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2013夏 パトロール浜訪問
西伊豆ライフセービングクラブ
2013/08/26

夕陽の美しい景勝地で
6浜をパトロール中!

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入り組んだリアス式海岸線が続く、風光明媚な伊豆半島西岸。

そのほぼ中央に位置する西伊豆町で、夏季の海水浴場をパトロールするのが「西伊豆ライフセービングクラブ」だ。

“夕陽百選”にも認定された美しい海辺に、ライフセーバーたちを訪ねた。


2013.8 静岡県・賀茂郡西伊豆町


文・写真=LSweb編集室





合宿所は廃校となった中学校


LSweb 西伊豆LSCの設立は2001年。昨年までは西伊豆町内の大浜海水浴場、乗浜海水浴場、黄金崎クリスタルパーク、深田海水浴場(宇久須クリスタルビーチ)の4浜で監視業務を行っていたが、今年から浮島海水浴場と田子瀬浜海水浴場の2浜が増え、全部で6浜の監視をすることになった。

 西伊豆の海岸線は変化に富んでいる。それを象徴するかのように、監視する6浜のうち3浜は砂のビーチ、残り3浜は岩場やゴロタ石の浜といった具合だ。水深も急に深くなる場所が多い。しかし、水の透明度は関東近郊の海水浴場ではピカイチで、スノーケリングや磯遊びを目当てに訪れる人も大勢いる。

 浜ごとに地形や環境、客層が違う難しいコンディションで、夏季パトロールの中心となっているのが国士舘、順天堂、帝京、成蹊、成城、杏林、実践女子、東女体、日女体などに通う34人の学生ライフセーバーたち。
 そこに社会人ライフセーバーが合流し、メンバー一丸となって活動している。

 東京近郊をベースにするライフセーバーたちが一夏を過ごすのが、宿舎として提供されている田子地区の旧田子中学校だ。統合により廃校となった校舎の一部を借り受けているため、スペースには余裕がある。女子部屋と男子部屋はもちろん別々。畳をひいた教室には冷房も完備されている。男子部屋は元音楽室ということでオルガンまであった。台所兼食堂は元家庭科室、元理科室はトランシーバーなどの機材を手入れしたり、FAキットの準備をする作業場として利用。
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 さらに、今年はメンバーの一人が自宅からトレーニングマシーンを持ち込み(宅配便の費用は男子部員の割り勘)、トレーニングルームも作ったそうだ。夜中にトイレへ行くのはちょっと怖そうだが、廊下を走っても注意されないし、体育館で球技大会もできるというから、きっと楽しい合宿生活をおくっているのだろう。
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 ところで、今年は全国各地で豪雨による災害が発生しているが、ここ西伊豆町でも夏休み直前の7月18日に豪雨による土砂崩れが発生。人的被害はなかったものの、200戸近い家屋が床上・床下浸水に見舞われ、また大量の土砂が町内を流れる川を経由して海へと流れ出した。そのため夏休み前半は多くの海水浴場で水が濁り、海水浴客の人数も例年より少なめだった。

 ちなみに、宿舎である旧田子中学校の校庭が土砂の一時置き場となったため、クラブメンバーも交代制で毎朝、パトロールに行く前に土砂の片付けをおこなった。


黄金崎クリスタルパーク海水浴場

 西伊豆LSCがパトロールする浜の一つ、黄金崎クリスタルパーク海水浴場は、西伊豆町宇久須地区にある海浜公園内にある海水浴場。公園内にはガラスミュージアムやキャンプ場もあり、夕日スポットとしても知られる場所だ。
 
 駐車場から斜面を下りたところに、岩場に囲まれた入り江がある。その中央付近が海水浴場で全長は約100m。波は穏やかだがゴロタ石の浜なので、浜辺を歩いて監視するビーチパトロールではなく、レスキューチューブを持って水の中で監視するチューブパトロールや、ボードで沖から監視するボードパトロール中心のガードをおこなっている。

LSweb 入り江へのアクセスは一カ所しかないため、そこに監視タワーを設置すれば人の出入りがしっかり把握できる。そのタワーに陣取るのが、今年、黄金崎のキャプテンを務める国士舘大学3年の小西川真凜さんだ

「浜を訪れたすべての人に声をかけられるのが、ここの特徴です。こんにちは! という挨拶と同時に、“今日は潮がこう流れています” “磯場の向こう側は死角になるので注意してください” などと伝えることができますよね。ライフセーバーがいると知っていてくれれば、何かあった時の対応が違います。“今日はどこで魚が見えますか?” など、お客さんのほうから声をかけられることも多いのですよ」

