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九州初上陸!宮崎・青島ビーチで開催された
三洋物産インターナショナル ライフセービング カップ2015
2015/07/26

SANYO International Lifesaving Cup 2015 2015.7.19-20 宮崎県宮崎市・青島ビーチ

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日本各地で梅雨明け宣言が出された海の日の三連休。

宮崎県宮崎市の青島ビーチで「三洋物産インターナショナル ライフセービング カップ 2015」が開催された。

8回目を迎えた今大会には6カ国・地域、7チームが参加。2日間にわたって、真剣かつ親睦を育むレースが行われた。

文・写真=LSweb編集室





オフシーズンでも強し南半球勢
サーフ競技はAUS、NZLが上位独占


LSweb 今大会には、世界大会二連覇中のニュージーランド、サーフライフセービング発祥地のオーストラリア、近年ライフセービング競技に力を入れているカナダ、協会設立から50年の歴史を持つ香港、そして初参加となる台湾という外国勢と、日本代表、ユース日本代表の7チームが参加した。

 会場となった青島ビーチは、硬く締まった砂と遠浅の海が特徴。鬼の洗濯板で有名な青島が、南からのうねりをブロックしてくれるため波も穏やか。

 荒天で県内の海水浴場がすべてクローズしても、よほどのことがない限り、青島海水浴場だけは遊泳注意でオープンしていると教えてくれたのは、オフィシャルとして今大会に参加した宮崎LSCのメンバーだ。

LSweb 競技は初日、二日目と同じ種目を繰り返すドリル形式で、各日それぞれ個人種目、リレー合わせて9種目が行われた。

 生憎、天候は二日間とも雨が降ったり止んだりで、ビーチの砂はさらに硬く締まったコンディションに。サーフ競技はイン・アウトの技術が、またビーチ競技は硬い砂をどう攻略するかが、勝敗を左右する大事な要素となった。

 ビーチフラッグスでの活躍が期待される、日本代表の植木将人は「本音を言えば硬くない砂のほうがいいですが、二週間前に千葉県の岩井海岸で行った代表合宿が雨で、まさに今回のようなコンディションでした。その時の調整を活かしたいですね」とレース前に話してくれた。

 いよいよ競技開始。
 初日のサーフ種目で格の違いを見せたのが、オーストラリアとニュージーランドだ。

 この2つの国が位置する南半球の7月といえば真冬。つまり彼らにとってはオフシーズンにも関わらず、サーフレース、ボードレース、オーシャンマン/ウーマン、ボードレスキュー、オーシャンマン/ウーマンリレー、レスキューチューブレスキューのすべてのサーフ競技でオーストラリアとニュージーランドが上位を独占、圧倒的な強さを見せつけた。
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 優勝したオージーやキーウィに話を聞くと、「本格的なトレーニングができていないので、調子は70〜80%ぐらいかな」とさらりと言ってのける。それでも軽々と勝ってしまうのが、世界大会のサーフ種目でも常に1位、2位を争っている国の実力なのだ。

 サーフ種目で3位争いを繰り広げたのは日本代表とカナダ、そしてユース日本代表だった。

 特に初日のボードレスキューでは、男女ともにユース日本代表が3位と大健闘。女子は上野真凛と高橋志穂、男子は廣田 諒と上野 凌が南半球勢に続きフィニッシュした。
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 「(上野)真凛とは自然と息が合うんですよね。同じクラブでもないのになんでだろう? きっとライバルで競い合うことが多いからですね」と話すのは、ユース女子の高橋。

 一方ユース男子の廣田は「(上野)凌とは同じ西浜でいつも一緒に練習しています。二人で練習した回数ではフル代表の(長竹)康介さんと安藤さんに負けませんから、実は狙っていたのです。だから3位に入れてめちゃくちゃ嬉しいです」と満面の笑顔で話したくれた。

白熱のビーチ競技
初日は頂点に届かず



 つかの間の晴れ間が覗いた初日のビーチ競技。

LSweb ビーチスプリントで優勝したのは女子のゾー・ホップス、男子のジェイク・ハーレイという、共にティーンエイジャーのニュージーランド勢だった。

 男子のハーレイは18歳ながらNZ国内でオープンを制した実力を発揮し、2位以下を大きく離す俊足ぶりを見せた。

 ハーレイに続きゴールしたのは、日本代表の森 新太郎。初代表入りとなった森は、後半にぐんぐんスピードを増し、オーストラリアのジェイソン・ガウを抜き抜き去り2位。

 日本選手はこれまで、前半でリードしても後半で抜かれる展開が多かっただけに、今後の活躍に期待が持てる、気持ちの良いレース展開だった。

 大勢のギャラリーを集めたビーチフラッグスは、予想どおり日本選手が決勝まで勝ち上がる展開に。

LSweb 女子は日本代表の但野安菜が、オーストラリアのブリー・マスターズと対戦。スタートは但野のほうが明らかに速いのだが、初日、二日目ともにランで追いつかれ惜しくも2位という結果となった。

 マスターズは、「彼女(但野)のスタートはとても速いけれど、私はスプリントが得意なので、焦らず、フラッグに向かって真っ直ぐに走ることに集中しました。フラッグに向かって正面からアプローチすれば、体の接触があっても私のほうが体格が良いので負けない自信がありました」とレースを振り返った。

 カナダのデニス・クックと日本代表の植木将人の対決となった、初日の男子ビーチフラッグス決勝。ほぼ互角のスタートを制したクックは、フラッグを手にガッツポーズを決めた。

 「勝因は自分でも分かりません。ただ、とにかく落ち着くように、これはファイナルじゃなくて普通の練習だって自分に言い聞かせました。
 彼(植木)を初めて見たのは、2012年の世界大会。とても速かったので、彼をイメージして練習をしてきました。だから彼に勝つことができて、感激です」と興奮冷めやらぬ様子だ。
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 クックの経歴は一風変わっている。公園の階段やビルの壁を飛び越えるパフォーマンスをしていた、という彼。

