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無事故の連鎖を全国へ!
広がるレスキューの協力体制
2013/07/30

Beach Safety with Neighbour Clubs

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日本のライフセービング活動先進地域である神奈川県で、近年、近隣のクラブ同士が協力して、レスキューにあたろうという機運が盛り上がっている。

いつ、誰が、どうやって協力すれば、より良い活動ができるのか?

ライフセーバーたちの新しい試みを、2つの実例で紹介しよう。




文・写真=LSweb編集室





11地域クラブが参加した
パトネット主催のヒューマンチェーン演習


LSweb 日本ライフセービング協会(JLA)の神奈川県支部でもある、神奈川県ライフセービング連盟(KLF)では、2010年より加盟の13地域クラブを対象とした「パトロールネットワーク(通称:パトネット)」を立ち上げ、各クラブ間の連携とパトロール品質の向上を目的とした活動を行っている。

 パトネット発足当時から現在にいたるまで、各クラブが抱える一番の課題がガード期間の人手不足だ。いかに人を集め、育て、継続してもらうかに頭を悩ませているのは、日本全国どのクラブでも同じだと思う。
 
 そこでパトネットでは、その共通の課題をお互いが競合するのではなく、助け合いながら解決しようと、例えばPR用パンフレットの共同製作や、他浜留学制度の推進などを実施。少しずつだが人材不足の問題を改善している。
 
 ちなみに他浜留学制度とは、所属クラブ以外のクラブでパトロールに参加し、レスキューの知識や技術の向上、さらにライフセーバー同士の交流を深めることを目的としたもの。同じ県内でも海水浴場の開設期間には違いがある。海開きが遅い浜を活動拠点するクラブにとっては、すでに海開きしている浜を手伝うことで自分たちのトレーニング兼レベルアップができ、海開きの早い浜は、ライフセービング経験のある助っ人を得ることができるというシステムなのだ。

 パトネット発足から4年目となった今年は、こうした協力体制をもう一歩進め、緊急時のクラブ間連携を模索することになった。
 
 緊急時にいかに助け会えるかは、以前からパトネットの議題に上っていたことだが、具体的な行動には結びついていなかった。しかし、昨年の引地川での事故を受け、西浜SLSCのパトロール委員長・石川修平さんの呼びかけで、今回初めてクラブ同士が協力する「ヒューマンチェーン演習」が行われることになったのだ。
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 開催日は6月30日。場所はこの日、海開きの式典が執り行われていた神奈川県平塚市の湘南ひらつかビーチパーク海水浴場。パトネット加盟の11地域クラブから、監視長レベルのライフセーバー約30人が集まり、とある浜で海水浴客が行方不明になったという想定の下、事故発生からヒューマンチェーンを行うまでの一連の動きを、ロールプレイングで確認した。
 
 参加者には事前に、地元のライフセーバー、他浜のライフセーバー、遊泳客、海の家のスタッフ、警察や消防、行方不明者の友人といった役割が振り分けられ、最後は地元のライフセーバー、応援に駆けつけたライフセーバー、遊泳客などが海に入り、実際にヒューマンチェーンを行うこところまでをこなして訓練終了。その後、全員での意見交換が行われた。

LSweb 事故のシナリオを全員で共有していたこと、また応援にかけつけるライフセーバーが実際よりも短時間で登場したことなどを差し引いても、今回の訓練でヒューマンチェーンに取りかかるまでの一連の流れはスムースだったように思う。現場(海に入るライフセーバー)と本部の意思疎通にタイムラグが見られる場面もあったが、初対面のメンバーも多い状況では、むしろ上手くできたほうではないだろうか。
 
 もちろん、課題もたくさん見つかった(下記参照)。しかし、何より海水浴シーズン直前の多忙な時期に、神奈川県内でパトロールするライフセーバー同士が同じ場所に集まり、互いの顔を見ながら訓練に望めたことは、いざという時に活きてくるはずだ。
 
 もちろん、いざという時がこないことを祈りつつ、パトネットの今後の活動に注目したい。

    
 
