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地域で参加、親子で体験!
今年も盛況だった絆プロジェクト
2014/07/21

KIZUNA Project-Water Safety event 2014 in Tujido Pool

第2回 水辺の安全を一緒に学ぼう
in 辻堂海浜公園ジャンボプール


LSweb7月6日、神奈川県藤沢市にある辻堂海浜公園ジャンボプールにて、第2回「水辺の安全を一緒に学ぼう〜絆プロジェクト〜」が開催された。

このプログラムは、夏休みを野外で楽しく過ごすために、親子で水辺の安全について学んでもらおうと企画されたもの。

夏季シーズンの営業開始を翌週に控えた大型プール施設を利用し、実際に水の中に入ってさまざまな体験をしてもらうイベントだ。運営には多くのライフセーバーが参加した。

当日は薄日が差すちょうど良いお天気。今年も海浜公園のプールに一足早く、子どもたち(と保護者)の歓声があがった。

文・写真=LSweb編集室




震災の教訓を風化させないために

LSweb 2回目となる絆プロジェクトは、小学1年生から中学生まで、そして保護者の大人を含め307人の参加者が集まった。小学4年生までは保護者の同伴が義務づけられていることもあり、大勢の大人も参加。中には「孫と一緒に来ました」と話すお元気なおばあちゃんの姿もあった。

 プログラムは、ウォーミングアップも兼ねた全員参加の「集まれ湘南っ子」でスタート。
 ここで昨年に引き続き講師を務めた豊田勝義さんから、「怖いなと思ったり、できないかも? と不安になっても、まずはすべてのプログラムをやってみてください」という呼びかけがあった。

 これは子どもたちだけでなく、保護者にも向けられたメッセージだ。「とにかくなんでも体験することで、水の怖さや楽しさを感じることができる」とライフガード歴23年の豊田さんは言う。
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 水辺の安全を学ぶという絆プロジェクトだが、実はもう一つの目的がある。
 それは津波による甚大な被害が発生した東日本大震災の教訓を多くの人と共有し、来たるべき災害時に活かしてほしいという思いだ。

 そこでプログラムに、①波乗り体験、②浮いて待て、③君もライフセーバー、④みんなトライ&蘇生法訓練、という4つのメインメニューを導入。4グループに分かれた参加者が、それぞれを順番に体験することとなった。

 簡単に個別メニューの内容を紹介しよう。

 波の出るプールを利用し、ニッパーボードに乗ってみるのが「波乗り体験」。子どもたちに一番人気のメニューだが、楽しいだけでなく、波にひっくり返されたり、波を人工的に造ることによってプールでもカレントが発生するなど、水の威力を知ることができるプログラムだ。
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「浮いて待て」は水に落ちた(あるいは流された)時に、助けが来るまでどうやって浮いていればいいかを学ぶプログラム。子どもも大人も、この体験を通して、ペットボトルでも十分に浮くことができると知ることになる。流れるプールを利用することで、より臨場感のある体験ができ、流木やクーラーボックスなども浮き具になることが分かったはずだ。
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 流れるプールの下流には「君もライフセーバー」のグループがいる。ここでは、声賭け、水に入らずに助ける方法、ヒューマンチェーンでの救助などを学ぶのだが、終盤には上流から「浮いて待て」のグループが次々と流されてくる。彼らを励まし、道具を使い、あるいはヒューマンチェーンで実際に救助するのが、このプログラムの特徴だ。
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 「みんなトライ&蘇生法訓練」は唯一、大人と子どもが別れて行うメニュー。大人は藤沢市の救急隊、消防隊から直接、心肺蘇生法とAEDの使用方法を指導してもらい、子どもたちは、心肺蘇生法の意義を学んだ後、心臓とほぼ同じ大きさのテニスボールを10分間押し続ける。10分というのは決して短い時間ではないが、数を数えながら、泣きそうな形相でテニスボールを押し続ける小さな子も、誰ひとりとして脱落しなかった。
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LSweb 「プール実習で着衣泳を導入する小中学校は多くなっていますが、服を着たまま泳ぐのではなく、いかに浮いていられるかが大事だったと、被災地のライフセーバー仲間から聞きました。浮いて待て、はそんな教訓を踏まえて取り入れたプログラムです」
 と豊田さん。

