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繋がりが紡ぐ笑顔
高校生・中学生・小学生 海プログラム、開催
2016/07/07

2016.6.5 神奈川県・三浦海岸

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梅雨入り前の6月5日。神奈川県三浦市の三浦海岸で、日本ライフセービング協会(JLA)学生室が主催する「高校生・中学生・小学生 海プログラム」が行われた。

毎年、大勢の参加者が集まるこのプログラム。

人気の秘密は、ジュニアやユース世代にとって身近な存在の大学生たちが、ライフセービングの楽しさ、大切さを知ってもらおうと運営していることにある。

10年目を迎えたプログラムの様子を学生室からのレポートと写真で紹介しよう。(LSweb編集室)


文=藤原侑士(JLA学生室広報部 部長)
写真=JLA学生室





年2回、海とプールで開催

 高校生・中学生・小学生 海プログラムは、
「ライフセービングというのはどのようなものなのか知ってもらいたい」
「高校生、中学生、小学生にライフセービングを体験し、身近なものに感じてほしい」という思いや、
「ライフセービングに興味を持ってほしい」
「ライフセービング競技を知ってもらう」といった目的で体験型のプログラムとして、年に2回、海とプールでそれぞれ開催されている。今回は海でのプログラムだ。

 小学生から高校生まで幅広い参加者が集まった。プログラムの内容を紹介しよう。

今より1つ上のステップへ、スキルアップを目指す

LSweb 今年、参加申し込みがあった小中高生は91人。今回は経験者のみを対象とした。この海プログラムは今回で高校生20回目、中学生11回目、小学生4回目となる。

 今年のプログラムの場所が例年と異なり、新しい会場である神奈川県の三浦海岸。

 また、小学生に海でのプログラムを行うという初の試みがあった。今回のプログラムでは、近日に迫った大会、夏の監視活動に対するスキルアップを目的に呼びかけを行った。その結果、高校生69人、中学生8人、小学生14人という100人近い申し込みが集まった(当日の参加は89人)。

 今回、例年と異なり経験者のみを対象にしたこと、新しく小学生を海に入らせることに対しどのような想いがあったのだろうか。

「参加してくれた人がただ楽しかったと思うだけではなく、今後のライフセービング活動に役立てられる知識や技術を提供したいと考えました。例年プログラムが終了した後、参加者からは参加してよかったという声を聞きます。しかし、そこを一歩踏み出し、新しい世代を育てるという視点から、競技を早く経験させてあげ、自分の力となるものを提供していきたいと思いました」LSweb
 と熱い思いを語ってくれたのは、今回のプログラム責任者で教育部部長を務める、東京女子体育3年の中垣結衣だ。

 彼女とタッグを組み動いたのは、教育部副部長を務める、東海大学湘南校舎3年の石塚康敬である。

 彼女らに今回新しいことを取り組むにあたって、意識したこと、不安に思ったことを尋ねてみた。

「1つ目は、安全管理です。海でのプログラムということもあり、プールと比べリスクがかなり大きいと考えました。それに加えて小学生を海に入れるということもあり、大きなプレッシャーがかかりました。

 でも『危険だから行わない』ということは考えたくありませんでした。何が危険で何が安全なのかを分けて理解することで、最大限楽しめると思うのです。その為に、学生室のメンバー間での共通理解、参加者にも同じ考えを持ってもらえるように何度も何度も話し合いを重ねました。徹底的な安全管理を皆で心掛けた甲斐もあり、無事に実現することができました。

 2つ目は企画・運営です。私たちは毎月1回、学生室全員で集まりミーティングを行います。
 3時間から5時間ほどの限られた時間の中でお互いが意見を出し合い、よりよい活動を行えるように話し合いを行っています。参加者が最大限楽しめ、より多くのことを吸収してらえるようにどんなことをすればいいのかを考えました。

LSweb 今回は、より競技技術を高めてもらうコース、大会の競技を知ってもらうコース、小学生コースの3つに分け、内容、リスク管理をコースごとに考えました。それぞれで考えることが異なり、全体への共有が大変でした」と中垣は話す。

 石塚は6月開催にした意味について話してくれた。

「教育部の方針としてはより内容の濃いものを作り上げたい、ということがありました。そう考えると5月開催では準備や話し合いの期間が短くなってしまい、いいプログラムにならないのではと考え6月開催にしました。

 参加を楽しみにしてくれた人たちには例年より遅い時期の開催となってしまい、ご迷惑をおかけしてしまい申し訳なかったと反省しています。その分プログラムを思いっきり楽しんでほしいです」と石塚は語ってくれた。

