日本選手団の活躍に沸いたリオ五輪の閉会式から1週間。千葉県南房総市の岩井海岸で「第13回ジュニア・ライフセービング競技会」が開催された。
参加したのは小学1年生から6年生まで、男女合わせて155人(14チーム)のジュニアライフセーバーたち。
心配された台風の影響もなく、穏やかなコンディションで行われた大会では、真剣な表情でがんばる、日焼けした子どもたちの元気な姿を見ることができた。
文・写真=LSweb編集室
海で泳ぐの楽しいな
各地で活動するジュニアライフセーバーが一堂に会し、日頃の成果を競う全日本ジュニア・ライフセービング競技会は、8月最後の週末に行われる夏恒例の大会だ。
大会会場の岩井海岸は、東京湾に面した遠浅で波静かなビーチ。臨海学校が盛んな場所でもある。今夏の海水浴場開設期間は7月21日から8月20日まで。
日体大ライフセービング部の学生ライフセーバーを中心とした岩井LSCのメンバーが1カ月間、しっかりとガードをしてくれた。
迷走台風10号の影響が心配された今大会だが、岩井の海を知り尽くした岩井LSCが安全課として今大会をサポートしてくれたのだから頼もしい。
結局、台風の影響はほとんどなく、無事、2日間の日程を消化できた。
ジュニア競技会の規模は年々、大きくなっており、今年は参加者が150人を越えた。
五輪メダリストの北島康介さんが設立した水泳クラブ「キタジマアクアティクス」は、今回が初参加。同クラブでは、インストラクターとして所属する葺本康隆さんや古金源太さんらのライフセーバーが、小学生から高校生までのジュニア/ユース世代に指導を行っている。
「プール育ちの子どもたちが多いですが、海はやっぱり楽しいみたいです。競技会に出られないユース世代も、海で泳ぎたいからと帯同したくらいですから」と葺本コーチ。
小学5・6年生女子のランスイムランでは、田中伶奈さんが3位に入る活躍。またスイムだけでなく、小学3〜6年生男女のニッパーボードリレーでも4位に入る健闘を見せた。
「海で泳ぐのは大会の時ぐらいだよね」と顔を見合わせたのは、小学3・4年生女子のカテゴリーで参加した山形LSCの池田樹里さんと、久木朱璃さんの2人。
慣れない海での競技だったが、池田さんはランスイムランで見事に優勝。久木さんも4位に入賞した。
「コーチから『ゴールの旗は沖からだと見えにくいので、その奥にある大きな建物とかを目指して泳ぎなさい』って教えてもらいました。それが上手くいったかな」と池田さん。
何を目標にしたのか聞いてみると、「えーっと、もう忘れちゃった」と無邪気な返事。
海で泳ぐのは得意じゃないと言っていた彼女たちだが、今回ですっかり自信をつけたようで、レース後は一目散に海へと駆け出していった。
友だちと一緒は楽しいな
今年で2回目の参加となる「あおぞらLSC」は、自然体験を主体する園舎のない幼稚園の卒業生が集うユニークなクラブだ。
「山や川など自然の中で育った子どもたちですが、土地柄、海に行く機会がありませんでした。海にも触れさせたいと思う保護者が集まり、大会に参加させてもらっています。
ライフセービングのトレーニングを一生懸命している他のクラブにはちょっと申し訳ない気もしますが、子どもたちもそして保護者もこの経験を楽しんでいます」と話すのは、自らも親子で参加した松本貴行JLA副理事長だ。
低学年の子どもたちが多かったあおぞらLSC。水色のスイミングキャップに雲のアップリケを縫い付けたコンペキャップを被った子どもたちは、海を怖がることなく元気に飛び回っていた。
「今年の夏は子どもたちを連れて神津島へ行ってきました」と言うのは、「TKS(チームカワサキスポーツ)」と率いる田村憲章さん。
