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第39回 全日本ライフセービング選手権大会
西浜SLSCが二連覇達成!
2013/10/15

The 39th Japan National Lifesaving Championships DAY2

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すがすがしい秋晴れに恵まれた10月13日、神奈川県藤沢市の片瀬西浜海岸にて、第39回全日本ライフセービング選手権大会の決勝レースが行われた。

今年の全日本は、台風で東日本予選が行われなかった影響から、個人種目男女合わせて11種目、団体種目5種目の計16種目、さらにCPRアセスメントの評価で総合成績が決まることになった。


文・写真=LSweb編集室




全日本はライフセーバーたちの社交場!?

LSweb 夏のパトロール活動終了から約2カ月半。この日を目標に追い込みをかけてきたライフセーバーたちが、それぞれの思いを胸に片瀬西浜に集結した。

「今年はここ何年かの中でかなり調子がいいです。見ていてください」
 と笑顔を見せる中堅がいるかと思えば、
「言い訳ですけれど、環境が変わって練習が思うようにできないということもあり、とても不安です。非常に焦っています」
 と言う社会人1年目のライフセーバーもいる。

 「全日本は強い選手がたくさんいるので、どこまでできるか力試しです」
 と頬を上気させる若手の横では、
「まぁなんとか続けています。好きだし、この大会にくるとがんばっている仲間にも会えます。それだけで、なんだか楽しいですよね」
 と話すベテランがいる。

 会場のそこかしこで、「久しぶり」「元気か?」と再会を喜ぶ声が聞こえ、「仕事はどお?」「結婚したよ」「子どもが生まれた」といった近況報告や、「まだやっているの、すごいね」「また戻ってこいよ、キツイけど楽しいぜ」といった会話が交わされていた。LSweb
 全国のライフセーバーが集う全日本会場はさながら、ライフセーバーたちの社交場だ。

 ちなみに、今大会に選手として出場した最年長は逗子SLSCの刈屋 剛選手、53歳。最年少は高校1年生、盛岡LSCの三浦千穂選手、16歳だ。

「自分の子どもより若い子と真剣勝負できるスポーツなんて、そうないでしょう。だからライフセービングは面白い!」
 と、サーフスキーレースに出場した刈屋。

IMG_0161 三浦は東日本大震災で自宅が被災し、現在も仮設住宅で暮らしている。
 ライフセービングを始めたのは、震災で小学生時代の水泳コーチが亡くなったと知ったから。コーチから教わった水泳が、少しでも役に立てばと思ったのだそうだ。
 現在は高校の陸上部に所属。平日は学校の部活動、日曜日にライフセービング、そして将来は演奏家になりたいと思うほど、ピアノの練習にも力を入れている、元気いっぱいの女子高生だ。今大会は、ビーチスプリントで予選を突破。本戦の1回戦で敗退したが、大舞台の雰囲気を大いに味わったに違いない。


SR、OWRで三井結里花、二冠達成

LSweb 2日目、朝イチからの本戦予選を突破し、サーフレースの決勝に進んだのは男女各30人の精鋭たち。
 オフショアでフラットという、泳力そのものが問われるコンディションの中、女子は三井結里花(九十九里LSC)が日本代表の実力を発揮し、スタート直後からゴールまで後続を寄せ付けない完璧なレースを展開した。

 一人旅の三井とは裏腹に、第二集団は大混戦。特にブイ回りでは、身体的接触も数多く発生する激しいバトルが繰り広げられたようで、入賞メンバーは誰もが「ガリッ、バキッ、バコッ……と、もうすごいことになっていました(笑)」と口を揃えた。

