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人命救助のプロによる資機材見学会
藤沢市内のジュニアライフセーバー向けに開催
2015/07/14

神奈川県藤沢市湘南港・江ノ島ヨットハーバー 2015.07.12

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梅雨空から一転、照りつける太陽で夏日となった7月第二週の週末。

神奈川県藤沢市の湘南港で「藤沢市海岸地域人命救助実施機関連絡会」主催のジュニアライフセーバー向け資機材見学会が開催された。

消防、水上警察、海上保安庁という海難救助・人命救助のプロフェッショナルが使う道具が見学できる貴重な機会に、大勢の子どもたちが集まった。




文・写真=LSweb編集室





公的機関と民間救助機関の連携

LSweb 神奈川県藤沢市には、ライフセービングの全日本選手権大会が開催される片瀬西浜海岸を含む3つの海水浴場と、数多くのマリンスポーツゲレンデがある。

 夏季だけでなく、年間を通じてたくさんの人が訪れるこの地域で、2010年に発足したのが「海岸地域人命救助活動実施機関連絡会」だ。

 これは市内で海難救助・人命救助活動を担う公的機関(海上保安庁湘南海上保安署、神奈川県警横浜水上警察署、藤沢市消防局)と、市内で活動する3つのライフセービングクラブ(西浜SLSC、サーフ90藤沢LSC、辻堂LSC)、および藤沢市に拠点を置く神奈川県ライフセービング連盟という民間救助機関が、水難事故発生時や災害時に互いに協力して迅速な救助活動ができるよう連携したものだ。

LSweb 全国に先駆け、公的機関と民間救助機関(ライフセービングクラブ)の連携をはじめた藤沢市。海岸地域人命救助活動実施機関連絡会では、情報交換会議や海開きに合わせての合同訓練など、地道ながらも確実な連携体制を築き上げている。

 そうした連携体制の一貫として、7月12日に初めて開催されたのがジュニアライフセーバー向けの「公的機関水難救助資機材等見学会」だ。

 集合場所は海上保安庁、神奈川県警の水上警察、そして藤沢市消防局の水難救助隊が常駐する湘南港(江の島ヨットハーバー)。2020年東京オリンピックのセーリング競技会場となる場所で、本物のレスキュー資機材を目にし、レスキュー隊員によるデモンストレーションも見学できる、一度で三度おいしい見学会となった。

質問続出、興味津々の子どもたち

 湘南港の入り口に集まったのは、西浜SLSCとサーフ90藤沢LSCの小学生1年生から高校生までジュニア&ユース約70人。引率のライフセーバーや付き添いの保護者も加えると100近い人数が顔を揃えた。LSweb

 江の島大橋を歩いてやってきた子どもたちは、全員、汗びっしょり。給水で一息いれたあと、見学会を立案した西浜SLSCの石川修平さん、サーフ90藤沢LSCの服部一正さん、辻堂LSCの原田 剛さんと共にヨットハーバーへと足を踏み入れた。

 まず出迎えてくれたのは、連絡会事務局も務める藤沢消防の方々。

 ウェットスーツに身を包んだ水難救助隊の隊員から、潜水機材やパーソナルウォータークラフト(PWC)の説明を受けると、早速「そのタンクを背負うと何分ぐらい海に潜っていられるんですか?」という質問が飛びだした。

「海の深さや、呼吸する量で変わりますが、目安としてはタンク1本で30分前後です。落ち着いて行動すると長持ちしますが、救助現場ではいろいろな状況があるので呼吸が荒くなることもあるんですよ」という答えに、「へー」という声。

 子どもだけでなく、引率のライフセーバーからも質問が出るなど、プロフェッショナルが使う資機材に対しての興味の高さがうかがえた。

LSweb 続いて見学したのは、ヨットハーバーの北端に停泊する神奈川県警横浜水上警察の警備艇〈はやかぜ〉だ。

 水上警察官から船の説明を一通り受けると、ここでは「どのくらいのスピードが出るんですか?」という質問が出た。

「〈はやかぜ〉は船齢24年の船なので時速40kmぐらいですが、今年度中に約倍の速度が出る高速艇が湘南港に配備される予定です」と水上警察官。

 引率のライフセーバーが、「今度、神奈川県警の船を見つけたら手を振ってみようね」と言うと、制服に身を包んだ警察官もおもわずニコリ。「ありがとうございました」と元気に挨拶する子どもたちを笑顔で見送ってくれた。

 次はヨットハーバーの南端に停泊する海上保安庁の巡視艇〈うみかぜ〉を見学する。LSweb

 ここでは船舶による放水デモンストレーションが行われたが、船首に設置された放水銃から勢いよく水が放たれると、子どもからも、大人からも「おー」というどよめきが上がった。

 子どもたちからは、「水は海水ですか?」「あんなに勢いよく水が出て船は後ろに下がらないんですか?」と矢継ぎ早に質問が出る。

「水は海水です。火災の種類によっては消化液を海水に混ぜて放水します」「放水するとその勢いで船が後退するので、前進しながら放水するんですよ」と海上保安官。

 海のプロフェッショナルから直接答えを聞くことができるとあり、その後も質問が途切れることはなかった。

 見学会の最後は、藤沢消防局水難救助隊によるレスキューデモンストレーションで締めくくられた。
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 溺者救助のため岸壁から飛び降りる隊員の姿に釘付けとなったジュニア&ユースライフセーバーたち。今回の見学会を通して彼ら、彼女らの視野は大きく広がったはずだ。

「まだまだ地道な活動ですが、公的機関とライフセーバーの間で一つずつ連携できることが増えていけば嬉しいです」と話す、石川さん。

「サーフ90藤沢は海水浴場ではない場所で活動しているので、こうした連携はとても心強いです」と服部さん。

「これからジュニア活動をしていきたいと考えている辻堂にとって、こういう機会から勉強することはたくさんありますね」と言う、原田さん。

 藤沢市で始まった公的機関と民間救助機関の連携プレー。今後、どんな形で発展していくのか楽しみだ。







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