 LSwebまた元消防訓練センターの体育訓練担当教官で、豊田さん同様、昨年に続いて講師を務めた鎌田修広さんは、
「みんなトライで、子どもたちが必死にテニスポールを押していましたよね。あれはなかなかハードなプログラムですが、子どもたちなりに命の大切さを感じてくれ、回りの友だちが一生懸命やっている姿につられて最後まで続けたのだと思います。人間は一人では生きられない、ということを私たちは震災で改めて感じました。だからこそ、地域の人たちが多数参加してくれたことは、大きな成果だと思います」
 と話してくれた。

湘南だからこそ水辺の安全を

LSweb 各メニューの指導リーダーを務めるのは、経験豊富なライフセーバーたち。

 ジャンボプールのライフガードチームをはじめ、辻堂LSC、波崎SLSC、また宮城や沖縄からも応援にかけつけ、ユーモアを交えた丁寧な指導で、子どもも大人も引きつけていた。

「昨年に続き2度目の参加です。何よりも、子どもと一緒に体験できることが楽しいですね」
 と話すのは、小学3年生の娘さんと参加したお母さん。

「回覧板でこのイベントを知ったのです。海には釣りなどでよく出かけるので、それならばと参加してみました。大人の私でもとても勉強になりましたよ」
 と言うのは、小学1年生の息子さんと来たお父さん。
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 「私は仕事柄、同様のプログラムは一通りやったことがあるのですが、リーダーたちが実にたくみに運営していて楽しかったですね。小1の子どもは波乗りを一番楽しんでいるようです」
 と満足げなのは、サーフィンが趣味だというお父さんだ。

 LSweb一方、子どもたちも、
「去年は浮いて待て、で10秒ぐらいしか浮いていられなかった。でも今年はずいぶん長く浮いていることができた」
「水に入って助けちゃいけないって分かった。ペットボトルを投げてあげても助けられるって勉強になった」
「流れてくる人を助けたり、いろいろやって楽しかった。友だちもできた」
 と笑顔を見せてくれた。

「今年は素早く整列したり、みんなで行進したりというメニューをはぶき、心肺蘇生法の時間を取り入れました。大人のみなさんは救急隊に活発に質問するなど、やはり感心が高かったようですね。ただ、避難の時には素早く行動することが必要ですから、集団行動など今後も工夫して取り入れていきたいと思います」
 と話す鎌田さん。

「湘南という土地柄でしょうか、保護者の約9割が子どもと一緒に水に入って体験してくれます。非常に積極的で、他人の子どもでも面倒を見てくれます。しかもお父さんの割合が多い。水に対する意識が高い地域なのだと思います」
 と豊田さん。

 水と親しむ文化が根付いている地域だからこそ、誰もが水辺の安全に関する知識や、いざとい時の心構えを身につけておくべきなのだ。絆プロジェクトが地域に与える影響は大きいと思う。
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伊豆のベテランライフセーバー 三人衆の挑戦!
熱川〜大島 パドルボード横断行 その3
2014/07/01

A2O (Atagawa to Oshima) Challenge Part 3

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平均年齢42歳。熱川LSCの井藤秀晃さん、下田LSCの江田邦明さん、宮部周作さんの3人が、競技用のスペックボード(マリブボード)で、伊豆半島東岸の熱川から伊豆大島を目指した「A2Oチャレンジ」。


5時間15分におよぶパドル漕で大島に渡ったベテランライフセーバーたちの挑戦を、江田邦明さんのレポートで締めくくってもらおう。




文=江田邦明(下田LSC)
写真=兵助丸&宮部周作





あの達成感が忘れられず…

 昨年に続いての挑戦——。

LSweb 2013年6月、長年温めていた伊豆半島から伊豆大島への、サーフスキーでの横断を達成した。下田の外浦から伊豆大島の元町までの単独往復漕航。
 挑戦直後は、この手のチャレンジはもう終わりと考えていたのに、日にちが経つにつれてボードでも挑戦したいと思いはじめる自分がいた。

 今回、なぜまた行きたいと思ったか分からない。ただ、サーフスキーの時の大きな達成感が、麻薬のように作用したのかもしれない。

 井藤さんがボードかスキーで、大島横断に挑戦したいということは、前々から聞いていた。
 ただ、昨年の自分のスキー単独横断の経験から、ボードでの単独横断は危険が大きいと思い、ボードで行くなら一緒に行かないかと相談した。

 そして2月から海一本の練習に切り替え、ウェットスーツも新調。この6月までの約半年間は、25年間のライフセーバー人生の中で、最も長くパドリングをした日々だった。

 その結果、練習当初は長時間のパドリングで膝の痛み、あごの擦れ、手のむくみなど異変があったものの、6月には体もすっかり慣れるまでになった。

伴走船を手配

 1回の練習時間は1時間から2時間で、主に出勤前の朝と、週末の朝夕で行った。一番長く漕いだ練習は、5月のゴールデンウイークに、外浦から熱川まで漕いだ4時間30分。
 この時は北東の風と潮の流れに逆らって漕ぐという、精神的にもタフな練習となった。

