RESCUE2012

大会直前 レスキュー2012情報 その6
SLSA主催のデベロップメントプログラムが大好評
2012/11/07

Rescue2012 Preview Vol.6

 レスキュー2012の開催国であるオーストラリアは、言わずと知れたライフセービング王国であるが、今回、改めてこの国の凄さを知る出来事があった。それが、ライフセービングの発展途上国を対象とした、デベロップメントプログラムの開催である。
 
 正式名称は「ライフセービング&スポーツ デベロップメントプログラム」というのだが、要はこれからライフセービングを普及していこうという国々のチームを世界大会に招待し、事前に選手およびコーチに対するクリニックを行って、レスキュー2012の本番に送り出すというプログラムだ。

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 主催はサーフライフセービング・オーストラリア(SLSA)。大会前日まで3日間かけ、プール競技およびサーフ競技のルール説明、機材の取り扱い方法、そして実技から、コーチング学、オフィシャル育成の方法まで、SLSAのスタッフが時に身振り手振りで、熱心に直接指導していた。LSweb

 今回、このプログラムに参加したのは14カ国(下記参照)、102人の選手と35人のコーチたち。マネキンに触るのは初めてという選手もいれば、ボードやサーフスキーに初めて乗る選手も大勢いたようで、講習会は終始なごやかな雰囲気。プログラム最終日には、国籍を超えて笑顔で談笑するする姿がそこかしこで見られ、少し羨ましい感じもした。

 一方、選手たちがクリニックを受ける姿を見つめるコーチたちの目は真剣そのもの。メモを取りながら、あるいは何度も質問する姿が印象的だった。
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 プログラム参加国の一つ、スリランカ・ライフセービング協会のGunarathna会長は「今までいろいろな講習や講演を受けてきたが、このプログラムがベストです」と力説。「実技だけでなく、コーチングのテクニックも勉強することができるのが素晴らしいですよ」と話してくれた。
 
 スリランカは昨年、南アジア・ライフセービング大会を初めて開催するなど、ライフセービングの普及に力を入れているアジア圏の国の一つだ。同国のライフセービング協会が設立されたのは1979年だが、2000年代に入るまではそれほど普及が進んでいなかったという。

 しかし現在は、SLSAに資格に準じたブロンズメダリオン(ベーシックライフセービング資格)を独自に発行できるようになり、取得者は5000人まで増えたそうだ。
 「ただ、実際にライフセービング活動をしているのは1000人程度。これからは日本も含め、アジア圏で協力してライフセービングを普及していきましょう。アジアがまとまれば、もっと力を発揮できるはずです」と熱く語ってくれたのだった。
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 1980年代のSLSAのサポート抜きに、今日の日本のライフセービングはなかったと言っても過言ではないだろう。
 今回のプログラムを目の当たりにして、日本ができることはなんだろうかと改めて考えさせられた。

 競技力では間違いなくアジアトップの日本。世界ナンバーワンのオーストラリアがそうであるように、アジアナンバーワンの日本にも、やらなければならない使命があるのではないだろうか。
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デベロップメントプログラム参加国
マレーシアLSweb
インドネシア
フィリピン
タイ
パキスタン
フィジー
スリランカ
インド
カメルーン
ケニア
ブラジル
アルゼンチン
マケドニア
ラトビア
(14カ国/順不同)

文・写真=LSweb編集室





大会直前 レスキュー2012情報 その5
総合優勝を狙うニュージーランドチーム
2012/11/06

Rescue2012 Preview Vol.5

 いよいよ明日からレスキュー2012が始まる。
 日本代表は午前中にプールで、午後から海での最終調整を行い、明日の本番に備えた。

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 午前中、日本代表と同じ時間にプール調整を行っていたのが、1998年以来の世界王者を狙うニュージーランドチームだ。スコット・バートレット監督にプールサイドで話しを聞いた。LSweb

——チームの調子はいかがですか?

バートレット監督(以下、バートレット):今回はケガ人も今のところ出ていないし、良い調子で仕上がっていますよ。

——目指すはワールドチャンピオンですよね?

バートレット:もちろんです、そのために頑張ってきましたからね。6年計画ですよ。6年がかりでチームをここまでにしました。いやぁ、がむしゃらにやりましたし、大変でしたよ。

——前回のエジプト大会では、オーストラリアに僅差で敗れましたね。今回はどこを強化してきたのでしょうか?

