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西浜SLSCのサーフボート
3年ぶりに由比ヶ浜上陸を達成!
2013/08/31

鎌倉ライフガードが歓迎のお出迎え!

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8月もいよいよ終わりに近づいた8月29日——。

まだ日の出前の薄暗闇の中、「ソーレ、ソーレ」のかけ声とともに、1艇のボートが海へと漕ぎ出していった。船尾には「NISHIHAMA S.L.S.C.」の文字。

神奈川県藤沢市を活動拠点とする西浜サーフライフセービングクラブにとって、夏の大切な伝統行事である「サーフボートでの由比ヶ浜上陸」が決行された。




文・写真=LSweb編集室




西浜のアイコン、サーフボート


LSweb 昨年、創立50周年を迎えた西浜SLSCにとって、サーフボート(カッター)は特別な存在だ。それは、同クラブのアイコンとして、ロゴマークに使われていることでも分かるだろう。

 西浜SLSCが活動を始めた1960年代当時、日本にはまだレスキューボードもレスキューチューブもなく、手漕ぎボートが有効な救助機材だった。そんな歴史的な背景はもちろんあるのだが、それだけではない思い入れが、クラブメンバーにはある。

 カッター班に選ばれること、クルーとして練習すること、そしてそこから得たシーマンシップや仲間との絆は、ライフセービング活動の中でも、ひときわ印象深い思い出として心に残る。そういう記憶を持つメンバーが何代にもわたって所属し、またそのメンバーたちを尊敬と憧れの眼差しで見つめる多くの若手がいるのが、西浜SLSCなのである。

 そんな西浜SLSCにとって、サーフボートで由比ヶ浜に上陸するのは古くから続く夏の伝統行事だ。かつてはほぼ毎年行われていたが、2000年代に入ってからは天候不良やガード業務の多忙、また艇の老朽化に伴うメインテナンスの必要性などから、由比ヶ浜に上陸できない年も多くなっていた。しかし、今年は天候にも恵まれ、社会人メンバーによる艇の整備も万全。万を持して、由比ヶ浜を目指すことになった。

 藤沢市の片瀬西浜海岸から鎌倉市の由比ヶ浜海岸までは、海路約9キロ(約5海里)の航程。直近では2010年、その前は2005年に上陸した由比ヶ浜へ、今年、3年ぶりに向かうことになったメンバーは、カッター班長の榊原雅弘さん(東海大学清水校舎3年)以下、5人の大学生である。

いざ、鎌倉へ

LSweb 午前4時過ぎ。西浜警備本部に明かりが灯ると、まだ真っ暗な海岸に一人、また一人とメンバーたちが集まってきた。サーフボートの定員は、舵取りのスイープを筆頭に、船首側からバウ、セカンドバウ、セカンドストローク、ストロークという漕ぎ手4人の計5人。しかし、集まる人影は後を絶たず、30分もすると50人規模にふくれあがった。

 サーフボートの船出を見送り、海岸線を陸路で伴走し、由比ヶ浜で迎えようという西浜SLSCの仲間たちだ。

 その面々に向かい、スイムウエアにコンペキャップをかぶった5人が一列に整列した。榊原さん、坂入綾菜さん(流通経済大学2年)、棟方恭太郎さん(流通経済大学1年)、生見 亮さん(早稲田大学1年)、片岡潤吾さん(流通経済大学2年)だ。見送りメンバーを前に、榊原さんは息を大きく一つ吸い込むと「では、行ってきます」と挨拶した。

 時刻は5時10分前。日の出までまだ20分ほどある海へ、ソーレ、ソーレのかけ声とともにサーフボートが漕ぎ出していった。ほどなく、見送りメンバーからもソーレ、ソーレの声が上がる。海からのソーレと、浜からのソーレが合唱となった瞬間、急に空が白み始めたように感じた。
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 そこから、陸上班は慌ただしく移動を開始。自転車に飛び乗る人、バイクにまたがる人、走って駐車場へ向かい車に相乗りする人……。海沿いの国道134号線は、東へと向かう色黒の人々でにわかに騒がしくなった。

 七里ガ浜、稲村ヶ崎とポイント、ポイントに先回りしては、沖を眺めてサーフボートの姿を確認するメンバーたち。「もっと近づいてくれないと見えないよー」「漕ぎ方、だんだん揃ってきたな〜」「大丈夫かな、疲れてないかな?」そんな声とともに、自然発生的にソーレ、ソーレのかけ声が沖に向かってかけられた。
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 そして時たま「遥さ〜ん、がんばってー」の声が。実は、西浜SLSCからは、昨年のカッター班長である中村 遥さんがサーフスキーで伴走していたのだ。そして江の島を越えた鎌倉腰越海岸からは、鎌倉ライフガードの浦 健太さんがエスコート役として合流。快晴に恵まれた朝の海を順調に東進した。

