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5回目のプールインカレ
総合優勝は男子は日大、女子が日体大!
2014/02/27
The 5th Japan National Inter Callege Pool Lifesaving Championships 2014.2.22-23
第5回全日本学生ライフセービング・プール競技選手権大会
5回目を迎えた全日本学生ライフセービング・プール競技選手権大会が、2月22〜23日、千葉県習志野市の千葉国際水泳場で開催された。
35チーム、650人(男子383人、女子267人)が参加した今大会。残雪を溶かすような熱い戦いが繰り広げられた。
文・写真=LSweb編集室
記録ラッシュの予感、的中!
学生パワーが炸裂するプールインカレは、毎回、多くの新記録が生まれる。2月になれば学校は休み。練習にも集中できるし、学生最後の大会となる最終学年生は特に気合いが入るだろう。団結力の強さから、リレー種目での記録更新も期待できる。
そんな記録ラッシュの予感は的中した。大会1日目の最初の種目、女子100mマネキントウ・ウィズフィンから日本記録が更新されたのだ。日本新を出したのは、これが学生最後の大会となる文教大学4年の名須川紗綾。記録は1分04秒36だった。
「これまでは力任せにフィンを蹴っていましたが、それだと泳いでいる時の姿勢が前傾してしまうと分かり、フラットに泳ぐことを心がけて練習しました」
と名須川。だが、日本記録を更新して大喜びかというとそうでもない。
「1分3秒台を狙っていたので」
クールな名須川らしく、嬉しさ半分、悔しさ半分という口ぶりだった。
タイム決勝の最終ヒートで、名須川の隣のコースを泳いだのが、それまでの日本記録1分05秒04を持つ、日本体育大学1年の坂本佳凪子だ。折り返し地点でマネキンをハンドルするのは、兄である日体大2年の坂本 陸。
僅かの差でリードする名須川の様子を横目で捕らえながら、「ゴー、ゴー、ゴー(行け、行け、行け!)」のかけ声を妹に送る。その声に押されるように力泳した坂本だったが、0.02秒およばす1分04秒38で2位となった。
男子100mマネキントウ・ウィズフィンでは、大会記録が更新された。更新したのは拓殖大学1年の大澤凌太だ。このレース、後半は大阪体育大学1年の小林 海が一旦リードした。だが、猛追した大澤がゴール間際で逆転に成功。59秒30の大会新をたたき出した。
「チューブを巻くのに失敗して焦りました」
と大澤。一方、0.6秒差で優勝を逃した小林は「くやしー」と一言発した後、大澤に握手を求めた。
「大学に入って、少しずつスイムの実力が上がってきたかな。プールでの表彰台は初めてなので、やっぱり嬉しいです」
と笑顔を見せた小林は、この日、20歳の誕生日を迎えた。
逆転優勝した大澤は、
「最近はフィンの練習ばかりしています。リレーもフィン担当なので。チューブは、練習では2秒台で巻けるのですが、今日は4秒ぐらいかかったな。いやぁ、逆転できて良かったです」
と最後ににこやかな表情を見せた。
男子200mスーパーライフセーバーで大会記録を更新したのが、この種目を得意とする日体大の坂本 陸。自身が持つ2分22秒64の日本記録にはおよばなかったが、2位に10秒近い差をつける2分24秒05の大会新でゴールした。
「これまでは(拓殖大学の中本)直也さんが隣のコースにいることが多く、引っ張ってもらう展開でしたが、今回は直也さんがいなかったので、前半がちょっと遅かったのだと思います。最初から自分でペースを作っていくということに、ちょっととまどってしまった感じです」
と、今後の課題を口にした坂本だった。
男女ともに大会記録を塗り替えたのが、50mマネキンキャリーだ。女子は日体大の坂本佳凪子が39秒26で1位、東海大学湘南校舎クレスト2年の中島静香が39秒64で2位、文教大の名須川紗綾が40秒64で3位。表彰台に上った3人がいずれも大会新を記録した。
男子は神奈川大学2年の大島圭介が、32秒64の大会新で優勝。2位に入ったクレスト2年、古泉俊二郎も33秒43で大会記録を更新した。
