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第27回全日本ライフセービング種目別選手権大会 競技レポートPart.2
2014/06/03
The 27th Japan National Lifesaving Individual Championships Report Vol.2
まだまだあるぞ! 種目別、
オーシャンマン/オーシャンウーマン〜男女ビーチフラッグス
晴天の千葉県山武市本須賀海岸で「第第27回全日本ライフセービング種目別選手権大会」が行われた。
本格的な夏を前に行われる海での競技大会。
来たるべきシーズンに備え、体力や技術の向上を目指しながら、
仲間とともに競い合い、頂点を目指す。
そんな種目別の大会は、まだまだヒートアップした戦いが続いた…
文・写真=LSweb編集室
今年の種目別、オーシャンのキングとクイーンは?
大会2日目の午後ともなると、各種目とも決勝の1レースを残すのみとなるので、どんどん進行していく。
オーシャン競技のラスト飾るのは、オーシャンマンとオーシャンウーマンの2レースだ。
今大会の競技順はスイム、ボード、スキーの順番で競われた。この順番、出場する選手たちにとっては非常に重要だ。各選手には大なり小なり得意、不得意がある。そのため、どの競技が最初に来るのかによって、戦術を考えなければならない。
選手たちは、最初のスイムでスタートダッシュをかけるのか、或いは得意のクラフト系で後半勝負をかけるのかといったことを、当日の相手やエリアコンディションも踏まえて組み立てていくのだ。
ちなみに撮影する際も、優勝候補や有力選手の戦術を想像しながら、それぞれの選手を追っている。そうすることで、一瞬のシャッターチャンスもできるだけ逃さず対応できるし、何より見ていても面白いのである。
ちょっと話がそれてしまって失礼。本題のレースに戻ろう。
まずは、オーシャンウーマンだが、昨年この種目を制したのは、九十九里LSCの三井結里花選手だ。昨年の種目別は圧倒的な強さで、その存在感を見せつけた。
今年もその三井選手を中心に、茅ヶ崎SLSCの那須川紗綾選手や昨年の早稲田大学LSCの原動力となった大山玲奈選手といった選手がレースを引っ張った。
そこに先のサーフスキーレースで3位に入った柏崎LSCの高橋志穂選手やボードレースで悲願の優勝を果たし、絶好調の西浜SLSC上村真央選手なども絡み、レースは終盤へと移っていった。
このレースを制したのは、やはり三井選手。
得意のスイムでスタートダッシュを決めると、終始リードし1度もトップを譲ることなくフィニッシュ。スイムだけでなくクラフトの抜群の安定感を見せてくれた。2位には那須川選手、3位に大山選手といった実力者がしっかりと表彰台をゲットした。
この種目で健闘したのが、若狭和田LSCの山本 裕紀子選手だ。
昨年の6月からスキーの練習を始めて、10月の全日本LS大会で4位入賞という鮮烈なデビューを飾った。もともと競泳出身で先の全日本プール選手権でも記録を更新して表彰台に上がっている。
今回は、後半にクラフトが続き、しんどいレースとなったが、5位入賞は立派な成績。クラフト次第でトップも狙える有望選手だ。
一方のオーシャンマン、最初のスイムをトップで上がって来たのは早稲田大LSCの榊原司選手。2番手に新島LSCの園田俊選手が続き、後続は東京消防庁LSCの落合慶二選手や湯河原LSCの三木翔平選手、西浜SLSCの長竹康介選手などが混戦状態で上がってくる。
ボードで榊原選手を抜きトップに立った園田選手はそのまま後続を抑えきり、みごとタイトルを手に入れた。
競技が終わった直後、今回のレース種目の順番を含め、レース全体を振り返って貰った。
「自分としてはあんまり得意な順番ではないです。オーシャンスイムが好きなので、スイムが最後の方が良かったんですけど、条件はみんな一緒ですから。
地形もいつもと違ってたし、ウネリがあるレースも久々だったので、とにかく楽しむことを一番に考えて臨みました」
スキーがウィークポイントだったという園田選手は、西浜SLSCのスキーの上手いメンバーからアドバイスや練習方法を教えて貰い、流通経済大学の後輩たちと練習を共にしてお互い高めあうことができた結果なので、皆さんに感謝しいと、笑顔で語ってくれた。