感謝の気持ちを「キア立て」に込めて

LSweb 午前6時過ぎ。三々五々、由比ヶ浜に到着した陸上部隊を出迎えてくれたのは、鎌倉ライフガードのメンバーたちだ。さらに彼らはレスキューボード、PWC、そして監視艇まで出し、沖で待機していてくれた。そこに、ソーレ、ソーレのかけ声とともにやってきたサーフボートは6時20分、穏やかな絶好の遠航日和の中、バウを静かに砂につけ、由比ヶ浜上陸を果たした。

「今の気持ちを表すなら、一言 “感動!”です」と声を震わせた榊原さん。

「ようこそ、由比ヶ浜へ。こういう交流ができるのはとても嬉しいことですし、西浜SLSCのカラーと伝統を改めて感じることができ、大いに刺激を受けました。私たちも鎌倉らしさを追求しながら、西浜に負けないようがんばります」と歓迎の挨拶をしたのは、鎌倉LG理事の佐藤雄太さんだ。

 由比ヶ浜には、西浜SLSC理事長の土志田 仁さんや、理事の風間隆宏さんも駆けつけ、感動を共有したのだった。
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 ライフセーバーたちの朝は忙しい。8時には監視業務が開始される。街が本格的に動き始める頃、すがすがしい朝日を背に海へ戻ったサーフボート。そして由比ヶ浜沖で一端、船足を止めると、スターボードサイド(右舷側)を浜に正対させ、ゆっくりと1本、1本、オール(櫂)を順番に空に向かって立てていった。これが、西浜SLSCのロゴマークともなっている「キア立て」だ。

 海軍などでは「櫂(かい)立て」と言われるこのポーズは、感謝の意や祝福を表す、敬礼や万歳を意味している。
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 迎えてくれた鎌倉LGに感謝。支えてくれた西浜SLSCのメンバーに感謝、そして一緒に漕いでくれたクルー仲間に感謝。万感の思いが詰まったキア立ては、実に見事だった。3年ぶりに達成されたサーフボートでの由比ヶ浜上陸。クライマックスは上陸の後に訪れたようだ。LSweb


無事帰着、そして……


LSweb この日、クルーたちは西浜へ無事帰着するまでにもう2回、キア立てをしている。片瀬東浜海岸の警備本部沖と、鵠沼海岸の詰所沖だ。そして無事、西浜の警備本部前に帰着した。笑顔でクルーを出迎えた一人が、3年前の由比ヶ浜上陸でカッター班長を務めた小川雅彦さんだ。

「カッターってライフセービングそのものだと思うのです。仲間がいないとできないし、息が合わないと真っ直ぐ進まない。誰かが疲れていると曲がってしまう、そんな船です。相手のことを気遣ったり、目標にむかって一致団結しなければダメ。それはまさに、無事故にむかってチームワークが必要な監視活動と同じだと思っています」(小川さん)

 すでに監視業務に戻っていた、西浜サブキャプテンの大下香奈恵さんは、3年前の由比ヶ浜上陸クルーの一人。

「今日はサブキャプテンとして彼らの行動を見守っていましたが、今朝、暗い浜に集合した時、砂の冷たい感触で3年前のことを思い出しました。あの日、私も今日の綾菜のようにセパレートの水着を着ていて、ちょっと肌寒く、そして緊張でお腹が痛くなったっけと。学生の班長で由比ヶ浜上陸が達成できて、伝統を繋げることができたとホッとしています」(大下さん)

LSweb 大下さんとともに由比ヶ浜上陸を果たし、昨年はカッター班長も務めた中村 遥さんは、後輩たちの遠航をサーフスキーで伴走しながらサポート。班長としては成し遂げられなかった、由比ヶ浜上陸を見届けた。

「彼らはきっと不安で一杯だったと思います。練習も十分ではなかったし、(班長以外の)由比ヶ浜行きのメンバーが発表されたのは昨日だし、何より誰も由比ヶ浜へ行ったことがなかったから、由比ヶ浜ってどこ? って感じだったのではないでしょうか。風が強くなるという予報だったので、無理だったら途中で引き返してもいいよとアドバイスしましたが、午前中は波も風もない完璧なコンディション。今年は行ける年だったと思うのです。
 すべてのコンディションが整ったからできた、そいういう巡り合わせだったと思います。ガードでもそうですが、新人が多いときには海が穏やかで、厳しい気象条件のときには、それなりに対処できるメンバーが揃っている。そういうことってありますよね。でもそれをラッキーとは思わずに、この経験をしっかり繋げていってほしい。それが西浜でサーフボートに乗り、由比ヶ浜に上陸できたクルーたちの役割だと思っています」(中村さん)