【訓練終了後の意見交換から】

・溺者の個人情報を他浜のライフセーバーとどこまで共有するべきか?
・事故の状況をどこまで詳しく説明すべきか? 迅速にヒューマンチェーンを開始することとの兼ね合いは?
・遊泳客など、一般人にヒューマンチェーンを手伝ってもらう場合は、厳重な安全確保が必要となる。どういう人なら手伝ってもらえるかという基準も決めておくべきではないか?
・一般人にとってヒューマンチェーンというのは遺体捜索と変わらない。協力をお願いする時には、そのあたりのこともきちんと説明するべきではないか?
・海底地形や潮流などは浜ごとに大きく違う。ライフセーバーの安全をいかに確保すべきかも大きな課題


 
    


鎌倉市・腰越、藤沢市・片瀬東浜
市境を挟んで隣り合う2浜の合同訓練


LSweb 遠くの親戚より近くの他人——ということわざがある。
いざという時に頼りになるのは、遠く離れて暮らす親類ではなく、赤の他人でも近くに住む人であるという意味だ。続いては、まさにこのことわざを体現する、2つの海水浴場で行われた水難救助訓練を取材した。

 全国のほとんどの地域で夏休み初日となった7月20日、遊泳時間の終わった神奈川県鎌倉市の腰越海岸に、同浜をパトロールする鎌倉ライフガードの面々が集まってきた。隣接する浜をガードする2つのライフセービングクラブが、合同訓練を行うことになっていたのだ。

 サザンオールスターズの歌でお馴染みの湘南・江の島。
島に向かって左手に伸びる約800mの海岸は、同じ浜でありながら鎌倉市と藤沢市の境界線があり、江の島側の藤沢市は片瀬東浜海岸、東側の鎌倉市は腰越海岸と区分されている。
 夏になるとそれぞれの浜に海水浴場が開設され、市境の海面には双方からブイとロープが設置される。名目上、そこは遊泳禁止エリアであり監視空白区域となるが、事故が起こった場合は当然、レスキューを行うことになる。

LSweb 片瀬東浜海水浴場をガードしているのは、西浜SLSC。腰越海水浴場をガードしているのは鎌倉LGだが、地理的に近いこともあり、通常は鎌倉LGが市境付近をパトロールしている。しかし、もしここで一度に複数の人が流されるなどマスレスキューが起こった場合、どう対処すればいいだろうか? というのが、鎌倉LGの長年の懸案事項だった。
 
 実は両クラブとも複数の浜をガードしており、ライフセーバーの数に余裕があるわけではない。クラブ内で応援を要請するにしても、鎌倉LGの場合、一番近い由比ガ浜海水浴場から腰越海水浴場までは陸上で約4キロの道のり。夏の休日ともなれば必ず道路が渋滞し、現場到着までどのくらい時間がかかるか分からない。

それならば、見える範囲で活動している西浜SLSCに協力してもらおう! と始まったのが、今年3回目を迎えた腰越・東浜合同訓練だ。
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 訓練の統括は鎌倉LG代表の多胡 誠さん。東浜のパトロールキャプテンである相澤庄太さんに協力を求め、市境で溺れる2人の海水浴客を鎌倉LGが発見した、という想定で訓練がスタートした。ファーストレスキューは鎌倉LGのレスキューボード。

 溺者の1人は意識ありだが、もう1人は意識なしの状態。東浜でPWCがパトロールしているのを目にした腰越の監視本部は、独自の判断で応援要請し、西浜SLSCのPWCとともにレスキューを行うというシナリオだ。

 実際の訓練では、手元の時計で溺者発見からPWC到着まで約5分30秒、そこから約30秒で意識ありの溺者を浜に上げ、現場に戻って意識なしの溺者を浜に上げるまで約2分30秒が経過した。
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 訓練終了後、両クラブのメンバーが集まり行われた振り返りでは、実にさまざまな意見が出された(下記参照)。中でも印象的だったのが、東浜でパトロールしていたメンバーの「溺者発見の長笛がはっきり聞こえたので、腰越の状況に注目した」という意見。
 
 訓練当日は穏やかな天候で風も弱かったため、笛の音が聞こえやすい条件だったことは確かだ。しかし、経験を積んだライフセーバーであれば、見える範囲で活動する隣り浜の異変は、このように経験的に察知することが多いのではないだろうか。そうであるならば実に心強いことであり、速やかに協力体制を築いたほうが、つまり重大事故の発生を知らせたほうが、お互いに気兼ねなく行動できるのではないかと感じた。

 近隣のライフセーバーと顔見知りであれば、連絡も取りやすい。これは普段の生活も同じで、日常的に近所の人と挨拶し、時に近況報告などをしていれば、異変に気づいたり、気軽に声をかけたりできるものだ。

