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第42回全日本ライフセービング選手権大会・レポートVol.1
運と実力のサーフ編
2016/10/12

The 42nd Japan National Lifesaving Championships 神奈川県藤沢市・片瀬西浜海岸 2016.10.8-9

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北は宮城県(気仙沼LSC)から南は沖縄県(座間味LSC)まで、59クラブ、1220人が参加した今年の全日本。

本戦の舞台には予選会を突破した中学生から、全日本出場歴20年以上の社会人まで、幅広い年齢のライフセーバーたちが集結した。

2日間に渡って熱戦が行われた今大会の様子を、前後編でレポートしよう。


文・写真=LSweb編集室





サーフスキーでいきなり頂上決戦

LSweb 大会初日——。
 朝から降り続いていた雨は、午後になってようやく上がった。

 個人・団体合わせて男女各11種目が予定された全日本。その最初の決勝種目、男女サーフスキーレースは、雲の切れ間から差す日差しの下でスタートした。

 まずは女子。
 スタートラインには、二連覇を狙う山本裕紀子(若狭和田LSC)、表彰台常連の久保美沙代(和田浦LSC)、実力者姉妹の河崎尚子(銚子LC)と河崎綾子(湯河原LSC)、インカレワンツースリーの佐藤礼奈(湯河原LSC)、高橋志穂(柏崎LSC)、今野恵(鎌倉LG)、地元での優勝を狙う伊藤真央(西浜SLSC)、結婚・出産を経て競技復帰した青木邦(湯河原LSC)、さらには小松崎あゆみ(下田LSC)、中村遥(新島LSC)、猪又美佳(茅ヶ崎SLSC)、LSweb尾田依津子(神戸LSC)といった中堅・ベテラン勢が顔を揃えた。

 スタートで真ん中よりから勢いよく飛び出したのは、久保。山本が第1ブイで久保に追いつくと、2人は並漕のまま第3ブイを回ってフィニッシュラインへ。
 そこからパドル力を活かしてうねりを上手く捕らえたのが山本だ。そのままリードを広げ、全日本二連覇を達成した。

 2位争いは久保、高橋、佐藤と同じ波に乗った3人の混戦となったが、久保が粘り勝ち。3位は高橋、佐藤は惜しくもメダルを逃した。

 「スタートは上手くいったのに」と久保。
 「横風が吹いていたので、ブイとの距離を少し多めに空けたら(山本)裕紀子さんに入られてしまいました」と、自身3つ目の銀メダルにも悔しそうな表情だった。
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 スタート前は普段通りにひょうきんな仕草で笑いをとっていた山本は、「情けない話しですが、地元開催の種目別で優勝してから心と体をベストな状態に維持するのが難しくて……。でも(9月にオランで開催された)世界大会で首脳陣の期待に応えることができず、不甲斐ない思いをしました。とりあえず全日本二連覇できて良かったです」とほっとした表情を見せた。
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 海上フィニッシュのサーフスキーは、毎年、最後の最後まで勝敗の行方が分からない大接戦が繰り広げられる。特に実力が拮抗する男子は、複数人がほぼ同時にフィニッシュラインを横切る激戦いになる。

LSweb スタートラインには、昨年の種目別から負けなしの出木谷啓太(九十九里LSC)を筆頭に、内田直人(勝浦LSC)、落合慶二(東京消防庁LSC)、松沢斉(下田LSC)といった優勝経験者、ベテランの大西明(鎌倉LG)や池脇良(下田LSC)、安定した実力を発揮する篠田智哉(勝浦LSC)や荒井洋佑(西浜SLSC)、学生の意地を見せたい牛越智(波崎SLSC)と小林海(大阪体育大学LSC)など、蒼々たるメンツが顔を揃えた。

 スタートの激しいパドル合戦からまず抜けだしたのは篠田。ブイ周りで内田がトップに立つと抜群のスタミナを活かして後続を引き離しにかかる。
 しかし、残り僅かのところで波に乗った後続集団が追いつき、6艇が横一線ままフィニッシュラインへ。

 大混戦からノーズひとつ抜け出たのは出木谷。続いて荒井と篠田がほぼ同着。間髪入れずに松沢、内田、落合が流れ込んだ。
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 新艇で挑み連覇を達成した出木谷は「スタートで失敗して追う展開となりましたが、最後で追いつけたのでここからが勝負だと気合いを入れ直しました。勝因は波を下りきった後にスープに負けないようにしっかり漕げたことですね」と満面の笑み。

