interview

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日本ライフセービング協会 理事長
小峯 力 氏に聞く
次のステージに入ったJLAの今後の展望
2012/10/05

「日本ライフセービング協会(Japan Lifesaving Association)」は昨年4月、設立20周年を迎えた。
神奈川県の湘南地方を中心に活動していた「日本ライフガード協会」と、静岡県の下田周辺で活動していた「日本サーフライフセービング協会」が歩み寄り結成した統一組織「日本ライフセービング評議会」を経て、1991年4月に設立された同協会は、現在、北海道から沖縄まで全国に5支部を展開。登録クラブは地域・学校合わせて128クラブ(2012年8月末現在)を数える。
9月下旬、学生ライフセーバーたちが熱戦を繰り広げたインカレ会場にて、同協会の小峯 力 理事長に今後の展望を伺った。


文・写真=LSweb編集室




「日本ライフセービング協会は今、深く根を張る時期に入ったと思います」


—— JLAは昨年、設立から20周年という節目の年を迎え、次の10年に向け新たな一歩を踏み出した。

 LSweb20年というのは長いようでもあり、短いようでもありますが、客観的に見れば新生児が成人する年月ですから、協会自体、成熟する節目に入ったと思います。
 
 これから先、協会としていかに成熟していくかを考える上で大切なのが、しっかりとした後継体制を築くということです。水難事故を防止する活動がライフセービングの基本ですが、その根底には人を助けるという哲学があります。その哲学を正しく繋げていく、ただ繋げるだけではなく、正しく繋げることができるリーダーの存在が大事だと私は思っています。

—— 組織体制も変わりましたね。

 ライフセーバーの社会的地位を向上させるため、3カ年(平成24〜26年度)の活動方針を示しました。
 協会報『The Rescue』でも報告していますが、①ライフセーバーやその指導者を養成するための資格認定活動の強化と、それに伴う安全教育の普及・啓蒙活動の展開を行う、②国内の水辺での実践的な監視・救助活動の普及と、そこから得た知識を基に国際ライフセービング連盟の一員としてアジア圏の溺水事故防止にも貢献する、③世界レベルのレスキューアスリートの育成と、スポーツを通じての技術力向上および地域振興を行う、④日本ライフセービング協会およびライフセーバーを消防や海保などと同レベルの公的救助機関に引き上げるため、行政や関係機関との連携を図る、⑤組織の持続的発展を見すえ、公益法人化を含めた検討を行う——というミッションです。
 
 LSweb分かりやすくいうと、短期的には「教育」「救命」「スポーツ」の3つに集中し、そこを強化していくということです。協会では以前より5つの理念として「救命」「スポーツ」「教育」「福祉(社会貢献)」「環境」を掲げてきました。「福祉」と「環境」をなくすというわけではありません。あくまで「教育=アカデミー」「救命=溺水事故防止」そして「スポーツ」にフォーカスを当てるということです。
 
 この20年で、ライフセービングという木の枝や葉はある程度育ちました。ライフセーバーの認知度も格段に上がったと思います。次のステージは、ライフセービングの本質的な部分を強化することだと考えています。つまり、溺水事故防止の強化であり、ライフセーバー人口の拡大であり、競技を通して救助力を高め、さらには人を魅了し、支えたいという人を増やすという活動です。
 これは、ライフセービングという木の根を地中深く下ろす作業と言えるかもしれません。枝葉の成長のように、目に見えるものではないかもしれませんが、きちんと深く根を張ることができれば、幹も太くなります。大きく成長するためには必要不可欠な過程です。
 
 この3本柱を強化するために、EMGという運営マネジメントグループを設置しました。JLAアカデミー本部、溺水事故防止プロジェクト本部、ライフセービングスポーツ推進本部の3本部長に事務局長を加えた意志決定機関です。EMGは週1回ミーティングを行っていますから、さまざまな課題もスピーディーに解決できるようになるはずです。この3本柱を軌道に乗せ、ライフセービング界の強化拡大に道筋をつけることが、短期的なビジョンといえるでしょう。

—— では、中長期的なビジョンは?

 それはもう、ライフセービングがカルチャーとなることです。LSweb
 日本の文化の中にライフセービングを根付かせること、水辺エリアだけでなく、これは私の常套文句ですが“さりげなく”生活の一部にライフセービングがある、という形にしたいですね。
 
 人を助けるというライフセービングの哲学は、ライフセーバーだけでなく、人としてどうあるべきか、というところにも繋がってくると思うのです。さりげなく日常生活でライフセービングスピリットを感じることができる、そんな社会になってほしいと思っています。

—— 個人的な意見で結構ですが、理事長が理想とするライフセーバーとはどんな人物ですか?

 その人を見れば、ライフセービングをやっているに違いないと分かるような人ですね。「私はライフセーバーです」などと言わなくても、醸し出す雰囲気や、身のこなしで、人を思いやる気持ちが感じられる人が理想のライフセーバーではないでしょうか。利他の精神を持つ人ともいえるでしょうね。
 
 少し哲学的な話になりますが、日本は公立の学校で宗教について教えません。しかし、道徳と宗教というのは密接な関係にあるもので、諸外国から見れば、日本は無宗教でどうやって道徳を教えるのだ? となるわけです。新渡戸稲造はその昔、「日本には武士道がある」と答えました。私の場合はそれがライフセービングなのです。ライフセービング活動を通じて、命の尊さを知り、心を育み、人格を磨く。そのためにライフセービングをやっていると言っても過言ではないですね。
 
 さりげなく、自然体で、その人を見ればそのバックグラウンドにライフセービングが見える、感じられる……。私自身、そういう人間になりたいと思っています。

LSweb—— 東日本大震災から1年半が経ちました。

 あの大震災を経て、ライフセーバーの存在と役割は変化したと感じています。国や地方自治体からの期待と言ってもいいかもしれません。その期待に応えるためにも、ライフセーバーが防災・減災教育に主体的に取り組むシステム作りを急がなければいけないでしょう。
 
 震災後、絆という言葉がクローズアップされましたが、震災時の救命現場に立った人間として言えることは、“生き残るための防災・減災教育”を提言することこそが、ライフセービング界の役割ではないかと思っています。3.11以降、社会的にライフセーバーの必要性は高まっていると感じています。だからこそライフセービングの本質を今一度見つめ直し、そこに集中する、そういう体制にしました。

—— 本日はお時間を頂き、ありがとうございました。協会の新たな発展に期待します。
(2012年9月23日、千葉県夷隅郡御宿町・御宿海岸「第27回全日本学生ライフセービング選手権大会」会場にて)



※JLAの平成24〜26年度3カ年活動方針および新組織体制等の詳細は、協会報または
協会HP(http://www.jla.gr.jp/)に掲載されています。






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