「自己ベストは嬉しいですが、日本新を狙っていたのでちょっと悔しいです」
とプールから上がった大島。日本新まではあと0.5秒。昨年11月に行われた国際大会で左肩を脱臼、1カ月間泳ぐことができないというハンディを乗り越えての記録更新だった。
この種目は女子16ヒート、男子27ヒートという長丁場のレース。プールサイドを何往復もしたオフィシャルにとっても、嬉しい大会新だったはずだ。
続く女子200m障害物スイムでは、早稲田大学2年の高柴瑠衣が、それまでの大会記録を2秒以上縮める2分17秒93で優勝。2位以下に5秒近い差をつけた。
「目標にしていた日本記録は出せませんでしたが、自己ベストを4秒ぐらい更新しました!」
と高柴。泳いでいて一番楽しい距離だという200mで結果を出した。
この種目、高柴と並んで表彰台に立ったのが、早大2年の江藤亜門だ。
「同期の亜門がきつ〜い練習メニューを考えてくれて、恨んだこともありましたけど、お陰で一緒に1位の表彰台に立てました」
と言って破顔した高柴。早大は今年、彼らが中心学年となる。
もう1種目、個人種目で記録が更新されたのが、100mマネキンキャリー・ウィズフィンだ。
女子は日体大4年の小林夏実が1分08秒08でトップ、2位には同じく日体大1年の寺坂恵実が1分08秒31で入り、日本大学1年の速水 愛が1分08秒37で続いた。小林と速水は最終ヒート、寺坂はその一つ前のヒートだったが、1分8秒台に3人が並ぶ激戦だった。
一方、男子は流通経済大学4年の園田 俊が55秒14の大会新で優勝した。ゴール間際、先行する拓大の大澤凌太を逆転しての勝利だった。
「この種目の大会記録を持っていたのが、憧れの菊地 光さんです。昨年の海インカレで、光さんの後を継ぎオーシャンマンチャンプになりました。プールインカレでも後を継ぎたいと思っていたのです」
と園田。
しかし、50mまでは大澤にリードを許した。
「50のターンで壁を蹴った時に溝にはまってしまい、マネキンも上手く背負えませんでした。でも今年の流経大の目標は“最後まで諦めない”でしたから、とにかくがんばろうと。最後はもう前も見ずにがむしゃらに泳ぎました」
を息を切らす園田の横で、
「迫ってきているのは分かっていたのですが、足が動かなかった……」
と大澤。「ライバルがいるからがんばれた」と言う園田と大澤は、レース後、お互いの健闘をたたえ合った。
日大、悲願の初優勝。日体は5連覇
個人種目にも増して、熱戦が繰り広げられたのがチーム種目だ。団体戦は得点が2倍になることもあり、会場には各校の声援が響き渡った。
リレー競技で記録を更新したのは、男子4×50m障害物リレー、男女4×25mマネキンリレー、そして特別種目の男女メドレーリレー・インカレバージョンの合わせて5種目。
1分46秒07の大会新記録で、男子4×50m障害物リレーを制した日大は、プールインカレ第1回大会からこの種目を落としたことがない。つまり、これまでの大会記録は先輩が作ったもので、今回はそれを塗り替えたということだ。1年生2人、2年生と3年生が1人ずつという若いメンバーで勝った日大メンバーは、「来年もいきますよ!」と声を揃えた。
日大といえば、男子は井口明彦や菊地 光といったOB、女子は今大会では少し元気がなかったが、国際大会でも活躍する4年の三井結里花など、エース級選手の印象が強い。しかし、もちろん彼らだけが活躍していたわけではない。一人一人の地力があるからこそ、これまでもリレー種目で優勝してきたのだ。
今大会の日大は、男子メドレーリレー・インカレバージョンでも1分37秒22の大会新で優勝、また個人種目の男子100mマネキンキャリー・ウィズフィンでは3年の田家友也が1位になるなど、随所で活躍が見られた。
4×25mマネキンリレーも大会記録が更新された。女子は上位3チームがいずれも大会新、男子は1位、2位が大会新というハイレベルな戦いだった。
女子1位はクレスト。昨年5月の全日本プール選手権で、当時の日本記録(1分32秒53。11月に日本代表が1分26秒85を記録)を出したのと同じメンバーで挑み、1分32秒55で優勝した。2位は日体大で1分33秒80、3位は日大で1分38秒93だった。
