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2016年度LS種目別日本一決定戦!
第29回全日本ライフセービング種目別選手権大会・Vol.1
2016/06/21

The 29th Japan National Lifesaving Individual Championships 2016.6.11〜12

LSweb各種目の2016チャンピオンの称号は誰の手に!?

6月11〜12日、福井県高浜町で「第29回全日本ライフセービング種目別選手権大会」が開催された。

大会会場となった若狭和田海岸は若狭湾国定公園内にある風光明媚な海水浴場。

遠浅の海は青く澄んでいて一目見るなり誰もが水に飛び込みたくなる美しいビーチで行われた今回の種目別選手権。

梅雨時期の蒸し暑さにも負けじとヒートアップした大会の様子を振り返ってお伝えしていこう。

文・写真=LSweb編集室





大会遠征の意義と楽しみ

LSweb 記事のリードでも書いた通り、若狭和田は遠浅で透明度が高く本当に美しいビーチ。

 聞くところによるとFEE(国際環境教育基金)が審査し優れたビーチを認定する「ブルーフラッグ」環境認定基準をクリア、2016年にアジアで初めて承認されたビーチだという。

 関東圏からのアクセスは若干遠いものの、参加した選手・関係者はその環境の良さを大いに気に入ったよう。そんな若狭和田ビーチで繰り広げられた今年の種目別には49チーム、437人(主催者発表)が参加した。

 前回に比べて参加人数が減ってしまったのは少し寂しい気もするが、地方開催ということで致し方ない部分もあるだろう。
 
 開会式で選手宣誓を行ったのは、地元で活動している若狭和田LSCの山本裕紀子。

 日本代表で実力があり、関西人らしいノリとしゃべくりで周囲を明るくしてくれる彼女。今回はホストクラブメンバーということもあり、取材対象としてより注目させてもらった。

LSweb レースでの彼女の活躍奮闘ぶりは、これからのレポートをお読み頂くとして、大会終了後にいろいろとインタービューさせて貰った中で、とても印象的な話があった。
 競技レポートに行く前に、ホストクラブを代表するメッセージとして彼女のコメントを紹介させてもらいたい。

 「今大会の目標として競技での結果はもちろんですけど、もう一つ(若狭和田に)来てくれた人たちにこの地の良さを理解して頂き大会を楽しんで貰うことでした。

 だから『ユッコさんが綺麗やっていうからどの位綺麗かと思っていたけど、ほんと想像以上に綺麗な海だね』っていってくれて、そやろっ! ほんまやろっ! 分かってくれた!!って(笑)。そう言って貰えたのが一番嬉しかったです。

LSweb それから、入谷理事長さんが開会式の時に、『全国にライフセービングクラブがあって大会のたびにそれぞれが時間をかけて出向いて行っている。今回は、関東の人たちが7時間8時間という長旅でここまで来てくれたました。ご苦労様です』という趣旨の話をして下さいました。
 
 日本全国にクラブがあって、地方から長時間移動して大会に参加する選手やオフィシャルの気持ちを理解して話して頂けたのがとてもよかったです。

 遠くてもその地に赴いてどういう浜でみんなが命を守っているのかを大会を通して見て感じることって、とても大切なことだと思うんです。そうすることによってライフセーバー同士がより繋がりあえる気がするんです。

 今回はたまたま若狭和田で開催させて頂いたんですけど、この大会に来てくれた選手の皆さんには本当にありがとうといいたいですし、長旅の疲れも見せずに素晴らしいレースをしてくれた皆さんに感謝したいです。みんな、ありがとう!」
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 サーフレース女子、波乱の幕開け
 
LSweb 大会1日目は、地方開催ということもあり、正午からの開会式に続いて、各種目の予選ヒートが行われた。

 大会2日目は7時30分から競技開始。海ではオーシャンマンの予選から、ビーチではビーチフラッグスの準決勝からスタートとなった。

 そして種目別最初の決勝レースは、男女のサーフレース。

 女子から始まったこのレース、スタート直後からスイムで一気にトップに立ったのは、地元開催で気合いの入っている若狭和田LSCの山本裕紀子だった。

 大会でサーフレースに出るのは記憶にないくらい久しぶりだと語っていた山本。今大会は地元開催ということもあってボードレースも含め、オーシャン競技は全てにエントリーしていた。

