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西浜SLSC、ホームビーチで三連覇達成!
2位はビーチ競技を席巻した日体大LSC
2014/10/15

第40回 全日本ライフセービング選手権大会 2014.10.11-12 神奈川県藤沢市・片瀬西浜海岸

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迫り来る台風19号の影に不安を抱きながら開催された、第40回全日本ライフセービング選手権大会。

大会2日目は初日よりさらに波高が上がり、オーシャン競技ではイン、アウトで数々のドラマが生まれた。

一方、1週間前に上陸した台風18号の影響で狭くなった砂浜で行われたビーチ競技では、瞬きする暇もないほどの僅差の勝負が繰り広げられた。




文・写真=LSweb編集室




ライフセーバー、ビーチを疾走

LSweb 40回目の開催となった全日本。今年から西日本、東日本に加えて中日本でも予選会が行われるようになり、北は北海道の小樽LSCから、南は沖縄の万座LGTまで、日本全国から57クラブ、1285人(男子851人、女子434人)が参加する国内最大の大会となった。

 大会2日目も、全国1200人超のライフセーバーの頂点に立つ、激しい戦いが繰り広げられた。そんな中、ビーチ競技で強さを見せたのが学生ライフセーバーたちだ。

 足元が不安定な砂浜を90m全力疾走するビーチスプリントでは、男女ともに日本体育大学LSCが優勝。女子はインカレから好調の長野文音が全日本も制し、男子は長身の森 新太郎がインカレ覇者で同期のライバル、石井雄大を押さえて嬉しい初優勝を手にした。

 「高校時代はバスケット部に所属していましたが、あまり活躍することができませんでした。ライフセービングで自分の特技を活かせるようになり、嬉しいです。これからも、もっともっとクラブのため、人のためになれるようがんばります」
 と大学2年の長野。
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 一方、大学4年の森はゴールした瞬間に勝利を確信し、順位が告げられる前から感極まった表情を見せた。
 「4年間、ずっと狙ってきたタイトルを、学生最後の年に取ることができました」
 と、真っ赤な目でヒーローインタビューに答えた森だった。

 日体大LSCの森、石井に七海元紀、岩井寛文を加えた4人は、続く男子ビーチリレーでも優勝。2位以下を寄せ付けない圧勝だった。

 女子ビーチリレーは、勝浦LSCが但野安菜、水間菜登、川島智子、坪井あかねとバトンを繋ぎ、肉迫する下田LSCをかわしてトップでゴールした。先の世界大会にも出場した但野と水間は息もピッタリ。チーム内のバトンの受け渡しもスムースだった。
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 ところで、水間は元々、スイムが得意な選手だった。特にフィン系の種目では、大会毎に日本記録を更新するトップスイマーだ。しかし、日本代表に選出され、ランのトレーニングも強化したことでスプリントの才能も開花。今大会では個人種目のビーチスプリントでも5位に入賞する実力をつけた。

 「スプリントでも表彰台に立てるようになれば格好いいですよね。目指したいです」
 と水間、ビーチリレーの金メダルを手に、サラリと次の目標を口にした姿は実に颯爽としていた。

 最終種目の2kmビーチラン。女子は波崎SLSCの大井麻生がラストスパートで一気に飛び出し、嬉しい初優勝を遂げた。
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 男子は昨年の雪辱を晴らし、日体大LSCの鈴木友三朗が優勝。2位には昨年の6位からジャンプアップした、下田LSCの須藤 凪が入った。2位にあと一歩及ばず3位だったのが、大阪LSCの土岐義也。LSweb

 「姉がライフセービングをやっていたことが、クラブに入るきっかけでした。夏は和歌山県の片男波海水浴場でガードをしています。ライフセービングを始めて3年目、競技は昨年から始めたので2年目となります。
 大阪LSCで本戦まで進んだのは僕だけでしたが、関東は競技も盛んなので新たな刺激を受けました。この刺激を関西に持ち帰って、またがんばります」

 大阪大学の3回生で、高校までは陸上部で長距離を走っていたという土岐。活動の歴史は決して短くない関西地域だけに、競技でも土岐に続く活躍を期待しよう。気張ってや〜、関西勢!

最後のフラッグを掴んだのは?

LSweb 予選、二次予選、準決勝と、決勝の舞台にたどりつくまで、もっとも長丁場の戦いを強いられるのが、参加選手の多いビーチフラッグスだ。特に実力僅差の男子は、スタミナと集中力が切れたら即ダウン! という過酷な運命が待ち受けている。

 そんな男子で決勝に残ったのは、世界大会帰りの西浜SLSC・小田切伸矢と式根島LSC・和田賢一、全日本8回優勝の西浜SLSC・植木将人、インカレ覇者の勝浦LSC・堀江星冴。
 さらに石井雄大、西 大樹、森 新太郎の日体大LSCトリオ、インカレ3位の九十九里LSC・坂田 郷、岩井LSCの西山一貴、横浜海の公園LSCの近藤毅歩、そしてオープン参加のモーガン・フォスターの11人。

