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天気晴朗ナレドモ波高シ
29回目のインカレは総合成績つかず
2014/09/30

第29回全日本学生ライフセービング選手権大会 DAY2 千葉県・御宿中央海岸 2014.9.27-28

LSweb台風17号の影響で強風と高波に見舞われた今年のインカレ。

大会初日は予定どおりレースを消化できたが、2日目は天候がさらに厳しくなり、オーシャン競技すべてが中止となった。

これにより、予定されていた競技種目の7割以上を実施することが不可能となり、大会規定により総合成績の集計は行われないことに。

学生最後の大会に気合いを入れて臨んだ最終学年生にとっては、そして先輩たちとの最後のレースを楽しみにしていた下級生にとっては、非常に残念な状況となってしまった。

そんな中、レースに出られなかった仲間の分までがんばろうと、ビーチ競技では白熱したレースが展開。手に汗握る接戦に、歓声と悲鳴がこだました。

文・写真=LSweb編集室




ビッグウェーブに挑む

 大会2日目。初日よりさらにサイズアップした波に、海を見つめる学生たちは緊張気味。ダブルの波がセットで入るたびに、浜のあちこちから「おー!」というどよめきが上がった。

 そんな中、朝一番で女子ボードリレーの予選がスタート。
 予想どおり、インで苦戦する選手たち。沖に出られない学校もある中、最初にショアブレイクを抜けたのが、オレンジのキャプの法政大学だ。続いて、日本体育大学、千葉科学大学が沖のブイへと向かう。
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 東から西へと流れる強い潮流のため、浜に戻ってくる選手たちは西へ、西へと流されたが、それでも3大学とも波と格闘しながら浜に戻ると、2走へとタッチした。

 しかしその後、アウトで沈してボードを流す選手が出るなど、競技続行が困難な状況になり中断。女子第2ヒートも待機となった。

LSweb ところで、サバイバルとなった女子第1ヒートで3人全員がコースを回ったのは、トップの法大だけ。
 1走の荒井美結は波崎SLSC、2走の高松実里は鹿島LGT、3走の田中 舞は波崎SLSCと、いずれも波が立つことで知られる茨城県の地域クラブに所属し、夏のガードを行ったメンバーたちだった。

「私、波崎のメンバーの中ではヘタレで、いつも仲間から叱咤激励されているんです。でも、今のレースを完走したことで、皆から『良くやった!』と認めてもらえました!」
 と興奮した様子の荒井。
 他大学の波崎メンバーから頭をポンポンと叩かれ、チームメイトと抱き合って喜びを分かち合っていた。

 そうこうするうちに、女子第2ヒートの前に男子ボードリレーが行われることとなり、第1ヒートがスタート。

 号砲と同時に、東へ大きく回り込んでから海に入ったのが、大阪体育大学の1走、小林 海だ。
 潮流を考慮しての作戦。トップでブイを回ると、トリプルはあるかという大波を安定感抜群のボードさばきで乗り切り、浜へと戻ってきた。
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 続いて明治大学、順天堂大学が2走へタッチ。いずれも東へ大きく迂回してから海へと入り沖を目指した。ここで3位まで順位を上げたのが日本大学。その勢いのまま3走へとタッチすると、一気に先頭集団に追いつき、このヒートのトップでフィニッシュした。

 第2ヒートは早稲田大学、東海大学湘南校舎、法政大学、国士舘大学が走者ごとに順位を変える面白いレース展開となり、最後は国士大がトップフィニッシュ。午後からの決勝レースが楽しみな顔ぶれが出揃った。
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 しかし、その後さらに海況が悪化。大会運営にあたったJLA学生室、審判団、安全課を交えた協議の結果、12時55分、オーシャン競技すべての中止が決定した。
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白熱、ビーチフラッグス

LSweb オーシャン競技の中止が決定し、総合成績も集計されないことが発表されると、学生たちの間に一瞬、失望感が漂った。

 しかし、天候に左右されるのは野外で行われる競技の宿命でもある。気持ちを切り替え、ビーチ競技の応援へと走り出していった。

 インカレで行われるビーチ競技は、個人種目のビーチスプリントとビーチフラッグス、さらに団体種目のビーチリレーと1km×3ビーチランリレーの4種目。

 ビーチランリレー以外は、いずれも予選、二次予選、準決勝を経て、決勝へと進出する長丁場だ。足にかかる負担は相当なもので、痙攣する選手も多く見られた。そして、往々にしてそれが勝敗の分かれ道ともなった。

 例えば、男子ビーチフラッグス。昨年までの絶対王者が卒業し、誰がこの競技を制するのか注目されたが、ベスト3を決めるレースの直前、昨年2位の東海大クレスト、石橋拓土が足をつってしまう。

 スタートを中断してもらい、必至でケアする石橋。その石橋に、すっとペットボトルの水を差しだしたのが、ライバルの国際武道大学、安里 翼だった。

 その光景に、どこからともなく拍手が湧く。そして再スタート。だが、石橋の右足は限界だったようで、フラッグに飛び込んだまま起き上がることができなかった。その石橋に肩を貸したのが、神奈川大学の坂田 郷。競い合ったライバルはまたかけがえのない仲間でもあるのだ。
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 ベスト3は坂田、安里、そして同じく武大の堀江星冴の3人。続くレースでは、神大の坂田が2コースで、武大の2人に挟まれる格好となった。それまで思い切りの良いスタートを切っていた坂田だが、このレースでは迷いが出て惜しくも敗退。