 パトネットの今年のスローガンは「顔の見える関係」。ライフセーバー同士の交流が深まれば、協力の輪も広がり、より質の高い活動ができるようになるだろう。こうした取り組みが今後も続き、さらに他地域へも広がることに期待したい。

    
 
【訓練終了後の意見交換から】

・電話連絡やトランシーバーのやりとりに時間がかかり、PWC到着までの時間が想定より遅かった。一刻を争うならばレスキューボード2本でいったほうが速かったかもしれない。臨機応変に対応できるように考えたい
・PWCはクルーがいないと重溺が上げられないので、軽溺を先に上げた。応援にかけつける前に、クルーをピックアップして連れていったほうが良かったかもしれない
・訓練ということで試しに携帯の録音機能を利用してみた。電話連絡の様子やトランシーバーでのやりとりなど、それなりの音質で録音できたので、こうした記録はいざという時にも役に立つのではないか
・電話、トランシーバーを利用しながら、現場と本部、さらに隣り浜の本部と応援のPWCとの連絡を統括するのが難しかった
・レスキュアー同士でお見合いしてしまうことがあった。指揮系統をどう統括するか、現場で指示できる人は遠慮なく指示してもいいのではないか


 
    






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海水浴場、次々オープン
ライフセーバーの季節がやってきた!
2013/07/01

Patrol Season have just begun!!

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今年の梅雨は今のところ雨が少なく、暑い日が続く。
梅雨明けはもう少し先になりそうだが、一足早く海水浴場の海開きがいよいよスタートした。

湘南エリアでは、逗子や平塚が一足早く海開きを行い、シーズン中の安全を祈願するとともに、さまざまなビーチイベントが開かれ、多くの人で賑わった。

もちろん、ライフセーバーたちも早速パトロール開始。いよいよ彼ら彼女たちが躍動する熱い熱い夏がやってきた!



文・写真=LSweb編集室





海開き初日からビーチは大賑わい

 今日から7月。パトロールシーズンの到来だ。
 
 全国的にも海開きの早い神奈川県では、6月28日(金)に逗子市の逗子海岸海水浴場が、6月30日(日)には平塚市の湘南ひらつかビーチパーク海水浴場がオープン。今日、7月1日(日)には、三浦市の三浦海岸海水浴場と藤沢市の片瀬西浜・東浜海水浴場が海開きを迎えた。

 6月にオープンした逗子、湘南ひらつかの2つの海水浴場では、いずれも安全祈願の神事が厳かに行われ、市長の宣言により海開きとなった。その瞬間、子どもたちが一斉に海に飛び込み、一足早い夏を満喫。ライフセーバーたちは約2カ月にわたるパトロールシーズンをスタートさせた。
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 海開きに先立ち、逗子では逗子サーフライフセービングクラブ(大西 明 代表)が発足。通常のレスキュー機材に加え、インフレータブルのスタンドアップパドルボード(SUP)を3艇導入し、高い目線でガード活動を行うなど新たな取り組みも始めている。LSweb
 
 また、日本財団の助成事業であるシーバード逗子(水上バイク=PWCでの水難事故防止、環境保全などを行うボランティア団体)も設立され、6〜9月は逗子SLSCとともに水辺の安全を見守ることとなった。

「今年はどの機材を使うか迷うほど、レスキュー機材が充実しています。SUPは目線が高いので、混雑した海ではきっと威力を発揮すると思います。ただ、豊富な機材に頼るだけではなく、しっかりガードして無事故を目指したいと思います」と話すのは、今年、逗子の監視長を務める松野佳大さんだ。

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 ところで、海水浴場の管轄が地方自治体の観光課などに託されていることからも分かるとおり、海水浴場はその地域にとって重要な観光資源だ。全国的に知名度のある湘南地域の海水浴場でも、いかに多くの人の訪れてもらうか、海水浴場運営事業者はさまざまな工夫をしている。
 
LSweb 例えば、逗子の場合は海辺のライブハウスが人気で、同ビーチを訪れる海水浴客の数はそれ以前に比べ約2倍に増加したという実績があるし、湘南ひらつかビーチパークは、ビーチバレーやビーチサッカーなどのコートを常設し、ビーチスポーツが1年中楽しめる環境を整えている。