LSweb 「陸上をやっていたわけではないけれど、脚力が鍛えられたのは、跳んだり跳ねたりしていたことと、ブレイクダンスをやっていたからかな」と笑顔を見せた。

 また、スタートラインより少し後方に体をセットするのがクック流なのだとか。
 「調子が悪いときにいろいろ試した結果、少し後ろで位置に着くのが良かったので。普通はなるべくラインのギリギリに位置したいですよね。でも、ほんの少し後ろに下がるだけで、スタート前にいろいろチェックされることがなくなり、集中しやすくなりました」と話すクックだった。

 大会初日に首位に立ったのは、男女各4人で戦ったニュージーランド。2位のオーストラリアは5ポイント差で首位を追いかける展開となった。

日本代表が2種目で優勝した二日目
オーストラリアが逆転で総合優勝を手に


LSweb 朝から雨が降り続いた大会二日目。日本代表は女子ボードレスキューと男子ビーチフラッグスで優勝を手にした。

 栗真千里、水間菜登のコンビで出場したボードレスキュー。ニュージーランド、オーストラリアに次いで3番目に溺者役がブイに到着した日本は、そこから追い上げを開始した。

 ストロークパドルで先行する2チームを、小柄な栗真と長身の水真がニーパドルで追う。二人は途中で上手く波に乗り一気に逆転すると、ガッツポーズとともにトップでフィニッシュした。

 「やっちゃいました! 私たちは先行する2チームに比べ体重が軽いので、波に乗りやすい。波に乗れれば追いつけることは分かっていましたが、昨日は上手く波に乗れなかったので今日こそはと集中しました。菜登さんが後ろで状況を詳しく伝えてくれるので、波が来るよとの合図でギアを上げてパドルしました」と栗真。
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 身長差25cmの二人だが、バランスを取るのが難しいタンデムでのニーパドルは息もピッタリ。今大会初の1位で、日本チームの雰囲気が一気に盛り上がった。

LSweb 初日のリベンジを果たしたのが、ビーチフラッグスの植木だ。早い段階からカナダのクックにプレッシャーをかけて彼をダウンさせると、鉄壁のスタートで確実に勝ち上がり優勝を手にした。

 「彼(クック)は速かったです。ただ、まだ若いし、国際大会の経験もそれほどないでしょう。ビーチフラッグスはメンタル的な要素が大きいスポーツなので、そこを冷静に判断しました。私のほうが経験値があるし、何よりここはホームですからね」と話す植木だった。

 大会初日はユースの後塵を拝する場面もあった日本代表だが、二日目は各種目で南半球勢に食らいつく意地を見せた。

 「チームワークの良さと、引き継ぎのテクニックなど、団体種目に強みがあるのが日本です。今回は個人種目より団体種目のポイントが高かったので、リレー種目でオーストラリアやニュージーランドを負かし、総合優勝することを目標としていました。初日の出遅れもあり結果は3位でしたが、次に繋がるレースもできていたし、今後の課題も見つかった良い大会でした」と、日本代表の飯沼誠司監督。
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 「ユースの選手には、ユース代表がゴールではなく、日本代表として世界と戦い勝ちにいくのが目標だと言い続けていました。ですから今回は日本代表を負かすこと、オセアニア勢に続いて3位になることを目標に戦ったのです。初日には日本代表に競り勝つ試合もいくつかできましたが、二日目はきっちり修正してきた日本代表に勝てませんでした。そのあたり、これからもっともっと経験を積んでいってほしいですね」と話すのは、ユース日本代表の青木克浩監督だ。
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 二日間にわたって開催された三洋物産 インターナショナル ライフセービング カップ2015。総合優勝はみごと逆転したオーストラリア、2位は僅差でニュージーランド、3位に日本代表、4位はユース日本代表、以下カナダが5位、6位は香港、7位に初出場で男子のみ参加した台湾という順位で終了した。

    
 
SANYO INTERNATIONAL LIFESAVING CUP 2015
TOTAL Result


1st AUSTRALIA 650pt
2nd NEW ZEALAND 646pt
3rd JAPAN 551pt
4th Youth JAPAN 475pt
5th CANADA 416pt
6th HONG KONG 324pt
7th CHINESE TAIPEI 104pt
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夏、間近!
きめ細かい砂浜で勝ったのは誰だ?
第28回全日本ライフセービング種目別選手権大会
2015/06/18

The 28th Japan National Lifesaving Individual Championships

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種目別・ビーチ編


大会会場となった千鳥ヶ浜海岸は、砂時計の材料にもなるというきめ細かな白砂のビーチが約2kmにわたって続く、東海地方最大の海水浴場だ。

ビーチ種目の決勝が行われた大会2日目は、朝方に降った雨の影響で、表面はサラサラしているものの、砂浜の深層は程良く締まった状態に。

このコンディションがビーチ種目に出場する選手にどう影響したのだろうか。

各レースを振り返ってみよう。

文・写真=LSweb編集室




植木選手、強さの秘訣はメンタルにあり!?

 砂上のスプリンターナンバーワンを決めるビーチスプリント。LSweb

 女子は日本体育大学LSCの長野文音が、昨年のインカレ、全日本に続き三連勝した。2位に入ったのは勝浦LSCの水間菜登。

 「ボードレースの2位には満足していませんが、スプリントでの2位は素直に嬉しいです。実はちょっぴり狙っていたので。
 私は元々、短距離が得意なスイマーでしたが、日本代表に選出されてからはビーチ競技も練習し、面白さを感じていたので、その成果が銀メダルという結果で現れて良かったです。
 実はスプリントのトレーニングをしたことで腿の後ろのハムストリングスが鍛えられ、走るだけではなくボードも速くなっているのですよ」
 と、話す水間だ。

