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まずは知ることから始めよう
ライフセーバーが車椅子体験!
2013/08/28

湘南ひらつかLSC×車椅子の会 サイレントフット

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8月18日、神奈川県平塚市の湘南ひらつかビーチパークで、車椅子の試乗体験会が開催された。

同ビーチパークを活動拠点とする湘南ひらつかLSCと、神奈川県相模原市に本部を置くNPO法人「車椅子の会 サイレントフット」の共同で実現した体験会の様子を紹介しよう。





文・写真=LSweb編集室





ハンディキャップのある人と海を繋ぐ

LSweb 車椅子の会 サイレントフットの会長を務める佐藤利章さんは、2004年に脊髄梗塞(せきずいこうそく)という病気で、突然、下肢麻痺の障害を背負うことになった。以来、車椅子を足代わりに日常生活を送りながら、2006年に同会を設立。身体にハンディキャップのある人だけでなく、高齢者や子どもたちも安心して外出できる環境づくりを目的に、さまざまな活動を行っている。

 その一つが車椅子で街へ出かけ、車椅子やベビーカー、お年寄りの手押し車などが安心して移動できるかどうかの検証を行い、行政に報告して改善を求める活動だ。

 湘南ひらつかLSCでクラブマネージャーを務める白井勇喜さんは、かねてより、日本ライフセービング協会が掲げる5つの活動方針(救命・スポーツ・教育・福祉・環境)の中で、福祉に関する活動が弱いと感じていた。

 活動拠点のビーチバークには、砂浜用の車椅子「ランディーズ」もあるが、利用する人が訪れることもなく、サポートする機会もなかった。そんな時、佐藤さんと知り合ったのだという。

 そして、ハンディキャップのある人と海を繋ぐイベントを共催していくことになった。その活動の第一弾が、今回行われた車椅子の試乗体験会だ。
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 厚生労働省の統計によると、日本国内の身体障害者の人数は平成18年で348万3000人。そのうち肢体不自由者は約半数の176万人、さらに車椅子で生活していると思われる下肢機能および体幹機能障害者は84万人いる。つまり、身体にハンディキャップを持っている人の4人に1人は、車椅子を利用しているということなのだ。

 ハンディキャップのある人と海を繋ぐイベントを共催していくにあたって、まずはライフセーバー自身が車椅子を知ろう! 今回はそんな趣旨で体験会が行われた。


ビーチパーク利用者も巻き込んで

 LSweb体験会は実に楽しいものだった。堅苦しい説明はなく、ちょっとした注意事項の後、みんなで車椅子スラローム競技を楽しんだ。

 車椅子スラロームとは、約30mの距離に赤と白の目印となるゲートを設置し、白は前進、赤は後進で通過し、タイムを競うというもの。途中、前進やバックで一回転するポイントも設けられている。車椅子はサイレントフットと、高齢者の介護施設に勤務する湘南ひらつかLSC副代表の橘川克巳さんの協力により、3台用意された。

 この日は朝からジュニアチーム「ヒラッパーズ」の練習会が行われており、練習を終えたジュニアやその保護者たちも参加。
 
 LSwebまた、ビーチバレー選手の川合 庶さんも飛び入りで車椅子を体験した。身長190cm超の川合さんは、車椅子に座った瞬間「目線がまるで違いますね。普段見えるものが見えないというだけで、ずいぶん不安になるものです」と話してくれた。

 ジュニア、ライフセーバー、保護者の順に行われたスラローム対決は白熱。次々と好タイムが記録された。その様子を目にしたビーチパーク内の人たちも、興味深そうにイベントの様子を見つめていた。
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 実は記者も人生初の車椅子体験をさせてもらった。車椅子の操作そのものは思っていたほど難しいものではなかったが、前進、後進を繰り返すうちにどちらに進んでいるか分からなくなり、あれっと思った時には片方の車輪が舗装されたバスケットコートの外へ。すると、たちまち砂でスタックしてしまった。

LSweb ビーチでイベントを開催する時には、こんなことにも注意が必要なのだと気づいたのだが、そもそも車椅子一人では、防砂林を越えてここまで来ることができないのでは? との疑問も湧き、ハンディキャップのある人が海に来ることのハードルの高さを、改めて考えさせられたのだった。

 イベントの最後に、佐藤さんにランディーズに乗ってもらえるようお願いした。快く引き受けてくれた佐藤さんだが、第一声は「乗り心地は悪いですね(笑)」というもの。「でも砂浜を移動するには、こういう造りやタイヤでないとダメでしょうね」と理解を示してくれた。

 この日は飛び散る砂が当たると痛いほどの強風だったが、そのままライフセーバーのサポートで波打ち際まで行くことに。
 「実はランディーズを使うのは初めてです。あるのは知っていましたが、動かしたことがなくって」という湘南ひらつかLSCのメンバー。傾斜がきついところにまで進むと、「下りは後ろ向きで」というアドバイスを受け車椅子を反転させた。
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 どこの海岸も程度の差こそあれ、ビーチは波打ち際に向かって傾斜しているはずだ。つまり行きより帰りのほうが大変ということなのだが、「PWCの運搬と比べれば、全然、軽いっす」と頼もしい。
 その様子を見ていたら、こういうライフセーバーたちなら、きっと海に来たいと思っているハンディキャップのある人たちを、優しくサポートし、しっかり楽しませてくれるのだろうなと思った。

 最後に佐藤さんから注意点を一つ。
「麻痺のある人は、その部分を打撲し痣などができると、そこから壊疽(えそ)になる可能性があります。ですから、ランディーズに乗せる時や、サポートする時に、ぶつけないよう注意してあげて下さい」
 
 湘南ひらつかLSCの新たな活動はまだ始まったばかり。この新しい試みがどう発展していくのか、楽しみである。

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