Guard

ガードを支える人々
その1 救護所の看護師さん
2012/08/16

神奈川県藤沢市 片瀬東浜海水浴場・救護所 増渕千晶さん

夏の海水浴場。
ライフセーバーはさまざまな人たちと協力しながらパトロール活動を行っている。
彼らの活動を影ながら支える人たちをクローズアップしてみよう。
まずは救護所の頼れる看護師さんをピックアップ。

文・写真=LSweb編集室




5 歳の男児が熱中症に

晴天で青旗。絶好の海水浴日和の8 月のある日、神奈川県藤沢市の片瀬東浜海水浴場は、海水浴を満喫するグループや家族連れで賑わっていた。
同浜でパトロール活動を行う西浜サーフライフセービングクラブ(西浜SLSC)の監視所に、「子どもの具合が悪くなった」と女性がやってきたのはお昼前のこと。すぐに併設の救護所に待機する女性看護師が、女性におぶわれた男の子の様子を診察した。
「体が熱いですね。熱中症かな。救護所のベッドで少し様子をみましょう」
と声をかけたのは、海水浴場開設期間中に数日間、ボランティアで救護所に勤務する看護師の増渕千晶さんだ。
増渕さんは氷枕を準備しならが、持病の有無や今日の体調、何時から海に来ているのか、また朝食を食べた時間や量、水分の補給具合などをテキパキとお母さんに質問する。熱を測ると38 度5 分。いろいろな状況を判断して、やはり熱中症だと判断すると、冷静に処置を続けていった。
大人が熱中症になった場合、意識がしっかりしているのならば、日影で休息しながら水分補給をし、濡れタオルや氷のうで脇の下や首筋、額などを冷やすことで改善が見られる場合が多い。汗をかいたり、排尿することでも体温が下がるので、水分を十分に補給し、強制的にトイレへ行くのも効果があるそうだ。
しかし子どもの場合は、注意深く観察を続ける必要がある。大人に比べ体力のないため、容体が急変する可能性があり、また回復したように見えても、夜中に再び容体が悪くなりこともあるからだ。この日、救護所にやってきた男の子も、意識はあり、水分補給もできる状態だったが、氷枕を嫌がり、おしっこも(汗も)出ないため、熱が下がらない状態が1 時間ほど続いた。
「氷枕を嫌がるのは、体温が高いために氷枕が冷たすぎて痛いからだと思います。おしっこが出るといいですけど、水分補給してもトイレに行きたくならないというのは、ちょっと心配ですね」
と増渕さん。海で遊ぶことを楽しみにしていた男の子にはかわいそうだが、この日は病院へ行き、点滴を打ってもらうのがいいとお母さんにアドバイス。お母さんも納得して帰宅することになった。

マリンスポーツが取り持つ縁

増渕さんは普段、高齢者の医療現場で働いている。海水浴場の救護所でボランティアをするようになったのは、趣味で熱中するマリンスポーツがきかっけだった。
長年、年間を通して片瀬海岸でウインドサーフィンを楽しむ増渕さんにとって、ライフセーバーは夏の風物詩であり、献身的な活動には敬意を表していたものの、自分がライフセーバー側の人間になるとは思っていなかったそうだ。ところがひょんなことから、西浜SLSCのライフセーバーと知り合い、ぜひ手伝ってほしいと頼まれたことがきっかけで、昨年に続き今年もボランティアスタッフとして救護所に顔を出すことになった。
「私は海水浴期間中、本当に数回しか救護所に来ませんから、あまりお話しできるような立場ではないのですよ」
と言う増渕さんだが、救護所にいることで勉強になることは多いと話す。
「これまでは遊ぶ側の人間として海に来ていましたが、ライフセーバーたちのお手伝いをするようになって、守る側の人たちはどういう思いで行動し、どんな活動をしているのかを知ることができました。ある意味、とても新鮮な体験でもあり、人間を含めた海を取り巻く環境について、再認識することができたと思います」
それに、
「救護所には医師がいませんから、ここでできることはあくまで応急処置です。でもライフセーバーの中には、消防士として救急現場の最前線に立つことを職業としている人もいますから、特に西浜SLSCの場合は多いので助かっていますよ。軽傷の人には明るく、元気に、フランクに接する彼らの姿を見ていると、お手本にしたいくらいです」
と続ける増渕さんだが、親身になってテキパキと応急処置をする姿と、安心感を与える笑顔は、さすが看護師さんだと感服した。


海水浴を楽しむために

頼れるライフセーバーや、優しい看護師さんが対応してくれるからと言っても、救護所のお世話にならないほうがいいに決まっている。そこで看護師である増渕さんから、海水浴を楽しむためのアドバイスを伺った。

●水分補給は定期的に
熱中症を予防するためにも水分は意識的に補給するように心がける。海水浴場ではトイレに行くのが不便な場合もあるが、がまんするのはよくない。水分の補給をしっかりして、トレイにもきちんと行くようにしたい。
●アルコールの飲み過ぎに注意
アルコールを飲んで海に入る危険性は以前から指摘されているが、飲酒した状態で熱中症にかかると、アルコールを飲んでいない時よりも重症化することが多い、ということも肝に銘じておこう。
●切り傷、擦り傷を甘く見ない
普段ならたいしたことのない切り傷や擦り傷でも、雑菌を含む海水や砂に触れると化膿することがある。例えば、新しいサンダルを履いて海に来たら靴擦れができた、というような場合は、ばんそうこうやテーピングなどで保護してから海に入るようにしたい。救急グッズは救護所に常備されている。
●クラゲに刺されたら
救護所で手当てをする応急処置の件数で1、2 を争うのがクラゲによる被害。クラゲの種類によって症状が大きく変わってくるので、クラゲに刺されたと思ったら、救護所(ない場合は警備本部など)で治療してもらうことをおすすめする。








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