 地元の期待通りトップで沖のブイを通過……と思いきやなにかおかしい。ブイを回るのがやたら早いし、なんだか泳ぐ姿が近くに見える。よくよく確認すると本来回らなければならない白黒ブイではなく、手前に打ってある連ブイを間違えて回ってしまったらしい。


 当の本人は泳ぎに集中していてなかなか気がつかない。その山本を追いかける2〜3人の選手もつられるように手前の連ブイを回りかけるが途中で気づきコースを修正する。しかし先頭を行く山本はそのままかなりの距離を泳ぎ進んでしまう。

 やっと気づき、近くの安全課に確認を取って引き返したものの時すでに遅し。最後尾から必死に後を追うも最下位に沈んだ。
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 そんな山本と対照的にトップを獲ったのは銚子LCの栗真千里だ。
 小さな身体だが、力強い泳ぎは健在。追いすがる鴨川LSCの坂本佳凪子を振り切ってみごと優勝を手中に収めた。2位に坂本、3位には西浜SLSCの上野真凜が入った。

 イージーミスで不本意な結果に終わった山本。

 「泳ぎの調子がよくて、〝お、これはいけるな〟と思っていったんですけど、なんで間違えたのかって言われても自分でもホンマにわかんないんですよ。身体が勝手に曲がっていちゃったっていうか……(苦笑)。

 夢中になりすぎてて気がついたらもうブイを相当通り過ぎていて。タラレバの話ですけど、間違えずにいっていれば勝てるチャンスがあったと思えるレースだっただけになおさら〝やってしまった感〟でいっぱいでした」

LSweb 決勝に残ったレース1発目で犯してしまったミスで自らにプレッシャーをかけることとなってしまった山本。救いは、残りのオーシャン種目全てで決勝に残っていることだ。

 今後のレースでこのミスを帳消しにする活躍を見せ、地元で結果を残すことができるのか。

 当の本人には申し訳ないが、見る側、応援する地元の人々にとっては、またひとつワクワクどきどきさせるストーリーが生まれたレースとなった。
 
 続く男子は、湯河原LSCの西山俊が安定した泳ぎで後半も徐々にリードを広げて優勝。

 2位には同じ湯河原の安藤秀、3位争いは、大体大LSCの福井佑都や辻堂LCの平野修也を押さえて銚子LCの堀内敦貴が制した。
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ガチンコ勝負のサーフスキー

LSweb 薄曇りの中、気温の上昇と共に各決勝レースも熱を帯びてきた。続いてサーフスキーの男女決勝が始まる。

 まずは女子。スタートからいったのはやはり山本裕紀子。続いて茅ヶ崎SLSCの名須川紗綾、西浜SLSCの伊藤真央、柏崎LSCの高橋志穂あたりが続く。

 最後の第三ブイを回って後半戻りの直線に入るとトップの山本にピッタリと名須川が張り付き並走。

 そのまま2人の一騎打ちが続く。どちらも引かない、意地と意地のぶつかり合いだ。

 ゴール直前でなんとか山本が半艇身ほど抜け出しそのままフィニッシュ。

LSweb 地元開催、そして直前に行われたサーフレースでの痛恨のミスといったプレッシャーをはね除け、サーフスキーでみごと種目別2連覇を達成した山本。

 しかし、フィニッシュ直後の笑顔やガッツポーズはなく、精根尽き果てた表情で上がってきたのはちょっと意外でもあった。

 本人曰く、
 「正直な話し、今大会で一番しんどかったのがサーフスキーでした。名須川さんがピッタリくっついてきてからの彼女との一騎打ちが本当にめっちゃしんどかったです!

 レース後に名須川さんとも話したんですけど、彼女もやっぱりめちゃくちゃしんどかったっていってました。レース直後は手が震えて力が入らず着札がもらえなかったって。お互い二の腕から指先までずっとプルプルしてましたもん(笑)。

 ほんと、とにかくきつかった。名須川選手のポテンシャルはすごいと改めて感じましたし、こんなに漕ぐのがしんどいんやって感じられたのも久々でした。試合では毎回なにかしら得るもの感じるものがありますね」
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 確かに一連の写真を見ると、二人ともフィニッシュ直後にはパドルを手放している。きっと力を出し切ってすでに握る力もほとんど残っていなかったのだろう。二人のデッドヒートに続き、西浜の伊藤真央がみごと3位に入った。