 そんな“女の戦い”を制し、自己最高位の2位となったのが、栗真千里(銚子LSC)だ。3位の山口夏未(日本体育大学LSC)、4位の堤 茅咲(銚子LSC)、5位の越中万智(九十九里LSC)、6位の竹内芽衣(波崎SLSC)は大学生ライフセーバー。7位には高校生の上野真凜(西浜SLSC)が入った。
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 男子の1位は平井康翔(湯河原LSC)。オープンウォーター競技でロンドン五輪に出場した実力を遺憾なく発揮し、独泳状態でゴールした。
「平井くんが追い上げてくるのは分かっていましたから、スタートから飛ばしました。インは1、2番で行けたと思いますが、ブイに到達する前に外側から抜かれて、まるでついて行くことができませんでした」
 と話すのは、2位となった社会人3年目の益子進一(九十九里LSC)。
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 3位は学生最後のオーシャン競技出場となる中本直也(拓殖大学LSC)。4位の平田栄史(館山SLSC)は、近代五種の元日本代表という“水陸両用”アスリートだった。

 昼過ぎからオンショアの風になったサーフエリアでは、続いてオーシャンマン/オーシャンウーマンの決勝が行われた。
 オールラウンドの実力が求められるこの種目だが、競技順が勝敗を左右することもある。今大会は、ホード→スキー→スイムという順番で行われ、女子は三井、男子は長竹康介(西浜SLSC)が連覇を達成した。
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 名須川紗綾(茅ヶ崎SLSC)と西山 俊(湯河原LSC)は、昨年に続き2位。三井と長竹というなかなか抜けない背中に、次こそはとリベンジを誓った。

 3位には男女ともに大学生が入る健闘を見せた。女子の大山玲奈(波崎SLSC)は、先月のインカレで早稲田大学女子総合優勝に貢献したメンバーの一人。国際大会も経験し、クラフト技術も一気に上達した。一方、男子の園田 俊(新島LSC)も、インカレでの同種目優勝で大きな自信をつけたようだ。
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「クラフトではなかなか前にグループに追いつけませんでしたが、最後のスイムで落合さんにだんだん近づいているのが分かったのです。憧れの先輩を抜けるかも!? とがんばりました」
 と園田。秋になっても日焼けしたままの真っ黒な顔をほころばせた。

 オーシャンウーマンでひときわ目を引いたのが、白地に赤い星マークのコンペキャップをかぶった山本裕紀子(若狭和田LSC)だ。クラフトでは出遅れたが、スイムで猛烈な追い上げを見せ4位に。日本海をベースに活動するライフセービングクラブとしては、新潟県の柏崎LSCに続き全日本入賞を果たした。

LSweb 「競泳選手として10年やってきました。ライフセービングに出会ったのは、海で事故を目撃したからです。救助技術も知っておきたいと活動に参加し、監視だけでなく競技もあると知りました。やるならそちらも目指したい、どうせなら格好いいオーシャンウーマンがやりたいと思ったのです」
 と山本。サーフスキーに乗り始めたのはなんと今年の6月からで、まったく乗れない状態から練習を重ね、全日本への出場を果たした。
「スキーはともかく、ボードで大失敗をして出遅れました」
 と話す山本は、表彰台を逃して悔しがり、日本代表を目指すとキッパリ。星のマークのキャップをかぶった、頼もしい新星の登場だ。

内田直人、8年ぶりにサーフスキーを制す

LSweb ベテラン勢が積み重ねてきた経験と熱い思いをぶつけ、渾身の戦いを繰り広げるサーフスキーレース。今年も期待に違わない一戦が見られた。

 スタートから激しいパドリング合戦となった男子は、昨年のチャンピオン、松沢 斉(下田LSC)が先頭で最初のブイを回り、落合慶二(東京消防庁LSC)、出木谷啓太(九十九里LSC)、篠田智哉(勝浦LSC)、内田直人(勝浦LSC)らが追いかける展開となった。

 接近戦のままブイを回り切り、先頭集団はほぼ横一列に。内側に松沢、一番外に内田。逆光の中、シルエットとなった船団が迫ってくる。ゴールライン上でガッツポーズを決めたのは外側のスキー。内側のスキーにはガックリと肩を落とす松沢の姿があった。

