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第42回全日本ライフセービング選手権大会・レポートVol.1
運と実力のサーフ編
2016/10/12

The 42nd Japan National Lifesaving Championships 神奈川県藤沢市・片瀬西浜海岸 2016.10.8-9

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北は宮城県(気仙沼LSC)から南は沖縄県(座間味LSC)まで、59クラブ、1220人が参加した今年の全日本。

本戦の舞台には予選会を突破した中学生から、全日本出場歴20年以上の社会人まで、幅広い年齢のライフセーバーたちが集結した。

2日間に渡って熱戦が行われた今大会の様子を、前後編でレポートしよう。


文・写真=LSweb編集室





サーフスキーでいきなり頂上決戦

LSweb 大会初日——。
 朝から降り続いていた雨は、午後になってようやく上がった。

 個人・団体合わせて男女各11種目が予定された全日本。その最初の決勝種目、男女サーフスキーレースは、雲の切れ間から差す日差しの下でスタートした。

 まずは女子。
 スタートラインには、二連覇を狙う山本裕紀子(若狭和田LSC)、表彰台常連の久保美沙代(和田浦LSC)、実力者姉妹の河崎尚子(銚子LC)と河崎綾子(湯河原LSC)、インカレワンツースリーの佐藤礼奈(湯河原LSC)、高橋志穂(柏崎LSC)、今野恵(鎌倉LG)、地元での優勝を狙う伊藤真央(西浜SLSC)、結婚・出産を経て競技復帰した青木邦(湯河原LSC)、さらには小松崎あゆみ(下田LSC)、中村遥(新島LSC)、猪又美佳(茅ヶ崎SLSC)、LSweb尾田依津子(神戸LSC)といった中堅・ベテラン勢が顔を揃えた。

 スタートで真ん中よりから勢いよく飛び出したのは、久保。山本が第1ブイで久保に追いつくと、2人は並漕のまま第3ブイを回ってフィニッシュラインへ。
 そこからパドル力を活かしてうねりを上手く捕らえたのが山本だ。そのままリードを広げ、全日本二連覇を達成した。

 2位争いは久保、高橋、佐藤と同じ波に乗った3人の混戦となったが、久保が粘り勝ち。3位は高橋、佐藤は惜しくもメダルを逃した。

 「スタートは上手くいったのに」と久保。
 「横風が吹いていたので、ブイとの距離を少し多めに空けたら(山本)裕紀子さんに入られてしまいました」と、自身3つ目の銀メダルにも悔しそうな表情だった。
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 スタート前は普段通りにひょうきんな仕草で笑いをとっていた山本は、「情けない話しですが、地元開催の種目別で優勝してから心と体をベストな状態に維持するのが難しくて……。でも(9月にオランで開催された)世界大会で首脳陣の期待に応えることができず、不甲斐ない思いをしました。とりあえず全日本二連覇できて良かったです」とほっとした表情を見せた。
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 海上フィニッシュのサーフスキーは、毎年、最後の最後まで勝敗の行方が分からない大接戦が繰り広げられる。特に実力が拮抗する男子は、複数人がほぼ同時にフィニッシュラインを横切る激戦いになる。

LSweb スタートラインには、昨年の種目別から負けなしの出木谷啓太(九十九里LSC)を筆頭に、内田直人(勝浦LSC)、落合慶二(東京消防庁LSC)、松沢斉(下田LSC)といった優勝経験者、ベテランの大西明(鎌倉LG)や池脇良(下田LSC)、安定した実力を発揮する篠田智哉(勝浦LSC)や荒井洋佑(西浜SLSC)、学生の意地を見せたい牛越智(波崎SLSC)と小林海(大阪体育大学LSC)など、蒼々たるメンツが顔を揃えた。

 スタートの激しいパドル合戦からまず抜けだしたのは篠田。ブイ周りで内田がトップに立つと抜群のスタミナを活かして後続を引き離しにかかる。
 しかし、残り僅かのところで波に乗った後続集団が追いつき、6艇が横一線ままフィニッシュラインへ。

 大混戦からノーズひとつ抜け出たのは出木谷。続いて荒井と篠田がほぼ同着。間髪入れずに松沢、内田、落合が流れ込んだ。
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 新艇で挑み連覇を達成した出木谷は「スタートで失敗して追う展開となりましたが、最後で追いつけたのでここからが勝負だと気合いを入れ直しました。勝因は波を下りきった後にスープに負けないようにしっかり漕げたことですね」と満面の笑み。

LSweb HPT(ハイパフォーマンスチーム)ならぬNPT(ナイスパフォーマンスチーム)で切磋琢磨する良きライバルたちは、「あと一歩、およびませんでした」(荒井)、「ブイにラダーが引っかかったのが痛かったです。出木谷は勝ち癖がついているので手に負えません」(篠田)、「波にはしっかり乗れていたのですが……。まぁ一緒に練習している仲間たちがワンツースリーなのでいいかなと」(落合)と、それぞれ笑顔で祝福していた。

 「ブイを回るまで内田さんと並べていれば、チャンスがあったかもしれません。悔しいなぁ。またがんばります」と口にしたのは、孤高のパドラー松沢。
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 最年長46歳の大西は、学生の牛越と声を掛け合いながら漕いで8位入賞。「入賞できて良かった!」と7位の牛越の背中をポンと叩いた。

オーシャンウーマンは貫禄の圧勝

LSweb 男女レスキューチューブレスキューの決勝も初日に行われた。

 先にスタートした女子は、勝浦LSCと銚子LCが優勝争いとなった。

 溺者役は勝浦LSCの丹羽久美が先着したが、救助者役の我妻菜登がブイに到達する前に大きく曲がってしまう。その間に追い上げきたのが銚子LCだ。

 波打ち際までもつれた勝敗は、一足早く溺者役のピックアップに成功した勝浦LSCの軍配が上がった。
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 男子は日本代表の2人、安藤秀と西山俊が実力を発揮した湯河原LSCが優勝。

 2位は廣田諒、上野凌の若手コンビが活躍した西浜SLSC。そして表彰台最後の一枠は、勝浦LSCと日本体育大学LSCの激戦となった。
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 ドラッガーの溺者役ピックアップはほとんど同じだったが、勝浦LSCの方が少し沖にいた。しかし、日体大LSCのドラッガー一人が波打ち際で足を取られる間に勝浦LSCが追いつき、両チームが横並びでフィニッシュラインへ。
 ラインを越える直前に、再び日体大LSCのドラッガーが砂に足を取られる。必死で腕を伸ばし、体を前に送り出す。勝浦LSCのドラッガーもつられるように足がもつれた。