バートレット:プール競技を得意とする選手を土台に、サーフ競技の強化を徹底してきました。ボードやスキーといったクラフト系は、特に力を入れて強化しましたね。もちろん、ビーチも強いですよ。

——6年がかりでチーム作りをしてきたということですが、代表選手の選抜はどのようにしているのですか?

バートレット:ニュージーランドでは1年間に4つの大きな大会があります。その4大会の結果を基準に選抜しています。オープンクラス(A代表)に参加する選手たちは、学生と社会人が半々ぐらいでしょうか。メンバー決定は今年の6月。それから半年間にわたって、チームで練習を続けてきました。LSweb

——ユースメンバー(B代表)も基本的に同じ選考方法ですか?

バートレット:そうです。練習はオープンクラスと合同でやることもありますし、別々にやることもあります。オープンクラス同様、ユースチームがオーストラリアのユースとどんな戦いをしてくれるのか、とても楽しみにしています。

——そろそろオーストラリア以外の国が頂点に立つところを見たいですものね。

バートレット:それは私も同じですよ。お互いに頑張りましょうね。

 国際ライフセービング連盟(ILS)が主催するようになってから、レスキューシリーズでオーストラリアを破ったことがあるのは、隣国であるニュージーランドだけ。今回はオリンピックスイマーもメンバーに加わっている。
 黒いユニフォームに身を包むキーウィ軍団と、黄色と緑がトレードマークのオージー軍団の戦いはいかに……!



文・写真=LSweb編集室





大会直前 レスキュー2012情報 その4
ヤングパワーに注目! ユース日本代表
2012/11/05

Rescue 2012 in Adelaide Preview Vol.4

 レスキュー2012のサーフ競技会場となるグレネルグの町は、南オーストラリア州の州都、アデレード中心地から車で約20分の距離にある、海辺のリゾート地。アデレードからはバスまたはトラム(路面電車)でアクセスでき、トラム駅の目の前には、町のシンボルともなっている海へと長く伸びる桟橋がある。

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 ナショナルチーム部門のオーシャン競技は、桟橋から海に向かって右手エリアで行われる。天候にもよるが、海面は基本的にフラットで遠浅。ビーチはきめの細かいパウダーサンド、というコンディションだ。

 11月3日に現地入りし、4日から最終調整に入った日本代表選手団は、大会本番に向け、良い意味で緊張感を高めているように見受けられた。大会2日前となる今日(5日)は、午前中にプール競技の会場となるサウスオーストラリア・アクアティックレジャーセンターで練習を行った。

 五輪選考会などが行われる施設というだけあり、「泳ぎやすいプールでした」というのが、選手たちの共通の認識のようだが水深は3m。これがマネキンピックアップなどにどう影響するか気になるところだ。
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 日本と入れ替わりでプール練習を終えたのが、国際ライフセービング連盟(ILS)の事務局があるベルギーチームの面々。チームマネージャーに話しを聞いたところ、「今回はプール競技で10位以内を目指している」との答え。

 「来年開催されるワールドゲームスの出場資格が、プール競技の10位までだからね。ベルギーの場合、活動の主体がプールなので、どうしてもプール競技にフォーカスを当ててしまうことになる。個人種目は決勝に残れないものもあるかもしれないけれど、リレー種目は決勝レースで上位に食い込みたいと思っているよ」
 と自信をのぞかせた。
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 午後からはオーシャン会場での練習が予定されていたが、雷雨の影響で早々に切り上げる羽目に……。夕食までの時間は、宿舎ホテルのジャグジーにつかったり、イメージトレーニングをしたりと思い思いの時間を過ごした。
 
 大会前日の明日は、軽めの練習で体調を整え本番に備える。最初の種目、SERCは現地時間の7日午後1時から開始される予定だ。

 ところで、今大会では初の試みとして各国の19歳以下が競う、ナショナルユース部門が新設された。日本のユースチーム(B代表)を率いる飯沼誠司監督に、期待と抱負を語ってもらった。LSweb

——B代表にはどんな活躍を期待していますか?

