では障害者や外国人に対応する場面があったと聞き、視覚障害者(役者4)を配置するなどしていったらこの数になったということです。
SERCは採点競技です。状況設定が簡単過ぎると優劣がつきづらくなります。今回はたくさん症例がある中で、優先順位をきちんと見定めて着手しているか、対応する時のクオリティーはどうかを見ることにしました。
———流通経済大学LSCが優勝したポイントは?
今回のように対処しなければいけない救助者が多い場合、誰がどのレベルに合致しているのか、まず、その見極めができるかできないかが重要です。
上位チームはどこもレベルが高いので、あのチームはできていて、このチームはできていない、ということは正直ないのです。ただ、ひとつひとつの案件について、どちらがより手厚く対応していたか、ということのポイント差になったと思います。
公表されているように、レスキューには優先順位があります。最初に助けるべき人は「泳力の弱い人・自力で移動できる人」で、次が「危険の迫った人(泳げない人・ケガをした泳者)」、最後が「継続的なケアが必要な人(意識がない人・呼吸がない人・頸椎の損傷が疑われる人)」です。
今回、点数が低かったチームは、その判断がきちんとできていたのか、まずはそこからチェックしてみてください。例えば、役者3と役者4、役者6と役者7はどういうレベルなのか、といった判断です。
———特に気になった点は?
全体的にまだまだだなと思ったのは、役者4の視覚障害者への対応です。
視覚障害者に対する知識がないこともあると思いますが、白杖を引っ張るという一番やってほしくないことをやってしまったチームもありました。あるいは連れ回したり……。
視覚障害者は傷病者ではありませんから、空間的な認識ができる場所、例えば防波堤に触らせて待たせる、座らせるといった対応が良かったと思います。
また、白杖を奪っては困りますが、貸して下さいと断って使うのはOKです。その時にも、ただ「貸して下さい」ではなく「溺者がいるので」と状況を説明した上で借りると、相手も安心しますよね。
同じことはシュノーケルをしていた役者Aと役者Bにも当てはまります。状況を説明して、ゴーグルを借りれば点数が上がりますが、半分奪い取るような形では追加点は得られないでしょうね。
もう一つは、本部にいるライフセーバーとのコニュニケーションです。本部にはトランシーバーがあり、それを持って岩場でケガをしている役者1のレスキューに向かうチームもありましたが、普段のガードを同じようにトランシーバーを活用し、本部とのやりとりができているチームは少なかったと感じました。
ドライレスキューを実行するチームも、こちらの意図より少なかったですね。役者4などはチューブにつかまらせて、防波堤を歩きながら引っ張って波打ち際まで運ぶのがベストな対象方法ですから。
ただ、救助者が多い中で、状況を把握し、優先順位をつけ、まんべんなく対応したという点では、上位入賞チームは本当に良くやったと思います。
———今後に向けてのアドバイスは?
上位のチームは指示系統がしっかりしていました。声の大きい、小さい、高い、低いではなく、パトロールキャプテンが分かりやすい指示を出していたか、一つのポイントはそこだと思います。
正直なことを言えば、泳ぎが得意でないメンバーがパトロールキャップを被っている、と見受けられるチームもありました。同じ事の繰り返しや、ただ大きな声を出しているだけ、というのは観客にも分かることですから。
ただ、リーダーシップを発揮するだけではダメで、キャプテンでもある程度はプレーヤーにならないと、これだけ症例が多いと対処しきれません。
全体を見ながら指示を出しつつ、例えばクラゲに刺された人(役者9)、足を攣った人(役者8)に対応する、そこができていたか、いなかったかも得点に結びつく要素だったでしょうね。
今回初めて、得点だけでなく達成率という数字を出しました。満点だと480点というのが今回の設定ですが、上位入賞するためには、達成率70%が一つの目安になるということが示せたと思います。
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