 海水浴場の活性化には、地域の人たちの熱意だけでなく行政の力によるところが大きいのも確かだが、どの地域にも共通しているのは「安全なビーチで安心して遊べる」環境づくりを目指しているということだ。そこで出番となるのが、ライフセーバーたちなのである。

 湘南ひらつかライフセービングクラブでは、広いビーチを効率よくガードするためにPWCを導入LSwebしているが、今夏は大学生ライフセーバー5人があらたに免許を取得。機動力が大幅にパワーアップした。
 
 今年、クラブ創立20周年を迎えた湘南ひらつかLSC。海開きセレモニーでは野澤 亮 監視長が、
「我々ライフセーバー一同は、日頃のライフセービング活動を通じ、お客様に安心で安全なビーチを提供するとともに、ライフセービングスピリットに則り、無事故はもちろん、お客様の笑顔を創造することを誓います」
 と力強く安全祈念宣言をした。
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 また、湘南ひらつかビーチパーク海水浴場の海開きに合わせて、神奈川県ライフセービング連盟が主催する、パトロールネットワークミーティング(通称:パトネット)が同ビーチで開催され、神奈川県下で活動する11ライフセービングクラブの監視長らが集合。来るべきシーズンに向け、クラブ間の連携を強め、いざという時に助け合える関係づくりを行った。
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 同日、パトネット参加者によって、行方不明者の捜索を近隣クラブとともに行う「ヒューマンチェーン演習」も行われた。この様子は、改めて詳しくお伝えしよう。
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 全国各地の海水浴場も、小中学校が休みに入る7月下旬までに順位オープンしていく。いよいよライフセーバーの本領が発揮されるシーズンとなった。
 皆さん、今年の夏も水辺の安全を見守ってください。よろしくお願いします!

 当ウェブも、日本全国のライフセーバーの活動を紹介するという形で、微力ながら皆さんを応援していきたいと思っています。というわけで、皆さんの活動情報をどしどしお知らせください。お待ちしています!!






さらなるレスキュー技術の習得を目指して
IRB&PWCの合同トレーニングキャンプ開催
2013/05/10

IRB&PWC Joint Training Camp

LSwebゴールデンウイーク前半の4月27日、千葉県山武郡の九十九里海岸にて、IRBおよびPWCの操船技術アップを目的とした、ライフセーバー有志による合同トレーニングキャンプが開催された。

IRB(インフレータブル・レスキュー・ボート)やPWC(パーソナル・ウオーター・クラフト)といった動力系レスキュー機材(パワークラフト)は、夏のパトロールシーズンはもちろん、競技会や、マリンスポーツ大会の監視業務でも大活躍する、ライフセービング活動にとって、なくてはならない道具だ。

しかし日本では、IRB、PWCどちらを運転するのにも小型船舶操縦士免許の取得が必須。この免許制度の壁があるため、IRBやPWCの操船に関わるライフセーバーの数は限られているのが現状だ。

そんな中、九十九里LSCと西浜SLSCを中心としたライフセーバーが集まり、シーズン前の自主合同トレーニングが行われた。その様子を、インストラクターとして参加した、西浜SLSCの飯塚剛志さんにレポートしてしていただいた。(LSweb.com編集室)

文=飯塚剛志(西浜SLSC)
写真=松永 祐(九十九里LSC)





基本を身につけて安全に活用


 快晴に恵まれたゴールデンウイーク前半、九十九里殿下海岸において、IRBおよびPWCのトレーニングキャンプを行いました。
 
 このキャンプには、主に千葉県内で行われる大会運営や安全課を担当する九十九里LSCから8人、全日本選手権を中心に全国各地の大会運営をサポートする西浜SLSCから6人、そして大竹SLSCから1人、総勢15人が参加しました。
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 今回のトレーニングは、中上級編の内容を軸とし、より高度な操船技術と、より安全で確実な技術の習得を目的に、インストラクターはPWC担当が九十九里LSCの中核を担う森良 祐さん、IRB担当が私、飯塚で行いました。