飯沼監督(以下、飯沼):B代表の選手たちには成績ウンヌンということよりも、今回の経験を生かして、次の世代の日本代表になるように、と言い聞かせています。今回は初めての経験なので、今まで練習してきた成果をきちんと出すこと、そしてこれが終わりではなく、フランスで開催されるレスキュー2014では彼らが代表として世界相手と戦えるようになることを期待しています。

——先が楽しみですね。

LSweb飯沼:B代表は中期的な視点で育てていますので、A代表とは違うメニューを取り入れることも多いのです。でもだからと言って、成績はどうでもいいということではありません。世界ナンバー1のオーストラリアのユース選手にどこまで迫ることができるか、またプール競技はタイムが出ますから、代表レベルと遜色のないタイムを出してほしいですね。

 B代表のキャプテンを務める小林 海 選手は、「大会まであと2日ですが、チームの雰囲気は良いと思います」と笑顔を見せる。
 個人の目標は? と聞くと少し小さな声で「メダルを獲りたいですね」と一言。そして「もちろんボードレースもがんばりますが、SERCでメダルを獲りたいです」と続けた。
 
 そう話す小林キャプテンの横で、ジュニア時代からの同期である坂本 陸 選手が「ボードレスキューでも表彰台を狙いたいです」と力強く宣言。
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小林選手と坂本選手、息の合った2人がボードを手にガッツポーズをしながら海から上がってくるのを期待しよう。

文・写真=LSweb編集室





大会直前 レスキュー2012情報 その3
さらなる飛躍を目指す日本代表チーム
2012/11/03

Rescue 2012 in Adelaide Preview Vol.3

 11月7日に始まるレスキュー2012まで、あと5日。
 日本代表選手団は昨日、オーストラリアのアデレードに向け出発した。今大会、A代表は総合8位内を目指し、新設のユース部門ではB代表が国際試合のデビュー戦を飾る。
 
 大会実行委員会の発表によると、各国のベストメンバーが顔を揃えるナショナルチーム部門に参加するのは42チーム。ユースチーム部門は10チームが参加する(下記参照)。
 
 ナショナルチーム部門への参加は、前大会から1チーム減った。数字的にはそれほど変わらないが、経済危機の影響かヨーロッパ勢が減り、アジア地域からの参加が増えるなど、参加国の顔ぶれは大きく変わっている。日本代表はどう戦うのか、代表チームがSERCの自主練習を行っていた11月21日、アクラブ藤沢にて入谷拓哉代表監督に話しを聞いた。

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——代表メンバーの変更があったようですね?LSweb

入谷監督(以下、入谷):ビーチ種目だけでなく、プール競技でも活躍が期待されていたA代表女子の藤原 梢が、ケガのため代表を辞退したのが三洋カップ終了後のことです。一旦はA代表のサブメンバーである藤浪優希が代表入りしましたが、その後、彼女も体調不良となり、もう一人のサブメンバーである名須川紗綾を派遣することになりました。それ以外の変更はありません。

——代表選手の交代によって戦い方が変わってきますか?

入谷:名須川はクラフト系が得意な伸び盛りの選手ですから、オーシャン競技で力を発揮して欲しいと思っています。日本は相対的にサーフ競技が強いチームです。サーフ競技で点数を稼ぎ、プール競技の順位をカバーして、総合成績を押し上げるという戦い方をしてきました。そのパターンは基本的には変わらないと思います。
 ただし、プール競技でもポイントを積み重ねていかないことには、総合8位だった前大会の上を目指すことはできません。プール競技でA決勝(ベスト8)、B決勝(ベスト16)に進出することを目標にチーム作りをし、トレーニングしてきました。その成果がどこまで出るか……ということでしょうか。

——エジプトで開催されたレスキュー2010では、ビーチフラッグスで男女合わせて3つのメダルを獲得しましたね。その時のメンバーで今回、代表入りしているのは男子の植木将人選手だけで、女子で金メダルを獲った藤原選手、そして2位の遊佐雅美選手は参加していません。日本のお家芸とも言えるビーチフラッグスで高得点が稼げないかもしれないのは、正直、厳しくないですか?

