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活動開始から50年
西浜SLSC、半世紀の歩み
2012/12/27

NISHIHAMA SLSC 50th Anniversary

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西浜SLSCの創設50周年記念イベントが
11月24日、神奈川県藤沢市で盛大に行われた。

シンポジウム、式典、そしてパーティーと
三部構成で行われたイベントには、
創設時のOBから小学生のジュニア、
地元の行政担当者や地域の関係者、
そして多くのライフセーバー仲間が駆けつけた。



文・写真=LSweb編集室





地域クラブの先駆者として

 西浜サーフライフセービングクラブの前身である「湘南ライフガードクラブ」が誕生したのは、高度経済成長のまっただ中である1963年のことだ。以来、藤沢市の片瀬西浜海岸で、海水浴シーズンのパトロールを行う有志集団として活動を続け、1995年にクラブ組織化、2003年にはNPO法人化し現在に至っている。2012年12月現在、クラブメンバー194人、ジュニアメンバー80人が所属するのが、西浜SLSCである。
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 1960年代当時、藤沢市の海水浴場には、一夏で500万人を超える遊泳客が押し寄せていたが、同時に事故も多発していた。その状況を改善したいと、こころざしある若者たちが集まり、日本赤十字社の水上安全法資格を取得して活動を始めたのが、西浜SLSCのルーツなのである。さらに1999年からは江の島の岩屋、2004年からは片瀬東浜海岸での夏季パトロールも行うようになった。

 クラブ組織化された1995年以降は、夏季だけでなく年間を通した活動で地域に貢献。その最たるものが、ビーチクリーンであり小中学生を対象としたジュニアプログラムだ。

 毎月第2日曜日に片瀬西浜海岸周辺で行われているビーチクリーンは、当初は10人ほどのクラブメンバーが参加する地道な活動だった。しかし、続けることで地域住民にもしっかりと定着し、今では多い時には1回で300人ほどが集まる活動に成長。その功績が認められ、昨年には藤沢市より環境大賞を、そして今年は天皇陛下より緑綬褒章が授与された。

 一方、クラブメンバーの子どもたち数人を対象に2000年からスタートしたジュニアプログラムは、現在、定員いっぱいの80人を集める規模に拡大。同クラブのジュニア卒業生が日本代表選手として世界大会に出場し、メダルを獲得するという実績を上げるまでになった。

 LSwebまた、2009年に起こった地元の中学生の水難事故を契機に、藤沢市教育委員会との協働事業として、市内の小中学校でジュニアライフセービング教室を実施するようになり、これまでにのべ1万4600人以上の子どもたちに水辺の安全教育を行っている。

「湘南」という地域ブランドを生かしつつ、半世紀にわたって真摯にライフセービング活動を続け、そのすそ野を広げてきた西浜SLSCの取り組みは、日本における地域クラブのひとつのモデルケースといえるだろう。だからこそ“西浜モデル”をお手本に、近年では海水浴場でのパトロール活動だけでなく、全国各地で、水辺の環境保全活動やジュニア世代を対象としたプログラムが展開されるようになったのだ。

 西浜SLSCは今後も、リーディングクラブとして他クラブから目標とされる存在であり続けるだろう。しかし同時に、「追いつけ、追い越せ」という対象でもあるはずだ。記念式典で挨拶に立った同クラブ理事長の土志田 仁さんは、結びの言葉をこう締めくくった。
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「半世紀にわたって“地元の海を守る”という活動を続けてこられたのは、数多くの先輩方のご苦労と教えがあったからであり、苦節を共に乗り越えてきたメンバーのおかげでもあります。確かに私たちには一日の長があるかもしれません。しかし、各地のクラブが今後さらにそれぞれの活動を充実し、私たちを越えていってくれれば、それに勝る喜びはありません。それはすなわち、私たちライフセーバー全員が目指す“水辺の事故をゼロに”という思いに向けて、確実に前進しているわけですから……」

 式典に出席したジュニアメンバーの内堀夏怜さんは、今後の抱負を聞かれ、キッパリとこう言った。

 「これからもライフセービングを続け、100周年のパーティーにも出席したいです!」

 その瞬間、会場がドッと沸いたのはいうまでもない。列席したOBやOG、関係者の中には、「50年後はもうあの世だわ(笑)」という人もいただろう。しかし、自分たちが青春を、あるいは人生をかけて築き上げてきたものが、ジュニア世代、そしてそのまたジュニア世代によって引き継がれていく様子を、はっきりと感じることができた瞬間だったのではないだろうか。
 50年という節目を越え、新たな歩みを始めた西浜SLSC。10年後、20年後、そして50年後……。西浜SLSCはどんなクラブになっているだろうか。

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近隣クラブが交流を深めたシンポジウム

 さて、創設50周年の記念イベントでは、地域クラブの先駆者らしく第一部にシンポジウムを開催。「クラブマネージメント」と「ジュニアプログラム」を題材に、近隣クラブの代表や担当者、そしてライフセーバーたちを交えた活発な討論が行われた。