 帰着後、思わず涙をこぼした榊原班長は、ボートを水洗いしながら、こう話してくれた。

「班長に任命された時には、正直、僕には荷が重いと思いました。自信もありませんでした。でも先輩、仲間、そして何よりクルーのみんなの支えで由比ヶ浜に上陸することができました。まだ興奮していてうまく言えませんが、この経験を大事に今後も活動していきたいと思います」(榊原さん)
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 朝の穏やかな海から一転、昼前から風が吹き上がってきた片瀬西浜の片隅に、今夏の大役を終えたサーフボートがひっそりと片付けられていた。


サーフボート由比ヶ浜上陸の動画は近日中にアップの予定です。乞うご期待ください。







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第7回 オーシャンフェスタ館山 大盛況
2日間にわたるイベントの参加者は、のべ400人以上!
2013/07/24

The 7th OCEAN+FEST TATEYAMA

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今年で7回目を迎え、
地元の風物詩ともなった「オーシャンフェスタ館山」。

子どもから大人まで、
運動不足気味の人から、オーシャンアスリートまで
誰もが海とビーチを楽しんだ様子を、
イベントを主幹した館山SLSCメンバーにレポートしていただいた。(LSweb編集室)




写真提供=館山SLSC




今年も3カテゴリーで開催

LSweb 6月15日(土)、16日(日)、今年で7回目を迎えるOCEAN+FEST TATEYAMA(オーシャンフェスタ館山)が、千葉県館山市の北条海岸にて館山サーフライフセービングクラブ主幹の元、開催された。

 子どもから大人まで参加できる海のイベントは、夏前の恒例イベントとして地元館山に定着。千葉、そして県外から合わせて子ども約150人、大人累計約280人が参加し、大変盛り上がった。

 イベントは、アスリートのチーム戦で競われるエリートの部、チーム戦、個人戦のある一般の部、そして小学生以上が参加できるジュニアプログラムの3つのカテゴリーで開催された。



ジュニアの部

LSweb 海開きを目前にひかえ、梅雨空で雨がパラつくコンデションの中、県内、近県から約150人の子どもたちが参加した。

 館山SLSC代表の飯沼誠司と、同クラブメンバーであるシドニー五輪銅メダリスト中尾美樹による指導で、小学生を対象にした水辺の事故防止や危険回避の講義、水泳教室などを合わせた体験プログラムも開催された。

 プログラムのなかで、飯沼代表が「だれかが海でおぼれている!」と突然はじまったレスキューの救助実演では、子どもたちに緊迫する空気が流れ、実演が終わるころには子どもたちのホッとした顔と拍手と歓声で会場が湧いた。

 午後からは、各学年に分かれて「ラン・スイム・ラン」「ニッパーボードレース」「ビーチフラックス」を行った。
 
 身体に砂がつくのを嫌がったり、寒いから入りたくないと言っていた子どもたちも、レースとなると空気が一変。真剣な子どもたちの表情に、親たちの声援も熱かった。LSweb

 ビーチ相撲では、初めて実物のお相撲さん(大岩戸関)を見る子どもも多かったようだ。
 
 最初はよそよそしくしていた子どもたちだが、力士1人と子ども5人で相撲対決をすると、押し倒されても立ち上がって何度も力士に立ち向かったり、チームプレーで力士を追い払ったりと、砂だらけになりながらがんばった。そんな子どもたちの笑顔に、会場の盛り上がりは最高潮に達した。

 参加者全員にお菓子の詰め合わせが、入賞者には協賛いただいた各スポンサーより抱えきれないほどの商品が渡され、みんな笑顔で帰っていった。


エリートの部

LSweb  “OCEAN+Z 7”(オーシャンズ7)と呼ばれるエリートの部は、4人1チーム(内女性1人)で競うチーム戦だ。今年は14チーム、56人が参加。ライフセービングに関わる学生主体のチームが多く参戦した。
 また今年は、歴代最多3回の総合優勝を誇る、鈴木一也率いる“Strong Heart”チームが不参加ということもあり、どのチームが優勝するかに注目が集まった。

 アウトリガーカヌー、ビーチリレー、ビーチ綱引き、オーシャンズリレー、オーシャンズサバイバルの計5種目で争われ、瞬発力、持久力、チームワークの総合力が試される戦い。
 ライフセービングだけにこだわらない、ラン、スイム、漕ぐ、そして綱引きなどのパワー競技があり、盛り上がったレースが繰り広げられた。

 全種目が終わり、白熱した今年のOceans+Z7を制したのは、トップクラスのライフセーバーが集結した“Za+costes”(ザコステス=飯沼誠司、青木将展、西山俊、篠郁蘭)。
 見事、初優勝を手中に収め、館山市長より館山市長杯と副賞を受け取った。今年は15社を超える協賛企業がこのイベント支援しており、優勝チーム全員には特別協賛企業からハワイ航空券というビッグプレゼントもあった。