 トレーニングキャンプは、波が胸から肩ぐらい、風も弱い絶好のコンディションの中で行われました。
 
 大会運営をスムーズに行うための操船練習も大きな目的の一つでしたが、これから夏のシーズンを迎えるにあたり、細かい技術の再確認も念入りに行いました。
 繰り返し波を越える練習、波にぶつからずに安全に沖に出る練習、ドライバーとクルーマンの体重移動の方法や、インサイドでの旋回方法などを何度も反復で練習し、タイミングやポジションをしっかり体に覚え込ませました。
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 波や風の状況が常に変化する海では、臨機応変に対応することが求められますが、集中的にトレーニングすることで参加者一同、ある程度の自信が得られたと思います。シーズンに向け、充実した時間が持てました。
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 最後に、インストラクターから参加メンバーに、
「IRBやPWCといったパワークラフトは、人間以上の力が出るものです。道具として正しく安全に使いこなせば、有効なレスキュー機材になりますが、ひとつ間違えば非常に危険な凶器ともなります。
 そのことを忘れずに、しっかりと基本を身につけ安全に活用すること、そしてそのためには海を見る知識、ボードやチューブといった基本的なレスキュー能力も大事だと肝に銘じ、日ごろの訓練をしてください」
 とメッセージを伝えました。


 合同トレーニングは今後もクラブ同士、タイミングを合わせて開催する予定ですし、西浜SLSCでは年3回(6月、2月、3月)、PWC/IRBセミナーを主催し、夏はレスキュー技術の確認、冬はメインテナンスおよび基礎技術の確認を行っています。もちろん、他クラブからの参加も大歓迎です。

 そしてゆくゆくは、日本国内でもオージーに負けないIRBレース開催を実現したいと思っています。
 パワークラフトの操船には免許が必要ですが、レスキュー技術の幅を広げるためにも、自分には関係ないこととは思わず、まずはクルーマンからでいいので興味を持ってください。ニューカマーの参入をお待ちしています!
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KLF『パトロールネットワーク』2013ミーティング 開催!2013/03/23

神奈川県ライフセービング連盟 平成24年度報告会&パトネット2013定例会

LSweb『パトロールネットワーク』(パトネット)は、神奈川県ライフセービング連盟(KLF)加盟の県内13地域クラブが連携を深め、パトロールの質の向上を図ることを目的として創設された。

今年で4年目の夏を迎えるパトネット。2013年最初のミーティングが、さる3月16日(土)、神奈川県藤沢市鵠沼海岸にある湘南海岸公園サーフビレッジ内にて開催された。

また、パトネットに先立ち、同会場でKLF平成24年度報告会が開催され、年間の活動報告等の説明が行われた。

      

文・写真=LSweb編集室





KLF事業報告、豪ライフガード研修体験報告など

LSweb 暖かな春の陽気に誘われ、多くの人々が鵠沼のビーチに集う3月16日の土曜日、サーフビレッジには神奈川県ライフセービング連盟 加藤道夫理事長をはじめとした各役員の方々と、県連加盟クラブを代表して集まったメンバー、30数人が会し、KLF平成24年度報告会と2013年度初となる『パトロールネットワーク』ミーティングが開催された。
 
 午前10時、まずはKLF報告会から始まった。はじめに平成24年度1年間の各事業活動の内容報告が発表され、それに伴う収支決算報告が行われた。さらに本年度の事業計画等が伝えられるといった流れでひと通りの議題が進み、続いて各担当役員から個別の報告やお知らせなどの発言があった。

LSweb その中で座間吉成理事からは、災害の発生や避難誘導などに関する音声アナウンスを有効活用していくことが示された。
 この「災害時音声アナウンス」は、日本語はもちろん、英語、韓国語、スペイン語など7カ国語に対応しており、観光地の多い湘南エリアでは、万が一の際、避難誘導に役立つツールとなるだろう。
 
 そのほか、神奈川県および行政との協力事業として行われているオーストラリア・ゴールドコースト市との国際交流「ライフガード(派遣交流)研修」の2012年オーストラリア研修の報告が行われた。
 
 昨年11月中旬に行われた「第11回ライフガード研修」の報告を行ったのは、辻堂ライフセービングクラブの水元 真さん。自らの研修体験で感じた本場オーストラリアのライフセービング文化やプロライフガードの立場や姿勢などを写真や資料などを交えて分かりやすく発表していた。

LSweb この研修体験を今後どのように生かしていきたいか、という問いに答えた水元さんのコメントの一部を以下にご紹介しておきたい。
 
 「オーストラリア・ライフガードの『自分たちが海にいるからには絶対に事故は起こさない』というプロとしての精神を伝えていければと思います。海で遊泳者を監視してライフガードと名乗っている以上、プロではないにしろ、その精神を持たなければ活動の意義すらも失ってしまうと思います。まずは、クラブ内でオンとオフをしっかりと付け、一人ひとりが自覚できるような緊張感のある現場をつくることに今回の経験を生かしていきます」


神奈川県内パトロールの質向上を目指して!

