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8月も終盤。
日に日に夕暮れが早くなり、海水浴場を訪れる人も徐々に少なくなってきた。
今年の夏もあと少し……と名残惜しい気分になる今日この頃だが、パトロール中のライフセーバーたちにとっては感傷にふける暇は、まだない。
集中力を切らさずガードする、現場の様子をお伝えしよう。
文・写真=LSweb編集室
special thanks to Yu Matsunaga
外房から内房までパトロールする99LSC
雄大な太平洋に面して、全長約66kmの砂浜が続く千葉県の九十九里浜。外房の代名詞とも言える九十九里浜では、夏になると沿岸の10市町が大小合わせて30カ所近い海水浴場がオープンする。
そのうち山武市、九十九里町、横芝光町などが開設する海水浴場をパトロールしているのが「九十九里ライフセービングクラブ」だ。
1994年設立の九十九里LSCは、日大、専修、明治、千葉大といった学生ライフセーバーと、頼りがいのある個性豊かな社会人ライフセーバーが集う、メンバー数300人以上を数える国内有数の大規模クラブ。
活動エリアも九十九里浜だけでなく鴨川市や富津市など、外房から内房まで千葉県内を幅広くカバーしている。
同クラブがパトロールする数ある浜の中でも特に規模が大きいのが、九十九里浜のほぼ中央に位置し、ビーチエリアは長さ2km以上という片貝海水浴場だ。
8月上旬、サーフスポットとしても人気の高い片貝海岸に、朝一番におじゃました。
九十九里ならではのレスキュー方法
今夏、片貝海水浴場の監視長を務めるのは日本大学3年の大野祥吾さん。
人出が予想される晴天の日曜日、朝礼が終わったばかりの大野監視長にパトロール浜の特徴を聞いた。
「南北に浜が長い片貝では、今期は通常18人にガードをしています。週末はボランティアで入ってくれる社会人の先輩たちがいるので、もう少し多い人数となります。ちなみに、今日(8月7日)は33人体制です。
本部となる詰め所のほかに、5つのタワーでエリアを監視しています。最も南のタワーを1番、最も北が7番です。あっ、2番と6番は欠番です。以前はタワーが7つあったのですが、海水浴客が減少したこともあり削減したと聞いています。7番のさらに北に防波堤があります。周辺は遊泳区域外ですが、波が高いときなどには、8番と称して堤防の先端にも人を配しています」
片貝海岸の北端に位置する沖に長く伸びた防波堤(通称:新堤)は、海釣りのポイントでもあり、またブレイクポイントへの近道としてサーファーがダイブする場所でもある。
海が静かな時は7番タワーがカバーしている場所だそうだが、波が上がってきたり、ガスって視界が悪くなってくると8番の出番となる。
「今朝も、リーシュが切れてボードを流してしまったサーファーを、水上バイクと連携してレスキューしました。新堤では切り傷などのケガもあるので、FAセットの出番も多いですね。
もうひとつ特徴的なのが、沖に2カ所、消波ブロックがあることです。周辺でのレスキューにはコツがいるので、トレーニングは欠かさないようにしています」
消波ブロック周りでレスキュー案件が発生した場合は、フィンを装着したライフセーバーが要救助者へと近づき、まずはレスキューチューブを使って消波ブロックから引き離なす。そして、波の影響を受けない沖まで出てから、ボードや水上バイクと合流するのだという。
十分な泳力はもちろん、ボードや水上バイクとの連携も必要な難しいレスキューだ。
ところで、九十九里LSCの有名な(!?)練習メニューの一つに「デルコン」というのがあるのをご存じだろうか。波が高い時にインの練習をし、誰が一番早くブレイクの沖側に出られるかを競う、ハードかつやり甲斐のあるトレーニングのことだ(正式名称は「早く出るコンテスト」とか)。
広大な太平洋を経て、九十九里に打ち寄せる波のパワーはとても強い。いざという時のために、真剣かつチャレンジ精神旺盛に太平洋の荒波で練習する九十九里LSCのライフセーバーたちなのである。もっとも、下級生時代はボードを流して真っ青になることもあるそうだが……。
「九十九里に来るお客さんは、朝が早い人が多いと思います。通常は6時20分に合宿所を出発しますが、週末はオープン時間が1時間早まるので、それに合わせて支度をします。浜に着いたら、すぐにその日のコンディションをチェックします。波打ち際と沖で潮の流れが真逆ということもあり、気が抜けません。浜が広いので、場合によってはトランシーバーの中継が必要な時もあります。
実は、就職活動期間の変更などもあって、昨年から大学3年生が監視長を任されることになりました。緊張することも多いですが、4年生や社会人の先輩がタワーに入ってくれると安心します。今日も1日、片貝に来てくれた人が海を楽しんでくれるようにガードしていきたいです」
ライフセーバーがスタンバイした片貝海水浴場では、東京足立区から来たという家族連れが「雄大な海で子どもを遊ばせたかった」と笑顔で海へと駆けだしていった。
☆★片貝海水浴場★☆
開設期間:7月1日〜8月31日
遊泳時間:9時〜16時(平日)
:8時〜16時(土日祝)
※台風9号の影響で九十九里浜一帯には大きな被害が出ており、海水浴場がクローズになっている場所があるようです。最新の情報は九十九里町の公式HPなどを確認してください。