2003年から毎年開催されている「BOSO CUP」。
選手、オフィシャル、関係者も含めると400人以上が参加した今年の大会も、いよいよ房総ナンバー1を決める決勝レースに。
爽やかな秋晴れの中で行われた、熱戦の行方は?
引き続きホストクラブである、銚子ライフセービングクラブの浅見雄一郎さんにレポートしていていただこう。(LSweb編集室)
文=浅見雄一郎(銚子LC)
写真提供=BosoCup
ベテラン勢強し!サーススキー
全日本選手権と同じことが言えるが、サーフスキーレースではやはりベテラン勢が強さを見せ、男女上位3人計6人が全員社会人という結果となった。
また今大会では、水中スタート、ドライゴール(波打ち際に設定されたゴールを走り抜ける、通常は水中ゴール)方式が採用された。
女子では、河崎尚子(銚子)、久保美沙代(和田浦)、三井結里花(蓮沼)の全日本表彰台常連がレースを引っ張る形となった。
レースで先行したのは銚子LCの河崎。スタートから飛び出し、最終ブイを回航しトップをキープ。このまま河崎が逃げ切るかと思われたが、後方から、わずかなウネリを乗り繋いできた久保と三井が波打ち際で河崎と並ぶ。そこから3選手が一斉に走り始め、1位でゴール駆け抜けたのは、蓮沼の三井であった。
先行したものの追いつかれ、優勝を逃した河崎は3位となった。しかし、河崎はライフセービングの本場オーストラリアでの修行経験があり、スタートの技術、ブイ回りや、小波を捕まえるテクニックは流石の一言であった。
優勝した三井は、現日本代表でもあり、パドル力の他にも、海をも味方につける、彼女の底力を見た気がした。そして、上位3人が全日本のメダリストというハイレベルなレースとなり、千葉県のライフセービングのレベルの高さを知ることができた。
女子サーフスキーレース ファイナリスト | 男子サーフスキーレース ファイナリスト |
男子は、1位 篠田智哉(守谷)、2位 浅見雄一郎(銚子)、3位 堀部雄大(千倉)という結果になった。
レース展開では終始、守谷の篠田がレースを引っ張り、下馬評通りの強さを見せた。実は筆者は、このレースで2位に入ったが、篠田のスタート技術、パドル力、レースに向かう気迫は見習うべきものが多かった。
3位に入った堀部は数年前までオーシャンマン・ボードレース・サーフスキーレースで全日本のチャンピオンであった実力者。だが、レース前の招集所では「昔強かったことなんて誰も覚えていないから、大事なのは今なんだ」と言っていた。
年齢を重ねても勝負にこだわり、向上心を持ってレースに臨む彼の姿勢を、若手のライフセーバーは手本にしなければならないと感じた。
まさか!?
波乱のランスイムラン
大会会場が沸いたのは男女ランスイムラン。上級生、社会人と経験者がいる中で優勝したのは男女共にフレッシュマン(大学1年生)という波乱が起きた!
女子は片貝の成澤侑花がスイムパートで後続を引き離してそのまま優勝。2〜4位には銚子の堤 茅咲、鈴木悠花、栗真千里が続いた。
2~4位に入った銚子勢は全日本上位常連で、9月に行われた学生選手権で表彰台に乗った選手もいれば、現日本代表もいる強豪メンバーの中で、成澤が優勝し会場を沸かせた。
フレッシュマンとはいえ、実力ある上級生にも物怖じせずに挑み、優勝した彼女の今後に注目したい。女子ランスイムラン ファイナリスト | 男子ランスイムラン ファイナリスト |
男子で優勝したのは銚子の堀内敦貴だ。彼も片貝の成澤と同じ大学1年生でライフセービング歴は1年にも満たない。
男子ランスイムランを制した銚子LC堀内
同レースを引っ張ったのは堀内のクラブの先輩の石田健人だ。石田はランから積極的に飛び出しスイムでも集団を引っ張り、1位で浜に上がってきたが、最後のランで2位に付けていた堀内に逆転された。
石田に話を聞くと「初めのランとスイムで飛ばし過ぎて足の力が残っていなかった」と苦しそうな顔をしながらも表情は晴れやかであった。
堀内は「先輩に必死についていきました。最後のランは無我夢中で走りました」と嬉しそうに話してくれた。
「ライフセービング活動に出会えて良かった」と答えてくれる彼の真っ直ぐな気持ちを聞くと、千葉のライフセービングの未来は明るいと感じることができた。
大注目の
フレッシュマンボードレース