 KLF報告会に引き続き、『パトロールネットワーク2013』平成25年度の初会合が開催された。
『パトロールネットワーク』(パトネット)は、神奈川県ライフセービング連盟(KLF)加盟の県内13地域クラブが連携を深めることを目的とし、各ビーチが抱えるパトロール活動に関する諸問題を共有し、皆で問題解決を目指していくため、2010年5月に創設された組織。
 
LSweb 立ち上げ当初から、毎年夏のシーズン前に目的やテーマを決め、パトロールシーズンがひと段落すると、ひと夏の監視活動を振り返る場を設けて、様々な課題をパトネットの力で克服できないか検討している。
 
 ちなみに2012年(平成24年度)のテーマは「人」。これは、全てのクラブに共通する“人材が足りない”という課題を解決するため、「人」をテーマに掲げ、「集める」「育てる」「助け合う」+「継続」をキーワードに活動を行った。
 
 ミーティングの冒頭では、平成25年度も引き続き、「人」をメインテーマとしつつ、新たに「顔の見える関係づくり」に取り組んでいくというパトネット全体における新たな方針が示された。
 
 パトネットの中心的な役割を担うKLF菊地一郎理事は、このテーマを選んだ理由を次のように語る。
 
LSweb 「パトネットも4年目を迎え、枝葉の事業は前進しているが、パトネットの掲げる目的を達成していくには日頃からの“顔の見える関係づくり”がより効果的であると考えました。“つながること”がパトネットの大きな役割の一つとすると、顔の見える関係は不可欠です」
 
 そのほか具体的な提案では、緊急時連携として「神奈川エマージェンシー宣言」案が西浜SLSC所属の石川修平さんより提示された。
 
 これは、県下のライフセービングクラブにおいて、各浜で行方不明者の捜索が生じた場合、お互いが連携して、行方不明者発見のために可能な限り招集し、捜索活動に協力する。
 また、これは緊急事案が発生した浜の要請なしでも県下のクラブに連絡が回り、他クラブ員が駆けつけてくれた際はともに捜索活動することを了承するというもの。
 
LSweb 宣言する理由について石川さんは、
 「昨年、引地川で起こった事故において、時間外、区域外での捜索活動時は手一杯で、同じクラブ員に連絡するのがやっとのことであり、パトネットのことが思い浮かばなかった、という経験から得たもので、県内で水難事故が起こった際、可能な人は現場に来てサポートしてもらえればありがたい。
 こうした連携を育んでいくことで、〈各浜無事故➡県内無事故➡最終的に全国無事故〉という広がりになるようにしたい」と説明した。
 
 こうした緊急時連携の「神奈川エマージェンシー宣言」案とリンクさせる形できたる6月30日(予定)に「ヒューマンチェーン実習」を企画・運営していくことを提案し、実行委員会の立ち上げやスケジュール等について話し合いが持たれた。
 
 2013年のパトロールシーズンを前に開かれたパトネットミーティング。
 それぞれの地域クラブの立場を尊重しつつも、互いの垣根を低くし、横のつながりや連携を深めることによって、県内パトロールの質の向上を目指すというしっかりした目標をもってまじめに取り組んでいる。これからの活動がどのように発展していくのか、とても楽しみである。
 
 ライフセービングウェブでは今後、パトネットに関する動きを定期的に取り上げ、微力ながら応援していきたい。

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2012夏 パトロール浜訪問
岩井海水浴場
2012/09/30

都心からのアクセスも便利
波穏やかな内房の海水浴場

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千葉県南房総市の岩井海水浴場は、
東京湾に面した遠浅で波静かなビーチ。
臨海学校や海浜実習でこの場所を利用する人も多い。
緩やかに弧を描く砂浜は延長約3km。
夏にはそのうち約2kmが遊泳可能な海水浴場となる。
ここで監視パトロールを行うのが、
日本体育大学ライフセービング部の学生、卒業生が所属する「岩井ライフセービングクラブ」だ。

