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必読!女性ライフセーバーの健康管理
第1回 貧血
2017/06/29

How to manage in good shape for female lifesaver

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ライフセーバーの季節がやってきた!

水辺の安全を守るには知力と体力が必要だ。
そのためにはまず、自分が元気でなければならない。

というわけでライフセーバーの健康管理、特に女性ライフセーバーに特化した短期連載をお届けする。

筆者は大竹SLSCのライフセーバーで、助産師として働く齋藤愛子さんにお願いした。(LSweb編集室)

文=齋藤愛子(大竹SLSC)・イラスト作成=LSweb編集室




まずは「貧血」について

LSweb 「貧血」ときくと、どんなことをイメージするだろうか?

 体調不良? 虚弱体質? 栄養不足? もちろんこういった状態になるのも鉄不足からくる貧血が一因ではあるだが、自分とはあまり関係ないことと考えていないだろうか。

 女性は月経があるがゆえに男性に比べてもともと貧血になりやすいのだが、私は運動もできているし、食事もしっかりとっているので大丈夫!と、思っていないだろうか。
 実は、運動をしている女性にこそ貧血について考えてほしい。

鉄の役割

 全身に酸素を供給するために血液の循環が必要だということはBLSで学んでいると思うが、酸素を運搬する赤血球に含まれているのがヘモグロビンである。

 このヘモグロビンは鉄とタンパク質から成り、酸素はこの「鉄」と結合することができる。つまり、鉄があることで空気中の酸素を効率よく体内に取り込むことができるようになり、脳を働かせたり運動後の回復を早めたり、わたしたちの体を元気にしてくれるのだ。

 この鉄が不足することによって酸素の供給が滞り、①疲れやすい、②食欲不振、③頭痛、④動悸、息切れ、⑤立ちくらみ、といった貧血の症状が出現する。

 よく寝たのに疲れやすい、きちんと食べているのに頭が重くて動悸がよくある、という症状を感じたら貧血になりかけているかもしれない。血液中のヘモグロビンが11g/dlを切ると貧血と診断されるので、健康診断で血液データのヘモグロビン値を確認してほしい。
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運動と貧血~足裏への衝撃と汗をかくこと~

 鉄が大切だということをふまえたうえで、運動と貧血について考えてみよう。

 特に貧血と関連があるのは「ランニング」だ。ウォームアップとしての短い時間だけでなく、持久力を高めるトレーニングとして長時間走るなど、ランニングは多くのライフセーバーが年間を通じて取り入れている運動だと思う。

 ランニングでは、汗と一緒に鉄分が体外に排出されやすいうえに、走る時の足裏への着地の衝撃で赤血球が壊れてしまう。赤血球が壊れるということは、その中のヘモグロビンが外に漏れてしまい、十分な酸素を全身に送り届けることができなくなる。その結果、貧血になってしまうというわけだ。

 また、ランニングに限らず、激しい運動で汗をかくことは、それだけで貧血のリスクとなる。世のアスリートたちの多くが貧血対策をしていることを思えば、ライフセーバーも軽視してはならない。

貧血を予防しトレーニング効果を高めるには

月経で毎月50ml前後(正常値20-140ml)の血液を排泄していることに加え、運動をたくさんしていることで、女性アスリートは特に貧血になりやすい。では、貧血を予防するためにはどうしたらよいか。

 栄養面では、牛肉やカツオなど赤身肉の含む鉄分の多い食事に、鉄の吸収を促進するブロッコリーや小松菜などのビタミンCを追加するとよい。食後に果物を摂ることも鉄の吸収を促す。また、調理に鉄鍋を使用することで、食材に鉄分が付着する効果もある。

 生活面では、水分をよく摂り、入浴などで全身を温め血の巡りをよくする。ストレスが多いと胃腸の働きが鈍り、鉄の吸収がうまくできないため、規則正しい生活や日々を「楽しむ」ことは大切だ。

 運動をしているからこそ、月経があるからこそ、鉄が失われやすいという自覚をもって食事や生活を意識してほしい。意識し実践することで、貧血を予防、トレーニングの効果も高まり、超回復も期待できるはずだ。
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齊藤愛子(さいとうあいこ)

