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第27回全日本ライフセービング種目別選手権大会 競技レポートVol.1
2014/06/03
The 27th Japan National Lifesaving Individual Championships Report Vol.1
今年最初のオーシャン競技・メジャー大会
各種目でトップを獲るのは誰だ!?
6月第一週の週末、千葉県山武市の本須賀海岸で「第27回全日本ライフセービング種目別選手権大会」が開催された。
今大会は、真夏を思わせる快晴の青空の下、広々としたビーチで幾つもの熱戦が繰り広げられた。
まずは、オーシャン種目からお伝えしていこう。
文・写真=LSweb編集室
この日の九十九里は波穏やか
2014年の大会会場となった千葉県の本須賀海岸は、九十九里浜屈指の広々とした長いビーチが特徴的な海岸。ビーチの入口付近にはヤシの木が植えられ南国ムードが漂う。サーフィンスポットとしても人気がある他、貝類特にハマグリが名産の砂浜だ。
大会当日は非常に天気も良く気温も上昇し真夏並み暑さとなった。ただ天候が安定している分、波は穏やかで時折、ウネリが入る程度。サーフスポットとしては少々物足りない。
砂浜はきれいでゴミや石ころも非常に少なくとても良いビーチコンディションだ。
海は広いビーチから想像できるように遠浅となっているが、当日のオーシャンエリアのスタート地点前方には、干潮時でも膝下ほどの潮溜まりができる。その潮溜まりを超えるとまた少し砂洲があってそれを渡り切るとようやく波打ち際へ達するという状況下で大会2日目の競技がスタートした。
インでの波打ち際までの入りで足を取られることなく、スムーズに持っていけるか。また、アウトではショアから上がっても、フィニッシュ直前でもう一度潮溜まりを走らなければならず、競り合いとなった場合は、持久力と精神力で最後の一踏ん張りできるかが勝負の分かれ目になる。
また、大きな波やウネリが期待できないコンディションなので、特にクラフト系は、中盤までにトップとの差がついてしまうと逆転は難しい状況となった。
午前中は、ビーチエリアで、男女のビーチスプリント準決勝、続いて男女ビーチフラッグスの準決勝までが順次行われた。
オーシャンエリアはAとBに分かれ、男子のボードレース2次予選からスタート。続いて男女サーフレース予選、男子サーフスキー準決勝、男女ボードレース準決勝、オーシャンウーマン予選、オーシャンマン準決勝の順で進んでいく。
太陽が真上まで来た頃、いよいよ各種目の決勝がスタートとなった。
まずは、オーシャン競技から見ていこう。オーシャン種目の決勝一番手となったのはサーフレースだ。
女子サーフレースの昨年の上位3人は、三井結里花選手、植松知奈津選手、当時、高校3年生だった高橋志穂選手の順。
今年もこうした実力者が決勝に顔を揃えた。その中で安定した強さを見せたのはやはり三井選手(九十九里LSC)だった。2位には、栗真千里選手(銚子LSC)、3位に堤芽咲選手(国士舘大LSC)が入った。
男子は、1位に日体大LSCの坂本 陸選手が初制覇。右腕を突き上げてフィニッシュラインを切り、喜びを爆発させた。2位には、平野修也選手(東京消防庁LSC)、3位に亀ノ上僚仁選手(勝浦LSC)が続いた。
続いて女子のサーフスキーレースを制したのは、河﨑尚子選手(銚子LSC)だ。中盤以降シッカリと先頭を維持する安定した走りを見せてトップでゴールした。続いたのは館山SLSCの毛利邦選手。3位には、昨年この種目4位で惜しくも表彰台を逃した柏崎LSCの高橋志穂選手がみごとリベンジを果たした。
試合直後、トップ2選手の元へ駆け寄って来た高橋選手。小柄ながら持ち前のガッツでスイムもクラフトもこなす。そんな高橋選手を先輩2人が笑顔で祝福していた。
男子のサーフスキーは熟練の技術を持った男たちが、毎回熱い戦いを繰り広げてくれる。松沢、内田、篠田、長竹、落合、林、出来谷、草柳、荒井…。今年も役者は揃っている。さて、一体誰が最初にフィニッシュするのか?
