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必読!女性ライフセーバーの健康管理
第2回 月経と女性ホルモン
2017/07/11

How to manage in good shape for female lifesavers

各地から続々と海開きの頼りが聞こえてきた!

今回も水辺の安全を守るために奮闘するライフセーバーたち、
特に女性ライフセーバーが元気でがんばれるように
健康管理のヒントを紹介しよう。

今回は月経と女性ホルモンについて。

大竹SLSCのライフセーバーであり、
助産師として働く齋藤愛子さんの解説でお届けする。(LSweb編集室)

文=齋藤愛子(大竹SLSC)・イラスト作成=LSweb編集室




月経とは

女性なら誰もが経験する月経。毎月1回、平均3〜5日におよぶ膣内からの血液の排泄はそれだけでもうっとうしいが、正常な月経と月経周期は女性の体を健康に保つため、また妊娠出産するために、とても大切なものである。
 今回は女子ライフセーバーに、自分の月経について大切に考え、意識してほしいことを伝えたい。

 卵巣には卵子のもととなる原始卵胞がつまっている。月経が始まると卵胞を刺激するホルモンが出され、それによりエストロゲン(卵子を育てるホルモン)の分泌が促進する。エストロゲンの量が一定値を超えると、それを合図に大量のLH(黄体形成ホルモン)が放出され、このLHが高値に達することで排卵が起こる。この排卵期に性交をすると受精の可能性が高まり、妊娠しやすくなる。

 ちなみに黄体とは、排卵後の卵胞の変化形で、妊娠の成立に一役かっているので、排卵前にLH(黄体形成ホルモン)の分泌が上昇するのは排卵後黄体となって妊娠の成立を助けるためという点で理にかなっている。

 排卵後はプロゲステロン(妊娠の維持に不可欠なホルモン)が黄体から多量に分泌され体温が上昇し子宮内膜が厚くなるが、受精卵が着床しなければ(妊娠しなければ)プロゲステロンの分泌は低下し、妊娠に備えて分厚くなっていた子宮の内膜は剥がれ落ちて、溶けて排出される。これが月経である。

 複雑なメカニズムだが、要約すると①エストロゲン分泌→②その影響でLH分泌が一気に高値になる→③排卵→④妊娠成立を助けるプロゲステロン分泌→⑤妊娠しなければ子宮内膜剥離(月経)→①に戻る、ということだ。

LSweb

女性ホルモンの役割

  月経があることでエストロゲン、プロゲステロン、LHといった女性ホルモン量がコントロールされていることがお分かりいただけただろうか。女性ホルモンは月経がないと正常に分泌されないため、ホルモンバランスが乱れてしまう。女性ホルモンは女性の健康には不可欠なのだ。ここではそれぞれのホルモンの役割をお伝えしたい。

 まず、LHとプロゲステロンの役割について話をしよう。

 LHは、先に述べたように黄体を形成させることそのものが役割である。プロゲステロンは黄体から分泌されるホルモンで、①体温を上げる ②子宮内膜を維持する ③乳腺を発達させ乳汁分泌を促す、というように、主に妊娠を維持する役割が大きい。妊娠中もこのプロゲステロンはずっと分泌される。

 エストロゲンの役割としては、①卵子を成熟させる ②血漿コレステロールを減少させる→動脈硬化を予防し血液の流れをよくする ③カルシウムが血中に溶けだすのを抑える→骨折を予防する、といったものがあげられる。



 女性は男性よりも動脈硬化になる割合が少なく、また骨折予防にもこのエストロゲンの力が大きい。よく閉経した女性が骨粗鬆症になったり動脈硬化のリスクが高まったりすることを新聞などでも目にするが、これは月経がなくなったことでエストロゲンの分泌が少なくなった結果起こることなのだ。

 だが最近、骨折をする若い女子が多くなっている。なぜか。骨折をする女子の多くが、不規則な月経や無月経により女性ホルモンのバランスが乱れていることが考えられる。先に述べたように、エストロゲンは月経があることでたくさん分泌されるのだが、月経が少ない、または無いことで、充分に分泌されず、カルシウムが骨に沈着せずに血液内に溶けだしてしまうのだ。

 実は、ここ最近の全日本選手権では、ほぼ毎年、骨折する女子ライフセーバーがいるということをご存じだろうか?



 以上のように女性ホルモンの低下は、動脈硬化、骨折など、様々なからだの不調を引き起こす。月経があるためには、エストロゲンとプロゲステロンのホルモンバランスが大切であり、このどちらかが欠けても正常な月経はやってこない。

 プロゲステロンの分泌が不足すると無月経の原因にもなりうる。正常な月経があることは排卵があることを意味するので(排卵しない無排卵性月経もあるが)、無月経は不妊症の原因にもなることを知っていてほしい。無月経の女子は、放置せず、一度婦人科の診察を受けることを勧める。


 女子の皆さんは今一度、自分の月経周期を見直してみてほしい。次回は、月経を正常に保つためのこころがけ、気をつけることについて伝えていきたい。


    
 
齊藤愛子(さいとうあいこ)

大竹SLSC所属。筑波大学入学後にライフセービングを始め、今年でライフセービング歴14年。競技ではオーシャンウーマンやスーパーライフセーバーを得意とした。
大学卒業後、会社勤務を経て、より深く命に係わる仕事をしたいと看護師免許、その後、助産師免許を取得。現在、産婦人科(神奈川県)にて助産師として命の誕生に寄りそう現場に携わっている。内閣府が実施する国際交流事業「東南アジア青年の船」に参加した経験も持つ。JLA国際室所属。サーフインストラクター。B級審判。


 
    








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