2016年のお盆シーズンに突入した。
ライフセーバーにとって1年で最も忙しく、最も気の抜けない1週間だ。
照りつける太陽、吹き抜ける熱風、遠くの雷鳴、南の海上で発生する台風……。
各地でガードに勤しむライフセーバーたちの様子をお届けしよう。
文・写真=LSweb編集室
special thanks to Yu Matsunaga
日体大LSCが管轄する6浜の一つ
東京湾と太平洋に面した千葉県は、全国有数の海水浴場開設県だ。千葉県が発表した昨年度の資料を見ると、県内の19市町村に計68カ所の海水浴場があることがわかる。
そのうちの一つが、県南東部の南房総市・和田浦地区にある和田浦海水浴場。環境省が選定した「快水浴場百選」にも選ばれている。
この浜をガードするのが、日本体育大学ライフセービング部員と、そのOB、OGが中心となって活動する「和田浦ライフセービングクラブ」だ。
同クラブの監視体制は、大学4年生がパトロールキャプテンを務め、社会人が学生をバックアップするディレクター職に付くというスタイル。
今夏のパトロールキャプテンは藤井尊史さん、取材時は今年3月に卒業した山口祐太さんがディレクターとして全体を統括していた。
彼らの下、前線でパトロールに当たるのが下級生から上級生まで5人の学生ライフセーバーたちだ。
多彩な海遊びができる浜
では、和田浦の特徴を藤井キャプテンに教えてもらおう。
「和田浦海水浴場の特徴は磯や岩場があることです。岩の周りは流れがありますが、その内側は通常、波が穏やかで子どもにも遊びやすい場所になります。
またビーチの南側には磯があって、そこは生き物がたくさんいます。いろいろな楽しみ方ができるのが和田浦の海ですね」
海水浴客の多くがファミリー層で、リピーター率も高いことから、お客さんとライフセーバーの距離が近いのも特徴の一つだろう。
「事故が起きないようにというのが大前提ですが、海の楽しさが伝えられるように一人一人に声をかけるようにしています。例えば、磯にいる生き物を教えてあげて、磯に行く時には足を切ると危ないから必ずサンダルを履いてね、と伝えたり。
僕たちは水流チェックと呼んでいますが、水質やカレントの状況を確認するだけでなく、どこにどんな生物がいるかもチェックしているんですよ」
丁寧な声賭けが功を制し、切り傷など、ファーストエイド(FA)の受傷者は年々減っているそうだ。
「今日は台風5号の影響で波が高く、午後1時半に遊泳禁止にしましたが、穏やかであれば海の透明度は本当に高く、小魚もたくさんいます。割り箸とたこ糸を使ってハゼ釣りをするのも楽しいですよ!
遊泳区域外は良い波が立つエリアなので、朝々練では波乗りを楽しむことあります。正規の朝練は6時から。夕練は終礼後、17時ごろから行っています」
遊泳エリア外はパトロール区域ではないが、気になることがあれば自転車を飛ばしてチェックしに行くのだとか。
また、3年前からは地元の市立和田小学校で夏休み期間中に「水辺の安全教室」を行うなど、活動の幅を広げている。
「それが縁で、学校のプールを使用したトレーニングをさせてもらえるようにもなりました。毎日、浜に遊びに来てくれる小学生もいて、すっかり仲良くなりましたよ」と話すのは、藤井キャプテンをサポートする同期の長野文音さんだ。
漁業と花作りが盛んな和田浦は、全国でも4カ所しかない捕鯨基地の一つという顔を持っている。
漁期はライフセーバーが活動するのと同じ夏で、小型のツチクジラを捕獲する沿岸捕鯨漁が行われている。パトロール期間中にクジラがあがると、新入生を中心に見学に行くのも恒例行事だそうだ。
「今日(8月7日)はOB、OGの方を囲んでの食事会が予定されています。卒業しても先輩たちに顔を出してもらいたいので、お会いできるのが楽しみです。そしていつでも気軽に立ち寄ってください」と声を揃えた学生ライフセーバーたち。
パトロールに、トレーニングに、伝統校らしく随所に“日体大スピリット”が受け継がれている和田浦LSCだった。
★☆和田浦海水浴場☆★
開設期間:7月22日〜8月21日
遊泳時間:9時〜16時30分