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全日本プール Day1
0.1秒に潜在するライフセーバー魂
2015/05/19

The 28th Japan National Pool Lifesaving Championships

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第28回全日本
ライフセービング・プール競技選手権大会


2015年5月16〜17日、神奈川県横浜市の横浜国際プールにて「第28回全日本ライフセービング・プール競技選手権大会」が開催された。

高校生から社会人まで、49チーム、652人が参加した今大会。記録の裏にある選手たちの思いに迫った。



文・写真=LSweb編集室




今大会の日本新は男女合わせて5つ

LSweb 今大会で更新された日本記録は、男女合わせて5種目。

 記録ラッシュに沸いた昨年(男女合わせて8種目で日本新を記録)と比べると、数字的には少し物足りない大会となった。しかし、記録の影にはいつもの大会と同じように熱いライフセーバー魂が潜んでいた。

 大会初日、最初の種目は200m障害物スイム。

 女子は銚子LSCの栗真千里が2分16秒65の大会新記録で連覇を達成した。今春から成城学園中学の教員となった栗真は、同校の水泳部顧問、ライフセービング部コーチも務める。教え子が見守る中でのレースとなった。
 
 「前半は押さえて、後半で追い上げる作戦でした。とはいえ、少し差が広がっていたので一瞬、マズイかなと思いました。LSweb
 でも体の中にまだパワーが残っていたので、大丈夫! いけると。生徒たちの前で優勝できて格好がつきました」と満面に笑みを見せた。

 2位は早稲田大学LSCの高柴瑠衣。3位には湯河原LSCの小口綾乃が入った。
 
 日体大競泳部出身の小口は社会人2年目になり、時間的な余裕ができた今期から、本格的にライフセービングに取り組むことにしたそうだ。

 「競泳時代は800mを得意としていました。ライフセービングの大会に出場するのは初めてですが、この緊張感がたまらないですね。未知なる世界で自分のモチベーションを上げるためにも、大会に出るのは良い刺激になります。記録は……今後に期待してください」と力強い言葉を残した。

 男子は成蹊大学LSCの森田大地が2分05秒11で優勝。

LSweb 「2分3秒台を狙っていましたが、練習不足で本当に調子が悪かったので、とにかく前半から飛ばしていきました。案の定、後半はバテバテ。追いつかれなかっただけでも良かったです」と苦笑い。
 新入生勧誘などに力を入れ、なかなか練習時間が取れなかった、と悔しそうな口ぶりだった。

 15年連続で全日本プールに出場しているというのが、和田浦LSCの草柳尚志。

 「どんなタイムで泳げるか、それが今の自分の実力を測るバロメーターになっています。記録を狙っていた学生時代とは違い、ライフセーバーとしてしっかりトレーニングできているかを知る手だての一つです」と落ち着いた声で話す。

LSweb レース後にタイムを聞くと、「もう少しトレーニングしないとダメですね」という答えが返ってきた。

 奇しくも同じ思いを口にしていたのが、新島LSCの田村浩志。

 後輩たちからレジェンドと尊敬される田村もまた、自らの実力がパトロールできる基準に達しているか見極めるバロメーターとして、全日本プール選手権に出場していると話していた。

 「いやぁ今年はリレーにも駆り出されてしまって、大丈夫かな」と言いつつ、なんだか楽しそうな田村だった。

レベルアップはライフセーバーの使命

 女子100mマネキントウ・ウィズフィンは、勝浦LSCの水間菜登が1分03秒37の日本記録で優勝した。

 昨年の大会で「フィンスイムの泳ぎ方が分かってきた」と話していた水間。
 1年間でさらにフィンスイムのコツを掴んだようで、全盛期のイアン・ソープ選手を彷彿させるような、ゆったりした伸びやかな泳ぎで、自身が持つ記録を更新した。
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 男子は西浜SLSCの上野 凌が、届いたばかりというグライドフィンで出場し、クラブの先輩である長竹康介を押さえて優勝した。タイムは56秒60。

