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夏、間近!
きめ細かい砂浜で勝ったのは誰だ?
第28回全日本ライフセービング種目別選手権大会
2015/06/18

The 28th Japan National Lifesaving Individual Championships

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種目別・ビーチ編


大会会場となった千鳥ヶ浜海岸は、砂時計の材料にもなるというきめ細かな白砂のビーチが約2kmにわたって続く、東海地方最大の海水浴場だ。

ビーチ種目の決勝が行われた大会2日目は、朝方に降った雨の影響で、表面はサラサラしているものの、砂浜の深層は程良く締まった状態に。

このコンディションがビーチ種目に出場する選手にどう影響したのだろうか。

各レースを振り返ってみよう。

文・写真=LSweb編集室




植木選手、強さの秘訣はメンタルにあり!?

 砂上のスプリンターナンバーワンを決めるビーチスプリント。LSweb

 女子は日本体育大学LSCの長野文音が、昨年のインカレ、全日本に続き三連勝した。2位に入ったのは勝浦LSCの水間菜登。

 「ボードレースの2位には満足していませんが、スプリントでの2位は素直に嬉しいです。実はちょっぴり狙っていたので。
 私は元々、短距離が得意なスイマーでしたが、日本代表に選出されてからはビーチ競技も練習し、面白さを感じていたので、その成果が銀メダルという結果で現れて良かったです。
 実はスプリントのトレーニングをしたことで腿の後ろのハムストリングスが鍛えられ、走るだけではなくボードも速くなっているのですよ」
 と、話す水間だ。

LSweb LSweb3位は西浜SLSCの高校1年生、内堀夏怜が入った。サーフ競技もビーチ競技もこなすジュニア出身の彼女。

 全日本での初メダル獲得に、
 「これ、ちょっと嬉しいです」
 と、はにかんだ笑顔を見せた。

 男子は銚子LCの森 新太郎が完勝。連覇を目指した西浜SLSCの小田切伸矢は3位、日体大LSCの七海元紀が2位に飛び込んだ。

 知名度の高いビーチフラッグスは、地元、南知多町の人も大いに注目した。

 名物のわらび餅屋さんも勝敗の行方が気になった!?ようで、予選、決勝と大会本部前に移動販売車を停車。独特のかけ声で、こちらはライフセーバーたちの注目を集めていた。
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 そんなビーチフラッグス、今大会は上り坂のコンディションで行われた。特に、スタートから2〜3歩目までが急勾配の地形で、本数を重ねるごとに足に負担のかかるハードな条件だ。

LSweb 予選、2次予選、3次予選、準決勝と長丁場の戦いで、有力選手が次々と脱落する中、決勝まで勝ち上がってきた8人に東京消防庁LSCの本多辰也がいた。

 「今大会では(柏崎LSCの)池谷さんに次いでの年配者ですから(笑)」
 と、軽妙に話す本多だが、全豪選手権でメダルを獲得した実力者だけあり、もちろん目指すはトップだ。調子は悪くないという本多は、しかしベスト6で敗退となった。

 「昔は、初日の調子が良ければそのまま最後までいけたのですが、年を重ねるごとにコンディションをキープするのが難しくなってきますね。昨日の好調を維持できなかったのが残念です」
 と、肩を落とした本多だった。

 表彰台を巡る戦いは昨年同様、西浜SLSC対式根島LSCの構図となった。LSweb

 西浜SLSCは植木将人と小田切伸矢、式根島LSCは上遠野元太と野口勝成の4人。

 ベスト3は式根島同士がフラッグを取り合う格好となり、まず野口が敗退。続くレースは小田切が上遠野をがっちりブロックし、式根島勢を退けた。

 そして迎えたラスト1本。

 植木、小田切の師弟対決は、植木の辛勝で幕を閉じた。思わず頭を抱えた小田切は、
 「あー、なんでだろう。いけると思ったのですが……」
 と言ったきり、しばらく言葉が続かなかった。

LSweb 植木の強さは、鋼のような強靱な肉体だけでなく、ここぞという時の集中力と、迷いのない精神力を合わせ持っていることではないだろうか。

 メンタルトレーニングはしているのか? という質問に、植木はしばらく考え込んだ後こう答えた。

 「結局はどれだけトレーニングしたか、ということではないでしょうか。
 トレーニングしたという裏付けが自信に繋がり、その自信が精神的な不安を取り除いてくれるのだと思います。
 トレーニングできる時間は年代ごとに変わってきます。社会人になれば仕事があり、結婚すれば家族と過ごす時間もあります。その中でいかにトレーニングする時間を見つけるか、そしてその時間をどれだけトレーニングに当てられるか。
 人間って誘惑に弱いですからね。見たいテレビもあれば、友だちと会ってメシも食いたい、たまには家族とゆっくり過ごしたい……と誰もが思うじゃないですか」LSweb

 誘惑に負けず、どこまで自分が納得できる準備をしたか。結局のところ、それが最後に迷いを消してくれ、本来の実力を導き出してくれるということなのだろう。

 「僕は今、ほぼ、これ(トレーニング)しかしていないですからね」
 と植木。そして、
 「たまに、これでいいのかな? と思うこともありますよ。40代、50代になった時の自分の姿はまったく想像できませんが、続けているのか? それでいいのか? と考えることも、ないわけではありません」
 と、付け加えた。