 どちらが先か?
 着順札を手にして喜びをあらわにしたのは、勝浦LSC。インカレと同じメンバーで挑んだ日体大LSCは僅かにメダルに届かなかった。
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img_8713 大会2日目——。

 朝から激しい雨と南からの強風、雷注意報も発令される荒れ模様の天候となり、競技開始は11時までお預けとなった。

 その結果、参加人数が多く予選消化に時間がかかるボードレースがキャンセルされることに。
 選手はもちろん、観客も、そして苦汁の決断をせざるをえなかった実行委員にとっても残念な結果となった。

 風向きが北に変わり、ジャンクだった海面が収まりつつある中でスタートしたオーシャンウーマンレースで、圧倒的な強さを見せたのが三井結里花(九十九里LSC)だ。

 最初のスイムで大差をつけると、続くボートでさらにリードを広げ、スキーは完全に独走状態。それでも、最後のランまでしっかり全力疾走し、フィニッシュ後も立ち止まることなく軽くジョギングを続けながら、後続選手を待ち続けていた。
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 名須川紗綾(茅ヶ崎SLSC)はボードで一気に2位まで順位を上げたが、スキーのインで痛恨の沈。そのチャンスを見逃さなかった山本(若狭和田LSC)が2位に上がり、名須川は悔しい3位となった。
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 高橋(柏崎LSC)が4位、社会人1年目で環境が大きく変わった高柴瑠衣(鹿島LGT)と奥秋李果(座間味LSC)が5位と6位に入った。

 圧巻のレースを見せた三井だが「ランがまだまだ」だと自己分析する。「ランが弱いとイン、アウトで差が出ますから」という彼女が目指すのは、世界大会での個人メダル獲得だ。

 「世界大会のサーフレースで6位に入賞しましたが、先行グループにいながら、アウトのランで後続に追いつかれてしまった。3位にもなれた6位でした」と話す。その口調に、秘めた闘志が感じられた。
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LSweb オーシャンマンは最初から最後までトップを守った西山俊(湯河原LSC)が完勝。

 ランまでもつれ込む接戦となったのが、園田俊(西浜SLSC)と上野凌(西浜SLSC)の2位争い。一歩も譲らぬ2人だったが、最後は胸の差で園田が勝った。
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 一度もトップを譲らず連覇を達成した西山だが「これで満足していてはダメなんです」と口を開いた。そして「僕の今の目標は(三井)結里花です。世界と互角に戦うには、彼女のように圧倒的に強くなくては」と続けた。
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 ところでこの種目、かつてはスキーが鬼門となり学生ライフセーバーが少なかったのだが、今年はスタートラインに並んだ選手の約半数が学生という顔ぶれに。

 4位は高校3年生の加藤豪(柏崎LSC)、6位の佐藤悠太(波崎SLSC)、7位の小松海登(波崎SLSC)は大学生と、3位の上野も合わせると入賞者の半分が学生だったのは、若いうちからスキーが練習できる環境が整ってきたということだろう。
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 大学4年生の荒生拓人(九十九里LSC)は、「もっと早くからスキーを練習しておけばよかった」と、あと一歩で入賞を逃したことを悔やんでいた。

サーフレースは若手が制覇

 続くオーシャンウーマンリレーでは、ボードで逆転した九十九里LSCが優勝。スイムとボードで粘ってスキーに繋げた湯河原LSCが2位、後半に追いつかれた銚子LCが3位でメダルを死守した。
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 オーシャンマンリレーでは、順位が目まぐるしく変わる熱い戦いが繰り広げられた。スイムの前半は九十九里LSCと大阪体育大学LSCがリードしたが、波を上手く掴んだ西浜SLSC、館山SLSCがアウトで逆転。さらにボードで西浜SLSCに続く2位に浮上したのが西伊豆・松崎LSCだ。

 勝敗はスキーに託された。リードを守った西浜SLSCがランへと繋ぎトップフィニッシュ。再逆転に成功した館山SLSCが2位、下田LSCが着実なレース展開で3位に入った。
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 サーフレースは男女ともに大学生が優勝した。女子は坂本佳凪子(日本体育大学LSC)、男子は中谷理人(湯河原LSC)、2人とも大学4年生だ。

 「ブイを回った時は10番ぐらいでした」と言う坂本。
 「後半バテてしまうのが自分の課題。でも今日は波に乗れると信じて最後までがんばりました。最初の波に乗りきれなかったのですが、すぐに次の波が来て、2回乗れたのが良かったです」と、日本代表の三井(九十九里LSC)を抑えて2014年以来となる二度目のタイトルを手にした。
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 中谷は「いやぁ〜びっくりです」と驚きを口にした。
 「前半は速い人に離されないように、中盤は体力温存、最後は死にものぐるいで波に乗ろうと思っていました。今年はクラブ創立20周年で総合優勝を狙っているので、少しでも貢献したいと思っていましたが、まさか1位になれるとは。嬉しいです」と記録を終えても半信半疑な様子。チームメイトの祝福にも「信じられない」を連発していた。

 スケジュールの変更で予選、決勝と続けざまに行われたボードレスキュー。

 女子は栗真千里・宮田沙依の銚子LCが、レスキューチューブレスキューの借りを返すように、先行する丹羽久美・我妻菜登の勝浦LSC、青木邦・市川恵理の湯河原LSCを逆転して優勝。館山SLSCの高校1年生ペア、津島笑満花・鵜木海緒は8位入賞と健闘した。
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 男子も逆転劇が見られた。勝ったのは西山俊・青木将展の湯河原LSC。先行していた幡野圭祐・岸田興喜の日体大LSCは、波打ち際での逆転を許してしまった。
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 「波を一つ乗り逃がしてしまいましたが、茅ヶ崎寄りから波が消えていくことは分かっていたので、江の島寄りにいる僕らが次の波を掴めば追いつけると確信していました」と青木。気心しれた西山と、冷静なレースさばきで勝利を手にした。

LSweb ところで、同レースの予選に出場した柏崎LSCの高橋志穂と池谷雅美の年齢差は23歳。
 決勝には進めなかったものの、親子ほど年の離れた2人(失礼!)が仲良くレースする姿は、競技人口の拡大を象徴する一コマと言えるだろう。