「左に行こうと決めていたのですが、相手が思ったより早くて、やっぱり右か? と迷ったのがいけませんでした」
 と、敗因を語った。
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 武大対決となった最後の1本。互角のスタートから並走へともつれ込んだが、最後にしっかり体を入れ、がっちりとフラッグを掴んだのは、2年生の堀江だった。

 安里は4年生。決してやりやすくはなかったと思うが、見事なレースで“ビーチフラッグスの武大”をアピールした。

“ビーチフラッグスの武大”を代表するのが、先の世界大会で銀メダルを獲得した女子ビーチフラッグスの但野安菜だろう。
 その但野に毎年挑み続けてきたのが、日本女子体育大学の川崎汐美だ。但野は4年生、川崎は3年生、インカレでの直接対決はこれが最後となる。

 そして、2人が勝ち上がった最後のレースで、意地を見せたのが川崎だった。スタートからシャープで、ランも力強く、最後まで但野に引けを取らなかった川崎は、フラッグを握りしめて歓喜のガッツポーズを決めた。
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「安菜さんはいつも大きな壁でした。最後はとにかく転んでもいいから、思い切りやろうと思っていました。そうでなければ安菜さんに勝てませんから。
 今日はレース中に良い時と悪い時があって、でもなぜそうなのかは結局分からずじまい。最後も何で勝てたのか分かりません。でもチームに少しでも貢献できたことが本当に嬉しいです」
 と満面の笑みを見せた。

「う〜ん、決勝レースの3本目ぐらいから、疲れを感じていました……。でも、全日本を見ていてください。きっと勝ちますから」
 と但野。

 確かに、世界大会終了から1週間もたたずにインカレに望むのは、体力的に厳しかっただろう。だが、その疲れも負けた悔しさで吹き飛んだはずだ。2週間後の全日本で再び2人の戦いが見られるのを、楽しみにしたい。

俊足のライフセーバーたち

LSweb 砂浜を疾走するビーチスプリント。女子は日体大の2年生、長野文音が2位以下を引き離し、鮮烈なインカレデビューを果たした。

 男子は同じく日体大の石井雄大が優勝した。ビーチスプリントの決勝ではいつも見かける顔なので、てっきりインカレでは負けなしかと思ったが、
「インカレでは2回しか勝っていません。皆、速いですから」
 という答え。

 2年前に負けている東海大クレストの岩井大地とは、卒業しても全日本で戦おう! と約束しているのだそうだ。

 男女ビーチリレー、男女1km×3ビーチランリレーでも日体大が優勝。俊足ぶりを見せつけた。

「朝の時点で、もしかしたら、今日はオーシャン競技のいくつかがなくなるかもしれない、という話がありました。
 総合優勝を狙っている僕らとしては、ならばビーチ競技で点数を稼いでおかなければ、と気合いを入れたのです。残念ながら総合成績は出ませんでしたが、でもビーチ競技で勝つことができて良かったです」
 と、笑顔を見せたのは、ビーチリレーで快走した森 新太郎。

「日体大は勝って当たり前という雰囲気があります。それはプレッシャーでもありますが、でもだからこそがんばれると思います。常勝の伝統は、僕たち後輩が繋いでいきます」
 と力強く宣言したのは、同じくビーチリレーに出場した七海元紀だ。
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 最終種目の男子1km×3ビーチランリレーには、昨年、高校生で全日本の2kmビーチランを制した河上尚輝が日体大の2番手として出場。岩名地 優、鈴木友三朗とともに優勝をつかみ取った。
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 また女子は、4年連続でこのレースに出場している渡邉来美が、今年もアンカーとしてトップでゴールテープを切り、人差し指を天に掲げた。その渡邉に山田美月、奥秋李果が駆け寄り、勝利を喜んだ。LSweb

 ところで、日体大のように、100人近いメンバーで大会に参加する大学もあれば、選手宣誓をした関西学院大学の河本直樹、2度目の参加となる金城学院大学の兼田沙也花のようにたった一人で参加する大学もある。

 きっと一人での参加は心細いはずだが、初参加となる鎌倉女子大学の前川佳穂は、
「大学に入学してから上京したので、関東では一緒に海に入る仲間がいませんでした。でも今回、いろいろな人から声をかけてもらい、練習会に誘われたり、なんと同じ大学内に地域クラブに所属している人がいるらしいことも分かりました。一緒にできれば、チーム種目にも出られますよね」
 と弾んだ声で話してくれた。LSweb

 今年、初めてチーム種目に出場したというのが、日本女子大学の下川美智子、緒方菊乃、藪本 誉の3人。東洋大学から借りたという襷を胸に、1km×3ビーチランリレーに出場した3人は、
「やっぱりチームで出るのは楽しいです!」
 と満面の笑み。

 来年3月には下川が卒業してしまうので、がんばって新入生を勧誘しないと、と緒方、藪本は顔を見合わせた。


 学校を越えて、学年を越えて繋がるライフセーバーの輪。総合成績が発表されなかったから、というわけではないだろうが、今年のインカレは特に笑顔が多い大会だと感じた。

 ちなみに、総合成績なしは荒天で大会が中止された、1998年の第13回大会以来のことだ。来年は30回目の記念大会が開催される。さて、どんなインカレになるだろうか?

 (敬称略) 
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★☆「第29回全日本学生ライフセービング選手権大会」成績表☆★

ビーチスプリント・男女

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ビーチフラッグス・男女

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ビーチリレー・男女

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1km×3ビーチランリレー・男女

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インカレグッズ・デザイン表彰

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