一般の部

 2日間にわたり開催された一般の部も、地元の参加者が多く予選があるほどの賑わいだった。

 LSweb毎年、アスリートの部に引けをとらないチームが揃う一般の部では、館山SLSCジュニアのお父さんお母さんたちも、子どもより楽しんで参加していた。
「普段は子どもに競技のアドバイスはするのに、いざ自分がやるとなるとできないんだよねぇ」と照れ臭そうに言う親もいた。

 初日のビーチ綱引きは毎年参加しているチームも多く、みんなコツをつかんでいる。綱を引いたら両者が寝そべって天を仰いでふんばるスタイル。どちらも譲らず会場は息をのんだ空気に包まれる。優勝チームは年齢や体格もあるが、やはりチームワークでの勝利だった。

 選手が顔面砂まみれでフラックを取りあったビーチフラッグスは、会場が笑いの渦となった。女子の決勝戦は主婦と高校生との対決となり、両者スタートから素晴らしいスプリントで会場を沸かした。
 優勝者には協賛企業からマウンテンバイクが送られた。

 2日目のビーチリレーは小雨が降る中で行われた。1チーム3人、1人が400mを走るチーム競技には、約15チームがエントリー。北条海岸を駆け抜けた。
 会場の声援を浴びながら選手はバトンをつなぐ。いつもはアスファルトで走っているが砂浜だと思っているほど足が上がらないし、距離を感じると言う選手もいた。

 北条海岸は鏡ヶ浦といわれるほど穏やかな海。今回も競技の合間にアウトリガーの試乗会もおこなわれた。選手たちのほかにキッズの保護者など沢山の人が試乗していた。なかには購入交渉している大人もいた。

 最終競技のビーチ相撲では、大人と大人がぶつかり合って真剣に相撲を取る姿に、会場がどっと沸き、盛り上がりを見せた。

 誰もが認める素敵な商品、独自の種目、そして多くの人が参加できるイベント「オーシャンフェスタ館山」。館山SLSCにとっては、夏前にチームワークを発揮する大きな行事だ。
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 来年も工夫を凝らした楽しいイベントを開催していきますので、ぜひご家族、仲間と参加してください。クラブメンバー一同お待ちしています! 【文責=後藤隆明、津嶋貴子、堤容子(館山SLSC)】







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9大学が集結! 「合同新歓海練習」2013春2013/04/25

Welcome! Univ. clubs joint training for new students.

一人でも多くのLS仲間を増やしたい!

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ゴールデンウィーク前のこの時期、各校のライフセービングクラブでは、勧誘した新入生向けの新歓LS体験会があちこちで開催されている。

LSwebでは、学生たちによる2013年度の「新人ライフ部員獲得」状況を探るべく(!?)、各校の体験会に出没し取材を試みた。

そのひとつが、ここにご紹介する9大学合同による“新入生歓迎海練習”だ。

一体、どんな大学がどのように協力して行っているのか?
そして、参加した新入生の反応はいかに?

文・写真=LSweb編集室





9校集まったそのワケは?
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 「本日は、肌寒くあいにくのお天気ですが、みんな元気よく声出していきましょう。よろしくお願いします!」

 4月20日(土)午前10時過ぎ、片瀬西浜海岸中央付近に集合した一団から元気な声が聞こえてきた。この集団、じつは関東近郊の大学ライフセービングクラブが集まって企画した“大学合同新入生歓迎海練習(合同新歓海練)”に参加する学生ライフセーバー(と、その有力なたまご!)たちである。

 今年の参加校は、青山学院大学、神奈川大学、慶応義塾大学、國學院大學、実践女子大学、中央大学、帝京大学、文教大学、立教大学の計9大学。参加人数は、主役となる各大学の新入生が33人、サポートする上級生42人の計75人が集まった。
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 こうして他大学が協力し合って“合同新歓海練”するにはワケがある。初めて合同新歓を行ったのは3年前。その時は青山学院、神奈川、実践女子の3大学でスタートした。その経緯について神奈川大学LSC代表で今年の合同新歓海練・実行委員長である坂本悠介さんに話を聞いた。

 「この合同企画に参加してくれている大学に共通していえるのは、どのクラブも部員数が少なくこじんまりと活動していることです。小規模な学校クラブは、ほとんどがボードやチューブといった救助器材を持っていません。また、練習環境も整っていません。こうした状況下では各校ばらばらで動くよりも、新歓の部分からできるところは協力してやっていけばいいじゃないかという考えからスタートしたのが最初です。
 メリットは、各自が所属する浜のクラブから器材を拝借できる点の他には、なんといっても学校を超えての絆が深まり、仲のよい友人がたくさんできることですね」