 その経験から、今回は伴走船をつけることにした。

 大島到着後のボード運搬にも問題があったものの、やはり一番の理由は、黒潮の分流が入れば2ノット以上の流れが生じ、到底ボードの推進力では抜けきることができないだろう、という判断からだ。

 また、熱川出発だと南西の風や潮流で、大島の北にある潮流帯へ流される危険もある。さらに大型船の航路を横切るため、大型船側のレーダーに映る伴走船の存在は重要だった。
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 情報収集は昨年のスキー横断時と同様に、気象庁、海上保安庁、横浜ベイサイドマリーナが発表している天気情報(予報図、風、視界、雷、潮流情報など)で行った。

 当日はまたとない条件に恵まれ、視界は悪かったものの、大島上空にかかった雲を目印にできていた。天候も曇りで脱水のリスク減、風はゆるやかな南西と追い風または横風。

 6月のこの日を選んだ理由は、日が長いこと(仮に遭難しても日没まで時間がある)、小潮で潮の動きが少ないこと、航行時間がちょうど上げ潮の時間帯で北流を打ち消してくれること、という条件がそろったためだ。

 今回の挑戦は、3人の仲間と一緒に漕いだことで不安が打ち消せたこと、伴走船とサポートがついたことで、スキーの時のような精神的な負担はなかった。
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 リスク回避策としては、伴走船がつけば安心だが、少なくとも単独航行はしないこと。そして気象の判断、海峡の知識、さらにGPS、携帯電話、浮力体、コンパス、飲食料、海図、笛・発煙筒などの携行、目立つ服の着用があげられる。
 もちろん、挑戦に見合った練習や力量も必要となる。

 目標を持つことは、それを達成するまでの過程や、それに協力してくれる人の存在や出会いがあり、人を育ててくれる。

 挑戦を終えた今はまた漕ぎたいと感じており、またまた達成感の麻薬にやられてしまったようだ。
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 今回は井藤さん、宮部、兵助丸、藤井さん、都築さん、中園、鳥居工業のみなさん他にお世話になりました。
 大島での出会いや温泉、食事、景色も忘れられないものとなり、これもそれまでの過程があっての重みだと思います。






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伊豆のベテランライフセーバー 三人衆の挑戦!
熱川〜大島 パドルボード横断行 その2
2014/06/30

A2O (Atagawa to Oshima) Challenge Part 2

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熱川LSCの井藤秀晃さん、下田LSCの江田邦明さん、宮部周作さんという、平均年齢42歳のベテランライフセーバーたちが、競技用のスペックボード(マリブボード)で、伊豆半島東岸の熱川から伊豆大島を目指した「A2Oチャレンジ」。

何故、三人は直線距離約27kmという、過酷な挑戦を決行したのか?

その思いに迫るべく、第二弾、宮部周作さんのレポートをお届けしよう。


文=宮部周作(下田LSC)
写真・兵助丸&宮部周作






行けるのか??

 LSweb「伊豆から大島へ、スペックボードで横断しようと思っている。江田も一緒だ」
 
 井藤さんからこの計画を聞かされた時は、絶句した。ライフセービングのスペックボードは短距離用で、サーフ(波間)で使うのが前提……。

 しかし、いつも使っているボードで、いつも見ている島に渡ることにロマンを感じ、また20年来、一緒に活動してきた2人の先輩と漕ぐことが、自分にとって大きな意味のあることに思えてきて、なんだか間違えて井藤さんに連絡をしてしまったのが、私にとってのA2Oチャレンジの始まりだった。

 参加を決めたのが一番遅く、出遅れていたため、かなり詰め込んだトレーニングとなった。
 普段からベースを鍛えていた甲斐もあり、短期間で井藤さんと同じくらいのスピードで漕げるまで上げてきた矢先のこと、体の限界をオーバーしてしまい、腰を痛めて3週間ほど運動できなくなってしまった。

 本業の仕事や、夏のパトロール関係の打合せにも多くの時間を割かれ、十分な休息が取れなかったことも原因のようだ。

 腰の状態はなかなか良くならず、焦りは募るばかり。何度もチャレンジを諦めかけた。

 ようやく治ったのは決行2週間前。だが、再発が怖かったので慌てずに少しずつ、体の様子を確認しながらトレーニングを再開し、1週間前の時点で3時間40分漕いでも体に異常は見られなかったことから、最終的に決行を決意した。