LSweb LSweb3位は西浜SLSCの高校1年生、内堀夏怜が入った。サーフ競技もビーチ競技もこなすジュニア出身の彼女。

 全日本での初メダル獲得に、
 「これ、ちょっと嬉しいです」
 と、はにかんだ笑顔を見せた。

 男子は銚子LCの森 新太郎が完勝。連覇を目指した西浜SLSCの小田切伸矢は3位、日体大LSCの七海元紀が2位に飛び込んだ。

 知名度の高いビーチフラッグスは、地元、南知多町の人も大いに注目した。

 名物のわらび餅屋さんも勝敗の行方が気になった!?ようで、予選、決勝と大会本部前に移動販売車を停車。独特のかけ声で、こちらはライフセーバーたちの注目を集めていた。
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 そんなビーチフラッグス、今大会は上り坂のコンディションで行われた。特に、スタートから2〜3歩目までが急勾配の地形で、本数を重ねるごとに足に負担のかかるハードな条件だ。

LSweb 予選、2次予選、3次予選、準決勝と長丁場の戦いで、有力選手が次々と脱落する中、決勝まで勝ち上がってきた8人に東京消防庁LSCの本多辰也がいた。

 「今大会では(柏崎LSCの)池谷さんに次いでの年配者ですから(笑)」
 と、軽妙に話す本多だが、全豪選手権でメダルを獲得した実力者だけあり、もちろん目指すはトップだ。調子は悪くないという本多は、しかしベスト6で敗退となった。

 「昔は、初日の調子が良ければそのまま最後までいけたのですが、年を重ねるごとにコンディションをキープするのが難しくなってきますね。昨日の好調を維持できなかったのが残念です」
 と、肩を落とした本多だった。

 表彰台を巡る戦いは昨年同様、西浜SLSC対式根島LSCの構図となった。LSweb

 西浜SLSCは植木将人と小田切伸矢、式根島LSCは上遠野元太と野口勝成の4人。

 ベスト3は式根島同士がフラッグを取り合う格好となり、まず野口が敗退。続くレースは小田切が上遠野をがっちりブロックし、式根島勢を退けた。

 そして迎えたラスト1本。

 植木、小田切の師弟対決は、植木の辛勝で幕を閉じた。思わず頭を抱えた小田切は、
 「あー、なんでだろう。いけると思ったのですが……」
 と言ったきり、しばらく言葉が続かなかった。

LSweb 植木の強さは、鋼のような強靱な肉体だけでなく、ここぞという時の集中力と、迷いのない精神力を合わせ持っていることではないだろうか。

 メンタルトレーニングはしているのか? という質問に、植木はしばらく考え込んだ後こう答えた。

 「結局はどれだけトレーニングしたか、ということではないでしょうか。
 トレーニングしたという裏付けが自信に繋がり、その自信が精神的な不安を取り除いてくれるのだと思います。
 トレーニングできる時間は年代ごとに変わってきます。社会人になれば仕事があり、結婚すれば家族と過ごす時間もあります。その中でいかにトレーニングする時間を見つけるか、そしてその時間をどれだけトレーニングに当てられるか。
 人間って誘惑に弱いですからね。見たいテレビもあれば、友だちと会ってメシも食いたい、たまには家族とゆっくり過ごしたい……と誰もが思うじゃないですか」LSweb

 誘惑に負けず、どこまで自分が納得できる準備をしたか。結局のところ、それが最後に迷いを消してくれ、本来の実力を導き出してくれるということなのだろう。

 「僕は今、ほぼ、これ(トレーニング)しかしていないですからね」
 と植木。そして、
 「たまに、これでいいのかな? と思うこともありますよ。40代、50代になった時の自分の姿はまったく想像できませんが、続けているのか? それでいいのか? と考えることも、ないわけではありません」
 と、付け加えた。

 レース中は一切迷いを見せない王者も、決してスーパーマンではない。そんな一面が垣間見えた瞬間だった。


★☆★ビーチフラッグス男女決勝動画★☆★







9年ぶりに表彰台に上った、本田選手

 女子のビーチフラッグスは、東京女子体育大学LSCの小林千尋がベスト3で惜しくも敗れ3位。
 4月から社会人生活をスタートさせた勝浦LSCの但野安菜と、大会2日前まで教育実習をしていたという日本女子体育大学LSCの川崎汐美の頂上決戦となった。
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 学生時代から何度も対決していた2人のスタートはほぼ互角。ランのスピードもほとんど変わらない2人は、フラッグまでの間に何度も接触を繰り返したが、最後に競り勝ったのは川崎だった。
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「教育実習中は慣れないことばかりで、なかなか練習の時間が取れませんでした。テニスの授業を指導しなければいけなくて、でもテニスはやったことがないので毎日朝練して。正直、種目別どころではなかったのですが、実習校の先生方が大会に出てらっしゃいと送り出しくれたので出場できました。
 実習中、不安になると(但野)安菜さんにLINEして、それで少し気合いが入って、布団の上でスタートの練習をしてみたり(笑)。その後、ふと我に返って慌てて指導案を書きましたけれど」
 と川崎。

 ちなみに、昨年は但野が教育実習後に種目別に出場し優勝している。教育実習と優勝の法則やいかに!?

 大会の締めくくりに行われた、男女の2kmビーチラン。

 女子はピンクのキャップ、日女体大LSCがベスト3を独占した。優勝した小林果蓮は大学2年生。連覇を狙う1年先輩の大井麻生をラストスパートで引き離し、表彰台の頂点に立った。
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 日女体大LSCの水着の腰の辺りには「go! fight!! win!!!」の文字。果敢に攻めての勝利は、標語どおりだった。

LSweb 一方、男子は国士大LSCの須藤 凪が連覇を達成した。周回コースの半分は波打ち際を走れるコンディションということもあり、序盤から高速レースとなった。

 終盤になるとトップ集団は3人に絞られた。そこでロングスパートを仕掛けたのが、帝京大学LSCの笹田直太だ。最終の折り返しまでまだ距離のある波打ち際で一気に加速すると、集団を形成していた2人を引き離しにかかった。

 しかし、折り返しを過ぎるころにスピードダウン。須藤と茅ヶ崎SLSCの本田吉紀という後続2人に追いつかれてそのままジリジリと後退すると、須藤、本田に続き3番目でゴールした。
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 優勝した須藤は、
「ゴールまでにまだ距離があったので、ここでスパートしても最後まで持たないだろうと判断し、自分のペースを守りました。秋の全日本では先にスパートして逆転されてしまったので、冷静に状況判断することを心がけました」
 とコメント。