 レース中は一切迷いを見せない王者も、決してスーパーマンではない。そんな一面が垣間見えた瞬間だった。


★☆★ビーチフラッグス男女決勝動画★☆★







9年ぶりに表彰台に上った、本田選手

 女子のビーチフラッグスは、東京女子体育大学LSCの小林千尋がベスト3で惜しくも敗れ3位。
 4月から社会人生活をスタートさせた勝浦LSCの但野安菜と、大会2日前まで教育実習をしていたという日本女子体育大学LSCの川崎汐美の頂上決戦となった。
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 学生時代から何度も対決していた2人のスタートはほぼ互角。ランのスピードもほとんど変わらない2人は、フラッグまでの間に何度も接触を繰り返したが、最後に競り勝ったのは川崎だった。
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「教育実習中は慣れないことばかりで、なかなか練習の時間が取れませんでした。テニスの授業を指導しなければいけなくて、でもテニスはやったことがないので毎日朝練して。正直、種目別どころではなかったのですが、実習校の先生方が大会に出てらっしゃいと送り出しくれたので出場できました。
 実習中、不安になると(但野)安菜さんにLINEして、それで少し気合いが入って、布団の上でスタートの練習をしてみたり(笑)。その後、ふと我に返って慌てて指導案を書きましたけれど」
 と川崎。

 ちなみに、昨年は但野が教育実習後に種目別に出場し優勝している。教育実習と優勝の法則やいかに!?

 大会の締めくくりに行われた、男女の2kmビーチラン。

 女子はピンクのキャップ、日女体大LSCがベスト3を独占した。優勝した小林果蓮は大学2年生。連覇を狙う1年先輩の大井麻生をラストスパートで引き離し、表彰台の頂点に立った。
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 日女体大LSCの水着の腰の辺りには「go! fight!! win!!!」の文字。果敢に攻めての勝利は、標語どおりだった。

LSweb 一方、男子は国士大LSCの須藤 凪が連覇を達成した。周回コースの半分は波打ち際を走れるコンディションということもあり、序盤から高速レースとなった。

 終盤になるとトップ集団は3人に絞られた。そこでロングスパートを仕掛けたのが、帝京大学LSCの笹田直太だ。最終の折り返しまでまだ距離のある波打ち際で一気に加速すると、集団を形成していた2人を引き離しにかかった。

 しかし、折り返しを過ぎるころにスピードダウン。須藤と茅ヶ崎SLSCの本田吉紀という後続2人に追いつかれてそのままジリジリと後退すると、須藤、本田に続き3番目でゴールした。
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 優勝した須藤は、
「ゴールまでにまだ距離があったので、ここでスパートしても最後まで持たないだろうと判断し、自分のペースを守りました。秋の全日本では先にスパートして逆転されてしまったので、冷静に状況判断することを心がけました」
 とコメント。

 3位の笹田に、もしスパートがもう少し遅かったら? と聞いてみると、
「うーん、タラレバですけど、それでもたぶん勝てなかったと思います。早い段階でのスパートは、バテ始めていた自分にとって一か八かのカケでした。それと柔らかい砂は苦手なので、波打ち際で勝負をかけてみたのです。でも、これが今の自分の実力だと思います」
 と、謙虚な答え。LSweb

「昔は序盤から飛ばして逃げ切るレースをしていましたが、もうそれはできないですね。久しぶりに出場した昨年秋の全日本では、同じようにやって失速しました。今回は国士舘の学生が良い走りをしていたので、彼が踏み固めてくれた足跡をたどるように走りました。久しぶりの表彰台。自分でも良くやったなと誇らしい気持ちです」
 と話すのは、2位の本田だ。

LSweb 2000年代前半、圧倒的なスピードで他を寄せ付けず、この種目の頂点に立ち続けた本田。全日本選手権では三連覇を含む優勝4回、2006年には全豪選手権のビーチランで銀メダルを獲得。翌年にはクーランガッタゴールドにも出場した強者だ。

 最後の全日本優勝からすでに9年。現在は横須賀市立の中学校で教職に就き、サッカー部の顧問も務めているのという。33歳になった今も当時と変わらぬスリムな体型を維持しているのは、熱血顧問の証拠だろう。

「今回は試合を控えた生徒たちと一緒に、自分も追い込んできました。全日本のメダルを手にするのは本当に久しぶり。生徒たちにも自慢できますね」
 と、満足そうな笑みを見せた。

 予定どおり全種目が消化された種目別選手権。種目別が終われば、夏もすぐそこだ。(敬称略)


 そう、種目別が終われば、あっという間にパトロールシーズンが始まる。

 ライフセーバーの本業は、水辺の事故を減らすこと。そのために日々トレーニングに励んでいるわけだが、今回の種目別では、選手たち以外にも来たるべきシーズンに向け、日々鍛錬している技術を披露してくれたライフセーバーがいた。
 
 ご存じ安全課の皆さんだ。

 競技の合間に行われたのは、IRB2艇とPWC1艇による救助デモンストレーション。海外で盛んに行われているレース形式に則って行われた。
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 スタートの合図でドライバーが砂浜を駆け出し、動力艇に飛び乗るとエンジンを始動。すかさずクルーが乗り込むと、スロットル全開で溺者(役)のいるブイまで疾走し、ブイを周回しながらピックアップするというものだ。

 浜に戻ってくるまでの早さを競う動力艇でのレースは、救助活動に直結する技術でもある。

 海上設営、ウォータージャッジ、もちろんいざという時のレスキューと、縁の下の力持ちとして大会を支えてくれる安全課。
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 ハードワークをこなしつつ、しっかりと技術を磨いている彼ら、彼女らは、やっぱりスゴイ人たちなのだった!


☆★☆ビーチ種目表彰☆★☆
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ビーチスプリント・男女

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ビーチフラッグス・男女

 
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2kmビーチラン・男女

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いつみても素敵なシーンです!

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