女子の雪辱を晴らし、同種目男子で優勝したのが日体大だ。記録は1分17秒12。2位は1分17秒87のクレスト。奇しくも、男女で1位と2位が入れ替わる結果となった。
最終種目のメドレーリレー・インカレバージョンでは、男子は拓大と日体大を押さえた日大が大会記録でトップ、女子は早大のアンカーが先行する日体大に追いつき大逆転。1分51秒84の大会記録で優勝した。
この種目は、部員が少ない学校でも参加できるようにと、通常4人で繋ぐメドレーリレーを3人で繋ぐようにアレンジしたもので、1泳と4泳が同じ選手となる。また、予選を通過できなかったチームでも、個人タイムが良ければ箱根駅伝のように学生選抜に抜擢される可能性があり、大会期間中、最も盛りあがる種目のひとつだ。
当然、決勝に残ったチームは気合い十分。逆転劇も随所で見られる。そんな中、今大会は男女ともに、即席チームの学生選抜が8位に入賞する健闘を見せた。
海でのインカレ同様、CPRアセスメントの得点が総合成績に組み込まれることになった今大会。総合優勝は女子が日本体育大学、男子が日本大学という結果になった。
「5連覇を狙います!」
と女子キャプテンの江部愛里菜が宣言していた通り、第1回大会からの連続優勝記録を5に伸ばした日体大。個人種目ではすべて、チーム種目でもラインスローをのぞくすべての種目で上位入賞を果たし、盤石の強さを見せた。
2位は前回3位から順位をひとつ上げたクレスト。個人種目での日体大との差が、そのまま総合成績の差となった。3位は前回2位の日大。エース三井結里花にとって学生最後の大会だったが、今回は個人種目でも優勝1種目、記録更新なしと少し寂しい結果となった。
女子の総合成績で特筆すべきことは、名須川紗綾ただ一人で総合8位に入賞した文教大だろう。ライフセービング界に大学の名前を記したこと、そして校内でライフセービングを広めた功績は大きい。後輩たちの今後のがんばりにも期待しよう。
「昨年までは菊地 光さんというエースがいました。光さんが抜けた穴を埋めようと皆でがんばった結果が、今回の優勝に結びついたと思います」
と満面の笑みで答えたのは、悲願の総合優勝を成し遂げた、日大3年の田家友也だ。学部の違いなどから、なかなか全員で集まれず、自主練が主体という日大チーム。
しかし、前回2位の悔しさを胸に、障害物を自分たちで手作りしてリレーメンバーで練習するなど、地道にがんばった。その結果が、個人種目だけでなく、チーム種目での好成績にも繋がったのだろう。卒業した先輩たちも感激の総合優勝だ。
2位は日大と4点差の日体大。5連覇の女子を目指し、来年こそはの思いを強くした。
その日体大を2点差で追うのがクレストだ。
「大会前には、日大と3日間の合同練習を行いました。長水路の辰巳プールで1日、あとの残りは東海のプールでしたが、他大学と一緒に練習することで、勉強になったり、刺激を受けたりしました。日大との合同練習は昨年に続き2回目ですが、今年はそのほかの大学にも声をかけ、東京女子体育大学や国士舘大学、文教大、神大、それに日体大からも何人かが参加してくれました。仲間だけどライバル。そういう環境で練習できるのは楽しいですね」
と話すのは、クレスト3年の井上祐介。学校やチームという枠を越えて切磋琢磨するライフセーバーたちであった。
学生委員が中心となって企画、運営されるインカレ。プールインカレも海インカレ同様「The Next Stage 次なる一歩」をテーマに開催され、この大会をもって第10期学生委員の活動が終わった。
日体大4年、競技部部長の杉井晴香、国際武道大学4年、競技部副部長の石川拓実をはじめとする第10期の皆さん、お疲れさまでした。そして卒業を迎えるすべてのライフセーバーたち、「The Next Stage 次なる一歩」も学生時代同様、挑戦と開拓の精神を持って歩んでいってほしい。
=敬称略
※ CPRアセスメントの結果および成績表は追ってレポートします。
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