大竹SLSC所属。筑波大学入学後にライフセービングを始め、今年でライフセービング歴14年。競技ではオーシャンウーマンやスーパーライフセーバーを得意とした。
大学卒業後、会社勤務を経て、より深く命に係わる仕事をしたいと看護師免許、その後、助産師免許を取得。現在、産婦人科(神奈川県)にて助産師として命の誕生に寄りそう現場に携わっている。内閣府が実施する国際交流事業「東南アジア青年の船」に参加した経験も持つ。JLA国際室所属。サーフインストラクター。B級審判。


 
    





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サーフトレーニング 初級編
ライフセーバーなら知っておきたい海練の心構え
2017/04/27

Surf Training for Beginners-〝play it safe〟

LSweb気候も良くなり、海での練習が楽しい季節になってきた。

しかし自然相手のトレーニングでは、暖かくなっても気の緩みは禁物だ。

そこで、安全に海で練習するために気をつけるべきことを、日本ライフセービング協会・サーフトレーニングクリニック委員会で活躍する、勝浦ライフセービングクラブの篠田智哉さんにアドバイスしていただいた。

新年度からこの世界に飛び込んできたニューカマーはもちろん、クラブを牽引する立場になった上級生ライフセーバーや、個人で海へ行く機会が増えた社会人ライフセーバーにも、ぜひ読んでほしい。(LSweb編集室)

文=篠田智哉(JLAサーフトレーニングクリニック委員会)・写真=LSweb編集室




はじめに

LSweb 海でスキルアップを図るにはリスク(危険)を伴います。そのため、安全にサーフトレーニングを行うためには、様々なことに注意しなければなりません。

 「サーフトレーニング初級編」では、海で安全に、そして効果的なスキルアップを図るための方法や準備について紹介していきます。

【トレーニング中における事故】

 過去に、ライフセーバーがサーフトレーニング中に死亡してしまった事故、公的救助機関にレスキューされた事故が数件発生しました。

 いずれも、熟練した人であれば回避したコンディションの中で起きた事故でした。

 では、どうすれば事故を防ぐことができたでしょうか。

 私たちライフセーバーは、水辺の安全教育やパトロール活動等を通じて、水辺の事故ゼロを目指して日々活動しています。そんな中、ライフセーバーが事故の当事者になることがあってはならないし、それよりも同じ志を持つ仲間がライフセービング活動中に事故にあってほしくないと強く思います。

【サーフトレーニングで重要なポイント】

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 安全にトレーニングをするために重要なのは「リスク管理」です。

 「リスク管理」とは、「危険」を明らかにし、それによる被害を推定して、リスクの許容を判断し、リスクの最小化を検討してリスクの最適化を図っていくプロセスのことです。

 つまり、状況を確認して危険な箇所を把握し、十分な安全対策を講じたうえで、的確な判断のもとにトレーニングをしていくことです。

「リスク管理」の具体的な方法

 ここでは、私が実際に行っているリスク管理について、1つの例として紹介します。

①気象海象予報を基にトレーニング内容を考える


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 天気予報や波予報は、今やインターネット上で簡単に閲覧することができます。

 例えば、明日の9時に○×海岸でトレーニングしようと計画とき、その時間のその場所の天気・気温・水温・風向・風力・波高・波の周期・うねりの方向…など、ピンポイントで予報を知ることができ、更に潮汐を加えれば、明日9時の○×海岸の状況を頭の中でイメージすることができます。

 海へ行く前にコンディションをイメージして、トレーニング内容を考えます。

 当然、予報を見た段階で風速15m/sなどであれば、海に行くこと自体を回避するべきでしょう。

 海まで何時間も掛けて行く人は、「せっかく来たんだから」といって少し無謀な行動をしてしまいませんか?

 事前に情報収集して明らかな中止条件に該当すれば、海に行く以外の選択ができるはずです。

②実際に海を見てコンディションを把握する


LSweb イメージしていた状況と実際に目で見て肌で感じた状況とを比較し、計画していたトレーニングメニューを実行できるのかを評価します。

 私の場合、普段トレーニングしている場所の特徴を熟知して、毎日このプロセスを繰り返しているので、予報を見てイメージしたコンディションと実際のコンディションに大きな違いはほとんどありません。

③トレーニングメニューの評価


 計画したトレーニングメニューが実行可能かどうか最終評価します。

 自分の技量とコンディションとを比較して安全に実施できるのか、更に必要な安全対策を考えます。ときには中止する判断も必要です。

LSweb 例えば、
・オフショアの強いコンディションであれば、あまり沖に行かないメニューにして浜の近くで行う。
・風も弱くフラットコンディションであればロングパドリング。
・比較的穏やかで波があればインアウト練習。