 「大会の3週間前に届いたんです。練習で長く履けるフィンではないので、まだまだ自分のものにできていなくて……。これでレースに出るか迷いました。でもチューブを巻くのが上手くいったこともあり、結果が出せました」とホッとした表情を見せた。
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 昨年はごく一部の選手しか使っていなかったロケットフィンやグライドフィンだが、今年は上位に入る選手たちの間でかなり普及していた。これも時代の流れだろう。

LSweb ライフセーバーにとって、最も基本的な技術であるマネキンキャリー。この技術を磨き、泳力を鍛えて記録を更新したのが、50mマネキンキャリーで優勝した辻堂LSCの平野修也と日本体育大学LSCの坂本佳凪子だ。

 坂本は大会新となる38秒34をマーク、連覇を達成した。

 「最初からとばして行こうと思っていました。日本新を狙っていたのでちょっと悔しいです」と少し複雑な表情の坂本だった。

 平野は2位以下に1秒以上の差をつける31秒16の日本新で優勝した。競泳、フィンスイム、ライフセービングと3つの競技を掛け持ちする平野。フィンスイムでは日本代表としても活躍している。

LSweb 「僕の場合は、この3つをやっているからそれぞれのレベルが上がっているのだと思います。ライフセーバーの中には、“競泳はもういい”からとライフセービングを始める人がいますが、その考えには賛成できません。
 トップレベルでやるからこそ、自分のレベルも上がっていく。それは当然のことですよね。競泳にはマスターズの大会がありますし、フィンが速くなりたかったら、フィンスイムの大会に出てみればいいと思います。
 もちろん、その先にはライフセーバーとしての本質があるわけで、だからこそ自分のレベルを上げる努力をするべきではないでしょうか」と平野。

 トップ選手だからこその説得力のある言葉だった。

初日のリレー種目を制したのは?

LSweb 男女ともに日本新を記録したのが100mレスキューメドレーだ。

 女子は九十九里LSCの三井結里花が1分15秒89、男子は湯河原LSCの安藤 秀が1分05秒88でみごと優勝を果たした。

 序盤から、隣のコースを泳ぐ昨年優勝者の栗真とデッドヒートを繰り広げた三井は、後半、栗真との差をジリジリと広げ接戦をものにした。

 「私、前半はいつも遅いんですよ。
 今年は社会人2年目になり、なんとか大会に間に合わすことができました」と笑顔を見せた。
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 三井とは対照的に、前半から飛ばしていったのが安藤だ。
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 「1分4秒台を狙っていたのですが、ターンで滑って、潜水が上手くできなかったのが失敗です。
 先日、フィンスイムの大会にも出場しました。フィンはあまり練習していないので成績はさっぱりでしたが、小刻みに大会に出ているほうがモチベーションが上がるので試してみたのです。ライフセービングももう少し大会があるといいですよね」と言うと、2位でクラブメイトの大島圭介と握手を交わした。

 大会初日に行われたリレー種目は、4×50m障害物リレーと、4×25mマネキンリレーの2種目。
 女子は2種目とも日体大が制し、総合優勝に向け着実にポイントを積み重ねていた。
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 男子の障害物リレーは湯河原LSCが1分46秒91で優勝。マネキンリレーは日本大学SLSCが東海大学クレストを振り切り、1分15秒51の大会記録で優勝した。

「新歓の海練などに時間を割かれ、プールでの練習はあまりできませんでした。だから最後まで引き継ぎの練習をしていたのですが、やりました!」と歓喜の日大メンバー。
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 荒生拓人、中村夏貴、大野祥吾、那須凛斗とマネキンを引き継ぎ、リレーに強い日大を実証した。


 熱戦はまだまだ続くのだが、その様子はDay2のレポートでお届けしよう。(敬称略)


【第28回全日本ライフセービング・プール競技選手権大会 成績表】



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200m障害物スイム・男女

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100mマネキントウ・ウィズフィン・男女

 
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50mマネキンキャリー・男女

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100mレスキューメドレー・男女

 
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4×50m障害物リレー・男女

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4×25mマネキンリレー・男女








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