 たしかに今回参加した9校の部員数はほとんどが10人以下という状況だ。例えば、青山学院大は、4年生2人、3年生ゼロ、2年生7人の計9人。実践女子大は、4年生1人、3年生2人、2年生ゼロの計3人、慶応や立教に至っては、たった1人で活動しているのである。
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 文教大4年生の田島拓也さんは次のように語る。
 「文教大LSクラブは、3年生がゼロです。そこで4年の僕も就活の合間を縫ってなんとか新歓をお手伝いしている状況です。学年の間が抜けてしまうとこうした大変さ(負担)が出てくるので、なんとか今年の1年生にはたくさん入ってもらいたいですね。新入生勧誘の目標は5人です」

 こうした状況を少しでも打破しようと各大学がお互いに知恵を絞り、協力し合って、部員の勧誘はもちろん、練習場所の確保や練習器材の調達を頑張っている。こんな熱意ある先輩たちが集まって開催した“合同新歓海練”に参加した新入生たち。さてさて、彼らの反応はいかに…。


ボードにビーフラ、体験会は評判上々
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 今にも雨が降り出しそうな空の下、9大学協力による“合同新歓海練”が始まった。状況を見ながら仕切りを行っているのは、帝京大3年生で主将の森本 茜さん。小柄ながら大きな声を出し、テキパキと指示を出していく。
 器材の都合や安全面などを考慮して、4つのグループに分けた後、準備体操や浜のゴミ拾いなどを行いながら、少しずつ親睦を深めていく。

 これが終わると、いよいよ海練体験へと突入だ。まずは、2人一組のバディシステムについての説明と、レスキューボードやレスキューチューブといった器材の使い方などを簡単にレクチャーしていく。
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 すると突然、「人がおぼれている! レスキュー!!」という声と共にボードとチューブを持ったライフセーバーが、猛然と海に向かってダッシュ。沖を見ると溺者が2人もがいている。これ、上級生によるレスキュー・デモンストレーションなのだが、突然のことだったので一年生たちは少々どよめきながらも、救助の一部始終を真剣に見入っていた。
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 レスキュー・デモが終わると、各グループがオーシャンとビーチ組に分かれて体験会の開始。海では、ボードとチューブを使っての練習を行った。チューブ組は、水の中での巻き方やボディーサーフィン、波打ち際のウェーディングなどを繰り返し練習する。最初は波や砂に足を取られてよろめいたり転倒したりしていたが、膝を高く上げて走り込む方法を教えられると、先輩と並んで何度も練習を繰り返していた。

 ボード組は、先輩からマンツーマンでパドリングやうまく波を捕まえる指導を受けながら、波乗りに挑戦。
 ボードに乗るどころか触るのも初めての一年生たち。最初は、なかなか波をキャッチできず、先輩にあと押しして貰いながらなんとか波に乗るものの、バランスを崩して沈するケースが目立った。それでも、先輩たちの熱心な指導のおかげで少しずつコツをつかんでくると、自力で波に乗りうまくバランスをとることもできるようになってくる。パドリングする姿もこころなしか様になったように見えてくるから不思議だ。
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 ボード体験を終えた一年生たちに初めて乗った感想を聞いてみた。

 「上級生が乗っているのをみると、簡単そうにみえたのですが、いざ乗ると想像以上に波に乗るのが難しくて、先輩のアシストがなかったら全然できなかったです」
 
 「最初は、パドリングしても進まね〜って感じで、やっと波に乗れてもぶれて安定せず難しかったです。でも、(波に乗れると)気持ちよかったし、楽しかった!」
 先輩たちの丁寧なサポートの甲斐もあり、新入生たちの評判は上々。入部へ向けて一歩前進!?の予感。

 ビーチ組では、花形競技であるビーチフラッグスの体験が始まっている。簡単なルール説明からスタートの構え方、フラッグの取り方などをひと通り教えたら、みんなで競技スタート。勝ち抜き戦なので和気あいあいの中にも徐々に気合いがこもり、集中していく様子が伝わってくる。
 ボードにしろ、ビーフラにしろ、ちょっとかじっただけでなぜか人を夢中にさせる魅力がある。う〜ん、ライフセービングって奥が深いなと、改めて感じた次第である。
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実行委員会メンバーの頑張りに拍手!