LSweb 「西浜は社会人仲間と練習しているホームゲレンデです。朝5時半から約1時間半、時間の合うメンバーが出勤前に集まり、メニューを決めてひたすら漕ぐのです。いつも漕いでいる海なので、今日のようなコンディションでは大抵、西側から波が入ってくると分かっていました。だからブイを回ってからは左に出て、小さなうねりを乗り継いで逆転できたのです。練習メンバーの顔があちこちにあって、練習と同じような気持ちで、冷静にレース運びができたのが良かったのでしょうね」
 と内田。38歳、8年ぶりに全日本チャンピオンに返り咲いた。

 海なし県の長野に住む松沢は、普段は湖で一人、黙々と練習を重ねている。仲間と練習できるのは、夏季休暇などを利用して下田に出かける時だけだ。

LSweb 「正直、ブイを回ってからの内田さんの動きは見えていませんでした。落合くんや出木谷くんたちが近くにいたので。皆で集まり練習していると聞くと、ハッキリ言って羨ましいですね。でもそれは分かっていること。僕は自分のできることを、やるしかないのです」
 と松沢。穏やかな表情の下には、きっと熱い闘志が秘められているのだろう。

 とびきりの笑顔でレースを終えたのは、6位の大西 明(逗子SLSC)、45歳。ベテラン健在である。

 女子のワン、ツー、スリーは日本体育大学のOGが独占した。1位は19期の篠 郁蘭(西浜SLSC)、2位は24期の久保美沙代(和田浦LSC)、3位は22期の河崎尚子(銚子LSC)。表彰台に呼ばれるまでの間、3人で楽しそうに談笑している姿が印象的だった。
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池谷雅美、前人未踏の大記録20勝達成!

 LSwebベテラン勢の活躍はビーチ競技でも見られた。

 女子のみ行われたビーチスプリントでは、ケガから復活した藤原 梢(館山SLSC)が、学生パワーを退け見事に優勝。
「スプリントはなんとかいけました。ビーチフラッグスのほうは、やっぱり(手術した)ヒザに不安があって、思い切りが足りなかったかもしれませんね」
 と言う藤原。ビーチフラッグスは惜しくも3位だったが、彼女の復活を一番喜んだのは、歩くこともままならなかった手術前の姿を知る、館山SLSCの仲間たちかもしれない。

 女子ビーチフラッグスで、全日本20勝目を上げたのが池谷雅美だ。瞬発力と持久力、集中力と判断力が問われるこの競技で、次々と現れる若手を退けて勝ち続けるその精神力には、本当に脱帽する。
 女性にはあまり使われることのない表現かもしれないが、彼女こそまさに“鉄人”と呼ぶにふさわしいスーパーヒロインだ。
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 男子ビーチフラッグスも見応えのあるレースが展開された。ディフェンディングチャンピオンの竹澤康輝(勝浦LSC)、昨年2位の佐々木啓允(相良LSC)はもちろん、本多辰也(東京消防庁LSC)、和田賢一(式根島LSC)、小田切伸矢(西浜SLSC)といった実力者から、血気盛んな大学生まで勢揃いしたレースを勝ち抜いたのが、植木将人(西浜SLSC)だ。
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 鋼のような肉体と、回転の速いスタートダッシュは健在。和田との最終戦を制し、7回目の優勝を決めた。「完敗です」と潔く負けを認めた和田は、11月からオーストラリアへ武者修行に出かける。ビーチフラッグス男子の戦国時代は、新たな局面を迎えそうだ。

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 ベテラン勢の強さが目立ったビーチ種目の中で、唯一、若手が活躍したのが2kmビーチランだ。

 男子は高校3年生の河上尚輝(昭和第一学園LSC)が昨年から順位を一つあげ、見事に優勝。女子は渡邉来美(日本体育大学LSC)が笑顔で1位となった。


白熱の団体種目、そして総合成績は?

