日本の大学を卒業した一人のライフセーバーから「留学先の海外でもライフセービングを楽しんでいる!」という知らせが届いた。
米国ライフガードの本場、アメリカ西海岸に旅立ったのは、今年3月に成城大学を卒業した利根川莉奈さんだ。
競技会に挑戦したり、ユース選手の指導を手伝ったりと、積極的にライフセービング交流を広げている彼女が見て、体験したアメリカ流ライフセービングを、前編・後編でお届けしよう。(LSweb編集室)
文・写真提供=利根川莉奈(成城学園LSC/今井浜SLSC)
アメリカのライフガード事情
私は今年3月に大学を卒業後、4月からアメリカのカリフォルニアで生活を始めました。こちらでもライフセービングを続けたいと、以前から交流のあったアメリカ代表チームの監督であるジェイさん(Jay Butki氏)に連絡を取ると、大会に出場させてもらえる事に!
そしてなんと、7月には「カリフォルニア州大会」、8月には「インターナショナルサーフフェスティバル」と「全米選手権」に出場する機会を得ました。
どれも規模や特色の違う大会ながら、日本の大会とは一味違った良い経験ができました。またそこでたくさんの人々と出会い、アメリカのライフセービングについての話も聞くことができました。日本と異なる点も多く、日本のライフセービングを客観的に捉える機会にもなりました。
アメリカのライフセービングは、主に監視活動の時期や雇用形態などの点で日本と大きく異なります。例えば監視活動時期は、繁忙期などによって数は異なるものの、こちらでは一年中タワーを開いています。
日本と違い、海で時間を過ごすことが国民にとって身近である上に、気温の変動が少ないため、どんな時期のどんな時間であっても海辺には人がいます。
そのような理由から、こちらでは毎日最低でも1つのタワーが開きます。日本のように、ライフセーバーが配置されるのは海水浴期間だけ、という概念がありません。
また、雇用形態も日本と異なります。アメリカのライフガードチームには「フルタイム」と「パートタイム」の2種類があり、一番大きいクラブでは合計1000人弱が所属しています。
フルタイムはほかの仕事と同じように、基本的にライフガードを仕事として従事していて、パートタイムは大学生や、ほかにも仕事をしながらライフガードに携わる形となっています。
大会は仕事の合間のレクリエーション
このように活動形態が日本と違うこともあり、大会の位置付けも日本と大きく異なります。
「大会に参加する」というと日本では、厳しいトレーニングを積んで準備しなくてはと思ったり、敷居の高いイメージを持つ方も少なくないと思います。
ところがこちらでは、大会に参加することは仕事の合間のレクリエーションのような位置付けで、皆でレースを行って日々の成果を競い合い、大会に集い共に戦った仲間たちとの時間を楽しむ、といった雰囲気が強いようでした。
すべての大会後には、必ず近くのレストランやバーで「アフターパーティー」が行われます。
全米選手権後のパーティーで、あるマスターエイジグループの選手に話を聞いたところ、「ここで一年に一度しか会えない仲間たちに会う、そんなことが楽しみで毎年出ているよ!」という話を聞きました。
アメリカの大会には、各年齢別のエイジグループレースがあり、マスターエイジの選手が非常に多く参加しています。
これは私にとって、アメリカの大会に出て一番感動したポイントでした。いくつになってもライフセービングを楽しむ彼らの姿を見ていると、自然と応援したくなる気持ちになりますし、果敢に自然に立ち向かう姿からは、長年この活動に携わってきたことから生まれる威厳が伺えます。
彼らの姿は本当に素敵で、私はとてもインスパイアされました。最年長の方は81歳で、息子も40代のエイジグループとしてレースに出ているという親子でした。
ジュニアの活動から学ぶことが多いように、マスターエイジの方々のレースも私たちに様々なことを教えてくれます。
日本ではまだまだエイジグループのレースを作るほどの人口がいないけれど、いつか日本でもマスターからジュニアまでが集う、大きな家族のような雰囲気の大会ができるといいなと思いました。
そんなマスターエイジグループに刺激されながら参加した「カリフォルニア州大会」「インターナショナルサーフフェスティバル」「全米選手権」の3大会。その顛末は後編でお伝えします。