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アリーナレスキュー 日本代表レポート その1
和田賢一選手が思い、感じたこと
2014/06/26

ARENA RESCUE REPORT PartⅠ

LSweb去る6月5〜9日、フランスのモンペリエでライフセービングの国際大会「ARENA RESCUE(アリーナレスキュー)」が開催された。

この大会は、今年9月に同じくモンペリエで開催される「RESCUE 2014」世界大会のプレ大会と位置づけられている。

日本ライフセービング協会は、秋に行われる世界大会を見据えて選手の強化と各国の競技レベルを推察するため、今大会に日本代表選手団を派遣した。

この大会に参加した男子日本代表の和田賢一選手(式根島LSC)と園田 俊選手(新島LSC)の2人から、大会へ参加しての手記をもらうことができた。

これから日本代表としてますますの活躍が期待される現役選手2人が国際大会に参加し、それぞれが何を感じ取ったのか、そして彼らが見据えるものとは?

まずは、ビーチ種目の目線から日本代表の可能性などについて捉えた和田賢一選手のレポートから紹介していこう。

文=和田賢一(日本代表/式根島LSC)
写真=日本代表選手団(Team JAPAN)






日本との違い「参加人数と選手層」

LSweb 6月初旬のモンペリエで青く晴れ渡った空のもと、灼熱の太陽に照らされ、地中海の美しい海を目の前に「ARENA RESCUE」は行われました。

 ここでは私のメイン競技となるビーチ種目を中心に、私が感じたことも含め、客観的に今大会の状況をお伝えさせて頂きます。

 今大会に派遣された日本選手は、大島圭介、榊原 司、坂本 陸、園田 俊、小林 海、和田賢一の男子6選手と、篠 郁蘭、水間菜登、栗真千里、三井結里花、渡辺来美、但野安菜の女子6選手の計12人。
 我々、日本選手団は入谷拓哉監督、佐藤文机子コーチを中心に硬い団結のもと、ビーチ種目において以下のような結果を残すことができました。

    
  ◆「ARENA RESCUE」日本代表の主な結果(敬称略)LSweb
 
 ビーチフラッグス女子 但野 優勝、渡邊 7位入賞
 ビーチフラッグス男子 和田 4位入賞
 
 ビーチスプリント女子 水間 8位  
 ビーチスプリント男子 和田 準優勝
 
 ビーチリレー 女子3位(但野、栗真、渡邉、水間)
 ビーチリレー 男子2位(小林、園田、坂本、和田)

 ビーチスプリントリレー女子 3位
 ビーチスプリントリレー男子 準優勝
 
    

 LSweb今大会におけるビーチフラッグス、ビーチスプリントの参加者は、なんと各種目それぞれ男子200人弱、女子150人以上にのぼる選手がエントリーしていました。

 さらに、スケジュールの大幅な変更によって、全てのビーチ種目が予選から決勝までストレートで行われるという過酷な大会になりました。
 
 フランスをはじめ多くのヨーロッパ諸国は、プール種目が強いため、代表選手のほぼ全員が、スイムを得意とする選手を選出する国が多いと、ヨーロッパの友達が教えてくれました。

 そのため、ビーチも走れるスイマー、あるいはスイムやオーシャン競技も高いレベルでこなせるスプリンターを目指し、各選手が競技に参加をしているように感じました。

 また、ビーチとオーシャンの種目が同時に行われるということはなく、全ての選手が全ての種目に出場できるという大会スケジュールになっており、そのことも、各種目においてエントリーする選手の人数が多いひとつの要因となっているようでした。


■ビーチフラッグス

 LSweb30度を超える熱さの中、予選から決勝までの3時間、本当に大きな歓声の中で競技は行われました。

 女子で優勝を果たした但野選手の活躍はヨーロッパの選手、観客を驚かせる本当に素晴らしいものでした。
 
 また渡辺選手も、7位入賞と初の国際大会で大健闘を果たしました。そしてまだまだ速くなれる大きな可能性を秘めた素晴らしい選手であると思いました。
 2人とも前日まではやや緊張した様子もあったのですが、本番になると覚悟が決まった引き締まった表情から日本の女性の強さを感じました。

 男子は今回はメダルをとることができませんでしたが、小林選手に大きな可能性を感じました。

 オーシャンが得意な選手ですが、アキレス腱や身体の固め方に大きなスプリンターの素質があり、スタートのテクニック次第では十分にメダルを狙える選手です。

 優勝したのは、オーストラリアで半年の時間を共に過ごした親友のクリス・パーティーでした。

 私がオーストラリアから帰国後、2カ月間で多くの動きとイメージ、集中力が変わっていてさらに成長していました。身体能力と探究心、人間性を兼ね揃えた本当に素晴らしい選手です。