 といったように、コンディションに合わせたメニューを考え、さらにはよりスキルアップを図れるメニューを選択することが重要です。

 この他にも、視認性の良いウェアの着用、携帯電話の携行、ライフジャケットの着用など、ハード面での安全対策も必要です。

④実際に海に入って再評価する


LSweb 決定したメニュー通り実行できるのかを海に入って再評価します。

 少し沖に出ると思っていたより風が強かった、実際に入ってみたら思っていたより波が高くパワーも強かったなど、コンディションを再評価して続行するか、メニューを変更するか、または中止するかを判断します。

 また、トレーニング中も常に評価を繰り返します。決して自分の技量以上の行動はしないことが大切です。

 経験豊富なライフセーバーは、このようなプロセスを自然に行って海に入っています。いわば、あたりまえのことであり、最低限必要なことです。

 ある程度経験を積んでくると、後輩を連れて海に入ることもあるでしょう。グループ全体が安全にそして効果的にトレーニングするためにはどうすればよいか、責任を持ってトレーニングメニューを計画しましょう。

リスクを見つけよう

LSweb ここに掲載した写真を見て、リスクとなるものを考えてみましょう。

 この状況の中、1人でトレーニングをする場合、複数人でする場合、どのようなプログラムで、どのような安全対策を講じれば安全にトレーニングを実施することができるでしょうか。

 右の写真は見ての通り、写真の真ん中辺りにリップカレントが見分できます。奥には堤防、手前には岩場も見られます。他にも危険と思われる要素がいくつか考えられます。

 これらの危険な要素(リスク)を把握して、自分や実施するグループの力量を見極めてトレーニング内容を考える必要があります。

LSweb 左の写真を見てみましょう。このような状況の中、インアウト練習を集中して効果的かつ安全に実施することは可能でしょうか。

 トレーニングの効果はあまり期待できないと考えられます。
 さらに、周辺のサーファーとの接触や迷惑になることを考慮すれば、インアウト練習は実施すべきではありません。

 海や砂浜を利用する場合は、その土地のルールを守り、周囲の迷惑となる行為をしないように配慮することが大切です。

最後に

LSweb サーフトレーニングは、正確かつ迅速な状況把握、判断、対応が求められます。スキルアップを図るには、十分な知識を備え、豊富な経験を積む必要があり、経験を積むにはリスクを伴うものです。

 またこれらリスク管理の手法は、サーフトレーニングに限らず実際のパトロール活動でも同じです。海水浴場全体のリスクを管理するための知識や経験は、普段のトレーニングの中で培っていきましょう。

 JLAでは、これら「リスク管理」の手法について、また更に効率よく安全にスキルアップを図るトレーニング方法について、経験豊富な指導員たちが指導してくれる「サーフトレーニングクリニック」を実施しています。ぜひ、参加を検討してみてください。

    
 
篠田智哉(しのだともや) 勝浦LSC所属

LSweb2006年に国際武道大学に入学し、ライフセービング部に入部。
2009年にサーフライフセービング・BLSインストラクター資格を取得。現在はJLAアカデミー本部指導委員会サーフライフセービング分科会委員、溺水事故防止プロジェクト本部サーフトレーニングクリニッ委員会委員・パトロール能力向上委員会委員、スポーツ本部アスリート委員会副委員長を兼任。第10期ハイパフォーマンスチームにも選出されている。

競技経歴:
2008年全日本学生選手権 サーフスキーレース優勝
2011年全日本選手権 レスキューチューブレスキュー優勝
2012年全日本プール競技選手権 ラインスロー優勝
2013年全日本種目別選手権 サーフスキーレース優勝
2014年全日本プール競技選手権 100mマネキントウウィズフィン2位 100mマネキンキャリーウィズフィン3位
2016年全日本選手権 サーフスキーレース3位

今後の目標:
「JLAグランドデザイン2061」達成に向けて貢献していくこと。

 
    





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第2回レジェンズ・オブ・ビーチフラッグス・ジャパン
日本一の山を望むビーチに、日本一たちが集結!
2016/12/19

Legends of Beach Flags Race in JAPAN

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最年少は13歳、最年長は53歳。

年の差、実に40歳のライフセーバーたちが集まり
師走のビーチを駆け回る……。

そんなファンレースが、
今年も神奈川県の片瀬西浜海岸で開催された。

スポーツDJ山本ゆうじ氏も登場した注目のイベントを紹介しよう。

文・写真=LSweb編集室





世代を超えてビーチで楽しもう!