入谷:厳しくないと言えば嘘になりますね。エジプトの時には、女子のビーチフラッグスだけで38ポイントを獲得していますから。今回、それだけのポイントを一つの種目で稼ぐことは難しいと思います。そうなると選手一人一人が、それぞれの出場種目でA決勝、B決勝に進出し、1点、2点というポイントを加算していくしかありません。表彰台に上るような華々しい成績は出せないかもしれませんが、全体の力が底上げされていることを証明できれば、総合8位以内も夢ではないと思っています。

 入谷監督の意を汲み、A代表を引っ張るのが長竹康介キャプテンだ。今回で4度目の世界大会となる長竹選手に意気込みを聞いた。LSweb

——入谷監督は総合成績8位以内が目標と明言していますが、キャプテンとしていかがですか?

長竹康介主将(以下、長竹):総合成績で前回を上回ること、まずこれが目標です。そして、個人としては4つぐらいメダルを持ち帰りたいですね。

——4つというのはどの種目ですか?

長竹:ボードレスキュー、レスキューチューブレスキュー、ラインスロー、そしてSERCです。SERCは前回、2位でした。1位のオーストラリアよりも良かったという審判もいたのですが、そこは採点競技の難しさでもあると思います。ただ、悔しい思いをしたのも事実です。ですから今大会に向けては、強化合宿だけでなく、ライフセーバー仲間に手伝ってもらいSERCの自主練習もこなしてきました。本番の状況がどうなるかは分かりませんが、日本の救助力の高さを証明したいですね。

 レスキュー2012は11月7日、そのSERCから開始される。A代表は長竹キャプテンを筆頭に、植木選手、西山 俊 選手、三井結里花選手の4人がSERCに挑む。また同日行われるB代表のSERCには、小林 海 キャプテン、坂本 陸 選手、髙橋愛海選手、そして皆川綾菜選手が挑戦する予定だ。
 
 SERCで良い結果を出すことができれば、その後の競技に大いに弾みがつく。日本代表の戦いぶりが楽しみだ。

【レスキュー2012参加国(ナショナルチーム=A代表)/42カ国】
 オーストラリア:前回総合成績(以下同)1位/総合得点(以下同)800点
 ニュージーランド:2位/776点
 ドイツ:3位/534点
 イタリア:4位/516点LSweb
 南アフリカ:5位/482点
 フランス:6位/468点
 オランダ:7位/311点
 日本:8位/298点
 スペイン:9位/293点
 アメリカ:10位/245点
 イギリス:11位/239点
 ベルギー:12位/158点
 中国:13位/155点
 カナダ:14位/142点
 エジプト:15位/88点
 スイス:16位/73点
 アイルランド:17位/71点
 デンマーク:19位/60点
 ハンガリー:22位/34点
 香港:24位/24点
 台湾:25位/21点
 シンガポール:26位/16点LSweb
 イラン:27位/16点
 スロベニア:28位/14点
 スウェーデン:29位/8点
 ノルウェー:30位/7点
 フィンランド:33位/0点
 マレーシア:34位/0点
 チェコ:35位/0点
 ケニア:36位/0点
 インド:39位/0点
 アルゼンチン:43位/0点
 インドネシア:前回不参加
 カメルーン:前回不参加
 スリランカ:前回不参加
 タイ:前回不参加
 パキスタン:前回不参加
 フィジー:前回不参加
 フィリピン:前回不参加
 ブラジル:前回不参加
 マケドニア:前回不参加
 ラトビア:前回不参加

【レスキュー2012参加国(ユースチーム=B代表)/10カ国】
 オーストラリア
 ニュージーランド
 日本
 スペイン
 アメリカ
 カナダ
 アイルランド
 香港
 ノルウェー
 ケニア
*イギリスはユース大会に参加しないことを10月29日に表明





LS国際大会 in AUSTRALIA イメージ・フォトアルバム2012/11/01

「RESCUE2012」世界選手権アデレード大会の開催が刻一刻と近づいている。

サーフライフセービングのメッカ、オーストラリアでRESCUE世界選手権が行われるのは、2006年のメルボルン大会以来6年ぶりのことだ。
ここでは、間近に迫った大会をさらに盛り上げるため「RESCUE06」を中心に、過去にオーストラリアで行われた国際大会の写真をセレクトしてお届けしてみよう。
世界各国はもちろん、オーストラリア国内から集結した若者からベテランまで数多くのライフセーバーが織りなす熱く美しい戦いのワンシーンをじっくりとご覧頂きたい。

写真をクリックすると大きくなり、しばらくするとスライドショーとなります。

文・写真=LSweb編集室