 レース終了後、「もういいよ〜」と言う池谷に、「また出よ〜よ」と甘える高橋。なんともほほ笑ましい光景だった。

※ビーチ競技の熱戦は後編でお届けします。(文中敬称略)

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LWC2016 日本代表は総合8位
メダルは過去最高の5個獲得
2016/10/05

Lifesaving world championships 2016 in Netherland

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2年に一度開催されるライフセービング競技の世界選手権大会が9月6〜12日の一週間、オランダで開催された。

プール、サーフ&ビーチでレスキュー競技の世界一を争うこの大会。今年は4年に一度開催される「ワールドゲームズ」(2017年にポーランドで開催)の選考大会ということもあり、各国とも強力な布陣を揃えての参加となった。

日本選手団はどう戦ったのか? フル代表として初めての世界大会に挑んだ西浜サーフライフセービングクラブ所属の上野 凌 選手にレポートしてもらった。(LSweb編集室)

文=上野 凌(西浜SLSC)
写真提供=日本ライフセービング協会





開催地と調整

LSweb ライフセービングの世界大会は2年に一度行われ、プール競技、オーシャン競技、ビーチ競技を1チーム6人で戦う。今大会、日本からはフル代表男女6人ずつ、ユース代表3人(男子2人、女子1人)が派遣された。今大会を振り返り、私目線で世界大会のレポートを書きたい。

 開催地のオランダと日本の時差は7時間。プール競技はオランダ西部に位置するアイントホーフェンで、オーシャン&ビーチ競技は北部、北海に面したノールトウェイクで開催された。

 プール会場からオーシャン会場まではバスで2時間かかる。そのため、今大会では、プール競技とオーシャン競技の間に移動日が設定されていた。

 大会5日前に日本を出発し、12時間のフライトの末、ドイツのデュッセルドルフ空港へ。それからバスで1時間半かけ、アイントホーフェンへ到着した。

 翌日からプール組はアイントホーフェンで、ビーチ組はノールトウェイクでそれぞれ最終調整を行った。眠ることを我慢すれば良いだけだったこと、晴れ間も見えていたことから、心配されていた時差はあまり影響しなかった。
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 長時間移動の疲れもあったが、2年間のHPT(ハイパフォーマンスチーム)合宿でもたくさんの指導をいただき、チームに帯同していただいた細川英範トレーナーにもコンディショニングしていただき、日を重ねるごとに、調子を向上させていった。

初日のSERCで2位!

LSweb 大会前日、最終調整を終えたプール組、ビーチ組がアイントホーフェンで再集合。いよいよ明日から本番が始まる。

 大会初日はSERCからのスタートだった。メンバーは世界大会6回目の出場となる長竹康介選手、3回目の三井結里花選手、初出場の平野修也選手と上野凌の4人。

 ロックアップエリアはプールの外の芝生で、通訳として宮部周作さんにも帯同していただいた。最初の種目であり、日本でも日体荏原高校ライフセービング部や館山SLSC、HPTの皆さんにご協力いただき、たくさん練習してきたSERC。ロックアップエリアではとてつもない緊張に襲われ落ち着きがなかった。

LSweb しかし、宮部さんのエールと、今までの練習を思いだすことで、冷静にスタートラインに立つことができた。

 2分間、50mプールで行うSERCは、各メンバーがそれぞれの範囲を的確に対処することが最も重要であった。
 チームメンバーは2分間、全力を尽くしたが、やり残したこともある。そんな心持ちのまま、開会式まで待機していた。そこへ、SERC2位! という速報が飛び込んできた。

 やってきたことが間違いではなかったという想いが溢れ、メンバーで喜びを分かち合った。まずは1枚目!という声。日本チームはいい波に乗り、スタートを切った。
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 その後、開会式。印象はとにかく派手だった。最初はILS会長の挨拶など普通だったのだが、途中からプールに不自然に浮かべられたマリンジェットが動き出し、フライボードとレーザービームによるド派手なショーが始まり、大興奮の開会式であった。

プール競技で銀メダル獲得!

LSweb これまでの世界大会、日本勢はプール競技の個人種目で16位以内であるB決勝に残ることすら難しいとされていた。
 しかし今大会、日本チームは、男子は安藤秀選手、女子は三井結里花選手、我妻菜登選手の素晴らしい泳ぎと技術でB決勝進出を果たし、チームは大きく盛り上がった。

 そして大会2日目のこの日、男子障害リレーで日本代表は2位となり、プール競技史上初のメダルを獲得した。

 メンバーは平野選手、西山俊選手、上野、安藤選手。予選5番通過であったが、日本記録を大きく更新して2番となった。2年前には考えられなかった目標タイムをクリアしての表彰台に、日本チームはさらに盛り上がった。

LSweb プール競技最終日となる3日目、三井選手は出場種目すべてでB決勝進出の大活躍。三井選手が作った勢いで男女ともにマネキンリレーでは日本記録を更新し、得点を重ねた。

 最終競技の男子メドレーリレーを残して、日本は10位。ワールドゲームズ自力出場(プール競技9位以内)はかなわない。日本チームに残された道はメダル獲得しかなかった。

 予選を8位通過だった日本。

 8コースから、一気にトップ争いへ。タイムは予選より3秒も早い日本新記録。しかし、電光掲示板を見ると4位。ところが、3位のオーストラリアがチューブをうまくつかめず失格に。その瞬間、日本チームの3つ目のメダルが確定した。

 そして表彰式中、ワールドゲームズ出場国の発表があった。日本は9位に滑り込み、目標の一つであったワールドゲームズへの出場権を獲得した。
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 プール競技終了後、選手、スタッフ、そしてオフィシャルとして一番近くで見守ってくださった、泉田昌美さん、齊藤愛子さん、田中えりかさんを含めた日本チーム全員で写真撮影。
 プール競技での健闘を称え合い、チームは残る二日間のオーシャン競技を見つめ、準備を始めた。

オーシャン競技でも銀メダル!