「海へ行く機会が少ない子どもたちに、せっかくなら魚がたくさん泳ぐきれいな海を見せてあげたかったのです。最初は大きな波に目を丸くしていた子どもたちですが、最後は満喫していました。今日の岩井のような穏やかな海は、へっちゃらだと思いますよ」という言葉どおり、小学5・6年生男子のランスイムランで丸山雄平さんが2位、小学3・4年生男女のタップリンリレーで3位と表彰台に立った。
ビーチフラッグスで大活躍したのが、湯河原LSCと稲毛LSCの連合チームで参加した豊田海皇、豊田琉皇兄弟だ。父親である豊田尚久さんゆずりの目力が印象的な2人。兄の海皇さんは小学3・4年生男子の部で、弟の琉皇さんは小学1・2年生の部で共に優勝を飾った。
小学3・4年生女子のビーチフラッグスは昨年と同じく、勝浦LSCの高梨帆南さんと鎌倉LGの名取暦詩心さんの優勝争いとなり、高梨さんが接戦を制して連覇を達成した。
勝浦LSCのジュニアメンバーは現在、21人。指導するのは、国際武道大学ライフセービング部のジュニア係と同部のOB、OGたちだ。ジュニアの活躍に目を細めるコーチ陣の中には、日本代表の但野安菜選手や、インカレ連覇中の堀江星冴選手など、ビーチフラッグスのスペシャリストが顔を揃えていた。
小学5・6年生女子のビーチフラッグスで優勝したのは、大竹SLSCの二重作真央さん。チームメイトのいない1人での参加だったが、心細さをものともしない活躍を見せてくれた。
接戦に次ぐ接戦が繰り広げられた、小学5・6年生男子のビーチフラッグス。下田LSCの江渡祐太朗さんとバディ冒険団の三保谷悠さんによる優勝争いは、江渡さんに軍配が上がった。
ニッパーボードを軽やかに乗りこなすのは、普段からライフセービング機材に触れる機会の多い、館山SLSCや西浜SLSCなどのジュニアたちだ。
中には、大人が惚れ惚れするようなライディングを見せてくれる低学年の子どももいる。きっと、友だちと一緒に海で活動することが楽しくてしょうがないのだろう。
中学生になると、学校の部活との両立が難しいなどの悩みがあるようだが、子ども時代の楽しかった思い出は深く記憶に残るものだと思う。その一つに、ジュニア競技会が加わるといいなと感じた。
総合成績は館山SLSCが60点で3位、2位は75点の下田LSC、そして優勝は170点の西浜SLSCという結果となった。
下田LSCは6人のメンバーで総合2位と大健闘。ニッパーボード、ビーチフラッグス、ランスイムランと、スイムでもビーチでもクラフトでも表彰台に上る安定した力を見せた。
鎌倉LGは59点で館山SLSCに1点及ばず惜しくも4位。来年こそは! の気持ちを新たにしていた。
2位にダブルスコア以上の点差を付けた優勝した西浜SLSCは、小学1年生から6年生まで参加クラブ中最も多い36人が参加した。
入賞者が多ければ加算されるポイントも多くなるが、人数が多いだけで入賞者が増えるとは限らない。
率先してチームを引っ張ってきたという、小学6年生の小島裕太郎さんと吉塚梓乃さんに総合優勝の秘訣を聞くと「一人一人が、全力を出してがんばったから!」という答えが返ってきた。
閉会式の挨拶で「諦めないで最後までがんばれたなら、それが皆の金メダル」と、話した文珠寺裕之JLA監事。
8月最後の日曜日、千葉の岩井海岸には心に金メダルをかけた子どもたちがたくさんいたはずだ。
【第13回全日本ジュニア・ライフセービング競技会】
★☆ 第13回全日本ジュニア・ライフセービング競技会 表彰台 ☆★
ランスイムラン・小学3-4年生男女 | ランスイムラン・小学5-6年生男女 |
ビーチフラッグス・小学1-2年男女混合 | ビーチフラッグス・3-4年男女 |
ビーチフラッグス・小学5-6年男女 | ニッパーボードレース・小学3-4年男女 |
ニッパーボードレース・小学5-6年男女 | ニッパーボードリレー・3-6年男女混合 |
タップリンリレー・小学3-4年男女混合 | タップリンリレー・小学5-6年男女 |
チーム総合成績