最終ブイを回った時点で、トップに立ったのは黒に黄色のラインのキャップ、地元九十九里LSCの出来谷啓太選手か。それを追従しているのが、東京消防庁LSCの落合慶二選手、勝浦LSCの篠田智哉選手と内田直人選手辺りで後は横一線で並んでいる。
ここで一発いい波が入ってくれば、状況もまた変わったのだろうが、今日の本須賀の海は優しく起死回生の逆転劇は起こらず。
そのまま、出来谷選手が1着でゴール。続いて篠田選手、3位に落合選手が入った。
みごとレースを制した出来谷選手は試合後、次のようなコメントをくれた。
「九十九里ライフセービングクラブに所属していて、今大会はホームビーチだったので気合いが入っていました。ボードレースは失格してしまって不甲斐ない成績だったので、スキーは是が非でも勝ちたかった。結果が出て良かったです」
鎬をけずり、ボードレースの頂点に立ったのは
この後もオーシャンエリアではクラフト競技のボードレースが行われた。
まずは女子のボードレースから。
昨年この種目を制したのは、西浜SLSCの篠郁蘭選手。昨年は波もありタイトなコンディションの中、オーシャン4種目完全制覇を狙っていた絶好調の三井結里花選手を押さえての1位だった。
今年、女子の頂点に立ったのは同じく西浜SLSCの上村真央選手。2位の名須川紗綾選手、3位の水間菜登選手といった日本代表ハイパフォーマンスチームの実力者を押さえての堂々たる優勝だった。
上村選手は、先週末に行われた「神奈川県ライフセービング選手権大会」にも出場し、みごとボードレースとオーシャンウーマンの2冠を達成しており、その好調をキープしての2週連続優勝となった。
レース直後、今大会の優勝の味と好調の要因を聞いてみた。
「大学からこれまで6年目なんですが、大きな大会の一番上に立ちたくてずっとやってきたので、凄く嬉しいです。昨年までは入賞止まりだったのですが、西浜SLSCに入って康介さんや洋祐さん、郁蘭さんたちと一緒に練習させて貰うようになって結果が出るようになったので、みんなのお陰です」
じつはこのレースの最中に、日本代表の荒井閑コーチ(西浜SLSC)から、上村選手は冬場の厳しい練習でも凄く一生懸命する子だという話を聞いていたので、そのことを質問してみた。すると、これまでの練習や辛かったことなどが思い出されたのか、一気に涙があふれ出した。
「冬場の寒い時期に練習するのは凄く辛いんですけど、西浜の皆さんがいつも前を向いて頑張っている姿を見て刺激を貰いました。
正直、何回も挫けそうになったんですが、皆さんのように〝諦めずにやり続ける〟という姿を私も見せたいし、諦めたくないなと思ってやり続けたことがこの結果に繋がったので、本当に西浜のみなさんのお陰です」涙ながらに一生懸命答えてくれた。
上村選手の話を聞いて、ありきたりだが「練習は自分を裏切らない」という言葉が瞬時に浮かんできた。それと同時に、これが個々の強さを引き出すクラブの伝統というものであり、目に見えない力なのだと改めて教えて貰った。
さて、次は男子ボードレースだが、こちらも最後まで目が離せないレースとなった。
男子のボードレースといえば、日本代表の長竹康介選手(西浜SLSC)がその筆頭に上がるだろう。もちろん、この大会昨年の優勝者であり、誰もが目指す存在である。
そんな絶対的存在を押し退けてみごと1位の栄冠に輝いたのは、東京消防庁LSCの小出大祐選手だった。最後は西浜SLSCの荒井洋祐選手とラン勝負にまでもつれ込み、フィニッシュラインまでデッドヒートを繰り広げ僅差で勝利をものにした。長竹選手は3位でフィニッシュした。
「(うれし涙で言葉を詰まらせながら)初優勝なので感無量です。ここは僕の好きな遠浅のビーチなので得意のインが生きる状況だったので、うまくインを決めることができれば行けると思っていました。
決勝ではインに集中して試合に臨みました。スタートはうまくいきましたが、途中で後ろから(長竹)康介さんや(小林)海たちに追いつかれたんですけど、凄く冷静にレースができたのが良かったと思います」と小出。
最後のデッドヒートの場面を改めて問うてみると、
「2位の洋祐さんはいつも一緒に練習させて貰っている仲なんですが、練習の時から〝絶対負けないぞ〟という強い気持ちでやっていましたのでその気持ちがでたと思います。
それから、いつも家族が応援に来てくれているのですが、これまでなかなか1位がとれなかったので、こういう結果で家族に恩返しできたかなという思いと感謝の気持ちですね」と振り返ってくれた。
そして最後に一言、
「何回やっても康介さんには勝てなかったので、今回勝てたのがとても嬉しいです」
一方、今回くしくも3位に終わった長竹選手からは、
「今回は調整不足で結果が出ませんでしたが、これからまだまだ頑張りますよ」という力強い言葉が返ってきた。今後も長竹選手を目標とし、隙あらばトップを狙おうとするライバルたちとの熱い戦いが続きそうだ。
◎
種目別はまだまだ白熱した競技が目白押しだが、少々長くなりすぎたので、この続きは次回パート2でご紹介することにします。ぜひお楽しみに!!
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