LSweb オーシャン競技初日。
 この日、ボードレスキューで栗間選手、我妻選手ペアが2位に入り、2010年エジプト大会の3位を超え、オーシャン競技で過去最高の順位となった。

 2人乗りになったスピードは世界一。グングン追い抜き1位のオーストラリアにもあと一歩というところだった。

 男子も女子もA決勝に多くの選手が進出した。
 女子は三井選手がサーフレースで6位に入る活躍を見せた。男子はインの走力や、スキーのパワーの面で海外勢とは差が開き、サーフレース、スキーレースでは上位進出はできなかったが着実に得点を積み重ねた。

 大会最終日。前日の勢いそのまま、男女ビーチフラッグスでは植木選手が5位、但野選手が4位と上位に入った。日本のビーチフラッグス選手は大きく注目されていて、レース終了後会場は大きな拍手に包まれた。
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 海では男子がボード、オーシャンマンでそれぞれ2人が決勝に進出。女子サーフスキー、オーシャンウーマンでも三井選手は決勝進出を果たした。

 さらに、オーシャンウーマンではオーストラリア、ニュージーランドに次ぐ5位に入るレースでチームに感動を与えた。三井選手はこれで出場した種目すべてで決勝に進出し、得点を取り大きくチームに貢献した。
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 最終種目のオーシャンウーマンリレーは、ボード、スキー、スイムの順で行われた。
 ボードの我妻選手が後続に差をつけ、3位でバトンをつなぐと、スキーの山本選手、スイムの三井選手が差を守り、アンカーの栗間選手へバトンをつないだ。
 チームでつかんだこのメダルに日本チームは感動の涙を流し、劇的な幕切れで大会の全日程を終えた。
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世界大会をふりかえって

LSweb 今回の世界大会で日本は総合8位となり、過去最高成績に並んだものの、目標としていた総合6位には惜しくも届かなかった。個人種目すべてで決勝に進出した三井選手のように、各選手が個人種目でさらに点を取ることが次への課題となった。

 今大会の出場したメンバーは、過去の大会も合わせると全員が世界大会のメダリストとなった。「メダルを輝かせることができるのは今後の活動次第」という言葉を飯沼誠司監督から頂戴し、選手はここで得た経験を次なる目標へとつなげ、ライフセービングのさらなる発展に向け努力していくことを約束した。

 私自身は、高校3年生だった2013年から本格的に世界大会を目指し、プール、海で活躍できる選手になるべく日々トレーニングに打ち込んできた。HPTの合宿では練習の成果の確認と、新たな技術の習得をし、着実にレベルアップを図ってきた。

LSweb 小学生の頃憧れていた選手たちと同じユニフォームを着て、世界の舞台で戦うなんて当時の僕には夢にも思っていなかった。今回の世界大会出場が決まった時はそんな一つの夢が叶った瞬間だった。

 コーチをしてくださった方、一緒に練習してくださった方たちのためにも良い結果を出したかった。今回、個人的には2つの銀メダル、チームでは5つのメダルを獲得できたチームの一員として、戦えたこと、育てていただいた方々に喜んでもらえたことが何より嬉しかった。

 特に印象的だったレースは、もちろんメダルを取った2つのレースだ。どちらも全力を出し切った末の銀メダル。あと一歩だった銀メダル。嬉しさと悔しさどちらも残ったが、自分たち以上に喜んでくださった皆さんを見ることができたことは一生忘れられない経験となった。

 個人種目ではパワーで圧倒された。

 フィンや、スキーだけでなくボードでも1漕ぎの差が順位に大きく影響したと分析している。海外選手の横に立つと、自分より小さい選手は本当に少ない。もっと体を大きくしてパフォーマンスを向上させる必要があると感じた。
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 他チームを見ると、今回活躍した選手層は25〜30歳で学生などの若い選手は少なかったように思えた。
 日本の選手層は22歳までの大学生が多い。卒業後も続けることができるような環境づくりも競技力向上には必要であると感じた。LSweb

 今後個人的には、選手として世界トップクラスの選手になる目標を掲げつつも、日本チームが活躍できるような環境づくりにも力を入れていきたいと考えている。

 改めて、一緒に戦った選手の皆さん、スタッフの皆さん、日本からエールを送ってくださった皆さん、スポンサーの皆さんに感謝申し上げます。

 さらに日本のライフセービング界に貢献できるよう尽力していきます。今後ともご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
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☆☆★2016年世界大会総合成績★☆☆

1位:ニュージーランド(919点)
2位:オーストラリア(821点)
3位:フランス(607点)
4位:ドイツ(490点)
5位:イタリア(461点)
6位:南アフリカ(333点)
7位:スペイン(328点)
8位:日本(305点)プール競技総合9位、オーシャン競技総合6位
9位:イギリス(295点)
10位:オランダ(253点)

★★☆上野 凌 選手の出場種目と成績☆★★

[プール競技]
SERC:2位
200m障害リレー:2位
マネキンリレー:11位
100mトウウィズフィン:17位
200mスーパーライフセーバー:25位
[オーシャン競技]
ボードレスキュー:7位
ビーチリレー:9位
レスキューチューブレスキュー:11位
ボードレース決勝:10位
オーシャンマン決勝:13位
オーシャンマンリレー:8位





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日体大が4年ぶりにアベック優勝!
第31回全日本学生ライフセービング選手権大会 Vol.2
2016/09/30

The 31st Inter College Lifesaving Championships Vol.2 2016.9.24-25 千葉県夷隅郡御宿町・御宿中央海岸

1kmrelay06 インカレ2日目——。

天気が回復すると気温がどんどん上がりはじめた。

決勝種目が目白押しのこの日、真夏のような日差しが照りつける中で、汗をしたたらせながらの熱戦が続いた。

最上級生にとっては最後のインカレ。

悔いのないパフォーマンスを出せただろうか。


文・写真=LSweb編集室





サーフスキー人口、増加中

LSweb 学生ライフセーバーにとって、もっともハードルが高い競技種目はサーフスキーだろう。
 機材を手に入れるのも一苦労だし、練習場所も限られる。車がなければ運搬することもできないし、車が使えるとしても、カートップして運転するのはドキドキものだ。

 それでも最近は、積極的にサーフスキーに挑戦する学生ライフセーバーが増えてきた。今大会、サーフスキー競技に出場したのは、女子27人、男子44人。予選なしの時代がそう遠い昔でないことを考えると、競技人口は格段に増えた。

 きっと、社会人ライフセーバーが颯爽と、そしてパワフルにサーフスキーを乗りこなす姿に学生たちは刺激を受けているのだろう。社会人と一緒に練習する機会も増えているようで、学生のレベルは毎年、確実に上がっていることを実感できる。