 3位の笹田に、もしスパートがもう少し遅かったら? と聞いてみると、
「うーん、タラレバですけど、それでもたぶん勝てなかったと思います。早い段階でのスパートは、バテ始めていた自分にとって一か八かのカケでした。それと柔らかい砂は苦手なので、波打ち際で勝負をかけてみたのです。でも、これが今の自分の実力だと思います」
 と、謙虚な答え。LSweb

「昔は序盤から飛ばして逃げ切るレースをしていましたが、もうそれはできないですね。久しぶりに出場した昨年秋の全日本では、同じようにやって失速しました。今回は国士舘の学生が良い走りをしていたので、彼が踏み固めてくれた足跡をたどるように走りました。久しぶりの表彰台。自分でも良くやったなと誇らしい気持ちです」
 と話すのは、2位の本田だ。

LSweb 2000年代前半、圧倒的なスピードで他を寄せ付けず、この種目の頂点に立ち続けた本田。全日本選手権では三連覇を含む優勝4回、2006年には全豪選手権のビーチランで銀メダルを獲得。翌年にはクーランガッタゴールドにも出場した強者だ。

 最後の全日本優勝からすでに9年。現在は横須賀市立の中学校で教職に就き、サッカー部の顧問も務めているのという。33歳になった今も当時と変わらぬスリムな体型を維持しているのは、熱血顧問の証拠だろう。

「今回は試合を控えた生徒たちと一緒に、自分も追い込んできました。全日本のメダルを手にするのは本当に久しぶり。生徒たちにも自慢できますね」
 と、満足そうな笑みを見せた。

 予定どおり全種目が消化された種目別選手権。種目別が終われば、夏もすぐそこだ。(敬称略)


 そう、種目別が終われば、あっという間にパトロールシーズンが始まる。

 ライフセーバーの本業は、水辺の事故を減らすこと。そのために日々トレーニングに励んでいるわけだが、今回の種目別では、選手たち以外にも来たるべきシーズンに向け、日々鍛錬している技術を披露してくれたライフセーバーがいた。
 
 ご存じ安全課の皆さんだ。

 競技の合間に行われたのは、IRB2艇とPWC1艇による救助デモンストレーション。海外で盛んに行われているレース形式に則って行われた。
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 スタートの合図でドライバーが砂浜を駆け出し、動力艇に飛び乗るとエンジンを始動。すかさずクルーが乗り込むと、スロットル全開で溺者(役)のいるブイまで疾走し、ブイを周回しながらピックアップするというものだ。

 浜に戻ってくるまでの早さを競う動力艇でのレースは、救助活動に直結する技術でもある。

 海上設営、ウォータージャッジ、もちろんいざという時のレスキューと、縁の下の力持ちとして大会を支えてくれる安全課。
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 ハードワークをこなしつつ、しっかりと技術を磨いている彼ら、彼女らは、やっぱりスゴイ人たちなのだった!


☆★☆ビーチ種目表彰☆★☆
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ビーチスプリント・男女

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ビーチフラッグス・男女

 
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2kmビーチラン・男女

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いつみても素敵なシーンです!

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夏、間近!
遠浅の海を制したのは誰だ?
第28回全日本ライフセービング種目別選手権大会
2015/06/17

The 28th Japan National Lifesaving Individual Championships

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種目別・サーフ編


7月まであと半月となった6月13〜14日、愛知県南知多町で「第28回全日本ライフセービング種目別選手権大会」が開催された。

大会会場となった内海千鳥ヶ浜海岸は「日本の渚百選」にも選ばれた海岸で、夏には大勢の海水浴客で賑わう。

そこで行われた種目別の熱戦、まずはサーフ競技からレポートしよう。


文・写真=LSweb編集室





20年ぶりに全日本に復活した國木選手

 遠浅で波穏やかな海と、サラサラとした砂が特徴のビーチで繰り広げられた今年の種目別には53チーム、585人が参加した。
 
 開会式で選手宣誓を行ったのは、大阪LSCの森井 寿。関西イントネーションでの選手宣誓に続き、地元・愛知LSCの山本准三がフィシャル宣誓を行った。

LSweb 各種目の予選が次々と消化された大会初日に、20年ぶりに全日本と名の付く大会に出場したというのが、山口県から参加した萩SLSCの國木孝治だ。

 國木は日本体育大学LSCの創生期メンバーの一人で、地方で精力的に活動してきたライフセービングの伝道師でもある。

 一昨年までは広島で活動していたが、現在は仕事の関係で萩在住。早速クラブを立ち上げ、ジュニア教室をメインに活動を開始した。

 「萩はほかの地方同様、人口減少が深刻な地域。そういう場所でライフセービングを普及しようと思ったら、子どもたちから育てていくしかないのです。だから地道に活動していますよ。
 県内には門司に別のライフセービングクラブがありますが、65kmも離れた場所なので、練習はもっぱら一人でやっています。今回は比較対象がない状態での参加でしたが、今の実力が良く分かり楽しかったです。目標は秋の全日本に出場すること。予選を勝ち抜いて、ぜひ本戦に進みたいですね」
 と、日に焼けた顔で話したくれた。

 大会初日、唯一行われた決勝種目が男女のサーフレースだ。

 女子は早稲田大学LSCの高柴瑠衣が種目別初制覇、男子は湯河原LSCの安藤 秀がクラブメイトの西山 俊を振り切り、オーシャン競技初の全日本タイトルを獲得した。
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LSweb 男子3位と健闘したのが大阪体育大学LSCの福井佑都だ。高校までは競泳に情熱を注いでいたという大学2回生の福井は、

 「昨年秋の全日本が終わった直後から、種目別を一つの目標としてがんばってきました。表彰台に上れたことは嬉しいですが、これをスタートラインにしてもっと上を目指したいです」
 と、力強く宣言。