 昼休みを挟み、午後はオーシャン組とビーチ組が入れ替わって、各種体験が続いた。この頃になると、雨も降り出し、体感温度もより寒く感じられるようになってきた。新人にとってはかなり厳しいコンディションである。
 実行委員会では、新入生が少しでもストレスや不自由なく海練習を体験してもらうために、過去の経験を生かしてさまざまな努力を行っていた。
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 そのひとつが、ここに参加する一年生全員分のウエットスーツを用意すること。春先の海に入り慣れていない新入生の寒さやケガを防止するためだ。それに午前と午後で濡れたウェットを着回しするのは、誰だって嫌なもの。そのために仲間からウエットスーツをかき集めてなんとか人数分を揃えた。

 こうしたちょっとした思いやりとか気遣いは、さすがライフセーバーなのである。サイズが合わずブカブカだったり、ピッチピチだったりするのはご愛敬。当日は、3月並みの寒さだっただけに、新入生たちはこのウエットスーツのありがたさを身にしみて実感していたに違いない。

 午後2時をまわり、9大学合同の新歓海練も終盤を迎える頃には、新入生も上級生もすっかり打ち解けてあちこちで賑やかな声や笑い声が響く。
 締めくくりは、2組に分かれてのファンレース。負けた組はスクワットや腕立て伏せの罰ゲームが待っているので、応援にも力が入って最後はインカレ大会並!?の盛り上げをみせていた。
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 “合同新歓海練”終了後、参加した新入生に感想を聞いてみた。

 「勧誘の時にビデオを見てライフセーバーってかっこいいなと、思っていたので参加してみました。今日いろいろなことを体験してみて、本入部しようと思いました! 寒かったけど…(帝京大1年)」

 「中学まで野球をやっていましたが、高校では何もやっていなかった。体を動かすこと好きだから、大学に入ったら何か(スポーツを)しようと思っていました。今日は遅刻してしまったけれど、先輩たちも優しく対応してくれましたし、入部を前向きに考えてみようと思っています(文教大1年)」

 「ぼくは将来の夢がレスキュー隊に入ることなので、それに繋がるような活動をしたいと思って(合同新歓海練に)参加しました(國學院大1年)」
 と、参加した新入生はみんな入部に前向きな意見が多かった。“合同新歓海練”を企画した実行員のメンバーたちもきっと手応えを掴んだに違いない。
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 日本のライフセービング界は、学生の力に頼るところ“大”であることは、明らかであり、学生ライフセーバーは必要不可欠である。そして全国にライフセービングをもっともっと普及させていくためには、たくさんのライフセーバーたちが必要だ。

 年齢を問わず社会人のライフセーバーを増やしていくことはもちろんだが、同時に一人でも多くの仲間を得ようと、各校が力を合わせて努力をしている学生ライフセーバーの取り組みを彼ら任せにしてばかりではいけない。若きライフセーバーたちは、これからのLS界を担う大切な存在なのだから。
 当LSwebでは、学生たちのさまざまな取り組みをできる限り取り上げて応援し、できることがあれば微力ながらサポートしていきたい。LSweb





新歓、花盛り at 片瀬西浜2013/04/22

ミッションは『新入生を獲得せよ!』

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 4月20日(土)。神奈川県の片瀬西浜海岸には、浜のそこかしこでひとまとまりになるグループがいた。その周辺には、レスキューボードやレスキューチューブ…。
 実は彼ら、関東地方にある大学のライフセービング部員たちで、この日は、新入生に活動の一端を体験してもらう、新歓海練習を開催していたのだ。

文・写真=LSweb編集室




元気で華やか、日女体育大

 この時期、学生ライフセーバーには大切なミッションがある。それは新入生を勧誘し、入部してもらうこと。クラブ発展のためには、インカレや夏季パトロール以上に重要といっても過言でない、大事な行事だ。
 校内でのビラ配り、勧誘ブースを設けての説明会などで興味を持ってくれた1年生がいたらしめたもの。次は彼らのハート♡をガッチリつかまえるため、そしてライフセービングの素晴らしさを知ってもらうために、海での体験会(新歓海練)を開催する。
 
 この海練で少しでもライフセービングって面白いかも、格好イイかも、やりがいがありそうかも…と思ってくれたら、本入部の可能性大。ひとまず、ミッションの第一段階はクリアといえるだろう。
 
 というわけで、2〜3年生を中心とした上級生は、新歓海練で新1年生にいかに楽しんでもらうか、興味を持ってもらうかを考えながら、当日の準備に奔走するわけだ。
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「了解!」「了解!」
 
 この日、西浜でひときわ元気なかけ声を上げていたのが、日本女子体育大学ライフセービング部の女子大生たちだ。
 バディの組み方、海に入る時の注意点、ボードやチューブといった機材の説明、パトロール中に使うサインのやり方などを、手作りのボードとともに寸劇風に紹介。
 少し緊張気味だった1年生から笑顔がこぼれたところで、海に入りボードやチューブを使う実践へと移っていった。