LSweb 真冬のビーチで開催されたファンレースの正体は、ビーチフラッグスとビーチスプリントに特化した有志による手作りイベント「レジェンズ・オブ・ビーチフラッグス・ジャパン」だ。

 ビーチ競技を通してライフセーバー同士の繋がりを深め、世代間の垣根を低くして、日本が誇るビーチフラッグス技術を継承しつつ、ビーチ文化を根付かせたい——そんな思いでファンレースを企画したのが、発起人の一人である西浜SLSCの植木将人さんである。

 植木さんと言えば、ビーチフラッグス競技で全日本優勝8回、世界大会でも銀メダルを獲得している猛者だが、彼にももちろん駆け出しの時代があった。当時、雲の上の存在だったのが、元世界チャンピオンの鯨井保年さんを筆頭とするビーチ競技の先駆者たちだ。

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昨年参加したレジェンドの面々(2015.12撮影)

 「昨年、オーストラリアで歴代チャンピオンが集まったビーチフラッグスのマスターズ大会が開催されると知り、日本でもやりたいと思いました。
 今は少しライフセービングとは距離を置いているけれど、ビーチフラッグスを日本の“お家芸”にしてくれた先輩たちに、また海に来てもらって、一緒にレースを楽しんでほしいと、仲間たちの力も借りて開催にこぎ着けたのです」と植木さんは話す。

 初開催だった昨年は、東海大OBの鯨井さん、日体大OBの岸 由起夫さん、専修大OBの野田輝明さんら7人の“レジェンド”が駆けつけ、20人近い若手との交流が実現した。

 二度目の開催となる今年は「日本には、若手や新人が気軽に参加できる草レース的なものがほとんどないので」と、ユース世代まで門戸を広げることに。
 その結果、参加選手83人と一気に昨年の四倍近い規模に拡大。「半日では時間が足りない!」と嬉しい悲鳴を上げることになった。

 実施競技はビーチフラッグスとビーチスプリント、そして全員参加のビーチリレーの3種目。男子はユース、オープン、マスターズA(35〜44歳)、マスターズS(45歳以上)の4カテゴリー、女子はユース、オープンの2カテゴリーで、真剣かつ和気あいあいとしたレースが行われた。
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いぶし銀の技が光る!?マスターズS

LSweb 12月10日、雪化粧した富士山を望む片瀬西浜海岸の一角で競技スタート。「Always Ready!」でお馴染みのスポーツDJ山本ゆうじ氏のしゃべりとノリのいい音楽の下、寒さを吹き飛ばす熱戦が繰り広げられた。

 成績は下記をご参照いただくとして、ファンレースの主役、マスターズ枠にエントリーした10人の“レジェンド”たちの顔ぶれを見ていこう。

 今年のレジェンド最年長は、新島LSCの田村浩志さん(53歳)。
 “タムじい”こと田村さんは、新島LSCの代表として今もパトロール現場に立ち、自分の実力を把握するためと競技会にも必ず出場する現役のレジェンドだ。とはいえ、ビーチ競技に出るのは1989年に片瀬海岸で開催された日本たばこ(現JT)主催のサムタイムカップ以来とか。実に27年ぶりのビーチフラッグス出場となった。

 田村さんがコーチ時代に日体大LSCに在籍していのが、藤田秀行さん、須藤信之さん、古見佳一さんの同級生トリオ。現在45歳の3人が現役の頃は、日体大ライフセービング部員が300人という時代で、ジャンボジェット機をチャーターし、ハワイで合宿したという有名な話がある。
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 日本代表としても活躍した藤田さんは、31歳の時に出場した全日本以来、競技会には出場していなかったそう。
 「当時、育児や家事はすべて女房に任せていました。でもいつかは、自分も家族のために時間を使うべきだと思っていて、31歳の時にその決断をしたんですね」と言う。
 でも久しぶりの海はやっぱり気持ち良かったようで、子どもの手が離れたらまたライフセービングに関わりたいと笑顔を見せてくれた。