 体力面では依然として不安があったものの、この時すでに伴走船をつけることが決まっていたので、リスクが少ないと判断したのだ。

 コンディショニングについては、今回、本当に身に染みて勉強になった。つまり、40歳をすぎると、トレーニングと同じくらいの時間をケアにもかけないとダメだと分かったのだ。

もしも……を想定して

LSweb 今回のチャレンジ、最初は伴走船をつけない予定だった。途中から伴走に方針変更となったが、当初、兵助丸さんには、大島から下田に戻るまでのボードと自分たちの運搬、そして緊急時のピックアップをお願いしていたのだ。

 そのため、計画段階では失敗も想定した準備を怠らなかった。決行時期を6月に定めたのも、パトロール準備が本格化する前というだけでなく、万が一、遭難した時に日が長い方が助かる可能性が高い、という理由が大きかったからだ。

 私が装備として検討したのは、一晩漂流しても大丈夫なだけの食糧や、体温を守るための非常用アルミシート、船舶から認識してもらうためのレーダー反射板や光反射テープの装着、防水ライトや、流されにくくするためのシーアンカー、非常時に使うナイフ、携帯電話と防水パックなど。

 また流されても漕ぎ切るために、想定(30km弱)の倍近い50kmを事前に漕ぐことも計画した。もっとも、この計画は腰を痛めたために実行できなかったが……。

いざ、決行

 6月21日、決行当日。朝4時に下田港に移動し、兵助丸の船長とブリーフィング。天気、潮の流れを確認したところ、条件もそろっていたので決行が決まった。

 兵助丸にボードや荷物を積み込み、熱川沖まで船で移動。そこから一旦、ボードで熱川のビーチに上陸し、そこから改めてスタートした。

 熱川出発は6時15分。最初の1時間は流れに乗り、時速7kmほどの速いペースで漕ぎ始めた。トレーニング時に多摩川で計測したスピードは、平均時速6km前後だったので、いい滑り出しとなった。
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 途中、何度か潮目が変わったが、基本的には穏やかなコンディション。空は曇っていて、気温・水温も少し肌寒い程度だったので、体力的な消耗は最小限だったと思う。

 ただ私は漕ぎ始めてすぐに、日焼け止めが溶けて目に入ってくるという事態に見舞われ、とにかく目が痛くてたまらなかった。

 後半は潮にやられたのか日焼け止めの影響なのかは不明だが、とにかく目が沁みて辛く、最後は半分くらい目を閉じて漕ぐ羽目に。終わった後もしばらく目がはれたままだった。
 日焼け止めは、日本製を使うべきだったかな。

 全体のペースは、50回ニーパドルして100回寝パド、を延々と繰り返し、30分ごとに休憩を取るというパターン。
 その際、位置確認と進路を話し合って決め、ジェル系の補給食もこのタイミングで採った。水分補給は、ボードを漕ぎながら電解質の入ったものをチューブで飲むようにしていた。
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 最後の1時間は潮流が逆になり、疲れも溜まって苦しい時間帯となった。漕行スピードも時速4km弱程度しか出ていなかったと思う。

 また体力的にも他の2人から遅れ始め、徐々に首の筋も痛くなってきて、最後は頭がもげるのではないかと思ったほどだが、首さえもてばなんとかなると思いがんばった。

 午前11時半、大島に到着。5時間15分での横断に成功した。

チャレンジを終えて

LSweb 私にとっては初のロング。無事に終わってホッとしている。
 
 これまでショートしかやってなかった人間として、数時間も漕ぎ続けるなど考えられず、体質的にもスプリント系なので不安だったが、5時間は思ったよりも短く感じられた。

 短距離や中距離とは運動の質が違ったこと、また完漕が目的だったので定期的に休憩をとり、体に負担をかけずないようにペース配分していたこともあると思う。
 メンタル的には仲間が近くにおり、伴走船もいたので、不安は感じなかった。

 終わってみれば、意外とすんなりと成功した感じだが、それは決行日時の選択から、ルート決め、天候や潮流の確認、事前の試漕、装備品のトライアルなど、入念な準備を重ねてきたからだと思う。

 また私以外の2人の経験値が高く、私の経験不足を補っていただいたことが大きい。井藤さんは、国内海外を含めロングレース経験が豊富。江田さんは、以前にスペックのサーフスキーで下田〜大島単独横断をした経験があり、伊豆の海を知り尽くしている、という強者たちだ。