■ビーチスプリント
 男女ともに日本の選手の大きな可能性感じました。
 世界大会までの3カ月での伸びしろが、他の強豪国よりも遥かに大きいように思います。

■ビーチリレー
 男女ともに日本の強みが現れた種目でした。
 一つにまとまる力、お互いを尊重しあう気持ちが結果に現れたように思います。
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 私が感じたのは、日本のオーシャンを得意とする選手のスプリント力の伸びしろでした。
 
 おそらく、参加しなかった選手も含め、ほぼ全員が90mで1秒~1.5秒はタイムを縮められる素質を持っていると感じました。
 まだまだ力で走り、エネルギーを消耗する走り方でしたが、まだまだ向上できると思います。

 今回のオーシャンマン、オーシャンウーマンのウェーディングとランの総合距離は200m~230mくらいであり、よりエネルギー消費がない走り方でトランジットを行えると過程した場合、30m~40m早くゴールでできる可能性があるように感じました。


ビーチ種目の全体を通して(日本と世界の比較)

 LSweb突然ですが、海外に行くと、我々「日本人」はとても特徴的な民族であると感じる方も多いのではないでしょうか?

 東日本大震災の時の「人々の団結力や統一された道徳心」が、世界から大きな賞賛と敬意を受けるに至ったことは、この日本人の特質を物語った出来事のように感じます。

 私は、ビーチフラッグス、ビーチスプリントでも、このような心の特質が現れているように思います。

 具体的にいうと、ビーチフラッグスでは走り出すまでの身のこなしの繊細さ、スプリントでは加速の局面で、日本は世界的にみてとても優れています。

 逆に、他の国、特に欧米諸国が優れているものもあり「パワー発揮」と「自分を中心に物事を考える力」だと感じます。

 もっとも洗練されている競技と言われる陸上100mでさえ、この150年で約1.5秒世界記録が伸びています。

 ライフセービング競技が始まり100年がたった今、競技のレベルは年々大きく向上しています。

 そしてそれは、器用さとパワーのどちらかを持っていればよいという段階を確実に超えています。

LSweb 特に海外の大会では、ビーチが広いことが多いため、ビーチフラッグスが上りで行われることは少なく、トップスピードが速いパワーを持つ選手に有利な状況になります。
 さらに世界大会や全豪選手権の決勝では、日々の膨大な努力と生まれ持った才能の、どちらも持ち合わせている選手による集中力の勝負になっていると感じます。

 日本では、「ビーチフラッグスは日本の得意種目」「日本のお家芸」とよくいわれますが、半年滞在していたオーストラリアでは、全く逆で「日本人なのによくやっている」という言葉を多く受けました。

 私はその前提がとても悔しかったし、大好きな日本という国の評価をあげたいと心から思っています。

 日本人は100mを10秒0で走れ、競泳でも毎回多くのメダルを獲得できる、本当に高い素質を持った民族です。

 また、日本は四方を海に囲まれた島国であり、その上、世界有数の経済力を持ちと治安も安定している先進国です。
 こうした側面から見ても、私たちは、世界でも稀にみるライフセービングが発展しやすい、また競技力があがりやすい環境とDNAをもった国民ということができます。

 逆に今、日本が競技において世界のトップにいないということは「何かが足りていない」ということではないでしょうか?

LSweb 環境と才能は、スポーツにおける結果の大部分を占めているという一般常識から照らし合わせると、今の100mのジャマイカのように、今のライフセービングのオーストラリアのように、百年後の日本は世界のトップにいることと思います。

 そして、ライフセーバーの数が増え、日本の海岸線はより安全な場所として、人々の心を癒すことを私は心から願います。
 そしてそれは、世界のライフセービングの発展にも必ず繋がるはずです。

 私たちは、未来のライフセーバーから「あの人たちがいたから今の自分たちがいる」。そういわれる存在か「自分たち」がその時代を創っていくのか、どちらの道を歩んでいくのでしょうか。

 それは、誰が決めることでも、何に左右されるものでもなく、全ては、この瞬間の決意に委ねられていると私は思いました。


 最後になりましたが、応援して頂いた皆さまに本大会の状況をお伝えすべく、客観的視点のもと、私が感じたことも含め、一生懸命つづらせて頂きました。
 
 御拝読、誠にありがとうございました。








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