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第11回ジュニア・ライフセービング競技会レポート2014/09/06

The 11th Junior Lifesaving Challenge 2014.8.30-31 千葉県南房総市・岩井海岸

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夏の終わりの競技会
泣いて、笑って、握手して


8月30〜31日、千葉県南房総市の岩井海岸で「第11回ジュニア・ライフセービング競技会」が開催された。

荒天の影響で昨年の大会が中止となったため、2年ぶりの開催となった競技会には、14チーム、135人の小学生が参加。2日間にわたって熱戦を繰り広げた。


文・写真=LSweb編集室





ジュニアが取り持つ新たな縁

LSweb 8月最後の週末。たくさんの小学生ライフセーバーが岩井海岸に集合した。すでに学校が始まっている子がいれば、これが夏休み最後の行事という子もいたが、誰もが弾んだ表情で開会式に集まってきた。
 そんな子どもたちを応援するかのように、朝方の強い雨もすっかり上がり、目の前には遠浅で穏やかな岩井の海が広がった。

 開会式で選手宣誓をしたのは、湘南ひらつかLSCの沖 愛生、沖 純恋 姉妹。
 小学6年と4年の姉妹は、初めての経験にもかかわらず、つかえることなく、スラスラと宣誓した。もしかしたら、子どもたちより緊張していたのは、引率のコーチや保護者だったかもしれない。

LSweb ジュニア競技会の特徴の一つが、こうした兄弟、姉妹での参加が多いこと。同じ大会に参加していればお互いに心強いだろう。
 さらに、同時開催された35歳以上が参加できる「JLAクラシック」に保護者が参加すれば、家族みんなで楽しめるイベントとなる。

 その典型的な例が、鴨川小学校チームで参加した松田さん一家だ。小学1年生の一志くん、小学3年生の一花さん、小学5年生の一希くんの兄弟3人はジュニア競技会に、お父さんの光弘さん、お母さんの由希子さんはクラシックに参加。一花さんはランスイムランで優勝、一希くんもランスイムランで3位とメダルを獲得した。

 海の近くには住んでいるものの、ライフセービングとは縁がなかったという松田家。夏前に館山SLSCが開催した「オーシャンフェスタ館山」に参加したことでライフセービングを知り、ジュニア競技会へのエントリーも決めたそうだ。そして子どもが出るなら親も、と家族5人で挑戦したのだという。LSweb

 実は由希子さん、3カ月前に次女を出産したばかり! 「主人は無理しなくていいよと言ってくれたのですが、みごとに(クラシックのランスイムランで)ビリでしたね」と笑顔を見せてくれた。
 一方、メダルを首から下げた一希くんは、「水泳を習っているから、普段はプールで泳いでいるの。海で泳ぐのはちょっと緊張した。ビーチフラッグスにも出て楽しかったよ」と、嬉しそうに答えてくれた。

 また、保護者である新井秀幸さんがライフセービング活動に賛同、自分の子どもやその友だちを独自に指導して大会に参加した、磯子小学校チームもいた。

 ライフセービング先進国のオーストラリアも、かつては一部の男性のみがライフセービングに関わっており、活動の頭打ちを経験した時期があったという。それを打破するために導入したのがニッパーズ(ジュニア)であり、ニッパーズの広がりに伴い、活動に賛同する人が飛躍的に増え、また女性の参加も拡大していったという経緯があるそうだ。
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 日本でも、ジュニア活動の普及に伴いライフセービングのすそ野がぐんと広がった。なにより、ライフセービング未経験者の大人(保護者やその回りの人たち)が活動に理解を示し、協力し、活動に加わってくれるようになったことが大きい。

 この流れが地域限定ではなく全国へと広がることを願いつつ、本題の競技会レポートへ戻ろう。

ジュニアのがんばりに、大人もホロリ

LSweb 初の2日間開催となった今大会では、競技種目が増え、小学3、4年生から男女別で競技が行われるようになった。

 男女混合で行われる小学1、2年生の競技種目は、波打ち際を走るウェーディングレースとビーチフラッグスの2種目。

 真剣な表情で挑む小さな姿に、保護者だけでなく、ジュニアの先輩たちも大きな声援を送っていた。もっとも、この年代は負けてもあまり悔しがらず、ニコニコしている子どもが多かったのが印象的だ。それはきっと、初めての競技会を存分に楽しんでいたということなのだろう。

 ところが、学年が上がるごとに様子が違ってくる。勝てば嬉しいし、負ければ悔しい。意気消沈する子どももいれば、応援する保護者に走り寄り、泣きじゃくる子どももいた。
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 ビーチフラッグス小学3、4年生男子の決勝レースでは、こんなシーンがあった。予選から順調に勝ち上がってきた息子に、ヒートごとに声をかける父親。その声に子どもは「うん、うん」と頷く。ところが、決勝レースの何本目かでその子は負けてしまうのだ。

 記録係に名前をつげて、競技エリアを離れる彼は、うつむき、父親の方を振り返ることはなかった。父親のほうもしばしその場に立ちつくしていた。落ち込む息子に、どう声をかけようか迷っていたのかもしれない。その後、トボトボと歩く息子の後ろ姿を追いかけた。

 ところが、息子に追いつく前に、同じクラブのジュニア仲間がワッと駆け寄り、手を取り、肩を抱き、皆で彼のことを慰めてくれたのだ。その光景を目にして足を止めた父親。仲間に囲まれながら歩く彼は、最後に母親に抱きつき肩をふるわせた。
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 ジュニア競技会では、そんなホロリとさせられる光景が、そこかしこで見られた。1位になった子どもの雄姿に涙を流す母親もいたし、その姿を見てつられ泣きするママ友も……。
 そうかと思うと、上級生のがんばりに興奮して、砂浜を走り回る下級生の姿もあった。

 勝っても負けても、競技会に出ることで子どもたちは少しづつ成長し、次のステップへ進む。一回り大きくなった彼ら、彼女らは、来年、どんな表情で競技会に参加しているだろうか。

湘南ひらつかLSC、大健闘!