LSweb 須藤さんが記憶している最後の競技会出場は、33歳の時に九十九里の蓮沼で行われた種目別。

 「ビーチフラッグスで6位だったのが最後です。学生時代は部員も多く、田村さんは鬼コーチでしたけど(笑)、ライフセービング漬けの日々でしたね」と笑顔で話す。
 須藤さんは現在、日体大ライフセービング部OB会の副会長として、後輩たちの活動を縁の下で支えている。

 中学校で教鞭を執る古見さんは、ユース枠でエントリーした生徒と一緒に参加した。

 「30歳の時に全日本に出て肉離れしたのが最後です。ケガをしないようにと思っていましたが、表彰台を逃して悔しいので来年はもっとしっかり練習してきますよ」とにこやかに決意表明した後、「東京都の教員なので、いつかは私のライフセービングの原点である新島に赴任し、島の中学にライフセービング部を立ち上げたいと思っています」と言葉を繋げた。

オープンさながら! マスターズA

LSweb ビーチスプリントに出場した東海大クレストOB、鴨下邦広さん(48歳)は、1992年に伊豆下田で開催された世界大会のメダリストだ。

 「2kmビーチランで銅メダル、ビーチリレーで銀メダルを獲ったのは良い思い出です。今日もビーチランがあればよかったんですが(笑)」と楽しそうだった。

 鴨下さんと一緒に下田の世界大会を戦ったのが、同い年の鯨井さんだ。
 今年、オランダで行われたマスターズの国際大会でビーチフラッグス3位となり“世界の鯨井”健在をアピールしたが、この日は残念ながら見学。

LSweb 旧知の山本ゆうじ氏のインタビューに「若い人からいろいろ教えてもらって、来年に繋げたいです」と答えていた。

 昨年に続いての参加となったのが、館山SLSCの石川智也さん(43歳)。石川さんは社会人になってから活動を始めた遅咲きのライフセーバーだが、現在はパトロールに、コーチにと多方面でクラブを支える主要メンバーとして活躍している。

 日体大OBの青木大輔さん(41歳)も昨年に続いての参加。実は、全日本でも活躍する北矢宗志さん(37歳)と植木さん(38歳)は高校の後輩であり、青木さんが教育実習に行った時の生徒だったのだとか。その北矢さん、植木さんも今年はマスターズAで出場。そして、キレのある動きを見せてくれたのはご想像のとおりだ。

 現在、北矢さんは母校・日体大荏原高校の教師となり、ライフセービング部を立ち上げ、高校生たちを指導し、共にこのレースにエントリーしている——。時の流れを感じつつ、脈々と受け継がれていくライフセーバー魂の連鎖を目にすることができた冬の日だった。
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来年はさらに充実!?

LSweb 強豪選手が集まったユース&オープン世代。

 真剣勝負のレースでスターターを務めたのが、全日本通算21勝、元世界チャンピオンの池谷雅美さん(44歳)だ。
 人数が揃わずマスターズが成立しなかった女子だが、来年こそは華麗な競技姿が見られることを期待しよう。

 ビーチフラッグスのユース女子は、古見さんの教え子である渋谷区立代々木中学校3年の亀井美佑さんが優勝した。
 陸上部に所属する彼女は、「古見先生に教えられて面白そうだと挑戦してみました。まだライフセービングがどういうものか分かりませんが、今日は楽しかったです」とニッコリ。
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 ユース男子の優勝は、成城学園LSC高校2年の大野琉宇那さん。

 期末テストのため練習はまったくできなかったそうだが、「今の自分の実力が分かると思いエントリーしました。優勝できたことで、さらにがんばれそうです」と、練習に対するモチベーションが上がった様子だった。

 オープン男子は実行委員の一人としてがんばった、勝浦LSCの堀江星冴さんが連覇を達成。
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 オープン女子は日体大LSCの石塚円香さんが優勝し「今年、ちゃんと戦って勝った(インカレ優勝はフライングでの勝利)のは初めてなので嬉しいです」と満足そうだった。

 ビーチスプリントのユースは、男子が井上祐里さん(中学3年)、女子が内堀夏怜さん(高校2年)と、西浜SLSCがアベック優勝。
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 オープンは男子が銚子LCの森新太郎さん、女子は西伊豆・松崎LSCの高橋わかなさんが優勝した。
 実行委員の一人でもある森さんは、自分のレースが終わった後に伴走しながらマスターズのレースを録画するという俊足ぶりも披露し、レースの盛り上げに一役買っていた。