 その姿を見ていた1年先輩の小林 海も、
「一緒に練習してきた後輩が結果を出してくれて嬉しい」
 と、頰を緩ませた。

LSweb 大会二日目は雨の音で目を覚ました。

 しかし、競技がスタートする前にはすっかり上がり、前日の暑さが和らぐしのぎやすいコンディションに。そんな中でサーフスキーレースの決勝がスタートした。

 まずは女子。スタートライン内側から若狭和田LSCの山本裕紀子が、外側から茅ヶ崎SLSCの名須川紗綾、西浜SLSCの中村 遥らが飛び出す。

 混戦模様の序盤を制し、第1ブイを最初に回航したのは山本だった。

 その直後、後続艇にアクシデントが発生。一人難を逃れた山本はフィニッシュまで独走し、初めての全日本タイトルを手にした。

 3週間前に行われた神奈川オープンサーフの会場で、「スキーでは今、負ける気がしない」と口にしていた山本。有言実行で満面の笑みを見せた。

LSweb 2位は名須川、3位には柏崎LSCの高橋志穂という順位。

 後続の2人に第1ブイで何が起こったのか聞いたところ、
 「いや、あれは……私が風の影響で揺れた第1ブイに接触し、白黒ブイの方へはじき飛ばされてしまい、白黒ブイのロープにラダーを引っかけてしまったのです。
 それでしかたなくロープを外すために沈をさせました……。ほかの人には本当に申し訳ないと思っています」
 と、神妙な面持ちの名須川が説明してくれた。

 後続集団をブロックする形になってしまった名須川だが、沈から2位まで挽回。そのあたりの力はさすがである。

出木谷選手、二冠達成!

LSweb 2日間を通して波穏やかで、うねりもほとんどない千鳥ヶ浜海岸だったが、両日とも午後になると南東の風が吹き上がってきた。

 沖に向かって左から右へ吹く風に翻弄されたのが名須川なら、このコンディションを上手く利用したのが、男子サーフスキーで優勝した九十九里LSCの出木谷啓太だ。

 全日本やインカレなど、さまざまな大会の優勝経験者がスラリと顔を揃えた決勝レースは、スタートから猛烈な水しぶきが上がるパドル合戦に。

 コース取りの激しさは女子の比ではなく、大混戦のまま第1ブイに突入。
 ここで男子にもアクシデントが発生し、優勝候補の一角である下田LSCの松沢 斉や東京消防庁LSCの落合慶二らが先行艇に置いて行かれることとなった。

LSweb 第3ブイを回った時点でトップに立ったのは、湯河原LSCの西山。
 その後ろから、勝浦LSCの内田直人や篠田智哉、下田LSCの加賀田哲也や菅沼寛也、そして昨年優勝した出木谷らが虎視眈々とトップを狙う。

 先頭集団の中で一番内側に位置していたのが、青と白のストライプ艇、出木谷だ。真正面からフィニッシュラインを目指す西山。斜めから迫る出木谷。手に汗にぎる緊迫した勝負は、最後の最後で出木谷に軍配が上がった。

 「南東の横風が吹いていたので、風によって起きる小さなうねりをつかむもうと内側から攻めました。
 今までならがむしゃらにとばしてしまうところでしたが、がまんして追いかけられたのが勝因です。一緒に練習してきた仲間に感謝ですね」
 と、破顔した出木谷。LSweb

 表彰式で金メダルを授与されると、すかさず練習仲間であり良きライバルである落合と篠田が駆け寄り祝福した。

 そこで「勝者を囲んで金メダルを羨ましそうに見てもらえないか」とお願いしてみると……、早速ポーズを作ってくれた3人(右の写真)。

 編集子の無茶ぶりに快く対応していただき、ありがとうございました!

 3位に入ったのは下田SLCの菅沼寛也。

 「きついレースでしたが、最後は娘の顔を思い出しがんばりました」
 と、目尻を下げ、愛娘と一緒に表彰台に上った。

 出木谷は続くボードレースでも優勝し、今年の種目別二冠を達成した。

 「勝因はスキーと一緒です。先行する2人(大体大LSCの小林 海と西浜SLSCの上野 凌)の後ろにつく作戦もありますが、海面が乱れていて難しいし疲れます。内側のほうがうねりのあることは、スキーの時に体験済みでしたからあえてトップの2人とは離れて攻めました」

 という冷静な判断が的中し、フィニッシュ間近での大逆転勝利となった。

 実は波打ち際で真っ先にボードを下りたのは、小林とトップ争いをしていた上野だった。
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 小林とのデッドヒートから一足先に走り出そうとしたその瞬間、ストラップを握り損なう痛恨のミス。

 焦るほどに手元はおぼつかなくなり、その間に出木谷、さらには後続の落合、国士舘大学LSCの牛越 智にも抜かれ、最終成績は小林に続く5位という結果に。

 「いろいろなことが勉強になった種目別でした。あー、まだまだですね」
 と、悔しさを口にした上野だった。
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 一方女子は、オーストラリア留学から戻った西浜SLSCの上村真央が優勝。昨年に続く二連覇を成し遂げた。

 ミスター&ミズ・ライフセーバーを競うオーシャンマン/オーシャンウーマンは、スイム→スキー→ボードの順番で行われた。

 女子は最初のスイムから、九十九里LSCの三井結里花が独走態勢に。得意のスイムで後続を引き離すと、スキー、ボードでもリードを広げて危なげなく完勝した。その直後、
 「この後、2kmビーチランにも出場します」
 と、疲れも見せずに召集場所へ向かった三井。

 スタミナとガッツは、さすがミズ・ライフセーバーである。
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 男子もスイムからボードまで、1位は終始変わらない展開で、湯河原LSCの西山 俊が優勝。サーフレース、サーススキーと2位が続いていただけに、最終種目で勝って、ようやく屈託のない笑顔を見せてくれた。
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 2位は安定感抜群の長竹康介、3位にはボードレースの悔しさをぶつけた上野 凌と西浜SLSC勢が入った。(敬称略)


 熱戦はまだまだ続くのだが、ひとまずサーフ編を終わりにしよう。続きはビーチ編で。



【第28回全日本ライフセービング種目別選手権大会 成績表】



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サーフレース・男女

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サーフスキーレース・男女

 
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ボードレース・男女

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オーシャンマン/オーシャンウーマン

 
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オフィシャルの皆さん、ありがとう!