2012-8 千葉県・岩井海水浴場


文・写真=LSweb編集室





浜でのラジオ体操は大切な日課

 都心からのアクセスも便利な内房の岩井海岸は、風光明媚で波穏やかな場所ということもあり、戦前の昔から臨海学校が行われるなどマリンレジャーの拠点となっていた。
 今年も、海水浴シーズンが始まると同時に、小学生から大学生までたくさんの人たちがこの地を訪れ、海浜実習を行っている。ライフセーバーの中には、そのお手伝いをしたという人もいることだろう。
 
 岩井海水浴場はビーチの長さ約2km、奥行き約80mという大きな砂浜だ。ここを監視するライフセーバーたちは、広いエリアを常にカバーしなければならない。浜には北から順番に第一、中央、高崎の監視所があり、それぞれが受け持ちエリアの監視パトロールを担当。それを、警備長がいる中央が全体をとりまとめている。
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LSwebここで活動する学生ライフセーバーは、和田浦海水浴場と同じく日体大LSCのメンバーたちだ。今夏は男子11人、女子7人、計18人の学生と、OB、OGたちが監視に入った。警備長は4年生の森 陽将さん。4年前に卒業した西山一貴ディレクターに話しを聞いた。

 「岩井海水浴場はとにかく広いので、座ってとか、止まってとかの定点監視ではすべてをカバーできません。ですからとにかく歩き、トランシーバーで報告を上げて、3つの監視所の目となるようなパトロールを心がけています」
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 日体大の学生ライフセーバーが活動する浜は6つ。飯岡、鴨川、白浜、和田浦、そして岩井の5つは千葉県内、残るひとつは伊豆諸島の神津島だ。
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 「日体大の浜の中では、1番人気の浜とはいえません。波があまりたたないこと、そして海浜実習などで訪れる機会が多いため、別の浜へいってみたいと思うのかもしれません。しかし、シーズン中は1日に2,000人以上の海水浴客が訪れる日もあり、ライフセーバーとして成長できる浜だと思います」

 岩井LSCの朝は早い。5時30分から自主トレーニングの朝朝練がスタートし、6時からは全員参加の朝練が開始される。ここまでは日体大のほかの浜も同じようなメニューだが、6時30分に浜でラジオ体操を行うのが岩井の特徴だ。

「役場からのリクエストで、毎朝、続けていることです。周辺には臨海学校などが多いので、そこに来られた人たちも参加できるように全員でラジオ体操を行っているのです」
 
 体操が終わると7時から朝食。8時には中央監視所で全体朝礼があり、その後、各監視所ごとに分かれ、9時から17時までガードをこなす。夕練は17時30分から。19時に夕食、20時からミーティングを行い、長い一日は22時30分の消灯で終わる。


クラゲに刺されたらアロエで手当て

 「通常の監視業務のほかにジュニア教室を開催するなど、啓蒙活動にも力を入れています」
 と、西山さん。
 岩井ならではの特徴はありますか? と訪ねたところ、少し考えてから、あります! と教えてくれたのがアロエのことだ。
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 「岩井は地形的な影響からか、毎年、お盆を過ぎるとクラゲが多く発生します。ほとんどがアンドンクラゲですが、刺されるとやっぱり痛いですよね。クラゲに刺されたお客さんには、アロエを塗ってあげるのが岩井流です。これは、地元の方に教えていただいたことなんです。各監視所の裏や脇で栽培し、適当な大きさに切ったアロエを冷蔵庫で冷やしています。これがそうです」
 と冷蔵庫から保存容器に入ったアロエを取り出し見せてくれた。クラゲに刺された場合、真水で洗い流したり、お酢で対処するのが一般的だが、アロエの効き目は抜群だそうだ。

 岩井の特徴はアロエだけではない。

「今年は4年が3人なので、それぞれが各監視所のリーダーをやっていますが、4年生が3人以上いる時には、フリーマンといって全体を見ながら、臨機応変に自由に動けるポジションに配置します。そういうシステムは、長年、岩井海水浴場で監視パトロールを行ってきた中で構築されたものです。良いと思ったことは積極的に取り入れています。
 海水浴客の安全を守ること、そして安全なビーチを後輩たちに伝えていくことも、私たちの役目だと思っています」

 岩井海岸は、海に沈む夕陽が美しいことでも有名。その美しい海水浴場の安全を担うのは、日体大スピリットを持つ岩井LSCのメンバーたちなのである。
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