 今年、創部25周年を迎える日女体ライフセービング部で、副主将を務める篠崎亜衣さんによると、現在、2年生から4年生までの現役部員は45人。2週にわたって行われた新歓海練には、約20人の新入生が参加してくれたそうだ。

 「日女ライフは女子しかいませんが、ひとりひとりが元気良く、そして今年の目標である『Action』を部員ひとりひとりが起こしていけるよう、一丸となってがんばります!」
 と元気ハツラツ。1年生も含め、毎年、約60人体制で活動する同部は、明るく朗らかな女子パワーを遺憾なく発揮し、関東近郊の16浜で夏季パトロール活動を行っている。LSweb

国士舘に成蹊、成城、流経大と大賑わい

 西浜で一番の大人数だったのが、国士舘大学ライフセービング部だ。現役学生は計58人(4年生8人、3年生13人、2年生37人)。就職活動中の4年生など、海練に参加できないメンバーもいたが、1年生は大勢の先輩たちに見守られ、寒空の下でも活発に活動していた。
 
 部員の多くが体育学部に在籍し、救命救急士を目指すメンバーも多いという国士舘ライフセービング部。主将の田中 樹 さんは、
「大学で救命救急の勉強をしている人間としての誇りを持ち、ライフセービング界を引っ張っていく気持ちで日々精進していきます!」
 と頼もしい。今年は30人の新入生を勧誘するのが目標だ。LSweb
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LSweb 一番江の島よりで海練を行っていたのは、成蹊大学ライフセービング部と成城大学ライフセービング部の合同チーム。2校で行うのは数年前から続いている伝統で、お互いに機材を貸し借りすることができ、新入生に少しでも長く、ボードやチューブの体験をしてもらえるのが大きなメリットとか。合同練習をすることで、学校という枠を越えた仲間ができるのも魅力だ。

「今年は入学式から新歓期間にかけて、天候不良のため思うように新入生を勧誘することができませんでした。今現在、入部確定者は2人という寂しい状況ですが、まだ悩んでいる1年生もいるので、なんとかライフセービングの良さを伝え、ぜひ入部してもらいたいと考えています」
 と話すのは、成蹊大学ライフセービング部主将の久木田友樹さんだ。
 4年生6人、3年生2人、2年生10人を率いる久木田さんにとって、少人数で活動する大変さは実感済み。少しでも多くの新入生を勧誘したいと思うのは、先輩としての親心でもある。

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 本降りの雨の中、集中して海練をこなしていたのが流通経済大学ライフセービング部だ。主将の園田 俊さんは、今年はすでに4人の女子生徒が入部を決めてくれたようだ、と笑顔を見せる。

 3月並の気温、予報よりも早く降り始めた雨……、そんな厳しいコンディションでも、震えながら真剣な眼差しで先輩たちの話を聞き、ビーチを走り、海でボードにトライする1年生たちは、きっと、その多くが新人ライフセーバーとしてデビューしてくれることだろう。
 
 ひと夏を終え、真っ黒に日焼けし心身共に逞しくなった彼ら、彼女らに会えるのを、楽しみにしたい。






地元に根付く地域クラブの横顔
密着・湘南ひらつかLSC 2013 春
2013/04/08

湘南ひらつかLSC春合宿・千葉県御宿海岸2013.3.9-11

LSweb水温む季節。各地のクラブでは、夏のパトロールシーズンに向けた準備が本格化している頃だろう。

水辺の安全を守るライフセービング活動は、日本国内で確実に認知度を高めている。しかし地域差があるのも事実だ。そこで、LIFESAVINGweb.comでは1年間にわたって湘南ひらつかLSCに密着し、地域クラブの活動の一端を紹介していくことにした。

同クラブを選んだ理由は後述するが、地域クラブを立ち上げたばかり、あるいはこれから地域クラブを立ち上げようとしているライフセーバーにとって、参考になることがあるのではないかと思う。

というわけで、まずは3月に行われた春合宿の様子から紹介する。

文・写真=LSweb編集室






⬆湘南ひらつかSLCの御宿春合宿で、特別コーチを務めた元日本代表で拓殖大LSCコーチの林 昌広さんのボードに定点カメラを付けて海に出てもらいました。初めて使用するカメラのテスト撮影を兼ねていたのですが、良い波もあってなかなかカッコイイ出来栄えです!