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安全課の皆さん、ご苦労様!





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全日本プール Day2
SERCは西浜SLSC、総合優勝は日体大LSCへ
2015/05/21

The 28th Japan National Pool Lifesaving Championships

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第28回全日本
ライフセービング・プール競技選手権大会



28回目を迎えた全日本プール競技選手権大会。

2日目は溺水事故の救助シミュレーションでライフセーバーの実力を競う「SERC」からスタートした。

午後からは、個人・リレー種目で0.1秒を争う接戦が再開。さて、優勝杯は誰の手に?


文・写真=LSweb編集室




苦戦チーム続出の難関SERC

LSweb プール競技選手権の目玉種目ともいえるのが、SERC(シミュレーテッド・エマジェンシー・レスポンス競技)だ。

 救助技術が採点されるため、この種目で上位に入ることがライフセーバーたちにとっての大きな目標となっている。

 状況設定を考えるSERCワーキンググループは、約1カ月前からさまざまな事故を想定し、あらゆる可能性を検討しながら準備を行うのだが、今大会では「自然公園に遊びに来て事故に遭遇」というシチュエーションを設定した。近年にない状況設定で、面食らった人も多かったのではないだろうか。

LSweb 「今回はパトロール中ではない、一般人の立場で事故に遭遇したらどうすべきかを問う想定でした。ウォーターセーフティーを念頭に置いた設定で、実はやるべきことは非常にシンプルなのですが、シンプルだからこそ難しかったかもしれません。救助しなければ、というライフセーバーの性(さが)が前面に出てしまったチームほど、思ったより得点が伸びなかったかもしれませんね」
 と話すのは、ワーキンググループを率いた篠田敦子さんだ。

 状況設定が難しかったというのは、上位チームの(救助)達成率が昨年と比べて10%ほど低かったということでも証明されているだろう。そうした状況で優勝したのが、上位常連チームの西浜SLSCだった。
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 西浜SLSCはどう戦略をたてたのか、何が上位チームの勝敗を分けたのか、また個々の事例へはどう対処すれば良かったのかなど、SERCの詳細は改めてレポートするので、もうしばらくお待ちください。

ラインスローで強さを見せた柏崎LSC

 SERCで重点の置かれたウォーターセーフティーの理念。

 自分の身を守りながら(自助)、溺れている人を助ける(共助)方法の一つに「スロー」という技がある。その技術を競うのがラインスロー競技だ。
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 世界大会では10秒を切るタイムも出るこの種目。女子は柏崎LSCの高橋志穂が一投目で決め、大会新の13秒32を記録した。2位は銚子LSC。こちらも小林夏実が一投目で成功させた。

 男子は日本記録保持者の西浜SLSC、長竹康介が安定したスローと力強いドラッグで10秒76を記録し優勝。10秒90をマークした日本体育大学LSCの小椋隆継だが、長竹に0.14秒およばず僅差の2位となった。
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 3位と大健闘したのが柏崎LSCの高校生ペア、加藤 豪と片山雄起だ。柏崎LSCは男女ともにメダルを獲得。熱心なコーチの下、しっかり練習してきた成果が現れた。

 上位チームはどんなテクニックを用いているのだろうか。競技映像をリンクしたので、今後の参考にしてほしい。


★ ラインスロー競技映像 ★



ライバルの存在が刺激に

LSweb 道具の進化もあり、記録更新の期待が高かった100mマネキンキャリー・ウィズフィン。

 女子の最終組には、勝浦LSCの水間菜登と若狭和田LSCの山本裕紀子という、ハイパフォーマンスチームの2人が登場した。しかし、タイムは1分を切ることのない平凡な記録に。

「ベストが出なかったです」と悔しそうな表情なのは、1分00秒14の水間。

「最近、いつもそうなのですが、折り返し後の50m後半になると、マネキンがゆらゆらして滑ってしまうのです。脇を締めるようにしていますが、心拍数も上がってくる時間帯なので、意識がそこに集中できなくなるんでしょうね」と続けた。

 「潜水でゴーグルがひっくり返って出遅れました。マネキンピックアップで(水間)菜登ちゃんに追いついてきて、いける! と思っていたのですが、残り25mぐらいのところでマネキンが滑ってしまいました」と話すのは、1分01秒69で2位の山本だ。

 レース後、サブプールで話し込む2人に声をかけると、「お互いにマネキンを滑らせて、ツルツル祭りですわ(笑)」と山本。関西人らしい反応を見せた後、
 「(反発力の高いロケットフィンなど)フィンが変わり、自分の泳ぎが速くなったことで水の流れも変わり、その水流でマネキンがもっていかれるのだと思います」と冷静に分析することも忘れなかった。
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 「55秒ぐらいを出したいと思っていたので、負けたことは悔しいですが、それは不甲斐ない自分に対して。相手のことは素直に称える気持ちになります。競泳時代にはなかった感情ですね。なんでやろ?」と言う山本に、
 「それがライフセービングスピリットですよ。私も裕紀子さんのような刺激をもらえる人が現れてくれて、とても嬉しいです」と水間が笑顔で答えた。

 「そやな、ライフセービング競技のタイムって、ただのタイムと違うもんな。重くても、辛くても、タイムが遅くても、マネキンは放したらあかんって、私もチームメイトに言ってるし……」と、二人の会話はしばらく続いた。

 男子も最終ヒートにハイパフォーマンスチームのメンツが5人、ずらりと顔を揃えた。その中で勝ったのが、新島LSCの園田 俊。
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 「すごいメンバーと一緒で緊張しました。隣のコースには平野(修也)さんがいたので、50mのターンまではチラチラ横目で見ながら行き、そこからは前だけを見て泳ぎました。後半、けっこうバテてしまい、50秒を切れなかったのが残念です」と園田。優勝記録は51秒16だった。

 園田がチラチラ見ていた、という辻堂LSCの平野修也は7位。

 「この種目を泳ぐのは、今日が2回目なんです。今日の泳ぎですか? すべてがダメでした。ということは、まだ上にいける余地があるということですよね」と、ちらりと自信を覗かせた平野だ。