 遊泳エリアの外側には、スノーケルにぴったりの場所も点在する。

「私だって、魚がいれば見たいと思いますし、磯遊びの楽しさも知っています。だから海が荒れて本当に危ない状況でなければ、ダメとはいいたくないのです。だからこそ、声かけは大事だと思っています。これは今年から私が始めたことなのですが、ディズニーランド方式で、お客さんはゲスト、声かけはトークと言うようにしています。右手の岩はビックサンダーマウンテン、その手前の岩は富士山と呼んでいます。形が似ているでしょう? 楽しく、安全に! をモットーに活動しています」

 波打ち際から近い場所で魚を見ることができれば、それ以上沖には行かないという考えから、魚の餌付けもしているそうだ。これも、楽しく安全に遊んでもらうための工夫だろう。またゴロタ石の浜という特徴を活かし、石を持って海底を歩くロックトレーニングも行っているとか。海底の地形や生き物の動向も分かり、まさに一石二鳥というわけだ。
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乗浜海水浴場

LSweb 西伊豆LSCでは、3年生がキャプテンとして一つの浜に固定で入り、2年生は補佐役としていくつかの浜を担当、1年生はすべての浜を回っていろいろなパトロール方法を学ぶ方式を採用している。

 遊覧船ツアーが人気の堂ヶ島公園の南側に位置する乗浜海水浴場は、点在する小島の内側に広がる波静かな砂浜の海水浴場だ。西伊豆LSCが監視する海水浴場の中では、大浜海水浴場と並び最も海水浴客の多い浜でもある。今年、この浜のキャプテンを務めているのが日本女子体育大学3年の菱沼亜彩さんだ。

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「乗浜は台風の時でも波高がヒザからモモぐらいにしかならない、本当に穏やかな浜です。西伊豆の中では数少ない砂浜ということもあり、また回りに民宿や旅館が多いこともあって家族連れが多いビーチですね。ただ、海が穏やかだからか、一人の保護者が複数の子どもを見ていることが多い浜なのです。でも急に深くなる地形なので、はやり注意は必要。声かけもしつつ、注意しすぎるのではなく見守るような監視を心がけています」

 浜の西側には磯場もある。また海岸線を巡るシーカヤックなどが遊泳エリア近くまで接近することもあるそうだ。

「磯場には死角があるので気をつかいます。でもビーチから死角になっているところのほうが水がきれいで、魚などもたくさんいるので、誰だってそちらへ行きたくなりますよね。その磯場側からシーカヤックなどが湾内に入ってくることが多いので、レスキューボードで巡回しながら磯遊びのお客さんと、マリンスポーツを楽しむ人の両方に声かけをしています。
 それから、西伊豆は役場の人がとても協力的で、例えばエリア内での火気使用は禁止ですが、守ってくれないお客さんがいるとしますね。そういう時には役場の人が日に何度も足を運んで対応してくれます」
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 堂ヶ島といえば、西伊豆屈指の夕日スポット。1日の監視が終わり、小島が赤く染まって、やがてシルエットになる時間はライフセーバーたちにとっても心休まる瞬間だろう。ところが、その前には気の抜けない時間帯がある。

「午後になって日が傾いてくると、逆光がすごくて大変。本当に見えないのです。だから午後になると、必ず一人はレスキューボードで沖からパトロールするようにしています。沖からなら順光ですからね。お盆の時など遊泳客が多い時は、ずっとボードで出っぱなしになり、体力的には厳しいと思いますが、私はクラブの浜の中ではノリ(乗浜)が一番好きですね」

 というキャプテンの横で「僕は浮島が一番好き」と言い、キャプテンにちょっと睨まれてしまったのが、杏林大学2年生の毛利圭汰さんだ。
 
 LSweb浮島海水浴場と、田子瀬浜海水浴場は今年から新たに監視することになった浜。最初は“お手並み拝見”という感じだった地元の人も、“ライフセーバーは注意するからうるさいな”と思っていた海水浴客も、今では彼らの活動を認めてくれ親しく接してくれるそうだ。

 この2つの浜は宿舎からも近い。廃校となった中学校から、自転車を漕いで毎朝やってくる、元気で礼儀正しいライフセーバーたちは、若者が少なくなった町に活気も運んでいる。地元の人が好意を持つのは、ある意味当然のことだろう。

西伊豆で夏を過ごしたライフセーバーの皆さん、西伊豆は決して交通の便が良い場所とは言えないけれど、夏が終わっても、大学を卒業しても、美しい夕日と地元の人に会いに西伊豆へ足を運んでほしい。








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