 参加者全員が大いに楽しんだレジェンズ・オブ・ビーチフラッグス・ジャパン2016。

 手作り大会といえども、きちんと会場を準備し、正確にジャッジする、手を抜かない運営は素晴らしかった。質の高いレースが行われたからこそ、「今日を冬場のトレーニングの開始日にしたいです」と話す若手選手の姿もあったのだろう。

 レース開催にあたり、ボランティアとして多くのライフセーバーが協力してくれたのは、実行委員長として奮闘した西浜SLSCの小田切伸矢さんら実行委員たちの人柄と人脈のおかげ。ボランティアで協力してくれた皆さん、朝早くからお疲れさまでした。

 「次は2kmビーチランも加え、伝説のレジェンド対決を見せてほしいと言われてしまって……」と、来年に向けての命題を課せられた植木さん。中間管理職ならぬ中堅レジェンドとして、これからもまだまだ奔走する日々が続きそうだ。


    
 
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【ビーチフラッグス・マスターズS】
1位:藤田秀行
2位:須藤信之
3位:古見佳一
4位:田村浩志
【ビーチフラッグス・マスターズA】
1位:北矢宗志
2位:植木将人
3位:青木大輔
4位:石川智也

【ビーチフラッグス・オープン男子】
1位:堀江星冴
2位:森新太郎
3位:石田蒼一郎
【ビーチフラッグス・オープン女子】
1位:石塚円香
2位:高橋わかな
3位:渡邉来美

【ビーチフラッグス・ユース男子】
1位:大野琉宇那
2位:加納陸玖
3位:栗山享大
【ビーチフラッグス・ユース女子】
1位:亀井美祐
2位:西川瑞代
3位:内堀夏怜

【ビーチスプリント・マスターズS】
1位:藤田秀行
2位:須藤信之
3位:古見佳一
4位:鴨下邦広
【ビーチスプリント・マスターズA】
1位:北矢宗志
2位:植木将人
3位:石川智也
4位:青木大輔

【ビーチスプリント・オープン男子】
1位:森新太郎
2位:荒井滉太郞
3位:堀江星冴
【ビーチスプリント・オープン女子】
1位:高橋わかな
2位:神戸友美
3位:利根川莉奈

【ビーチスプリント・ユース男子】
1位:井上祐里
2位:森野郁也
3位:クレイアーロン竜波
【ビーチスプリント・ユース女子】
1位:内堀夏怜
2位:西川瑞代
3位:亀井美祐


 
    

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利根川莉奈の
米国ライフセービング体験記・後編
2016/09/22

That’s American Style! Rina's lifesaving story in USA Vol.2

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大学卒業後、アメリカのカリフォルニア州に留学した利根川莉奈さん。

現地では勉強だけでなくライフセービング交流も積極的に行い、今夏、アメリカで3つの競技会に出場した。

ユース時代に世界選手権のビーチフラッグス銀メダルを獲得した実力のある彼女だが、アメリカの大会ではいろいろ驚くことがあったようで……。

お国事情がよく分かる、米国ライフセービング体験記の後編をどうぞ!(LSweb編集室)


文・写真提供=利根川莉奈(成城学園LSC/今井浜SLSC)




アメリカンスタイルの大会にはオリジナル種目も

LSweb 今夏、私はアメリカで3つのライフセービング大会に出場することができました。
 7月には「カリフォルニア州大会」、8月には「インターナショナルサーフフェスティバル」と「全米選手権」です。

 後編では大会を中心としたアメリカのライフセービング事情をご紹介したいと思います。

 カリフォルニア州大会は、サンフランシスコ南部オレンジカウンティのハンティントンビーチ、インターナショナルサーフフェスティバルと全米選手権は、ロサンゼルス近郊のハモサビーチにて開催されました。

 ハンティントンビーチはサーフィンのスポットとしても有名なビーチで、様々な海のイベントが頻繁に開催される場所ということもあり、周辺には多くのお店が立ち並び、観光地としても有名な海になっています。ハモサビーチは、そこに比べると静かな雰囲気で落ち着いたビーチです。

LSweb 上記3つの大会のうち、少し特殊なのが「インターナショナルサーフフェスティバル」です。これは毎年この時期に3日間にわたり開催され、ライフセービングに限らず、ビーチバレーやボディサーフィン、パドルボードレースなど、いろいろな海に関するスポーツが行われます。