プレッシャーをパワーに変えて

LSweb 女子200mスーパーライフセーバーで優勝したのは、この種目を得意とする九十九里LSCの三井結里花。

 自身の持つ日本記録を3秒近く上回る、2分33秒02の日本新をたたき出した。圧巻だったのは、マネキンキャリーの後のトランジットだ。正確に計ったわけではないが、フィンとチューブを2〜3秒で装着し、後続との差を一気に広げた。

「普段はたぶん5秒かからないぐらいでトランジットしていると思います」と三井。本番の大舞台で集中できるのが、彼女の強さなのだろう。

 男子200mスーパーライフセーバーは、湯河原LSCの安藤 秀が2分20秒69で初制覇。安藤も三井と同じく、スムースなトランジッドが際だっていた。

 ラスト50mで猛然と追い上げてきたのが、日本体育大学LSCの坂本 陸。後半に強い坂本だが、僅かに及ばず2位に甘んじた。
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「速い選手と泳げるのは刺激になります」と坂本。表彰台では妹の坂本佳凪子とともに、仲良く銀メダルを授与されていた。

 優勝争いを演じた最終ヒートの一つ前には、かつての日本記録保持者である御宿LSCの林 昌広が出場。全盛期のタイムには届かなかったが、レース後、自ら隣のレーンの後輩たちに握手を求める姿には、ベテランらしい貫禄が漂っていた。

LSweb 2日間にわたる熱戦を締めくくったのが、4×50mメドレーリレーだ。

 女子は館山SLSCと銚子LSCが接戦を繰り広げ、0.06秒差で館山SLSCが優勝。男子は4泳の深井俊光が激泳を見せた、湯河原LSCが2位に3秒近くの差をつけ完勝した。

 中村美穂→鎌田香織→池永早弥佳→中嶋理乃と繋いだ館山SLSC。

 喜びに沸くメンバーに話しを聞くと、「実はぶっつけ本番の、初めましてメンバーなのです」という答え。しかし、それぞれが競泳やフィンスイムのバックボーンを持つ、実力者チームだ。

 クラブの入り口は常に広く開けている、という考えでライフセービング活動をしている館山SLSCらしい勝ち方だった。
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 湯河原LSCは大島圭介→菊地洸貴→安藤 秀→深井俊光と繋いだ。

 「(エースの西山)俊も、(コーチの青木)マーボーさんもいないので、逆に燃えました」と深井。2泳の菊地は西山の替わりというプレッシャーをはねのけ、見事、優勝。
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 「コイツ、昨日から緊張しまくっていましたから」とチームメイトにからかわれていたが、チームに貢献し晴れ晴れとした笑顔を見せてくれた。


 総合優勝は日本体育大学LSC。全日本プール三連覇を達成した。金色の優勝杯を手渡され、目を潤ませたのは主将の山口祐太と、女子主将の飯田亜実。

 「部の体制が変わったこともあり、いろいろあったんです僕らの代は。でも、まず一つ結果が出たので、少しホッとしたというか、自信が持てるようになったというか、もっともっとがんばらなければいけないというか、とにかく今はちょっと嬉しいです」と話す山口の後を継ぎ、
 「幹部としてはこれが始まり。学生としては今年が最後の年なので、これからも気を引き締めてやっていきます」と飯田が言葉を続けた。
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  “常勝”というプレッシャーをはねのけ、みごと勝利を手にした名門・日体大LSCだった。(敬称略)


★第28回全日本ライフセービング・プール競技選手権大会2日目 表彰★

SERC

SERC

ラインスロー・男女

ラインスロー・男女

 
100mマネキンキャリー・ウィズフィン・男女

100mマネキンキャリー・ウィズフィン・男女

200mスーパーライフセーバー・男女

200mスーパーライフセーバー・男女

 
4×50mメドレーリレー・男女

4×50mメドレーリレー・男女

総合成績

総合成績

 
オフィシャル全員集合!

オフィシャル全員集合!

オ・マ・ケ Happy Smile!

オ・マ・ケ Happy Smile!





LSweb
全日本プール Day1
0.1秒に潜在するライフセーバー魂
2015/05/19

The 28th Japan National Pool Lifesaving Championships

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第28回全日本
ライフセービング・プール競技選手権大会


2015年5月16〜17日、神奈川県横浜市の横浜国際プールにて「第28回全日本ライフセービング・プール競技選手権大会」が開催された。

高校生から社会人まで、49チーム、652人が参加した今大会。記録の裏にある選手たちの思いに迫った。



文・写真=LSweb編集室




今大会の日本新は男女合わせて5つ

LSweb 今大会で更新された日本記録は、男女合わせて5種目。

 記録ラッシュに沸いた昨年(男女合わせて8種目で日本新を記録)と比べると、数字的には少し物足りない大会となった。しかし、記録の影にはいつもの大会と同じように熱いライフセーバー魂が潜んでいた。

 大会初日、最初の種目は200m障害物スイム。

 女子は銚子LSCの栗真千里が2分16秒65の大会新記録で連覇を達成した。今春から成城学園中学の教員となった栗真は、同校の水泳部顧問、ライフセービング部コーチも務める。教え子が見守る中でのレースとなった。
 
 「前半は押さえて、後半で追い上げる作戦でした。とはいえ、少し差が広がっていたので一瞬、マズイかなと思いました。LSweb
 でも体の中にまだパワーが残っていたので、大丈夫! いけると。生徒たちの前で優勝できて格好がつきました」と満面に笑みを見せた。

 2位は早稲田大学LSCの高柴瑠衣。3位には湯河原LSCの小口綾乃が入った。
 
 日体大競泳部出身の小口は社会人2年目になり、時間的な余裕ができた今期から、本格的にライフセービングに取り組むことにしたそうだ。

 「競泳時代は800mを得意としていました。ライフセービングの大会に出場するのは初めてですが、この緊張感がたまらないですね。未知なる世界で自分のモチベーションを上げるためにも、大会に出るのは良い刺激になります。記録は……今後に期待してください」と力強い言葉を残した。