LSweb 各クラブの先鋭が集まった団体種目は、手に汗握る接戦が繰り広げられた。オーシャンマンリレーを制したのは、青木将展、西山 俊、平井康翔、そして46歳の比留間 悟が力を合わせた湯河原LSC。オーシャンウーマンリレーは、九十九里LSCとの接戦の末、荒井 閑、篠 郁蘭、上野真凜、神戸友美の西浜SLSCが勝利した。

LSweb 湯河原LSCはレスキューチューブレスキューも優勝し、団体種目二冠を達成したが、ボードレスキューで痛恨の失格。同種目では西浜SLSCも失格となり、僅差の東京消防庁LSCが優勝を手にした。

 東京消防庁LSCの小出大祐と忠 潤基は、今年、消防の全国大会でもチームを組んだ間柄。その時は悔しい思いをしたそうで、レース前「あの時のリベンジをしようぜ」と声を掛け合ったという。「少しラッキーなところもありましたが、優勝できて嬉しい」と同い年の2人はニッコり笑い、お互いの顔を見合わせた。

 ビーチリレーで速さを見せつけたのが日本体育大学LSCだ。石井雄大、森 新太郎、川崎泰弘、岩井寛文というインカレ優勝メンバーで挑み、全日本でも勝利した。日体大は今年から再び大学チームで全日本に参加することになった。近年は所属する地域クラブごとに参加していたが、学校側の意向もあり一丸となって戦うことを選択。過去に何度も総合優勝した強豪チームの復活は、総合成績にも影響を与えることになりそうだ。

 その注目の総合成績は、日がすっかり沈んだ後に発表された。総合優勝は76ポイントで西浜SLSC。69ポイントを獲得した九十九里LSCは過去最高に並ぶ2位、3位は52ポイントで日本体育大学LSCとなった。

「ビーチ種目での活躍が3位入賞の原動力だと思います」
 と日本体育大学LSCメンバー。
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 一方、2位の九十九里LSCは、
「男子のビーチスプリントとボードレースがなくなったことで、リレーなどのメンバーが上手く組め、確実に点が取れたことが成績に繋がったと思います」
 と話す。

 3位の日体大LSCと4位の勝浦LSC、5位の湯河原LSCはそれぞれ1点差。1種目でも順位が違えば、総合順位が入れ替わる僅差の勝負だった。

 大会後 “全日本チャンピオン”というロゴの入った、揃いの真っ赤なTシャツに身を包んだ西浜SLSCメンバーは、主要メンバーの胴上げを繰り返し、優勝の余韻に浸っていた。前身時代も含めると、今回で10回目の優勝となる西浜SLSC。土志田 仁 理事長は胴上げで上気した顔をほころばせながら、こう話してくれた。

  「ほかのクラブに追い抜かれることで切磋琢磨でき、ライフセービング全体の底上げができると思っています。今回は勝つことができましたが、この結果に満足せず、これからもさらに強くなれるよう、メンバー一同で精進します」LSweb


 出場する選手にとっても、応援する家族や仲間にとっても、観戦する人たちにとっても、全日本はやはり特別の大会だ。
 その場にいるということ、その大会に出場するということ、そこで決勝に進むということ、そして常に真剣勝負をするということ、あるいはその瞬間を生で見るということ……。
 その積み重ねが、全日本を特別なものにしているのだろう。来年は40回目の記念大会。ちょうど1年後(2014年10月11〜13日)、それぞれの思いを胸に、再びライフセーバーたちが西浜に集まってくる。

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サーフレース(男女)

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女子ビーチスプリント

 
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オーシャンマン&オーシャンウーマンレース

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サーフスキーレース(男女)

 
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オーシャンウーマンリレー

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オーシャンマンリレー

 
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ビーチフラッグス(男女)

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2kmビーチラン(男女)

 
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ボードレスキュー

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レスキューチューブレスキュー

 
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クラブ総合優勝



★第39回全日本ライフセービング選手権大会 成績表









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