フレッシュマンボードレースの決勝は、ランスイムランの決勝の直後に行われた。
その中で、女子ボードレースで優勝したのがランスイムランを制した成澤だ。フレッシュマンの中でも一際力強いパドルで後続の選手を引き離し圧勝した成澤は、大学1年生ながら房総カップ二冠を達成した。2位には作田の山口 茜、3位には鴨川の佐藤美帆が続いた。
男子は本須賀の池端拓海が女子の成澤と同様に、力強いパドルで優勝した。2位には白浜の小林駿太、3位には守谷の熊木 渉が入った。
開催された銚子マリーナ海岸のすぐ横にあり、同海岸で日々練習する千葉科学大学の永春大希と勝又滉平も入賞を果たした。
千葉科学大学はライフセービングクラブとしてはまだ年数が浅いが、近い将来、千葉のライフセービング界に新しい風を吹かせてくれるに違いない。
女子フレッシュマンボードレース ファイナリスト | 男子フレッシュマンボードレース ファイナリスト |
混戦必至、ボードレース
女子ボードレースは、日本代表でもある守谷の水間菜登が異次元のパドルで優勝した。ラインナップする選手を見ても水間は頭一つ背が高く、足と手が長く、パドルボードを漕ぐには理想的な体形から、力強いパドルで後続を突き放し優勝した。
2位には白浜の飯田亜実が入った。飯田は予選から水間に食らいついていく気迫を見せたが、決勝では及ばなかった。3位には最後のランで4位の選手と競り勝った銚子の鈴木が入った。
女子ボードレース ファイナリスト | 男子ボードレース ファイナリスト |
次に行われたのは、どの大会でも激戦になる男子ボードレース。今大会でも白熱したレースになった。
スタートの混戦から抜け出し先行したのは、守谷の篠田と天津小湊の永井 聡の2人、その後ろに銚子の岡部直人、和田浦の山口祐太が続くレース展開となった。優勝し胴上げされる銚子LCの岡部
最終ブイを回航し、なかなかトップ集団を捕まえられない岡部と山口だが、若さ溢れる2人はパドルの手を一切緩めずにチャンスを伺っていた。
ゴールが近づきボードレースで一番苦しい波打ち際で、小波を猛烈なパドルで乗り繋ぎ先頭に追い付いたのは、銚子の岡部だった。
岡部は大学4年生で、今年の夏は警備長として銚子の海を守り抜いた男である。
「絶対に銚子の海でほかのチームの選手に優勝を取られたくなかった」とレース後に語ったように、最後のランも気迫に満ちてゴール。
レース後にはチームメイトが近寄り、胴上げが始まった。彼の努力が、チームメイトから認められているのだと感じた。
鉄人決定戦
オーシャンマン/オーシャンウーマン
千葉県内の鉄人ライフセーバーを決めるオーシャンマン/オーシャンウーマンは、男女共に実力者が安定感を出し優勝した。順番はボード→スイム→スキーで行われた。
男子はスイム力に定評のある小松の安藤 秀がスイムで抜け出し、最後はスキーで逃げ切り優勝。安藤は近年実力を上げてきているが、この大会でその力が証明された。
女子は現日本代表の三井が終始リードし他の追随を許さずに優勝。彼女の強さは誰も止めることができないのか!?オーシャンウーマン ファイナリスト | オーシャンマン ファイナリスト |
男女混合
ビーチリレー
全日本大会で行われるビーチリレーは男女別だが、今大会は男女混合で行われた。
ビーチリレー ファイナリスト
ご存知のとおりビーチリレーはバトンパスが対面式で行われるためバトンを落とすミスが多く、順位が激しく入れ変わる種目でもある。
それが男女混合ともなれば、より難しくなる。男女での体格や、走力の差が異なるため普段練習している時よりもより繊細にバトンパスを行わなければならない。
予選を見てもバトンを落とすチームが多く、決勝ではより精度の高いパフォーマンスが求められていた。
レースをリードしたのが岩井と白浜だ。アンカーまでは両チームのどちらかが勝つと思われたが、最後猛然とコース真ん中から追い上げてきたのは、銚子チームのアンカーの森新太郎。
全日本級の大会でも頭一つ抜け出している彼の力もあり、銚子チームが優勝した。
森はとにかく明るく、そしてビーチ競技が大好きなため、レースとレースの合間に解放されたコースでひたすら練習を繰り返していた。また銚子は4人の走者の内2人が1年生ということもあり、彼らの今後に期待したい。
千葉県ナンバー1は誰に?