 ライフセーバーは、岸(サーフ)から離れた沖(オーシャン)での経験値が少ない人が多いと思う。

LSweb 潮流と風向、その強さと風向きの組み合わせによっては、どれだけパドル力があったとしても太刀打ちできない状況があるし、場合によっては数時間漕ぎ続けなければいけない状況もあるかもしれない。

 オーシャンでのパドリングはとても楽しい反面、同時に気まぐれな自然の前に生身の自分をさらけ出すリスクもある。

 色々な人にもロングの楽しみを知ってもらい、挑戦してもらいたいと思う。ただ、安全第一は忘れないでほしい。

 その安全を確保するために、最悪の事態を想定して入念に準備を行う事や、必要な体力を身につけたり、自然を読む力を養ったりすることは、より海の知識や技術を身に着けていく事につながっていくと、今回のチャレンジを通して感じた。







伊豆のベテランライフセーバー 三人衆の挑戦!
熱川〜大島 パドルボード横断行 その1
2014/06/29

A2O (Atagawa to Oshima) Challenge Part 1

おじさん(失礼!)たちはスゴかった!

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静岡県の伊豆半島を拠点に、長年にわたってライフセービング活動を続けている、熱川LSCの井藤秀晃さん、下田LSCの江田邦明さん、同じく下田LSCの宮部周作さんの3人が、6月21日、スペックボード(マリブ)での熱川〜伊豆大島(元町)横断(直線距離で約27km)に成功した。

平均年齢42歳。何故、3人は5時間にもおよぶロングパドルに挑んだのか?

ロマン溢れるAtagawa to Oshima Challenge (A2O) の記録を三者三様につづってもらった。

まずはA2Oチャレンジの発起人、井藤秀晃さんのレポートからどうぞ。

文=井藤秀晃(熱川LSC)
写真=兵助丸&宮部周作




動機

LSweb 平成3年の夏、日本ライフセービング協会(JLA)から熱川YOU湯ビーチにライフセーバーとして派遣されて以来ずっと、伊豆大島はビーチの目の前に大きな姿でいつもそこに在った。

 熱川ビーチ南側の突堤の先端には、かつて「伊豆大島まで最短の地」という石碑が建っていた。熱川は写真愛好家の方々の間では知る人ぞ知る、伊豆大島撮影の絶景ポイントでもある。

 20年以上見つめているうちに、いつの間にか「いつかあそこに漕いで渡りたい」と思い始めていた。また、13年前に後輩がサーフスキーで、大島への横断に達成した。その彼から「井藤さんはボードで」とエールを送られていたので、心の引き出しの中にいつも現実的な目標として、「ボードで渡りたい」という想いがあった。

キッカケ

 昨年、縁があって下田LSCの宮部周作くんを中心に、中園晴之くん、池脇 良くん、そして井藤の面々でカヤックプロ社のパドリングエルゴメーターを取り扱うことになり、ライフセービングパドルボードのエルゴメーターを僕らのプライベートジムに設置した。

 このエルゴメーターがとても有効なものであったのと、また使っていて楽しいものだったので、今年の1月から週に一回のペースで少しずつ楽しみながら無理ない強度で漕いでいるうちに、だんだんと身体の調子が上がっていった。

 そして4月になる頃には心の引き出しが開き、「大島にボードで渡ろう」と決意した。

メンバーの経緯

LSweb 毎年2〜4月、私は江田邦明くんと風を読みつつ、サーフスキーで伊豆半島沿岸を長距離漕いでいる。彼はライフセービングでもずっと一緒に活動してきた友人だが、それを超えた大切な「漕ぐ友人」。彼に「遠からずボードで大島に渡る」と伝えていた。
 それを覚えていた彼から「今年やるなら一緒に渡りたい」と言われて一緒に目指すことになった。

 宮部くんはパドリングエルゴジムの運営で協働している。彼はオーストラリアのコーチングを積極的に学んでいる人で、僕はサーフスキーについてその理論・技術を彼にコーチしてもらっている。

 多摩川でスキーの練習をする折に伊豆大島の話をしたところ、彼も「一緒に渡りたい」ということになった。

 江田くんと宮部くんは伊豆半島で共に20年以上、クラブは違うがライフセービング活動で悲喜こもごもを共有してきた大切な仲間。共に同じような想いで伊豆大島を見つめていた仲間。自然な流れで決まったわけだが、このメンバーで渡りたいと強く思った。