 私は8月7日の「ライフガードチャンピオンシップ」に参加しました。この日は地元、ロサンゼルスカウンティによるレスキューデモ、ジュニアのタップリン、ビーチフラッグス、3マイルメドレーリレーが行われました。

 競技の開始は夜の7時! これも午後9時頃まで明るいカリフォルニアだからできること。暗くなってからも照明を点け、充分な明るさの中で10時過ぎまで大会は開催されました。

 ナイトレースというだけで日本には馴染みのない大会ですが、中でも3マイルメドレーリレーは日本にはないレースで、とても印象的でした。

 これはアメリカ式の2人乗りボート“ドリーボート”を含んだレースで、スイム×4→ボード×4→ボート×4の順番で行われます。一度のレースでブイを12周することになるので非常に長時間のリレーですが、とても興味深いレースでした。
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 またボードのバトンパスが、ボードを縦に立てて渡す方式だったり、招集所では、どのチームが今何周目の何の競技が行っているか分かるようにしていたりと、どれもがとても印象的でした。
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持久戦となったビーチフラッグス

LSweb 競技会全体を通して感じた日本との大きな違いは、ドリーボートのようなアメリカオリジナルのレースがあることと、タイムテーブル、ビーチフラッグスのレースの進め方などでした。

 ランスイムランや、ランドラインレスキューという、紐を使った独自のレスキューレースなどがありました。

 タイムテーブルは、どの大会でも最初の競技の開始予定時刻と、競技の順番だけが載っている目安程度のものです。
 私が知る限りオーストラリアやフランスでも同じようでした。

 日本のように、事前にすべての時刻が表示されているのは珍しいことで、とても日本的であると感じました。
 オンタイムでの進行するために運営の方々がいかに努力しているか、そのおかげで私たちが安心してアップができ、またレースの応援に行けるということを改めて感じました。
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 自分が出場したビーチフラッグスレースは、親しみのある競技だからこそ、運営方法の違いに驚きました。なんとアメリカでは、レースの一本一本の間にレストが与えられないのです!

 例えば、予選で各ヒート準決勝出場人数まで絞るのに5レースが必要だとすると、その5レースはヒートを回さずに一気に行われます。
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 決勝に関しても、男女交互ではなくこちらの決勝人数である16人から最後の1人まで、1人ずつのエリミネーションで14レースが一気に行われます。
 20mを走り、フラッグを取る、帰ってまた寝転がり、走る、その繰り返しで持久力も問われてくる競技でした。

 これは私にとって、一本一本集中して細部に気をくばるという繊細なビーチフラッグスとは全く異なるものでした。
 しかし皆で息を切らせながら、初めは穏やかに行われた会話もなくなってきて、時たま互いに励ましながら行うレースも、私にとってはとても新鮮で良い経験になりました。LSweb

ライフセービングの素晴らしさを再確認

LSweb アメリカの大会に出てみることにより、たくさんのことを学び、たくさんの人々と出会うことができました。

 私個人のビーチフラッグス競技の結果は、カリフォルニア州大会で3位、インターナショナルサーフフェスティバルで2位、全米選手権は決勝まで進んだものの、国際選手へのルールがなく決勝の舞台でのレースはできませんでしたが、結果以上に多くのことを得ることができました。

 語学を学びにアメリカに来ましたが、ライフセービングに携わっていたおかげで語学だけで終わらず、このような貴重な経験をし、自分の世界を広げることができたことを嬉しく思うと同時に、改めてライフセービングの良さを感じることができました。

LSweb ここでの出会いから、アメリカ代表U-19チームにコーチとして携わるご縁も頂き、そこでは日本のビーチフラッグスの技術を伝えることができました。

 私が今まで沢山の先輩方から教えていただいたことを、アメリカの次世代の選手たちに伝えることができたことは、私にとってとても良い経験になりました。

 自分が高校生の時にライフセービングを始め、多くの先生や先輩方にしていただいたことを、今自分が後輩たちやアメリカのユース世代にも伝えていくことで、ようやくお世話になった方々に少しずつ恩返しを始められたようにも感じます。

 日本に帰ってからもまた、ここで学んだことや経験を伝えていくことで、自分ができる形でライフセービングに携わってこの経験を生かしていきたいです。






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利根川莉奈の
米国ライフセービング体験記・前編
2016/09/21