 サーフスキーレース、決勝へと駒を進めたのは女子14人、男子16人。まず、女子がスタートし、昨年3位の日本女子体育大学・大井麻生、一昨年優勝の新潟産業大学・高橋志穂、さらに日女体大の佐藤礼奈、神奈川大学・今野恵らが先頭集団を形成しながら第1ブイへと向かった。

 最終ブイを回ってからは、高橋、佐藤の一騎打ちが続く。そしてショアブレイクの手前でうねりをうまくとらえ、逆転したのが佐藤だった。そのままリードを保ちトップフィニッシュ。嬉しい初優勝となった。高橋は2位。3位には今野が入った。
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 湯河原LSCに所属する佐藤は、この夏、きっとスキーが得意な先輩たちと練習を積んだはずだ。

 「いろいろ作戦は立てていたのですが、それよりも昨年、日女が総合優勝を逃してしまって、自分がスキーで得点を取れなかったからだと悔やんでいたんです。だから今年はとにかくチームに貢献できるように全力を出しました。勝てて嬉しいです」と、涙目になりながら話してくれた。

LSweb 続いて男子がスタート。まず飛び出したのが慶應義塾大学の上野凌だ。
 そのままトップで最終ブイを回り、フィニッシュまでいけるか? という展開だったが、すっと内側に入って追い上げてきたのが国士舘大学の牛越智。法政大学の小松海登も後を追う。

 終盤、うねりを掴んだ牛越が逆転に成功し、ガッツポーズと共にフィニッシュラインへ。上野と小松の2位争いは、小松に軍配が上がった。

 「スタートでは手がすべって出遅れてしまいましたが、焦らずしっかり後ろを着いていきました。ブイを回ってから内側に入ったのは作戦どおりです。スタートの1時間前からじっくり海を観察していたんですが、内側のほうが(波が)上がるなと。最後のインカレで勝てたことはもちろん、一緒に練習してくださった社会人の先輩方に良い報告ができたことが、最高に嬉しいです」と牛越。

LSweb スキー歴はまだ半年という小松は、「僕はスタートがあまり得意ではないので、最初から後ろを着いていく作戦でした。ウッシーさん(牛越)は同じ波崎SLSCの先輩だし、上野さんは日本代表だし、離されないようにと思っていました。ウッシーさんには勝てなかったけど、先輩とワンツーフィニッシュできてすごく嬉しいです」と満面の笑みを見せた。

 牛越と小松は、激アツ社会人パドルグループの境川チームで武者修行をしていたそうで、チームの主要メンバーである内田直人JLAスポーツ推進部長も後輩の晴れ姿に目を細めていた。

 僅差で敗れた上野は「スタートラインが一番端だったので、インで頭を出さないとダメだと考えていました。前には出られたけれど、そこで体力を使ってしまい最後はバテてしましました。前に出た時点でもう少しペースを落とせば良かったんだけど、そこまで余裕がなかったです」とレースを振り返った。

 ところで、スキーを始めたばかりの小松にその動機を聞いたところ、「オーシャンマンをやりたいので!」という明快な答えが返ってきた。

 そのオーシャンマンでは、慶応大の上野が最初のスキーでリードを奪い、スイム、ボードを危なげなく繋いで見事に優勝。主将としてチームを引っ張る法大の渡邊孝之が2位、新産大1年の片山雄起が3位の活躍を見せた。
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 「スキーでリードして繋いでいく、という思ったとおりのレースが展開できました。スキーの時、後ろから(片山)雄起が来ているのが見えたので、同じ波に乗られたらもう少し厳しい展開になったかもしれません。あそこでリードできたのが大きかったですね」と笑顔を見せた上野だった。
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 オーシャンウーマンはダークホースが優勝を手にした。日本大学2年の成澤侑花だ。スイムの実力は折り紙付きの成澤だが、スキーの練習を始めたのは夏が終わってから。
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 興奮する応援団を前に、成澤は「まさか優勝するとは、自分でもびっくりです! なんというか、自分のスイムに助けられました」と目をぱちくりさせた。
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 サーフスキーに続き2位に終わった新産大の高橋は、「今年の決勝はスイムの実力者が揃っていたので、得意のスキーでもっと離しておかなければダメでした」と悔しそう。「全日本に向けて気持ちを切り替えます」と、決意を新たにしていた。

 日本体育大学・寺坂恵美が表彰台最後の一枠に滑り込んだ。

力を合わせて戦うチーム種目

 インカレの特徴のひとつが団体種目の多さだ。

 全員がフル稼働する少人数校もあれば、激しい部内セレクションが繰り広げられる強豪校もある。人数が揃わず出場を夢見る学校もあるだろう。だからこそ、団体種目はいつも熱いバトルが繰り広げられる。

 今年からオープン参加の選抜チーム枠が設けられたビーチリレーは、男女ともに大接戦。
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 女子はアンカーで逆転した日体大が、2位の東京女子体育大学、3位の日女体大をおさえて優勝。男子はバトンパスが非常にスムースだった国際武道大学が、2位の日体大、3位の東海大学湘南校舎をかわして優勝を手にした。
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 見応えのあるレースが展開されたサーフ競技。

 ボードレスキューは男女ともに日体大が優勝した。
 
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 女子は坂本佳凪子・阿形芽生の鴨川ペア、男子は幡野圭祐・岸田興喜の白浜ペアで、男女ともに同じ浜で活動した4年生と3年生の先輩後輩コンビが、抜群のコンビネーションで他校を圧倒した。
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 接戦に次ぐ接戦が繰り広げられたのがボードリレーだ。まず女子から振り返ろう。

 1人目でリードしたのは日体大。2人目で日大、日女体大が日体大に追いつき、勝負は3人目のアンカーにたくされた。並んで戻ってきたのは日大と日体大。日大の成澤と、日体大の鈴木理乃が同時にボードから跳び下りると、砂浜を並走しゴールへ。
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 一歩も譲らない2人。近づくゴール。固唾をのむ審判たち……。
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 そして最後の最後で前に出たのが、ピンクのキャップにピンクの水着の成澤だった。抱き合って喜ぶ日大のリレーメンバーたち。その歓喜の横で泣き崩れる日体大の鈴木に、共に戦った井熊理子と東理沙が駆け寄った。

 男子は最初から混戦状態となった。1人目は国士大、東海大クレスト、神奈川大学が先頭集団を形成。2人目になると東海大クレストと国士大に武大、法大が追いてきた。
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 勝負はアンカーへ。まず戻ってきたのが東海大クレストの石塚康敬だ。