ジュニアも交えて春の合同合宿開催

 湘南ひらつかLSCは、今年、クラブ創立20周年を迎える。
 節目の年にさらなる飛躍を目指す同クラブが、3月9日から11日にかけて行った春合宿の目的は「チーム力向上」「レスキュー技術向上」「ジュニアとの交流」「私生活の見直し」の4つ。大学生を中心に、社会人、ジュニア、そしてジュニア保護者など総勢30人以上が御宿の海に集合し、ビーチとオーシャンに分かれたパート練習、レスキュー練習、持久力トレーニング、ファーストエイド講座、夜はミーティングなどなど、盛りだくさんのメニューを消化し、密度の濃い時間を過ごしたのだった。
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 合宿初日には御宿海岸をベースに活動する元日本代表で、拓殖大学LSCのコーチも務める林 昌広さんを招き、実技講習では、強風で波が高いコンディションでのクラフトの扱い方を学生メンバーにコーチング(動画はその時の様子)。夕食後は座学も行い交流を深めた。また昨年から同クラブに所属する、元日本代表の野村大和さんも合宿に参加し、ビーチ練習に刺激を与えていた。

 この合宿の目玉の一つが、ジュニアメンバーとの合同練習だ。湘南ひらつかLSCのジュニアは「ヒラッパーズ」の愛称で活動しており、夏にはライフセーバーと一緒に海水浴場でのガードを体験するなど、特徴ある活動を行っている。メンバーは現在、小学生から中学生まで約10人。春合宿には7人が参加した。

 初日の午後に御宿に到着したジュニアたちは、波の高い海を見て少し不安気な様子。消波ブロックがあり穏やかなことが多い平塚の海とは、いくぶん様子が違っていたからだろう。しかし、大学生メンバーの明るい声につられ、準備体操を始めるころには笑顔が戻っていた。
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 初めての場所でジュニアも緊張していたかもしれないが、実は、ジュニアを迎える学生メンバーも緊張していた。「ジュニアの子に話しかけたら『マジ、キモイ』って言われたことあるからなぁ……」と苦い経験を口にする学生メンバーに、「動きがあやしいんじゃない。あとしつこいのもダメ。さわやかに」とアドバイスする仲間たち。
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 適切なアドバイスの甲斐もあり(!?)、無事、ジュニアとの対面を果たした学生メンバーたちは、レスキューのデモンストレーションで真面目な姿を披露。さらにドッチボールと鬼ごっこを足して2で割ったような「カバディ」で親睦を深め、ビーチ班はビーチフラッグスとスプリントの練習、オーシャン班はニッパーボードの練習へと進んだ。
 ビーチ班は砂が舞い上がる中で、オーシャン班は白波が立つ中での実技となったが、社会人&学生ライフセーバーがしっかりサポートしてくれたお陰で、実に楽しそうに波に乗り、砂浜を走り回ったジュニアたちなのであった。
 
LSweb そして初日の最後は、ジュニアも学生も社会人も保護者も混ざったファンレースで締めくくられた。ジュニアプログラムが終わるころには、あちこちで学生メンバーに甘えるヒラッパーズの姿が見受けられ、「ジュニアとの交流」という目的は大いに達成されたようだった。

 2日目はさらなる荒天のため、ファーストエイドの練習を取り入れるなどプログラムの変更を余儀なくされたが、無事3日間(ヒラッパーズは2日間)の合宿を終了。帰路へとついた。

 夏のパトロールの主戦力となる大学3年生、2年生にとって、春合宿は自分たちの力を知り、今後のトレーニング計画を立てる重要な時期。運良く(!?)、強風で波浪も高いコンディションとなり、真の実力を見極めることができたのではないだろうか。

 ジュニアとの合同合宿を企画した社会人メンバーにとっても、まずは大成功の3日間だったはずだ。


節目の年を迎えた湘南ひらつかLSC

LSweb 1993年から組織的な活動を始めた湘南ひらつかLSCは、ライフセービング先進県の神奈川では中規模な地域クラブである。
 
 ガードの舞台となるビーチパークは、海水浴場としては決してメジャーではなく、夏でも海の家は建たない。しかしビーチバレーやビーチテニス、ビーチサッカーなどが1年中楽しめる場所として、地域住民の憩いの場となっており、またクリスマスやお正月など、季節に応じたイベントも多数開催されているのが特徴だ。クラブはこうした行事にも積極的に関わり、コミュニティーでの存在感を増す努力を続けている。
 
 ジュニア向けの活動が始まったのは1998年のこと。海水浴に来る子ども向けの単発プログラムからスタートし、2005年からは年間プログラムのヒラッパーズを運営するまでになった。LSweb
 
 クラブメンバーは現在約90人。パトロールの主力となる大学生は、東海大学湘南校舎の学生を中心に約20人で、他クラブ同様、パトロールメンバーの確保には苦労している。
「世代間ギャップを少なくし、社会人になっても、いかに活動に関わり続けてもらうかがクラブの抱える課題の一つです」
 と話す白井勇喜さん(パトロールディレクター&事務局次長)。節目の年に、クラブ運営という面からも、新たな試みにチャレンジしていく予定だ。











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