 途中、宮部くんが腰を痛めて練習できなくなった期間があったが、一度も後ろ向きなことを告げず、回復を待っていた。

準備

 体力的な準備は、1〜5月にカヤックプロ社のサーフライフセービング(SLS)パドルボードエルゴを、週に一回、週を追う毎に強度を上げて実施した。

 4月からはそれに加えて水面(おもに多摩川)で週に1〜4回の1時間漕。さらに、週に2回のジョギングと、時間があるときに階段走を行い、途中2週間、種目別選手権向けに短距離漕の練習に費やした。

 ゴールデンウィークに、江田くんと20km漕。体力面の準備不足と海況の予報外れで、予想外に時間がかかりとてもハードだった。このことから天気・海況の予測をしっかり行ない、少しでも厳しい状況の場合、当日の決行・中止の判断はシビアに下すことで全員合意した。
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 江田くんが町内会の知人の船(兵助丸)に伴走を打診。快諾を得る。伴走船についてもらえることになったので、3人共に信頼する中園くんに見届け人を依頼した。

 この時期、伊豆半島と伊豆大島の海峡には南下する潮流がある。干潮にスタートすれば北上する潮の上げ込みがあるので、南下する潮流が北上する干満の動きでだいぶ相殺されるだろうと予測。

 潮の動きが少ない小潮で、干潮時間が朝方である6月21日を決行日と決めた。あとはこの時期の傾向である南西風の強さ次第。直前に台風7号が通過したが影響は少なかった。

 伴走船をお願いしたものの、近くにはいてもらうが、アクシデント以外は援助を受けないこととした。
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 最長6時間活動すると想定。給水を各自考えてシステムを用意し、約2リットルをボードに搭載(ペットボトル改造型、市販のハイドレーションバッグなど)。エネルギーゼリーを各自必要な量をウエストポーチで携行した。

 当日の様子は、宮部くんのレポートに譲りたい。

終えてみて

LSweb 当日は予報どおり、曇りという天候にも恵まれ、決行するには絶好の海況だった。とはいえ潮流の変り目がいくつかあり、うねりに若干乗れる区間もあれば、漕げども、漕げども進まない区間も……。

 しかし、ボードは水面に近いポジションで漕ぐので、海の動きを直に感じられて、穏やかなときでもあれだけの変化があるのだと非常に勉強になった。変化に合わせて漕ぐことを試すことができたのが楽しかった。

 僕はLS競技が好きだ。今では主に観戦することだが。選手としては二流三流だったが、8年ほど前から、フィットネスとしてサーフスキーを楽しみながら漕いでいる。

 昨年からそれにパドルボードも加わり、とても楽しい毎日を過ごしている。そんな毎日の積み重ねが、僕を伊豆大島に導いてくれた。

 大会に出ても出なくても、大会に出て勝っても負けても、楽しくパドリングを続けるという意識は成立するのか? 僕の答えは「成立する!」だ。僕がその証拠だ。

「伊豆急のトンネルの前まで行ってみよう」「となりの浜まで行ってみよう」「沖のうねりに乗って加速して漕ぎ進んでみよう」

LSweb きっと目的はたくさん見つかり、その都度、達成感を得られるはずだ。そうするうちに体調が整ってまた大会に出てみたくなるかも知れない。
 
 そうするうちに、所属クラブからパトロールのシフト打診があったとき、体調がいいもんだから「参加してみようかな」と思うかも知れない。

 この二つはあくまで「かも知れない」だが、そんな可能性を秘めたフィットネス、それがパドリング。そんなフィットネス、他にあるだろうか? 現状では存在しないと思う。

 今、シリアスに競技に打ち込むあなたも、そうでないあなたも、「引退」と言い放ちパドリングをする時間をなくさないで欲しい。

 社会人のみなさんにも、楽しくパドリングを続けてもらいたい。楽しみ方が分からないという人は、僕と一緒にあなたらしい楽しみ方を探しましょう。ご連絡下さい。
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 最後に、伴走を快諾して最高のエスコートをしてくれた兵助丸さんと、社業が忙しい中を見届け人として船から応援してくれた中園晴之くん、そして一緒に漕いでくれた2人に心から感謝します。ありがとうございました。






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エリート23チームが結集!
オーシャンフェスタ タテヤマ
2014/06/17