2位争いは予選から火花を散らしていた法大と国士大の争いに。法大は澤木達也、国士大は牛越。結果は「予選で国士に負けて悔しかったのでスッキリしました」という法大が2位。国士大は3位で予選とは逆の順番となった。
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 優勝した東海大クレストは部内のセレクションも激戦だった。そこを勝ち抜けスタートラインに立ったのが4年生の寒河江健太と小出一輝、そして3年生の石塚康敬の3人だ。
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 「出走順は悩みましたが、インが得意な僕が一番で、同期の一輝に繋ぎ、最後はパドル力のある康敬にたくす作戦でした」と寒河江。
 
 「就活のため練習量が少なくなっていたのが不安材料でした。でも健太が1位で戻ってきてくれたので、1位で繋げれば康敬がやってくれると思っていました。1位で繋ぐことができてよかったです」と小出。

 「昨日の予選から周りの4年生の気合いがすごくて、少しプレッシャーがありましたが、1位でつないでくれた先輩の思いをしっかり受け止めて漕ぎました」と石塚。オール1位で繋いだ東海大クレストが完全勝利をものにした。

 ライフセーバーの誇りをかけて戦うレスキューチューブレスキュー。女子は黒岩美緒、澁谷祐未、金子紗瑛、大井麻生の4人で挑んだ日女体大が、日体大を僅かにかわし激戦を制した。
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 「勝因はもちろん後輩たちのがんばりもありますが、ドラッカーが体格を活かし、どのチームよりも沖で待機していたことだと思います」と興奮した口ぶりで話してくれたのは、身長168cmの大井。ドラッカーのペアを組んだ金子は身長175cm。波打ち際の混戦を予想して立てた作戦が、見事、優勝に結びついた。
 
 男子は神大と東海大クレストが最後まで争う大接戦に。先行する神大にドラッグ勝負で逆転勝利したのは、市岡航大、中谷理人、小出一輝、中村泰己の東海大クレスト。
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LSweb 「航大が一番で行くって言っていたのに実際は4番ぐらいで(笑)、でもそのおかげで前の状況を観察すことができました。僕たちは2人とも息継ぎが右で、コースも右端だったので他チームが良く見えたんです」と話すのは、レスキュー役の中谷。

 「サイドカレントが非常に強かったので、深いところまで行って引っ張りました。4年で優勝できて嬉しいです」と小出。
 中村も、「一輝と僕は高校の野球部時代から7年間も一緒。4年のプライドをかけてドラッグで勝負しましたよ」と言い、互いに顔を見合わせた。

LSweb インカレを締めくくる最終種目は、襷を繋ぐ1km×3ビーチリレーだ。この種目では女子が日女体、男子は国士大が優勝し男女ともに連覇達成となった。

 女子2位は東女体、3位は大健闘した東海大学清水校舎。ビーチ種目ではロコ初のメダル獲得で、本人たちはもちろんOGOBも大喜びしていた。

 男子2位は笹田直太、橋本湧太、小針基央と繋いだ帝京大学。終盤までトップだっただけに悔しさはったものの、こちらも過去最高の順位で今大会を終えた。
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 「無事に大会を終えることができて、まずはホッとしています」と話すのは、準備から当日の運営まで奮闘した学生室学生代表の武大・榎本宏暉。LSweb

 「学生室の役割と選手としての役割を両立させるのは難しかったですが、それは自分の実力がないからだと思います。武大は久しく優勝していないので、来年こそは優勝できるように、自分自身、もっと実力をつけていきたいです」と来年を見据える力強い言葉を聞かせてくれた。

 42校、男子390人、女子235人、合計625人が参加した第31回全日本学生ライフセービング選手権大会。

 総合優勝は男女ともに日本体育大学が手にした。4年ぶりのアベック優勝だ。表彰式がすべて終わり、日がとっぷりと暮れたインカレ会場に日体大「エッサッサ」の凱歌が響き渡った。(文中敬称略)


☆★☆ 「第31回全日本学生ライフセービング選手権大会」表彰台 ☆★☆


サーフスキーレース・男女

サーフスキーレース・男女

オーシャンマン/オーシャンウーマン

オーシャンマン/オーシャンウーマン

ビーチスプリント・男女

ビーチスプリント・男女

ビーチリレー・男女

ビーチリレー・男女

ボードレスキュー・男女

ボードレスキュー・男女

ボードリレー・男女

ボードリレー・男女

レスキューチューブレスキュー・男女

レスキューチューブレスキュー・男女

1km×3ビーチリレー・男女

1km×3ビーチリレー・男女

男女総合成績

男女総合成績

学生室全員集合!

学生室全員集合!



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燃えよ!学生ライフセーバーたち
第31回全日本学生ライフセービング選手権大会 Vol.1
2016/09/28

The 31st Inter College Lifesaving Championships 2016.9.24-25 千葉県夷隅郡御宿町・御宿中央海岸

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9月——といえば“インカレ”である。

学生ライフセーバーにとっての一大イベントだ。

千葉県の御宿中央海岸で開催された、
第31回全日本学生ライフセービング選手権大会。

その激闘の模様を前後編でお届けしよう。



文・写真=LSweb編集室





実力伯仲のサーフ競技

LSweb 台風による大きな被害が出た今年の日本列島。インカレ会場のある千葉県の外房地域も、8月に2つの台風が直撃し、海水浴期間を縮小せざるをえない甚大な被害に見舞われた。

 インカレ直前にも、台風から変わった熱帯低気圧が沖合いを通過したのだが、御宿町などが流木撤去などの海岸整備をしてくれたため、無事、開催にこぎ着けた。

 そして迎えた当日は、インカレでは珍しく(?)穏やかなコンディションとなった。しかし、度重なる台風の通過で波打ち際の海底は荒れた状態のまま。今大会のサーフ競技では、インに苦戦した選手が多かったようだ。

 雨が降ったり止んだりのコンディションとなった大会初日に行われた決勝種目は、男女サーフレースとオーシャンマン&オーシャンウーマンリレーの2つ。

 金メダル第1号となったのは、女子サーフレース優勝の日本大学・成澤侑花だ。泳力に定評のある大学2年生が得意種目で好調なスタートを切った。
 男子は世界大会帰りの慶應義塾大学・上野凌が実力を発揮。クラブ創設3年目で初めての金メダルをクラブにもたらした。
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 スキー→スイム→ボード→ランの競技順となったオーシャンマン&オーシャンウーマンリレー。