ビーフラは、ヒリヒリした展開に
ビーチエリアでも2日目の朝から、男女ビーチフラッグスとビーチスプリントの予選が始まっており、徐々にヒートアップしていく気配が感じられた。
じりじりと照りつける太陽が、砂を熱く焦がすなか、ビーチスプリント決勝の時を迎えた。
昨年優勝した銚子LSCの栗真千里選手はいない。決勝の顔ぶれを見ると、ビーチフラッグスのトップ選手である館山SLSCの藤原梢選手や勝浦LSCの但野安菜選手、成城学園LSCの利根川莉奈選手といったフラッグの選手が揃った。
いいスタートからスピードに乗って抜け出したのは、真っ赤なキャップの藤原選手だった。そのままフィニッシュを駆け抜けてみごと優勝。この後のビーチフラッグスにも良い流れで入って行けそうだ。
2着には日体大LSCの長野文音選手、3着には但野選手が入った。
続いて男子。昨年この種目の表彰台トップに上がった日体大LSCの石井雄大選手や西浜SLSCの小田切伸矢選手などいずれも韋駄天たちが決勝へ駒を進めてきた。
勝負をかけた最後の一本をみごと制したのは、小田切選手。僅差で2位に石井選手が続き、昨年の同種目の1位と2位が入れ替わった形で決着がついた。3位には昨年7位だった鴨川LSCの森谷絢太選手が入った。
次はいよいよ注目度の高い男女のビーチフラッグスの決勝がスタート。
レースは、男女交互に行われ、毎レースごとに一人ずつ減っていく。スタートの瞬間だけ訪れる一瞬の静寂の回数が増えていくにしたがって、会場のボルテージも徐々に高まっていく。
女子の注目はなんといっても藤原梢選手だろう。
膝の大ケガから復帰してレースに戻ってきたのが昨年10月の全日本LS選手権。その時は3位という結果に終わったが、自身復活の手応えは掴んでいたようだ。
藤原選手は、大方の予想通り、順調にクリアし続け最終レースまで勝ち残った。
ベスト3に残ったあとの二人は、勝浦LSCの但野安菜選手と日女体大LSCの川崎汐美選手。このうちラストゲームに駒を進めたのは但野選手だった。
藤原選手と但野選手の一騎打ちとなった最終レース。但野選手は昨年の種目別とインカレでこの種目を制している若手実力者の筆頭だ。
このレースを制したのは、藤原選手だった。
フラッグをキャッチする最終局面では、しっかりとフラッグの正面から両手で押さえに行く盤石の体勢で但野選手を退けた。藤原選手は、今大会ビーチスプリントと合わせてみごと2冠を達成。完全復活を果たした。
試合後、藤原選手にいろいろと話を聞かせて貰った。
「この種目別は、今年の秋に行われるLS世界大会の選考対象に入っているというのを以前から聞いていたので、しっかり標準を合わせて調整して来ました。一番上をしっかりと狙っていました」
ハッキリと「狙っていました」と言い切る言葉には、非常に強い意志と確固たる自信が漲っていて圧倒的な力強さを感じた。
そんな藤原選手だが、じつはビーフラのスタートが以前と比べて変化しているという。意識して変えたのかと聞いたところ、意外な答えが返ってきた。
「じつは前のスタートができなくなっちゃって、仕方なく今のスタート方法でやっているという感じなんです。今できるところでアベレージをとにかく高く保とうというなかで、やっぱり速かったり遅かったりという波があるのでスタートがひとつのカギでした」
スタートが変わってしまった原因は、どこに起因しているのか解っているのかと聞いてみたところ、
「ちょっと解っています」といってあとは笑って上手くごまかされてしまった。
続いて、前のスタートに戻したいのかと尋ねたところ、即座に「戻したいです!」という言葉が返ってきた。藤原選手はその理由を次のように説明してくれた。
「前のスタートの方が無駄がなくて一歩目までの繋がりが凄くよかった。スタート→走るという動作が凄くスムーズに繋がっていたので、そのスタートに戻したいのですが、今回は今できているスタートで調整してきました」
その時の状況に応じて臨機応変に調整してある程度まで仕上げることができるというのは、これまでの経験と練習のたまものなのだろう。
「どこまでやったらどこまで上がるかっていうのは、自分のなかでは解っているので、あとはケガとの付き合い方とか細かい部分の微調整だけですね」と語る藤原選手。