 和田、植木、小田切、フォスターらが順調に勝ち上がる中、切れの良いスタートと力強いスプリントで着実にフラッグをものにしていったのが、若手の堀江だ。ベスト5の一戦では小田切を撃破。しかし、その次はフォスターが経験の違いを見せつけた。

 優勝争いは植木、和田、フォスターの3人に絞られた(フォスターはオープン参加のため順位はつかない)。シーンと静まり返る大会会場に、スターターの声が響く。

 「コンペティターズ・レディ、ヘッズ・ダウン」。……と、ホイッスルより一瞬早く、植木の体が動いてしまった。その瞬間、フライングを指摘する笛の音と、観客からのため息が会場を包んだ。昨年の勝者、植木はここで敗退が決まった。
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 終始、俊敏な動きをしていた和田に、プレッシャーを感じていたのだろうか。一瞬、天を仰いだ植木は、無念さをにじませた顔でレコーダーテントへと向かう。その姿を目で追う観客の中には、すでに敗退したライバルたちの、ねぎらいの視線がいくつもあった。事実上の決勝戦はあっけなく終わり、和田とフォスターの一騎打ちは、和田の勝利で幕を閉じた。

LSweb 全日本優勝8回の植木は、ヒザを軸に体を引きつけてコンパクトに回るスタートに磨きをかけ、世界大会でもメダルを手にしてきた。
 彼の強さに憧れ、植木のスタートをマネる若手が多い中、和田は試行錯誤を繰り返して独自のスタートを習得。世界一になるという目標を公言し、海外へ武者修行に出かけては、言葉の壁にぶつかりながらも“ワダケンスタート”を確立していった。

 これまでは、注目されながらもコンスタントに勝ち続けることができなかった和田だが、今大会ではどのレースも危なげなく確実にフラッグを手にし、最後の1本を掴んだ時には、実に嬉しそうにニッコリ笑った。

「勝因のひとつは、精神力がついたことだと思います」
 と和田。その穏やかな口調に、ワダケン時代到来を感じた。

LSweb 女子ビーチフラッグス界にも、確実に新世代の波は押し寄せている。
 今大会は4位に終わったが、世界大会で銀メダルを獲得した勝浦LSCの但野、インカレで但野を破った新島LSCの川崎汐美、日体大LSCの宮崎早穂、西伊豆LSCの藤野智秋らの活躍は、今後も大いに期待したい。

 だが、女子ビーチフラッグス界には超人がいることを忘れてはいけない。全日本優勝20回の池谷雅美だ。LSweb

 今大会でも圧倒的な強さは健在。徐々に足に負担のかかる、緩い上り坂のゲレンデコンディションをものともせず、圧巻のスタートと力強いスプリントで、一人、異次元の速さを見せつけていた。

 そして川崎との最終ヒート。「とにかく思い切りやった」という川崎を貫禄で押さえ、21回目の全日本タイトルを手にした。

 「練習は普段通りしています。最近は(夫である池谷)薫さんと一緒にやることも多いですね。競技中の状況は、なんというのか、スローモーションで見えるんです。フラッグの位置、周りの選手の動き、そういったものがパッ、パッとコマ送りのように見えています」
 強さの秘訣を問うと、うーんと少し考えこんだ後、こう話してくれた池谷。
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 コメントの内容がすでに常人離れしていると思うのは、筆者だけだろうか。いずれにしても、20歳近くも年下の選手たちを向こうに回し、悠々と戦い続ける彼女は、もはや現役にしてライフセービング界のレジェンドと言ってもいいだろう。

手に汗握る、波打ち際の攻防

LSweb 台風19号の影響で見応えのあるコンディションとなったオーシャン競技。

 特に最後の最後まで勝敗の行方が分からない、大混戦となったのがボードレースだ。アウトで同じ波に乗って十数人が戻ってくると、波打ち際のラン勝負を経て、雪崩を打ったようにフィニッシュラインに飛び込むという状況が、予選でも、準決勝でも展開され、有力選手の何人かは決勝に進むことができなかった。

 そして迎えた決勝。
 女子はブイを回った段階で茅ヶ崎SLSCの名須川紗綾がリードを奪った。しかし干潮時と重なったからか、先頭を行く彼女には波が来ない。パドリングで差を広げようとする名須川だが、その間に無情にも第二集団が波を掴みあっという間に追いついた。
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 横一線に並ぶトップ選手たち。と、いち早く名須川がボードから飛び下りた。水位はモモのあたりか。横に並ぶ白浜LSCの佐伯芽維はまだパドリングを続けている。どちらが速いのか? ウェーディングとパドリングが互角のスピードだったのは僅かの時間で、波打ち際を一足早く駆け抜けた名須川が先にフィニッシュした。