LSweb HPT(ハイパフォーマンスチーム)ならぬNPT(ナイスパフォーマンスチーム)で切磋琢磨する良きライバルたちは、「あと一歩、およびませんでした」(荒井)、「ブイにラダーが引っかかったのが痛かったです。出木谷は勝ち癖がついているので手に負えません」(篠田)、「波にはしっかり乗れていたのですが……。まぁ一緒に練習している仲間たちがワンツースリーなのでいいかなと」(落合)と、それぞれ笑顔で祝福していた。

 「ブイを回るまで内田さんと並べていれば、チャンスがあったかもしれません。悔しいなぁ。またがんばります」と口にしたのは、孤高のパドラー松沢。
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 最年長46歳の大西は、学生の牛越と声を掛け合いながら漕いで8位入賞。「入賞できて良かった!」と7位の牛越の背中をポンと叩いた。

オーシャンウーマンは貫禄の圧勝

LSweb 男女レスキューチューブレスキューの決勝も初日に行われた。

 先にスタートした女子は、勝浦LSCと銚子LCが優勝争いとなった。

 溺者役は勝浦LSCの丹羽久美が先着したが、救助者役の我妻菜登がブイに到達する前に大きく曲がってしまう。その間に追い上げきたのが銚子LCだ。

 波打ち際までもつれた勝敗は、一足早く溺者役のピックアップに成功した勝浦LSCの軍配が上がった。
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 男子は日本代表の2人、安藤秀と西山俊が実力を発揮した湯河原LSCが優勝。

 2位は廣田諒、上野凌の若手コンビが活躍した西浜SLSC。そして表彰台最後の一枠は、勝浦LSCと日本体育大学LSCの激戦となった。
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 ドラッガーの溺者役ピックアップはほとんど同じだったが、勝浦LSCの方が少し沖にいた。しかし、日体大LSCのドラッガー一人が波打ち際で足を取られる間に勝浦LSCが追いつき、両チームが横並びでフィニッシュラインへ。
 ラインを越える直前に、再び日体大LSCのドラッガーが砂に足を取られる。必死で腕を伸ばし、体を前に送り出す。勝浦LSCのドラッガーもつられるように足がもつれた。

 どちらが先か?
 着順札を手にして喜びをあらわにしたのは、勝浦LSC。インカレと同じメンバーで挑んだ日体大LSCは僅かにメダルに届かなかった。
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img_8713 大会2日目——。

 朝から激しい雨と南からの強風、雷注意報も発令される荒れ模様の天候となり、競技開始は11時までお預けとなった。

 その結果、参加人数が多く予選消化に時間がかかるボードレースがキャンセルされることに。
 選手はもちろん、観客も、そして苦汁の決断をせざるをえなかった実行委員にとっても残念な結果となった。

 風向きが北に変わり、ジャンクだった海面が収まりつつある中でスタートしたオーシャンウーマンレースで、圧倒的な強さを見せたのが三井結里花(九十九里LSC)だ。

 最初のスイムで大差をつけると、続くボートでさらにリードを広げ、スキーは完全に独走状態。それでも、最後のランまでしっかり全力疾走し、フィニッシュ後も立ち止まることなく軽くジョギングを続けながら、後続選手を待ち続けていた。
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 名須川紗綾(茅ヶ崎SLSC)はボードで一気に2位まで順位を上げたが、スキーのインで痛恨の沈。そのチャンスを見逃さなかった山本(若狭和田LSC)が2位に上がり、名須川は悔しい3位となった。
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 高橋(柏崎LSC)が4位、社会人1年目で環境が大きく変わった高柴瑠衣(鹿島LGT)と奥秋李果(座間味LSC)が5位と6位に入った。

 圧巻のレースを見せた三井だが「ランがまだまだ」だと自己分析する。「ランが弱いとイン、アウトで差が出ますから」という彼女が目指すのは、世界大会での個人メダル獲得だ。

 「世界大会のサーフレースで6位に入賞しましたが、先行グループにいながら、アウトのランで後続に追いつかれてしまった。3位にもなれた6位でした」と話す。その口調に、秘めた闘志が感じられた。
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LSweb オーシャンマンは最初から最後までトップを守った西山俊(湯河原LSC)が完勝。