 クラブマネージメントについては、西浜SLSCの事務局担当理事である風間隆宏さん、鎌倉ライフガード代表の多胡 誠さん、湯河原LSC代表の佐藤慶太さん、そして葉山LSC代表の加藤智美さんがパネリストとして参加。各クラブの活動実績を紹介しつつ、それぞれのクラブが抱える課題や問題点について、参加者も加わっての意見交換が行われた。
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 さまざまな課題が浮かび上がる中で、西浜SLSCを含め、各クラブが抱える一番の問題点は夏季の人材不足だということで一致。では、それぞれのクラブはいかにしてその問題に取り組んでいるのだろうか。
 その一例を挙げると、鎌倉LGではメンバー確保の入り口を広くするために、有料の求人情報などにも求人広告を載せ、ベーシック資格なしでもパトロールが始められる体制を整えた。
 
 湯河原LSCは、クラブの存在を一般にも広く知らしめるためにHPを積極的に活用。また葉山LSCは、地元で行われるイベント(お祭りなどの地域行事やマラソンなどのスポーツ大会など)には極力参加し、地域住民、さらには地元行政にもクラブの存在を印象づける努力をしている。
 運営資金はどう工面するのか、専任スタッフなしで事務作業をどう処理していくのかなど、今後、新たに解決していかなければならない課題も見つかったが、このシンポジウムを機会に各クラブが情報を共有し、横の繋がりを深めることで解決策も見えてきそうだ。

 ジュニアプログラムについては、西浜SLSCの今井恵子さん、湘南ひらつかLSCの大森裕美さん、つづきの丘ジュニアLSCの石原早織さんの3人を迎えてディスカッションが行われた。
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 通年のジュニアプログラムを運営する上で、各クラブともに注力しているのが保護者にもライフセービングを理解してもらうこと。現在、メンバーが6人と小規模なつづきの丘ジュニアLSCでは、必ず保護者と会って直接話す機会を設け、プログラムへの理解を求めている。
 
 湘南ひらつかLSCでは、2008年からジュニアメンバーの夏季ガード体験を実施しているが、体験会の前に保護者同伴の説明会を開催し、ライフセービング活動中に起こりうる事例の周知徹底を行っている。
 
 ジュニアプログラム開始から12年目に突入した西浜SLSCでは、年度初めのオリエンテーションで協力を要請するだけでなく、保護者のための講座も設けることで、より積極的に活動に参加してもらう工夫をしているなど、各クラブの取り組みは参考になる部分が多かった。

「ライフセーバー仲間の方たちには、ただ式典に列席していただくだけでなく、ライフセービング活動を続ける上で参考になるような“おみやげ”も持って帰ってもらいたかったのです」
 と言うのは、シンポジウムの企画、司会進行を担当した風間さん。時間に限りはあったが、参加者たちはきちんと“おみやげ”を持ち帰ることができたと思う。


約500人が集った式典とパーティー

 シンポジウムに続き開催された式典とパーティーには、西浜SLSCのOB・OG、現役メンバー、ジュニアメンバーとその保護者、さらには鈴木恒夫藤沢市長、小峯力JLA理事長など来賓、そして近隣クラブのライフセーバーたち、約500人がかけつけた。
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 式典では、1960年代当時のパトロール風景や、今やクラブの重鎮となっているメンバーの若かりしころの姿など、懐かし写真やビデオがスクリーンで紹介された。圧巻だったのは、歴代の警備長が一同に集合した姿だ。一人一人の顔を見ていると、その時代のガード風景が目に浮かぶ気がした。

 またパーティーでは、2000年から始まった「西浜ライフセーバーオブザイヤー」の受賞者全員に記念のアンカー(錨)盾が贈られた。
 
 当日の盛り上がりは、改めてお知らせするまでもないと思う。その替わりに、西浜SLSCのメンバーであるオーシャンプロモーションズの合田光伸さんが制作し、式典で流された50周年記念映像を紹介しよう。

「SINCE1963 – History」



 ところで、西浜SLSCのロゴマークはカッター(=サーフボート)でキア立て(櫂=オールを空に向かった立てること)している構図だ。
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 実は同クラブには「カッターのこころ」という理念があるそうだ。クラブが活動を始めた当時は、手漕ぎボートくらいしか救助機材がなかった。カッターは呼吸とタイミングを揃えなければ、前進さえままならない。訓練を重ねることにより、体力向上はもちろんのこと、チームの結束力が強化され、結果として的確な人命救助に繋がる、というわけなのだ。

 「皆で同じ方向に進むようよ、力を合わせれば真っ直ぐに進むよ」という思いが込められたロゴマークとともに、西浜SLSCは51年目の歩みを始めた。








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