ビーチフラッグス
ライフセービング競技の中で認知度の高いビーチフラッグスの人気は、銚子の地でも変わらなかった。道行く人が足を止め、選手の反応速度やスピード、最後の砂浜にダイブする迫力に大きな歓声が上がった。
前日の予選を勝ち上がってきたのは、男子が9人、女子が7人、ここから最後の1本まで1人ずつ脱落していくこととなる。
まずは男子で波乱が起きた。優勝候補の一角の銚子の森が2本目で敗退。
ランのスピードは一際目立っていたが、ほんの一瞬のミスも許されないのがビーチフラッグスだ。コンマ数秒の戦いの厳しさを見る反面、千葉のビーチフラッグスの層の厚さを垣間見た。
最後の3人には、日本体育大学所属の浅川大輔(鴨川)、西山晃祐(白浜)、そこに順天堂大学所属の石田蒼一郎(小松)の大学生対決となった。
男女ビーチフラッグス ファイナリスト
まず浅川がフラッグを取れずここで脱落。
決勝戦は西山と石田の一騎打ちとなった。スタートの合図とともに激しい体のぶつけ合いあいから、石田が体を西山の前に入れることに成功。そのリードを守り切り勝利。軍配は石田が上がった。
女子ビーチフラッグスの決勝では、全日本種目別、全日本学生選手権、全日本選手権のビーチスプリントを制し今シーズン三冠という実力を持ち、最近のビーチ種目を席巻している和田浦の長野文音と、岩井の村石結美との争いとなった。
和田浦の長野有利かと思われたが、勝ったのが村石だった。
聞けば、優勝した村石、2位の長野、3位の鴨川の石塚円香は日本体育大学の同級生。切磋琢磨し、お互いのレベルを高め合っていることは間違いなく、今後の彼女たちの活躍に期待したい。
27チームが一斉にスタート!
タップリン5
タップリン5総勢135人
「タップリン5」とは、通常4人で行われるリレーを5人で行うものである。リレーの順番はスイム→ボード→スキー→スイム→ボードの順番で、パート問わず女子選手を2人入れなければならないルールで行われた。
27チームが一斉にスタートするため、レース前の招集所は黒山の人だかり。何といっても選手だけで135人もいるのだ(笑)。招集を担当したオフィシャルには頭が下がる。
まずレースをリードしたのは小松チーム。1泳の安藤が後続との差をつけボードの選手へとバトンタッチをする。その後に守谷、銚子と続く。
ボードで男子選手に負けずに1位に上がってきたのは守谷の水間。女子ボードレースを制しており、男子に引けをとらないパドル力に、会場から驚きの声が上がった。
守谷のスキーは今大会の男子スキーレースで優勝した篠田が担当し、守谷の優勝が固いと思われたのだが、最後のスイムパートで銚子の堤が守谷を猛然と追い上げ、30mほどあった差を10mほどに詰めて最後のボードへ!優勝しガッツポーズ
守谷のボードは全日本選手権でも入賞経験がある、我妻敬亮。
銚子は今年急成長をとげ、今大会の男子ボードレースを制している岡部との一騎打ちとなった。
波打ち際までサイドバイサイドの攻防が続き、両者同時にボードから降り最後のラン勝負へ!
沢山の観衆の中から笑顔で、一人抜け出してゴールラインをウイニングランで駆け抜けたのは銚子の岡部だった。地元開催の意気込みが、銚子の海を味方に付けた瞬間だった。
総合優勝の銚子ライフセービングクラブメンバー
総合優勝は地元、銚子ライフセービングクラブ。房総カップ二連覇を果たした。
学生代表の岡部は「今年は地元開催とあって絶対に優勝しようとみんなに言っていました。いつもガードしている海で優勝できて最高です」と顔をほころばせていた。
2位は守谷、3位には和田浦が入った。
今年も大いに盛り上がった千葉県ライフセービング競技会。関東での今シーズン最後の海の大会が終わるころには、銚子の空がオレンジに染まっていた。(敬称略)選手及びスタッフ集合写真
成績表は公式大会HPでどうぞ。