2月1〜2日にかけて、JALライフセービングシステム開発委員会主催の「クラブマネージャーキャンプ」が開催された。
ライフセービング活動の土台となるクラブ運営について、熱い議論が交わされたキャンプの様子や内容を風間さんにお願いし、改めてレポートを書いて頂いた。
ぜひ、ご一読下さい(LSweb編集室)。
これはさる3月9日、東京代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターで行われた「ライフセービングフォーラム2014」で同委員会委員長の風間隆宏さんが発表された講演「クラブマネージャーキャンプ実施報告〜地域LSC運営の現状と課題〜」に即したものである。
文・写真=風間隆宏
(JLAライフセービングシステム開発委員会委員長)
20代から50代まで14人が参加
日本全国のビーチにライフセービングクラブ(LSC)がある世界を目指して。そんな熱い想いを持ったメンバーが集まり、第1回クラブマネージャーキャンプが千葉県館山市で開催された。
どのようにLSCを運営していくか? これはLSの全国普及を考える上で避けては通れない課題だ。
「ライフセービングシステム(LSS)開発委員会内で議論している中、競技や講習会、ジュニアに関しては情報交換する場はあるけど、LSC運営に関して相談できる場所はないよね。じゃあ同じ問題意識を持っている人で集まって議論できる場を作ろうよ」
そんな想いで企画したこのキャンプ。全国から20代から50代、LS歴5年から20年を超える14人のメンバーが参加してくれた。
開催にあたり重視したのは海の目の前で実施するという事。クラブ運営という複雑で中々答えが出ないテーマを議論する際、会議室で籠って行うと、どうしても悶々としてくる。そこで今回は、館山LSCが監視する北条海岸で開催、午後から開催、翌日午前終了と地方からも移動も含め2日間で完結できるように配慮した。
議論に入る前に、昨今、監視活動でも一部活用されつつあるSUP(スタンドアップパドル)の試乗会を実施。初めて顔を合わせるメンバーもいるので一緒に海に入りアイスブレイク。初めて乗る人もいたが、みんなベテランライフセーバー。難なく乗りこなし楽しんでいた。
海に入ってすっきりした後、オーシャンビューの民宿へ移動し、さっそく議論開始。まず自己紹介も兼ねてLSについてアンケート。①今好きな事、②今嫌いな事、③将来こうなってほしくない事、④将来こうなってほしい事を書き出してもらい、各自に発表してもらった。
好きな事としては、やはりLSをしている仲間やLS自体の正義感や公共性に魅力を感じている意見が多く出された。一方嫌いな事としては、活動が限定的、閉鎖的、社会的認知度が低い、社会的身分が曖昧など活動自体まだ未成熟であるという点。さらに金銭面や作業面も含め活動に深く関わるに随い個人の負担が非常に重くなるというリアルな問題も出された。
また将来こうなってほしくない事としては、このまま限定的(地域的・年齢的等)な活動に留まってしまう事(現状維持)や他団体の発展や組織の分裂、各地域がバラバラに活動する等JLA組織の弱体化を懸念する意見もあった。一方将来こうなってほしい事は、全国普及、ジュニアの拡充、ライフガード(雇用)の創出、LSが当たり前の社会など非常に前向きな発言が多く出された。
今回の参加メンバーはクラブ運営に関わるなどLSにかなりコミットしている方々。皆、LSに大きな魅力を感じている一方で、個人に掛かる負担や活動の未成熟な点に憂慮している。しかしその発展性や将来性については、大きな希望を持っていることを共有できた。
次に、LSS開発委員会の4人が所属するクラブ(館山・湯河原・キララ・西浜)の運営事例紹介。新規クラブ・老舗クラブ・地方クラブというバラエティーに富んだ内容。歴史的背景や立ち上げの経緯、また現在抱える問題も様々。人材勧誘やその育成方法、行政との協働や他団体との協力状況、クラブ内の組織や役割分担、ファンドレイジングやその資金の活用方法など運営に関わる突っ込んだ質問も飛び交った。
その後、クラブ運営に関わる課題として「ヒト・モノ・カネ・情報」の4つのグループに分かれて問題点、課題点を抽出。さらに抽出した問題を「JLA・地域・クラブ・個人」に分類したところで初日は終了。
ここからはHAPPY TIME。BBQで火を囲み、杯を傾けながらLSの未来について熱く語る至福の時間。ライフセーバーは皆、話が止まらない。2月にしては暖かな日。何歳になっても、誰とでもLSを肴に熱くなれる。これがやはりこの活動の最大の魅力なんだなと改めて感じた。
地域のリーダー育成に向けて
2日目。朝から昨日出された4つの課題に関して、グループ代表がプレゼン。各課題に関して解決策の検討を行った。ここでは一番大きな問題であった主にヒトついての議論を紹介する。
LSをする人、支える人、理解してくれる人をどのように増やすかの根源的な問題が提起された。特に地方に行くほど人の問題は深刻で、初期に立ち上げたメンバーからなかなか増えない(場所によっては減少)。関東近県で学生時代にLSを行っていた人が転勤等で来たとしても地域クラブに参加する人は少数という意見があった。
さらに関東近県にいるとライフセービングという言葉自体の社会的認知度はだいぶ高まってきたと感じるが、地方ではまだまだ認知度は低く、いまだ夏のバイトの延長上という認識を持たれることが多いという切実な話もあった。その解決策として、広報の改善や大学卒業後いかに継続してもらうかの対策、会員や資格制度(監視だけの資格を発行等)の改善などが挙げられた。
またクラブ内でもLSスキルや想いに差がある場合、どのようにハンドリングするかが難しい。ボランティアなので強要は出来ず、特定の人に負担が偏ってしまいという問題も上がった。
正直クラブ運営まで担ってくれる人は、ごく少数である。そのような次世代のリーダーを、どのように育てていくのも大きな課題。例えば今回のようなキャンプを定期的に開き、同じ想いも持つ他クラブの人と交流し、情報交換することで、モティベーションが高まるという意見もあった。
LS先進国の豪州では競技や資格取得とは別にカテゴリーで、LSを広めて継続していくためのLeadership Collegeなどが開催されている。現在JLAでは学生リーダーズキャンプが開催されているが、より一歩進んだ地域クラブのリーダーを育てていくことも必要であると強く感じた。
今回初めてクラブマネージャーキャンプを開催した。参加者のアンケートからもその満足度が高く、今後の継続的な開催を望む声が多く聞かれた。日本のLSは、まだまだ発展途上の段階。パトロール、競技、ジュニア及びライフセーバー育成、組織論等々、課題は多々ある。その状況を見て全然ダメと感じるか、やりがいがあると感じるか。人それぞれ。しかしこの活動には大きな魅力があり、水辺の事故をゼロにするという絶対的な正義がある事は確か。
さらにもう一歩踏み込めば、いまこの発展途上の段階で関われたという事は、自らが日本のLSを作るチャンスがあるという事。そう考えると、とてもワクワクしてくる。今回のキャンプはそんなワクワク感を共有でき、LSの未来に向けて更なるモティベーションを高められた機会であった。
参加して頂いた皆様、ありがとうございました。