LSweb 会心のレース展開で優勝した名須川に、歓喜の声を上げながら駆け寄ってきたのが、妹の名須川茉莉乃をはじめとする茅ヶ崎SLSCの仲間たちだった。

「今日のようなコンディションでは、リードしていても後ろから波に乗って追いつかれ、最後はラン勝負になると思っていました。だから、どこで下りるかの見極めが大事だと。あまり深いと走れないし、インショアホールがあるかもしれない。波が大きければ当然、引き波のパワーも強いので、走り出すタイミングに悩みました。
 同じ波に乗っていたメンバーの中では、私が一番先に下りましたよね。実は……、ここだ! と確信があったというよりは、お願い!(うまく走らせて)という気持ちで下りたんです。このところ表彰台の一番上から遠ざかっていたので、今日は素直に嬉しいです」
 と、晴れ晴れとした表情を見せた名須川だった。

LSweb ビデオ判定となった男子のレースを制したのは、下田LSCの高岡洋介。
 西浜SLSCの荒井洋佑や長竹康介、九十九里LSCの出来谷啓太、下田LSCの先輩でもある金子 悟といった蒼々たるメンバーを押さえての、全日本初優勝となった。

 サーフレースは、男女ともに大学生の2人が制した。女子は日体大LSCの坂本佳凪子が、鹿島LGTの高柴瑠衣をかわしてフィニッシュ。男子は湯河原LSCの大島圭介が、オープンウォータースイムで五輪に出場したクラブメイトの平井康翔を逆転しトップとなった。LSweb

「西浜はジュニアの時から慣れ親しんだ場所なので、上手く波に乗ることができました」
 とはにかんだ笑顔を見せた坂本。ジュニア時代から注目されていた彼女が、初の全日本タイトルを手にした。
 
 前のレースで足を負傷したという高柴は、
「それは言い訳でしかありません」と、苦笑いした。

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 「練習の時から、平井さんには歯が立ちませんでした。でも今日のように波のあるコンディションなら……と気合いをいれていたんです。
 ブイを回った時はずいぶん差がありましたが、波が来たので、これ1本にずーっと乗っていくぞと思って。途中で落ちましたが、横を見たら平井さんと同じ位置にいたので、追いついたなと思い、次の波は絶対に最後まで乗る! とがんばりました。なんというかライフセーバーの意地です。いやぁ、勝てて嬉しいです」と大島。LSweb 

 一方、2011年から同種目3連覇を達成していた平井は、
「あー、2020年まで10連覇する予定だったのに」
 と悔しそう。

 オーストラリアでライフセーバーと一緒にトレーニングしているという平井は、
「でも、いい勉強になりました」
 と、潔く負けを認めていた。

 リレー種目は地元、西浜SLSCがオーシャンウーマンリレー、オーシャンマンリレー、男子ボードレスキューの3種目を制し強さを見せつけた。

 精鋭揃いの西浜SLSCだが、オーシャンウーマンリレーではスイムの上野真凛が、オーシャンマンリレーではやはりスイムの上野 凌が、見事なボディサーフィンで優勝に貢献した。

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 2人はジュニア出身の兄妹で、兄の凌は大学1年生、妹の真凛は高校3年生だ。子どもの時から海に親しみ、ガードでも競技でも戦力となるメンバーを育てる……。西浜SLSCが目指す一つの理想型が実現した全日本だった。

 オーシャン競技で圧巻だったのが、男女のボードレスキューだ。
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 男子は長竹、荒井の息の合った西浜SLSCペアが、予選も決勝も、一つの波に乗り続ける安定感と抜群のテクニックで、余裕のフィニッシュを決めた。
 ダブルサイズの波を難なく滑り降りると、高々とガッツポーズを上げる2人。惚れ惚れするようなシーンだった。

 女子ボードレスキューでも、男子顔負けのライディングが見られた。予選で観客を唸らせたのが、湯河原LSCの植松知奈津と三木玲奈。ピックアップから間もなくして波を掴むと、そのまま一気に波打ち際まで到達。男子からもヤンヤの喝采を浴びた。

 LSweb だが、続く決勝で魅せてくれたのは、栗真千里と河崎尚子の銚子LSCだった。こちらも沖から浜まで一つの波に乗り続け、圧勝でボードレスキューを制した。ラフなコンディションでも、いつも楽しそうにクラフトに乗る河崎だが、さすがに決勝レースでは少し緊張した表情を見せていたのが印象的だった。

 総合優勝は地元、西浜SLSC。
 2位の日体大LSCに12ポイント差をつけ、3連覇を達成した。表彰式も終わり、江の島の灯台が夜の海を照らす頃、同クラブで競技部理事を務める荒井洋佑が胴上げで宙に舞った。

LSweb その様子を横目で見ながら、来年こそは……の誓いを新たにしたクラブも多かったはずだ。
(選手敬称略)

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★☆「第40回全日本ライフセービング選手権大会」成績表☆★



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女子サーフスキーレース

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男子レスキューチューブレスキュー

 
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男女ビーチスプリント

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男女ボードレース

 
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男女ビーチフラッグス

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男女サーフレース

 
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男女2kmビーチラン

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男女ボードレスキュー

 
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男女ビーチリレー

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オーシャンウーマン/オーシャンマンリレー

 
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