 女子は栗原夏希→成澤侑花→柿澤明日香→甲斐夏美と繋げた日大がスイムでリードを広げ、日本体育大学、日本女子体育大学、東海大学湘南校舎クレストなどの強豪校をおさえてトップフィニッシュ。ピンクのコンペキャップが弾んだ。
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 男子は国士舘大学、東海大クレスト、法政大学の3校がメダルの色をかけて接戦を繰り広げた。

 まず、最後のインカレにかける国士大・牛越智がスキーでリードするが、すかさず東海大クレスト・中谷理人がスイムで逆転。
 続くボードで国士大・塚本佳樹が上手く波をつかみ先行する東海大クレストに追いつくと、アンカーの黒田晃暢が力強い走りでフィニッシュラインを駆け抜けた。
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 「頼もしい後輩が後ろに控えていたので、僕はトップで戻ってくることだけを考えて漕ぎました」と牛越。

 「トップで繋げられなかったけど、一生懸命泳ぎました」とスイムの篠原優太。「波の乗ることができたのが大きかったです」と塚本。そして黒田は「(クレストよりも)内側で戻ってきてくれたので安心して走れました」と言葉を繋げた。

 僅差で優勝を逃した東海大クレストの中谷は、「皆は波が来なくてアンラッキーだったと言ってくれましたが、国士大はランのタッチを僕たちよりも内側でしていましたよね。状況を判断できる実力とテクニックがあって一枚上手だったと思います」と言った後、「明日のボードリレーは負けません」とリベンジを誓っていた。

ビーチ競技の栄冠は誰の手に?

LSweb 雨も上がり夏のような蒸し暑さとなった大会2日目。

 この日最初に行われたのが、注目のビーチフラッグス決勝だ。

前日の予選、二次予選を勝ち抜いたファイナリストは男子8人、女子9人。気合いの入った表情の選手たちがスタートラインに並ぶと、エリアを取り囲む観戦者たちから大きな歓声が上がった。

 女子からスタートした決勝だが、負傷者の出た男子が先行する形でベストスリーの戦いに。

 ここで最初にダウンしたのが杏林大学・佐賀野敏樹だ。佐賀野の思いを背負った杏林大の北田尚輝が次にダウンし、ラスト1本は順天堂大学・石田蒼一郎と、国大武道大学・堀江星冴の一騎打ちとなった。LSweb

 強かったのは堀江で、インカレ三連覇を達成した。落ち着いた表情で淡々とレースをこなし、最後まで危なげなくフラッグを手にしているように見えたが、本人には相当のプレッシャーがあったようだ。

 レース後、「三連覇をしたいという気持ちが強く、それがプレッシャーにもなっていました。6月の種目別では最後に気持ちの弱いところが出てしまい、勝てなかったことも頭の隅にありました。決勝レースでは弱気にならないよう、誰よりも練習してきたという自信があるのでそのことを思い出し、1本、1本、大丈夫だと自分に言い聞かせてやっていました。勝てて良かったです」と、ホッとした笑顔を見せた。

 実力伯仲の女子は波乱の幕切れに。ベストスリーで日本女子体育大学・高橋わかながダウンすると、最後に残ったのは日本体育大学の石塚円香、村石結美の2人。LSweb

 ところがなんと、4年間ともにがんばってきたが同級生対決は、フライングによりあっけなく決着がついてしまった。優勝は石塚だが、スタートライン上で互いに「ごめん」と謝り続け、2人はしばらくその場を離れることができなかった。

 溜息とともに観客が去った競技エリアで、2人の気持ちを汲み「よし、今から決着をつけるぞ」と声を掛けたのが、日体大の猪爪賢治コーチだ。泉田昌美審判長も快くエリアの使用を認めてくれた。

 ヘッズダウン……。“裏”ビーチフラッグスの決着は、村石に軍配が上がった。
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 抱き合って喜ぶ2人は、「ずっと2人で練習していて、インカレでワンツーフィニッシュを取ることが昨年からの目標でした。2人でワンツーに残ることができて、最高の結果でした」と砂まみれの顔をほころばせた。

 足場の悪い砂浜を90m走るビーチスプリント決勝には、走力自慢の学生ライフセーバー男女各10人が顔を揃えた。

LSweb 最初にスタートした女子は、日体大・長野文音が断トツのリードでゴールラインを走り抜けた。2位以下は混戦となったが、大阪体育大学・柴田夏希が2位、東京女子体育大学・鮒藻美穂が3位に滑り込んだ。

 見事にインカレ三連覇を飾った長野。ベストタイムは11秒台で、男子と練習すると引っ張れられて速くなり、たまに男子を抜かすこともあるという俊足ぶりをいかんなく見せつけてくれた。

 男子はビデオ判定にもつれる僅差の勝負となった。激戦を制したのは日体大・七海元紀。2位には同じく日体大・玉井颯が入った。10コースを走った昨年の覇者、成城大学・荒井滉太郞は3位。

 「僕は8コース、先輩の七海さんが6コース、同じ3年で昨年優勝した成城の荒井くんが10コースでした。七海さんとはワンツーフィニッシュしようと話していて、そのとおりになったので嬉しいです。
 実は虎視眈々と狙っていました。全日本もあるので、また狙っていきたいです」と自信を覗かせる玉井。
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 「昨年、成城の荒井くんに負けていたので、彼をライバルと思って練習してきました。ほぼ同着だったので、順位が確定するまではドキドキしましたね」と七海。
 主将としてチームを引っ張り、競技で金メダルの活躍に、チームメイトが歓声を上げた。

 ところで、今大会でもインカレ恒例オリジナルグッズが販売された。Tシャツ2選にバスタオル、キーホルダーはそれぞれ学生ライフセーバーのデザインによるもので、どれも力作揃い。デザインコンペティションを勝ち抜いた学生ライフセーバーを写真で紹介しておこう。

 熱戦の続きはVol.2に続きます。(文中敬称略)


【第31回全日本学生ライフセービング選手権大会 成績表】



☆★☆ 「第31回全日本学生ライフセービング選手権大会」 表彰台 ☆★☆

サーフレース・男女

サーフレース・男女

オーシャンマン/オーシャンウーマンリレー

オーシャンマン/オーシャンウーマンリレー

ビーチフラッグス・男女

ビーチフラッグス・男女

ビーチスプリント・男女

ビーチスプリント・男女

Tシャツ・デザイナー

Tシャツ・デザイナー

ビーチタオル・デザイナー

ビーチタオル・デザイナー

インカレキーホルダー・デザイナー

インカレキーホルダー・デザイナー





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西浜SLSC、圧勝!
第8回全日本ユースライフセービング選手権大会 パート2
2016/06/30

The 8th Japan National Youth Lifesaving Championships Part2 2016.6.25-26 静岡県・外浦海岸

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夏のような日差しが照りつけた大会2日目。

全日本ユース選手権はいよいよ佳境へ。
まだまだ続く熱戦、そして総合成績は?