OCEAN+FEST TATEYAMA 2014.6.14-15

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OCEAN+FEST TATEYAMA


今年で8回目を迎えた「OCEAN+FEST TATEYAMA」が、6月14〜15日の2日間、千葉県館山市の北条海岸にて開催された。

初日はオーシャンアスリートNo.1を決める「オーシャンズ8」と、小中学生を対象とした「キッズプログラム&ジュニアの部」が、2日目はビーチ綱引きやアウトリガーカヌー、ビーチフラッグスやSUPなどなど、誰でも参加できるファンレースが行われ、参加者一同が初夏の海を大いに楽しんだのだった。


文・写真=LSweb編集室





海辺の町の魅了をアピール
クラブにとっても大切なイベント


LSweb 東京湾に面した南房総の館山市では、毎年6月に海を楽しむイベント「OCEAN+FEST TATEYAMA」を開催し、市内外から多くの参加者を集めている。

 小学生以上の健康な人なら誰でも参加でき、ビーチ綱引きやアウトリガーカヌーレース、SUPやビーチフラッグスといったファンレースが楽しめるこのイベントを、実質的に取り仕切っているのが、飯沼誠司さん率いる館山サーフクラブだ。

 「OCEAN+FEST TATEYAMAは、一般&親子の部、小中学生を対象にしたキッズプログラム&ジュニアの部、そしてライフセーバーやアスリートを対象としたエリートの部の三部構成で行われています。
 館山市や館山市教育委員会、館山市体育協会などに後援してもらうことで、地域の恒例イベントとしても根付いてきました。今年はお天気にも恵まれ、今まで以上に盛り上がって、参加した皆さんに館山の魅力を伝えることができたと思います」
 と、笑顔で語ってくれた飯沼さんは選手としても参加し、イベントを大いに盛り上げていた。

 首都圏からも近い館山市は、夏季になると8カ所の海水浴場がオープンする。その海水浴場を監視するのが、館山サーフクラブに所属するライフセーバーたちだ。
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 クラブ設立は2006年。社会人を中心に活動を開始した同クラブだが、現在ではジュニアを卒業した高校生から、首都圏の大学に通う学生、そして社会人まで100人以上のメンバーと、小中学生のジュニアメンバーが集うクラブに成長した。

 「メンバーが増えるのは嬉しいことですが、学生、社会人、またジュニアの保護者と、それぞれに立場が違い、クラブへの関わり方も違ってきます。夏前にこのイベントを開催することで、クラブの現状が見え、メンバーの結束力が高まります。LSweb夏のガードに向け、クラブの体制を見つめ直すという意味でも、またチームワークを作るという意味でも、大切なイベントなのです」
 と飯沼さんは話す。

 海水浴場オープン間近のこの時期に、こうしたイベントを開催するのは大変なことだろう。でも、夏に向けた準備が必要ならば、地域を盛り上げ、誰もが楽しめる海イベントを運営しながらやってしまおう! という館山サーフクラブの作戦は実にうまいと思う。

 自治体との関係も深まり、新規メンバー勧誘のきっかけにもなる、一石三鳥、四鳥の作戦と言えるのではないだろうか。


ゴリラはやっぱり強かった!?
オーシャンズ8優勝はチーム・ストロングゴリラ


 とは言っても、イベントが盛り上がらなければ話しにならない。そしてOCEAN+FEST TATEYAMAは回を重ねるごとに盛り上がってきた。特に今年は、4人1組(男子3人、女子1人)で競うエリートの部「オーシャンズ8」が、過去最高23チームの参加で盛大に行われた。
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 オーシャンズ8はアスリートを対象に、アウトリガーカヌー、ビーチリレー、ビーチ綱引き、オーシャンズサバイバル、オーシャンズリレーの5種目を行い、総合得点を競うファンレースだ。
 ファンレースといっても、参加者はライフセーバーを中心に、鍛え抜かれた猛者ばかり。全日本の優勝者がずらりと顔を揃えるだけでなく、今年は競泳界からロンドン五輪7位入賞の伊藤華英さんが参戦するなど名実ともにすごい! メンバーが集合した。

 優勝チームには金丸謙一館山市長自ら市長杯が手渡され、副賞にはチーム全員分のハワイ往復航空券をはじめとする豪華賞品が贈られるとあって、誰もが真剣そのもの。
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 しかし、競技種目にはアウトリガーカヌーやSUPといった、乗り慣れないクラフト類もあって、思わぬハプニングも続出の笑顔いっぱいのイベントとなった。

 1分間のインターバルを経て、ビーチランとスイムを4回繰り返すオーシャンズサバイバルでは、チーム・ゆとりセンセーションの三木翔平さんと、チーム・銚子アゴーの栗真千里さんが優勝。