LSweb 続いて男子のサーフスキー。こちらの顔ぶれは百戦錬磨の強者が集結。

 現在、2連覇中の九十九里LSC出木谷啓太を筆頭に、下田LSCの松沢斉、湯河原LSC西山俊、東京消防庁LSC落合慶二、勝浦LSCの内田直人、篠田智哉、西浜SLSC長竹康介、荒井洋佑と誰が勝ってもおかしくないメンツが火花を散らす。

 スタートの合図とともにパドルが回転しスゴイ勢いで水しぶきが上がる。

 第一ブイ付近ではポジション取りで互いのパドルがガシガシ当たっている様子が容易に想像できる。

 最後のブイを回っても8人ほどが横一線に並び、誰が先んじているのかまったく分からない。

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 遠浅でフラットな若狭和田の海では、波やうねりに乗るという手は使えない。最後まで力強く漕ぎ続けることができた者のみが勝利を手にすることができるのだ。

 そんな若狭の海でしっかりと勝利を掴んだのは、九十九里の出木谷。
 大会3連覇という快挙をみごと成し遂げた。続く2位には落合、3位には荒井と日頃の練習仲間が仲良く表彰台に並んだ。
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 試合直後にレースを振り返って、
 「自分のなかで3連覇っていうのがけっこうプレッシャーになっていたんですが、そのプレッシャーを逆に力に変えて〝よしっ、やってやろう〟という気持ちで臨みました。

 スキーに関しては膝からの水中スタートなので遠浅の影響を特に感じることなく、いつもと変わらずいけたんですが、うねりがないので体力勝負になるなというのは分かっていました。

LSweb こうした状況では、特に前半いい位置をとって、後半はいかに楽して漕ぐかという感じでレースをイメージします。結果的に自分の思うような展開にはまったので、かなり会心のレース運びができたと思います」と笑顔で語ってくれた。

 出木谷の3連覇を良きライバルであり友でもある仲間たちがそれぞれ次のような愛情溢れる言葉で祝福。

「すごいとおもいます!」(荒井)
「いやー、ふざけてますね(笑)」(篠田)
「もう人間じゃない、ゴリラですね(笑)」(落合)

 戦い終わって気心知れたもの同士が交わりできた輪からは賑やかな笑い声が絶え間なく続いていた。

浜の韋駄天、今年は誰だ!?

LSweb オーシャンでサーフレースの決勝が終わった後、ビーチではビーチスプリント男女の決勝が始まろうとしていた。

 女子決勝に駒を進めたのは、昨年の覇者である和田浦LSC長野文音、ビーチのスペシャリストでベテランの館山SLSC藤原梢、昨年この種目2位の勝浦LSC我妻菜登。

 もとはスイマーだった我妻は、日本代表に選出されてからビーチ競技も本格的に練習し始めスプリントでも頭角を表すようになった。
 さらに、勝浦LSCの但野安菜、岩井LSCの渡邉来美といった足に自信のあるメンバーが揃った。
 
 そんな強豪のなかに割って入ったのが、和田浦LSCの久保美沙代だ。もとはサーフスキーを得意とするオーシャン系の彼女。今回はスプリントでも見事予選を突破してみせた。
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 横一線のスタートから中盤にかけて抜けだしてきたのは1コースの我妻、5コースの藤原、65コースの長野。

 90mをあっという間に駆け抜け、最初にゴールを切ったのは、長野だった。続いて藤原、我妻の順でフィニッシュ。長野は昨年に続き2連覇を達成した。

 注目の久保も7位と健闘。いろいろな種目にエントリーしてオールマイティに活躍できる選手はそうはいない。今後もどんどんチャレンジしていって欲しい。

 続いて男子は、これまた連覇を狙う銚子LSCの森新太郎を筆頭に、西浜の小田切伸矢、植木将人、式根島LSC和田賢一、東京消防庁LSC本多辰也といったビーフラの常連組に成城学園LSCの高梨友美生といった若手も加わり、それぞれが虎視眈々とトップを伺う。
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 よいスタートを見せたのは、4コースの森、7コースの小田切あたりか。1コースの和田もいい走りをしている。

 後半はこの3人の争いとなり、このレースを制したのは森。みごと2連覇達成となった。2位に和田、3位は小田切という結果となった。


 オーシャン、ビーチ種目とも熱戦はまだまだ続くのだが、少し長くなりすぎたのでここらでひとまず区切りたい。後半はVol.2へと続く(文中敬称略)。


☆★☆「第29回全日本ライフセービング種目別選手権大会」表彰台1 ☆★☆

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サーフレース・男女

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サーフスキーレース・男女

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ビーチスプリント・男女

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