大会レポートの第2弾をお届けしよう。

文・写真=LSweb編集室





ニッパーボードも、マリブボードも

 エメラルドブルーの海を舞台に行われた高校生男女のサーフレース。
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 女子は館山SLSCの津島笑満花選手が優勝し、2位と3位には十文字高校LSCの佐久間友菜選手と吉田絢香選手が入った。
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 男子は柏崎LSCの加藤 豪選手が力強い泳ぎで優勝。2位は猛烈な追い上げを見せた館山SLSCの日高 昴選手、3位はチームメイトの重岡寛大選手という順番だった。
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 史上稀に見る大混戦となったのが、ニッパーボード女子のレース。

 トップ集団は十数人で、最後の最後まで誰が飛び出すか予想できない展開に。
 その中で最初にフィニッシュラインを横切ったのは成城学園LSCの新井里英選手だった。

 中学1年生の新井選手は、これまでに数回しかニッパーボードに乗ったことがないのだという。

 しかし「私は背が低いので、最後までしっかり漕ごうと思っていました」と実に冷静な判断で、堂々の優勝を飾った。
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 2位は十文字学園LSCの中村悠佳里選手。中学生3年生の彼女も、「ボードに乗るのは大会の時だけ」というのだから、ユース世代のポテンシャルや恐るべしである。

 ニッパーボード男子は予想通り西浜SLSCが強さを発揮。
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 優勝はクレイアーロン竜波選手、僅差の2位は菅原佳澄選手で、3位の進士 昴選手(下田LSC)と8位の新井海翔選手(湘南学園中学校)以外、西浜SLSCの6人が入賞した。

 西浜SLSCの躍進はこれで終わりではなかった。
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 続いて行われたボードレース男子でも西浜SLSCから3人が入賞。しかも、その3人がいずれも中学生という驚きの結果となった。

LSweb 並みいる高校生を抑え、クレイアーロン選手が2位、菅原選手が3位、中学1年生のクレイコナ大波選手が5位という好成績を収めた。

 ボードレース男子を制したのは柏崎LSCの加藤選手。
 ユース日本代表に選出されている彼でさえも、「ペースを上げても、上げても、ぴったりついて来るので手強かったです」と中学生トリオの強敵ぶりを認めていた。

 「でも、最後は自分の長身を活かしてアウトでぶち抜いてやろうと思っていました」と一言。

 中学生には負けられない! そんな秘めた思いが垣間見られた瞬間だった。

 ボードレース女子は、館山SLSCの津島選手と鵜木海緒選手がワンツーフィニッシュ。左足小指を骨折中という西浜SLSCの内堀夏怜選手が3位で表彰台に立った。
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 高校1年生の津島選手は、昨年、ニッパーボードレースとボードレースの二冠に輝いているので、これでボードレース二連覇ということになった。

 彼女の高校生生活はまだ始まったばかり。ボードレース四連覇も夢ではない!?

ユース世代よ、大いに楽しもう!

 西浜SLSCの快進撃はまだまだ続く。
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 中学生女子のビーチフラッグスでは高田純良選手が2位、伊藤結希選手が4位、渡辺 幸選手が6位と3人が入賞。
 
 中学生男子のビーチフラッグスではクレイアーロン選手が1位、井上祐里選手が2位、クレイコナ選手が3位と表彰台を独占。さらに4位、5位も西浜SLSCメンバーが顔を揃えた。
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 中学生女子のビーチフラッグスで優勝したのは、下田LSCの江田望実選手だ。
 地元ということもありフラッグを手にするたびに大きな歓声が上がる中、最後まで集中力を切らさず勝利を手にした。

LSweb 駆け寄る仲間に笑顔を見せていた江田選手に「地元で勝ったね」と声を掛けると、急に笑顔が消えて涙がポロリ。

 「下田でやるから勝たなきゃって…」と小さくつぶやいた。
 
 プレッシャーから開放されてホッとしたのだろう、堰を切ったようにポロポロと涙を流す彼女の姿を、父親であり下田LSCの理事長でもある江田邦明さんが静かに見つめていた。

 最終種目の高校生ビーチフラッグスでは、女子の田中 綾選手、男子の市川巧基選手と、男女ともに昭和第一学園LSCが接戦を制した。
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 総合優勝は2位にほぼダブルポイントの差をつけた西浜SLSC。副賞として楠山俊介下田市長より名物の金目鯛が贈られた。

LSweb 西浜SLSCの強さの秘密は何だろうか?

 もちろん伝統がありメンバーが多いことがその一因であることは間違いないが、「楽しんでやっていることに尽きると思います」と話すのは、ジュニア・ユースの育成に長く携わってきた同クラブ副理事長の篠 岳瑠さんだ。

 ユース世代の活躍に目を細めながら「僕も一緒に遊んでもらっていますよ」と笑顔を見せた。

 梅雨の晴れ間に行われた今年の全日本ユース選手権。悔しくても、苦しくても、きっと楽しい大会だったに違いない。

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【第8回全日本ユースライフセービング選手権大会 成績表】



☆★☆ 「第8回全日本ユースライフセービング選手権大会」 表彰台 ☆★☆

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サーフレース中学生・男女

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サーフレース高校生・男女

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ニッパーボードレース中学生・男女

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ボードレース高校生・男女

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1kmビーチラン中学生・男女

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1kmビーチラン高校生・男女

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ビーチフラッグス中学生・男女

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ビーチフラッグス高校生・男女

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ボードレスキュー高校生・男女

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タップリンリレー中学生・男女

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タップリンリレー高校生・男女

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総合成績1位:西浜SLSC、2位:成城学園LSC、3位:館山SLSC









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