 教育部の2人を中心に、今回のプログラムで参加者をサポートしたスタッフは、大学生ライフセーバー60人。JLA学生室に属している学生である。

 学生室は、九州から東京までの大学クラブの大学2~4年生の総勢82人によって構成されている。

「学生選手権(インカレ)」や今回の「小中高生プログラム」、大学クラブのリーダーたちが集い、交流を深める「学生リーダーズキャンプ」など、年に5つほどの事業を企画・運営している。
 それらの事業を成功に導くため、毎月行われている定例会では、運営の役割ごとに各課に分かれ、白熱した話し合いが行われている。

笑顔が絶えないプログラムにするためには

 今回のプログラムでは、参加者を小学生のみのグループ1つと、中高生のグループ2つに分け、計3つのグループでプログラムを行った。

LSweb 経験者を対象にしたことで、プログラムの内容がより濃いものになったのではないか。また、どのように取り組んだのだろうか。

 スイムのメニューを考えたスイム課。全体の安全管理を行った安全課。初の参加者が海に入水するプログラムを組んだ小学生課。それぞれの課長に海プログラムの内容を聞いた。

「スキルアップということが大前提なので、基礎知識ではなく、普段では頭から抜け落ちてしまっているような知識、技術を提供していきたいと思いメニューを考えました。三浦海岸は満潮と干潮で地形が大きく変わると聞いていたので、一日の中で海の変化という点を中心に伝えることができたと思います。
 中高生でも技術に差があり、事前に把握しておけばよりよいプログラムになったのではないかと思います」そう話してくれたのは、スイム課課長を務めた、筑波大学3年の姫野 航だ。

 大きな問題もなくプログラムは進行していたように見られたが、今あるもので満足せず常に上を目指している。そのような姿をみた参加者は応えるように真剣に取り組んでいた。言葉でなく、まさに背中で語る。というものだろう。
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「このプログラムを無事故でやりきる。だからといって、余計な制限はかけたありませんでした」そう話してくれたのは、安全課課長を務めた流通経済大学3年の今井夏希だ。

 安全課の方は一日中海に入り、事故がないか常に監視をして、参加者が危険な思いをせず笑顔でいられるように考え、行動をしていた。雨が降り、水温も冷たかったので体調を崩してしまう参加者もいたが、いち早く異変に気付いて事故を未然に防いでいた。
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「小学生は初めて海に入るプログラムなので最新の注意と、体調管理を目標にしました。また楽しいことを伝えるのは当然として、危険なこと、大変なことなど真剣に取り組むことによって得られる達成感が伝えられえるように内容を組みました」と話したのは、小学生課の課長を務めた日本女子体育大学3年の伊藤留奈だ。

 小学生1人につき学生室のメンバーが1人バディを組み、一緒にプログラムをしていた。
 
 午後には天気も回復し、浜辺で鬼ごっことクラゲにさされたときの対処法を合わせたルールのクラゲタッチを行った。元気いっぱいに走る小学生の顔は、見ての通りキラキラと輝いていた。
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1(学生室)+1(参加者)+1(協力者)が作り上げること

 教育部部長の中垣が、参加者そして協力を仰いだ三浦海岸LSCの方々に挨拶と感謝を述べ、これからの想いを話してくれた。

「参加者の方々、今回の海プログラムへのご参加、誠にありがとうございます。
日頃から学生室の活動を応援してくださる方々、そして本日三浦海岸という場所を提供してくださり数々の手助けをしてくださりました三浦海岸LSCの方々、このように私たちの活動を支えてくださる方がいるからこそ、今回の海プログラムを無事実現し、やりきることが出来たと思います。本当にありがとうございました。

LSweb プログラムを通じ、人と人との繋がり、出会いは大きな力になるということを学びました。1人では達成できない目標も、同じ想いを持った仲間が集まれば必ず成し遂げることができます。

 プログラムを企画・運営・指導する立場である我々学生室のメンバーはもちろんのこと、参加者の方々からのアイディア、提案など今まで気づくことが出来なかったことを、私たちも逆に学ばせていただきました。

 色々な人と関わり、いろいろな知識を集めてどんどん成長してください。今日集まったみんなはもう仲間です。この絆を大切にしましょう。

 今後もより良いライフセービング環境を整えていけるよう、この環境を活かして学生室一同頑張っていきますので、また学生室主催のプログラムにご参加いただけることを心よりお待ちしております。これからも学生室をよろしくお願いいたします」

11 閉会式にて、学生室の代表を務める国際武道大学3年の榎本宏樹が挨拶した。

「皆さんの笑顔を見ることができ、このプログラムを開催して本当に良かったと思います。レースは楽しかったでしょうか?
今日ここに来てくれたみんな、全国のライフセービング活動をしているみんな、ライフセービング活動をしている人はみんな同じ志を持った仲間です。こんなに多くの仲間がいるということは大変幸せなことだと思います。ぜひ仲間を大切にしてください。
それと、器材も自分たちのライフセービング活動を支えてくれる大切な仲間です。同じように大切にしてください」

 「はい!」という気持ちの良い返事が雨上がりの晴天に響き渡たり、無事プログラムが終了した。

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