That's American style! Rina's lifesaving story in USA

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日本の大学を卒業した一人のライフセーバーから「留学先の海外でもライフセービングを楽しんでいる!」という知らせが届いた。

米国ライフガードの本場、アメリカ西海岸に旅立ったのは、今年3月に成城大学を卒業した利根川莉奈さんだ。

競技会に挑戦したり、ユース選手の指導を手伝ったりと、積極的にライフセービング交流を広げている彼女が見て、体験したアメリカ流ライフセービングを、前編・後編でお届けしよう。(LSweb編集室)


文・写真提供=利根川莉奈(成城学園LSC/今井浜SLSC)





アメリカのライフガード事情

LSweb 私は今年3月に大学を卒業後、4月からアメリカのカリフォルニアで生活を始めました。こちらでもライフセービングを続けたいと、以前から交流のあったアメリカ代表チームの監督であるジェイさん(Jay Butki氏)に連絡を取ると、大会に出場させてもらえる事に!

 そしてなんと、7月には「カリフォルニア州大会」、8月には「インターナショナルサーフフェスティバル」と「全米選手権」に出場する機会を得ました。

 どれも規模や特色の違う大会ながら、日本の大会とは一味違った良い経験ができました。またそこでたくさんの人々と出会い、アメリカのライフセービングについての話も聞くことができました。日本と異なる点も多く、日本のライフセービングを客観的に捉える機会にもなりました。

LSweb アメリカのライフセービングは、主に監視活動の時期や雇用形態などの点で日本と大きく異なります。例えば監視活動時期は、繁忙期などによって数は異なるものの、こちらでは一年中タワーを開いています。

 日本と違い、海で時間を過ごすことが国民にとって身近である上に、気温の変動が少ないため、どんな時期のどんな時間であっても海辺には人がいます。

 そのような理由から、こちらでは毎日最低でも1つのタワーが開きます。日本のように、ライフセーバーが配置されるのは海水浴期間だけ、という概念がありません。

 また、雇用形態も日本と異なります。アメリカのライフガードチームには「フルタイム」と「パートタイム」の2種類があり、一番大きいクラブでは合計1000人弱が所属しています。

 フルタイムはほかの仕事と同じように、基本的にライフガードを仕事として従事していて、パートタイムは大学生や、ほかにも仕事をしながらライフガードに携わる形となっています。

大会は仕事の合間のレクリエーション

LSweb このように活動形態が日本と違うこともあり、大会の位置付けも日本と大きく異なります。

「大会に参加する」というと日本では、厳しいトレーニングを積んで準備しなくてはと思ったり、敷居の高いイメージを持つ方も少なくないと思います。

 ところがこちらでは、大会に参加することは仕事の合間のレクリエーションのような位置付けで、皆でレースを行って日々の成果を競い合い、大会に集い共に戦った仲間たちとの時間を楽しむ、といった雰囲気が強いようでした。

 すべての大会後には、必ず近くのレストランやバーで「アフターパーティー」が行われます。

LSweb 全米選手権後のパーティーで、あるマスターエイジグループの選手に話を聞いたところ、「ここで一年に一度しか会えない仲間たちに会う、そんなことが楽しみで毎年出ているよ!」という話を聞きました。

 アメリカの大会には、各年齢別のエイジグループレースがあり、マスターエイジの選手が非常に多く参加しています。

 これは私にとって、アメリカの大会に出て一番感動したポイントでした。いくつになってもライフセービングを楽しむ彼らの姿を見ていると、自然と応援したくなる気持ちになりますし、果敢に自然に立ち向かう姿からは、長年この活動に携わってきたことから生まれる威厳が伺えます。

 彼らの姿は本当に素敵で、私はとてもインスパイアされました。最年長の方は81歳で、息子も40代のエイジグループとしてレースに出ているという親子でした。

 ジュニアの活動から学ぶことが多いように、マスターエイジの方々のレースも私たちに様々なことを教えてくれます。
 
 日本ではまだまだエイジグループのレースを作るほどの人口がいないけれど、いつか日本でもマスターからジュニアまでが集う、大きな家族のような雰囲気の大会ができるといいなと思いました。
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 そんなマスターエイジグループに刺激されながら参加した「カリフォルニア州大会」「インターナショナルサーフフェスティバル」「全米選手権」の3大会。その顛末は後編でお伝えします。










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