このスタートが修正されたとき一体どんな素晴らしいレースを見せてくれるのか、非常に楽しみなところである。
続いて、男子のビーチフラッグス。
今年の決勝レースでは中盤からクラブ対クラブの一騎打ちのような様相を呈してきた。ベスト5に残った選手の内、2人が西浜SLSC、残りの3人が式根島LSCというマッチメイクとなったのだ。
これは珍しい上に選手にとってはやりづらい状況だろう。
個人競技とはいえ、同じチーム同士でフラッグを奪い合い、つぶし合うのは避けたいと思うのが普通の考え方だ。
コースの並び順やスタートのタイミングにもよるだろうが、どのフラッグを獲りにいくのか? 誰と交錯するのか? 見ている方もこれまでになくワクワクしてくる状況になっているのは間違いなかった。
まずは5人から4人の段階で式根島LSCの野口勝成選手が外れ、西浜と式根島の図式は2対2のイーブンとなった。
次の一人も式根島の上遠野元太選手が外れ、表彰台が確定したのは西浜の植木将人選手と小田切伸矢選手、そして式根島の和田賢一選手の3人となった。
注目の3位決定レース、競り合ったのは植木選手と和田選手だった。
ほぼ同時に手を伸ばしてダイビングをする2人。舞い上がる砂の中からフラッグを掲げたのは和田選手だった。
昨年の全日本LS選手権大会の最終レースで対戦したときは、植木選手に軍配が上がったが、今回は和田選手が勝ち取った。植木選手の3位が確定し、ラストレースは和田選手と小田切選手という対戦となった。
ここまで激しい熱戦をくぐり抜けてきた2人。最後のレースをみごと制したのは、和田賢一選手だった。
終盤は完全に小田切選手の前に身体を入れ、両手でしっかりとフラッグを掴み取った。最後まで熱く厳しいレースを戦い終えた両者は砂だらけの身体でお互いの健闘を称え合っていた。
勝者の和田選手に今大会のポイントになった点を聞くと、
「今大会、良いか、悪いかでいえばあまり調子は良くなかったんですけど、調子が良くないなかでも結果が出せるというところまで、自分のアベレージを上げられるように練習できたというところが、今回のポイントかなと思います」
と語ってくれた。そして最後にメッセージを一言。
「アスリートの多く方がそうだと思うんですが、僕も式根島のクラブの方々やその他、本当に多くの方に支えて頂いています。式根島の若いメンバーも着々と実力をつけてきています。一歩一歩成長していくなかで、日本という国の中だけでなく、世界の中で日本という国の認識が上がることが、ライフセービングの普及にも繋がっていくと信じているので、ぼくもそれを志す一人として頑張っていきたいと思います」
残すは、男女の2キロビーチランのみ。女子は、日女体大LSCの新星、大井麻生選手が初優勝。2位は、廣江史子選手(大体大LSC)、3位に山田美月選手(日体大LSC)が入った。
高校時代、テニス部に所属していたという大井選手。
「部活では打ち合いのラリーよりも、球拾いで駆けずり回っていた感じなので、そこで持久力がつきました。
ビーチコンディションもよく、砂が硬めで走りやすかったのでイメージ通りの走りができました。狙っていた種目なので、自分の思い通りの走りができて結果が出せたので嬉しいです」
スイムは余り得意じゃないという大井選手。今後の目標として、ボードを練習してボードレースにも挑戦していきたいと語ってくれた。
男子は、国士舘大LSCの須藤凪選手が、ゴール直前まで追いすがる日体大LSCの河上尚輝選手を振り切りフィニッシュ。3位には実方和也選手(勝浦LSC)が入った。
◎
今年の種目別は九十九里の本須賀海岸ということで、昨年行われた舞阪海岸ほどでなくとも、オーシャンでは波のある適度にハードなコンディションを密かに期待していたが、連日、気持ちよく晴れ渡り、穏やかな状態での開催となった。
そして、日本ライフセービング協会(JLA)はこの度、小峯力前理事長から入谷拓哉新理事長へバトンタッチし、新体制へ移行して初の競技会開催となった。
これから先、日本のライフセービング界をより発展させるための協会の今後の活動に期待していきたい。
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