 ランまでもつれ込む接戦となったのが、園田俊(西浜SLSC)と上野凌(西浜SLSC)の2位争い。一歩も譲らぬ2人だったが、最後は胸の差で園田が勝った。
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 一度もトップを譲らず連覇を達成した西山だが「これで満足していてはダメなんです」と口を開いた。そして「僕の今の目標は(三井)結里花です。世界と互角に戦うには、彼女のように圧倒的に強くなくては」と続けた。
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 ところでこの種目、かつてはスキーが鬼門となり学生ライフセーバーが少なかったのだが、今年はスタートラインに並んだ選手の約半数が学生という顔ぶれに。

 4位は高校3年生の加藤豪(柏崎LSC)、6位の佐藤悠太(波崎SLSC)、7位の小松海登(波崎SLSC)は大学生と、3位の上野も合わせると入賞者の半分が学生だったのは、若いうちからスキーが練習できる環境が整ってきたということだろう。
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 大学4年生の荒生拓人(九十九里LSC)は、「もっと早くからスキーを練習しておけばよかった」と、あと一歩で入賞を逃したことを悔やんでいた。

サーフレースは若手が制覇

 続くオーシャンウーマンリレーでは、ボードで逆転した九十九里LSCが優勝。スイムとボードで粘ってスキーに繋げた湯河原LSCが2位、後半に追いつかれた銚子LCが3位でメダルを死守した。
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 オーシャンマンリレーでは、順位が目まぐるしく変わる熱い戦いが繰り広げられた。スイムの前半は九十九里LSCと大阪体育大学LSCがリードしたが、波を上手く掴んだ西浜SLSC、館山SLSCがアウトで逆転。さらにボードで西浜SLSCに続く2位に浮上したのが西伊豆・松崎LSCだ。

 勝敗はスキーに託された。リードを守った西浜SLSCがランへと繋ぎトップフィニッシュ。再逆転に成功した館山SLSCが2位、下田LSCが着実なレース展開で3位に入った。
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 サーフレースは男女ともに大学生が優勝した。女子は坂本佳凪子(日本体育大学LSC)、男子は中谷理人(湯河原LSC)、2人とも大学4年生だ。

 「ブイを回った時は10番ぐらいでした」と言う坂本。
 「後半バテてしまうのが自分の課題。でも今日は波に乗れると信じて最後までがんばりました。最初の波に乗りきれなかったのですが、すぐに次の波が来て、2回乗れたのが良かったです」と、日本代表の三井(九十九里LSC)を抑えて2014年以来となる二度目のタイトルを手にした。
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 中谷は「いやぁ〜びっくりです」と驚きを口にした。
 「前半は速い人に離されないように、中盤は体力温存、最後は死にものぐるいで波に乗ろうと思っていました。今年はクラブ創立20周年で総合優勝を狙っているので、少しでも貢献したいと思っていましたが、まさか1位になれるとは。嬉しいです」と記録を終えても半信半疑な様子。チームメイトの祝福にも「信じられない」を連発していた。

 スケジュールの変更で予選、決勝と続けざまに行われたボードレスキュー。

 女子は栗真千里・宮田沙依の銚子LCが、レスキューチューブレスキューの借りを返すように、先行する丹羽久美・我妻菜登の勝浦LSC、青木邦・市川恵理の湯河原LSCを逆転して優勝。館山SLSCの高校1年生ペア、津島笑満花・鵜木海緒は8位入賞と健闘した。
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 男子も逆転劇が見られた。勝ったのは西山俊・青木将展の湯河原LSC。先行していた幡野圭祐・岸田興喜の日体大LSCは、波打ち際での逆転を許してしまった。
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 「波を一つ乗り逃がしてしまいましたが、茅ヶ崎寄りから波が消えていくことは分かっていたので、江の島寄りにいる僕らが次の波を掴めば追いつけると確信していました」と青木。気心しれた西山と、冷静なレースさばきで勝利を手にした。

LSweb ところで、同レースの予選に出場した柏崎LSCの高橋志穂と池谷雅美の年齢差は23歳。
 決勝には進めなかったものの、親子ほど年の離れた2人(失礼!)が仲良くレースする姿は、競技人口の拡大を象徴する一コマと言えるだろう。

 レース終了後、「もういいよ〜」と言う池谷に、「また出よ〜よ」と甘える高橋。なんともほほ笑ましい光景だった。

※ビーチ競技の熱戦は後編でお届けします。(文中敬称略)

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