 ボード→スイム→ビーチラン→SUPと繋ぐオーシャンズリレーでは、チーム・館山サーフクラブが、昨年総合優勝のチーム・ザコスタスの猛追を逃げ切った。

 オーシャンズサバイバル女子で優勝した栗真さんは、フランスで行われた国際大会から帰国したばかり。「最後のスイムが長かったですねぇ。でも、あとは大丈夫でした!」と相変わらずのタフネスぶりを証明。
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 湯河原LSCのメンバーでオーシャンマンが強い三木さんは、「今、ちょうど世代交代の時期で、下が突き抜けてこないので僕が勝てているんです」と謙遜したが、猛者たちの中で生き残る(サバイバルする)勝負強さを見せつけた。

 ハワイ旅行のかかった注目の総合優勝は、落合慶二さん、篠田智哉さん、出木谷啓太さん、毛利 邦さんという、ラン、スイム、パドルとバランスのとれた実力者4人が揃ったチーム・ストロングゴリラとなった。

 出木谷、篠田、落合の3氏は、今月行われた全日本LS種目別選手権のサーフスキーでワン・ツー・スリーとなった面々。毛利さんも種目別のスキーで2位のパワーパドラーたちで、アウトリガーカヌーでは、パドラーの実力をいかんなく発揮していた。
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 霊長類最強と言われるゴリラをチーム名にしただけあり、2位に9点の差をつけたチーム・ストロングゴリラだった。もっとも、実生活では消防士として市民の安全を守る男子3人。
 「ハワイへ行くスケジュール確保が最大の難関です!」と日に焼けた顔をしかめたのだった。

 エリートの部はハワイ旅行以外にも豪華な賞品が目白押し。
 その一つが「飯沼誠司の奥さま賞」で、ご存じ中山エミリさんからビザカードの商品券が贈られた。
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 この賞、毎年、エミリさんが選ぶことになっており、今年は、順天堂大学水泳部の現役学生とOBOGがタッグを組んだチーム・レモンに贈られた。スイムはもちろんだが、ビーチ綱引きでも大活躍した根性が認められたようだ。

 MVPはチームSMD(スリム マッチョ デブ)の川名茂樹さん。
 館山市役所に勤務する川名さんは、エリートの部参加者史上最年長の45歳。初参加で見事にMVPに輝いた。LSweb

 「第1回から一般の部に出場しており、いつかはエリートの部に出たいと思っていましたが、一緒に戦ってみて、改めてオーシャンアスリートたちの凄さを実感しました」とMVPの盾を手にニコリ。

 チームメイトは植木将人さん、小田切伸矢さん、佐々木聡美さんという、ビーチの達人たち。

 「川名さんがいなければ、アウトリガーカヌーやSUPを戦えませんでした。一緒にできて楽しかったです」と、川名さんと握手を交わしながら口にした植木さんだった。

LSweb 館山サーフクラブのクラブキャプテンであり、大会実行委員長の鬼澤 航さんは、「準備は正直、大変でしたが、何よりお天気が良くて、エリートの部も過去最高の参加数で、いやぁ本当に良かったです」とホッとした表情を見せた。

 参加したエリート軍団の面々は、
「オーシャンズ、最高に楽しかったです!」
「学生の弱さを痛感しましたぁ」
「ハワイは自腹で行きます(笑)」
「新しい出会いに感謝」
「来年こそ、狙います!」と、北条海岸の沖に沈む太陽をバックに、満足げな笑顔を見せた。
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 エリートの部は来年「オーシャンズ9」として開催される。今年以上にパワーアップした大会になりそうで今から楽しみだ。

【OCEANZ8 総合成績】
1位:ストロングゴリラ(72点)
2位:ゆとりsensation(63点)
3位:チーム・Za+Costes(50点)
4位:銚子AGO(48点)
5位:HONAMI(47点)
6位:館山サーフクラブ(45点)
7位:お猿と愉快な仲間たち(42点)
8位:RINKS(42点)
9位:チームSMF(スリム マッチョ デブ)(39点)
10位:ぬるぬる☆ちりちり(35点)
11位:ヤングペンギン(32点)
12位:lemon(29点)
13位:津南被害多発 in Japan(21点)
14位:アグネス(17点)
15位:己との戦いだ!!(14点)
16位:team理沙(12点)
17位:芋洗坂4step(11点)
18位:メガネと愉快な仲間たち(8点)
19位:チーム國學院(6点)
20位:チーム七夕(6点)
21位:GANTZ(4点)
22位:館山SLSCユースチーム(0点)
23位:チームかほたん(0点)
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