常夏の楽園、ハワイ————。
そこで開催される島渡りのパドルボードレースに、2人のライフセーバーがエントリーしている。
湯河原LSCに所属する青木将展さんと西山俊さんだ。
モロカイ島からオアフ島へ向かう32マイル(約52キロ)の挑戦。
出発直前の2人に話しを聞いた。
文・写真=LSweb編集室
波高3m。太平洋の荒波を越えるレース
——なぜ「モロカイ・ツー・オアフ・パドルボード世界選手権大会(The Molokai 2 Oahu Paddleboard World Championships、以下M2O)に出ようと思ったのですか?
西山 俊:今年で21回目となるモロカイレースは、ロングパドルの世界ではとても有名で、いつかは出たいと漠然と思っていました。でもM2Oはある程度の実績があって、大会主催者が許可した選手しか出場できないんです。
僕たちは2年前にメキシコで開催された、ISA(国際サーフィン連盟)主催のパドルボード世界大会でディスタンスレースに出場した経験があったので、その実績が薄れないうちにとエントリーしました。ダメだったらまた来年と思っていたら許可がおりて、嬉しい誤算です。
青木 将展:スタートはハワイ時間7月30日の朝7時30分(日本時間7月31日午前2時30分)。モロカイ島西岸のカウアコイからカイウィ海峡(別名モロカイ海峡)を横断し、オアフ島のマウナルアベイビーチを目指します。直線距離で32マイル(約52キロ)。
僕たちは一つのボードを2人で交代に漕ぎながらゴールを目指す、男子パドルボードのチーム種目に出場します。一応、30分から1時間交代で漕ぐ予定で、完漕目標タイムは5時間半です。
——M2Oはどんなレースになりそうですか?
西山:う〜ん、正直言って52キロ通しで漕いだことがないので……分からないです。あと、伴走艇に乗っている時の船酔いが不安です。
青木:ロングレースはメンタルの比重が大きいと思います。特に今回は島から島へのワンウエイでゴールが見えません。伴走艇はつきますが、カイウィ海峡の真ん中あたりは波高が3mになることもあるらしいので、大海原の中で一人ポツンと漕いでいて、本当にゴールできるのか? そんな怖さとの戦いもあると思います。
西山:ただ2人のペアなので、少し心強いです。
——メキシコ大会の時も2人でしたね。
西山:付き合っているわけじゃないですよ(笑)。
青木:でも彼と一緒だからやってみようか、と言う気持ちになることは事実です。なんというか、彼は今、ライフセーバーとして、またアスリートとしてがんばっています。それを応援したいという気持ちです。
西山:マーボーさんは僕より3つ上で、いつもいろいろなことを教えてもらってばかりです。でも僕が大学生になって湯河原LSCに入った時は、マーボーさんは柏崎在住。当時の印象は「お盆が過ぎると来てガードに入る人、しかも水上バイクばかり乗っていて楽そうだな」というものでした(笑)。
LSを発展させるために、違う世界に出る
——ライフセーバーである2人が、ライフセービングの枠だけにとらわれずに活動するのはなぜですか?
青木:ライフセービングを、もっと一般的な言葉に落とし込みたいと思っているからです。つまり、水辺の安全だとかビーチのルール作りだとか言っても、ライフセーバーが社会で認められていなければ、率先して動くことなどできません。
いくら言葉でライフセービングと言っても、実力がなければ何をいっても薄っぺらいですよね。こうしたレースに出れば、ライフセーバー以外の人とも知り合えます。ライフセーバーしかいないライフセービングの大会だけではなく、ほかのマリンスポーツ界の人にもライフセーバーの力を知ってもらい、認めてもらうことが、ライフセービングの発展に繋がる一つの方法だと思っています。
西山:僕も同じで、できるだけ多くの人にライフセービングやライフセーバーを知ってもらいたいんです。
大きな挑戦をすることで、共感や応援してくれる人が増えると思ってがんばっています。同時に、自分たちの中だけで終わらせるのではなく、きちんと次に繋げていけるようにするつもりです。
青木:僕たちは決してスーパースターではありません。でもだから、僕らの周りで“自分も挑戦してみよう”と思ってくれるライフセーバーが出てきて、活動の幅が広がればいいなと思います。
ライフセービングしかやらないと、いつか行き詰まってしまうかもしれません。就職した途端にぱったり辞めてしまうなんて、もったいないですよね。
西山:僕はようやくマルチな活動を始めたところですが、昨年、ISAパドルボード世界選手権に出場した落合慶二さん、小林海、伊藤真央から「パイオニア」だと言われてちょっと嬉しかったです。
活動の幅を広げることで人間としての技量や考え方が広がり、ライフセーバーとしての価値も高まるのではないかと思っています。もちろん、やっていて楽しいから挑戦するのですが。
——最後に、大会への意気込みを聞かせてください。
西山:競技なので出るからにはカテゴリー優勝を狙います。参加するだけではなく、結果を残したいです。
青木:現実的な数字を言えば、3位に入ることが目標です。潮の流れや風向など不確定要素はありますが、エントリーリストを見る限り3位に入る力はあるし、そこを死守しないとダメだと思っています。
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1990年代に「ニュートリグレインシリーズ」に挑戦した飯沼誠司さんや佐藤文机子さんがレスキューアスリートの先駆けだとするならば、湯河原LSCの2人はさしずめライフセービングスポーツの中興の祖というとことだろうか。
日の丸を背負って大海原に挑む2人にエールを贈りたい。
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The Molokai 2 Oahu Paddleboard World Championship
大会公式HP
レーススタート後は、大会公式HPで5分毎に最新情報が更新される予定。
青木選手と西山選手は、M2Oチャレンジ用に制作したTシャツ販売中だ。2人を応援したい人はぜひFacebookページをチェックしてみよう。
青木 将展Facebookページ
西山 俊Facebookページ
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