LSweb ジュニア競技会で初めて総合成績を発表することになった今大会。
 日本のジュニア活動の草分け的存在で、2000年から活動を続けている西浜SLSCが、総合力で堂々の優勝を飾った。

 「点数が加算できるのは、人数が多いからです。ただ今回、特に5、6年生が健闘しましたよね。その姿を見て、下級生が目を輝かせていたのが印象的です。ジュニア第一世代はすでに大学生になり、子どもたちには少し遠い存在のようです。それが今回、年の近いお兄ちゃん、お姉ちゃんの雄姿が見られたわけで、下級生たちは大いに刺激を受けたと思います。
 ジュニアを教える上で、身近なヒーローは必要不可欠です。ここからまた次の世代が台頭してくれるのかな、と期待しています」と話すのは、長年、ジュニアを指導してきた同クラブの今井恵子さんだ。
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 つづいて総合2位と大健闘したのが、10人で参加した湘南ひらつかLSC。
 ジュニアプログラム開始から10年目の今年、少数精鋭部隊で嬉しい結果を手にした。もちろん全員ががんばった結果だが、特に3、4年生女子の部に参加した久保田純令さんは、ニッパーボードレースで優勝、ランスイムランで2位。小学5、6年生女子の部に出場した渡辺あゆみさんは、ランスイムランで優勝、ニッパーボードレースで3位と実力を発揮した。
 またリレー競技でも表彰台に立ったのが、総合成績の躍進に結びついたようだ。

LSweb 個人種目でも好成績を上げたが、リレー種目が際立って強かったのが、総合3位の館山SLSC。クラブ一丸となって練習した成果を見事に発揮した。

 その館山SLSCと僅か3点差で惜しくも表彰台を逃したのが、7人でがんばった下田LSCだ。小学3、4年生男子の部で、ビーチフラッグスとニッパーボードレースの二冠を達成したのが、江渡祐太朗くん。小学5、6年生女子の部で同じくビーチフラッグス、ニッパーボードレースの二冠を達成したのが、江田望実さんだ。

 「下田の方が波があるから、あんまりパドリングをしなくていいんだよね。でも、最後は少し波に乗れたよ」と笑顔を見せてくれた江渡くん。
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 小学6年生、ジュニア最後の大会で金メダルを2つ手にした江田さんも、恥ずかしそうな、でも嬉しそうなはにかんだ笑顔を見せていた。

 稲毛LSCの小林文海さん、黒柳友那さんは、同じ集合住宅に住む友だち同士。小学3、4年生女子の部で二人仲良く入賞しては、ニコニコと顔を見合わせていた。
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 小学5、6年生男子の部でビーチフラッグスに出場した、バディ冒険団の村田慈英くん、高橋遼平くん、田上太晴くんはお互いに意識するライバル同士。同い年の仲良しグループでも、しっかり順位がつく、ちょっぴりほろ苦い体験をしたようだ。

 一人で挑戦した波崎SLSCの松岡 遼くんは、「波がないとニッパーボードって疲れるね。パドリングをたくさんしなくちゃいけないから」と初めての競技会を振り返った。
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 プールでの練習が主体ながら、海での競技にも果敢に挑戦した世田谷スイミングアカデミーとカワサキスイミングクラブのジュニアたち。今回はなかなか実力が発揮できず、悔しい思いをした湯河原LSCも、競技が終われば無邪気な子どもの顔に戻っていた。

 オレンジのコンペキャップがすっかりお馴染みとなった山形LSCのジュニアたちは、大会の1週間前に二学期がスタート。すでに日常生活が始まっている中での大会参加だった。
 同クラブの練習もプールが中心。「ニッパーボードもね、プールで練習するんだよ」と子どもたち。夏季にオープンする屋外プールを夜に借り切って練習するそうだ。

 「大会日程が2日間になったことで、(日帰りで往復する必要がなくなった)引率者の負担が軽減されました。子どもたちも、泊まりは楽しいようです。競技会に出ることで、いろいろな場所に仲間がいて、それぞれががんばっていることに気づいてもらえればと思っています」と閉会式で話してくれたのは、自らもクラシックに出場した鈴木宏往さん。
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 「成績は、まあまあでした。きっとくやしい思いをした子どもたちが多かったと思います」と口にしたのは、鎌倉ライフガードの多胡 誠さんだ。
 同クラブがジュニアを立ち上げて3年。がんばっている子どもたちがいるからこそ、結果を出させてあげたい、というのが親心なのだが……。

 50人近いメンバーが参加した西浜SLSCから、1人で初めて参加した波崎SLSCまで、さまざまな環境で活動するジュニアたち。今回、悔しかった子も、嬉しかった子も、元気にライフセービングを続けて、また来年の大会で会おうね!

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★☆「第11回ジュニア・ライフセービング競技会」成績表☆★