 男子は成蹊大学LSCの森田大地が2分05秒11で優勝。

LSweb 「2分3秒台を狙っていましたが、練習不足で本当に調子が悪かったので、とにかく前半から飛ばしていきました。案の定、後半はバテバテ。追いつかれなかっただけでも良かったです」と苦笑い。
 新入生勧誘などに力を入れ、なかなか練習時間が取れなかった、と悔しそうな口ぶりだった。

 15年連続で全日本プールに出場しているというのが、和田浦LSCの草柳尚志。

 「どんなタイムで泳げるか、それが今の自分の実力を測るバロメーターになっています。記録を狙っていた学生時代とは違い、ライフセーバーとしてしっかりトレーニングできているかを知る手だての一つです」と落ち着いた声で話す。

LSweb レース後にタイムを聞くと、「もう少しトレーニングしないとダメですね」という答えが返ってきた。

 奇しくも同じ思いを口にしていたのが、新島LSCの田村浩志。

 後輩たちからレジェンドと尊敬される田村もまた、自らの実力がパトロールできる基準に達しているか見極めるバロメーターとして、全日本プール選手権に出場していると話していた。

 「いやぁ今年はリレーにも駆り出されてしまって、大丈夫かな」と言いつつ、なんだか楽しそうな田村だった。

レベルアップはライフセーバーの使命

 女子100mマネキントウ・ウィズフィンは、勝浦LSCの水間菜登が1分03秒37の日本記録で優勝した。

 昨年の大会で「フィンスイムの泳ぎ方が分かってきた」と話していた水間。
 1年間でさらにフィンスイムのコツを掴んだようで、全盛期のイアン・ソープ選手を彷彿させるような、ゆったりした伸びやかな泳ぎで、自身が持つ記録を更新した。
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 男子は西浜SLSCの上野 凌が、届いたばかりというグライドフィンで出場し、クラブの先輩である長竹康介を押さえて優勝した。タイムは56秒60。

 「大会の3週間前に届いたんです。練習で長く履けるフィンではないので、まだまだ自分のものにできていなくて……。これでレースに出るか迷いました。でもチューブを巻くのが上手くいったこともあり、結果が出せました」とホッとした表情を見せた。
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 昨年はごく一部の選手しか使っていなかったロケットフィンやグライドフィンだが、今年は上位に入る選手たちの間でかなり普及していた。これも時代の流れだろう。

LSweb ライフセーバーにとって、最も基本的な技術であるマネキンキャリー。この技術を磨き、泳力を鍛えて記録を更新したのが、50mマネキンキャリーで優勝した辻堂LSCの平野修也と日本体育大学LSCの坂本佳凪子だ。

 坂本は大会新となる38秒34をマーク、連覇を達成した。

 「最初からとばして行こうと思っていました。日本新を狙っていたのでちょっと悔しいです」と少し複雑な表情の坂本だった。

 平野は2位以下に1秒以上の差をつける31秒16の日本新で優勝した。競泳、フィンスイム、ライフセービングと3つの競技を掛け持ちする平野。フィンスイムでは日本代表としても活躍している。

LSweb 「僕の場合は、この3つをやっているからそれぞれのレベルが上がっているのだと思います。ライフセーバーの中には、“競泳はもういい”からとライフセービングを始める人がいますが、その考えには賛成できません。
 トップレベルでやるからこそ、自分のレベルも上がっていく。それは当然のことですよね。競泳にはマスターズの大会がありますし、フィンが速くなりたかったら、フィンスイムの大会に出てみればいいと思います。
 もちろん、その先にはライフセーバーとしての本質があるわけで、だからこそ自分のレベルを上げる努力をするべきではないでしょうか」と平野。

 トップ選手だからこその説得力のある言葉だった。

初日のリレー種目を制したのは?

LSweb 男女ともに日本新を記録したのが100mレスキューメドレーだ。

 女子は九十九里LSCの三井結里花が1分15秒89、男子は湯河原LSCの安藤 秀が1分05秒88でみごと優勝を果たした。

 序盤から、隣のコースを泳ぐ昨年優勝者の栗真とデッドヒートを繰り広げた三井は、後半、栗真との差をジリジリと広げ接戦をものにした。

 「私、前半はいつも遅いんですよ。
 今年は社会人2年目になり、なんとか大会に間に合わすことができました」と笑顔を見せた。
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 三井とは対照的に、前半から飛ばしていったのが安藤だ。
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 「1分4秒台を狙っていたのですが、ターンで滑って、潜水が上手くできなかったのが失敗です。
 先日、フィンスイムの大会にも出場しました。フィンはあまり練習していないので成績はさっぱりでしたが、小刻みに大会に出ているほうがモチベーションが上がるので試してみたのです。ライフセービングももう少し大会があるといいですよね」と言うと、2位でクラブメイトの大島圭介と握手を交わした。

 大会初日に行われたリレー種目は、4×50m障害物リレーと、4×25mマネキンリレーの2種目。
 女子は2種目とも日体大が制し、総合優勝に向け着実にポイントを積み重ねていた。
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 男子の障害物リレーは湯河原LSCが1分46秒91で優勝。マネキンリレーは日本大学SLSCが東海大学クレストを振り切り、1分15秒51の大会記録で優勝した。

「新歓の海練などに時間を割かれ、プールでの練習はあまりできませんでした。だから最後まで引き継ぎの練習をしていたのですが、やりました!」と歓喜の日大メンバー。
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 荒生拓人、中村夏貴、大野祥吾、那須凛斗とマネキンを引き継ぎ、リレーに強い日大を実証した。


 熱戦はまだまだ続くのだが、その様子はDay2のレポートでお届けしよう。(敬称略)


【第28回全日本ライフセービング・プール競技選手権大会 成績表】



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200m障害物スイム・男女

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100mマネキントウ・ウィズフィン・男女

 
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50mマネキンキャリー・男女

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100mレスキューメドレー・男女

 
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4×50m障害物リレー・男女

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4×25mマネキンリレー・男女








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