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伊豆のベテランライフセーバー 三人衆の挑戦!
熱川〜大島 パドルボード横断行 その2
2014/06/30

A2O (Atagawa to Oshima) Challenge Part 2

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熱川LSCの井藤秀晃さん、下田LSCの江田邦明さん、宮部周作さんという、平均年齢42歳のベテランライフセーバーたちが、競技用のスペックボード(マリブボード)で、伊豆半島東岸の熱川から伊豆大島を目指した「A2Oチャレンジ」。

何故、三人は直線距離約27kmという、過酷な挑戦を決行したのか?

その思いに迫るべく、第二弾、宮部周作さんのレポートをお届けしよう。


文=宮部周作(下田LSC)
写真・兵助丸&宮部周作






行けるのか??

 LSweb「伊豆から大島へ、スペックボードで横断しようと思っている。江田も一緒だ」
 
 井藤さんからこの計画を聞かされた時は、絶句した。ライフセービングのスペックボードは短距離用で、サーフ(波間)で使うのが前提……。

 しかし、いつも使っているボードで、いつも見ている島に渡ることにロマンを感じ、また20年来、一緒に活動してきた2人の先輩と漕ぐことが、自分にとって大きな意味のあることに思えてきて、なんだか間違えて井藤さんに連絡をしてしまったのが、私にとってのA2Oチャレンジの始まりだった。

 参加を決めたのが一番遅く、出遅れていたため、かなり詰め込んだトレーニングとなった。
 普段からベースを鍛えていた甲斐もあり、短期間で井藤さんと同じくらいのスピードで漕げるまで上げてきた矢先のこと、体の限界をオーバーしてしまい、腰を痛めて3週間ほど運動できなくなってしまった。

 本業の仕事や、夏のパトロール関係の打合せにも多くの時間を割かれ、十分な休息が取れなかったことも原因のようだ。

 腰の状態はなかなか良くならず、焦りは募るばかり。何度もチャレンジを諦めかけた。

 ようやく治ったのは決行2週間前。だが、再発が怖かったので慌てずに少しずつ、体の様子を確認しながらトレーニングを再開し、1週間前の時点で3時間40分漕いでも体に異常は見られなかったことから、最終的に決行を決意した。

 体力面では依然として不安があったものの、この時すでに伴走船をつけることが決まっていたので、リスクが少ないと判断したのだ。

 コンディショニングについては、今回、本当に身に染みて勉強になった。つまり、40歳をすぎると、トレーニングと同じくらいの時間をケアにもかけないとダメだと分かったのだ。

もしも……を想定して

LSweb 今回のチャレンジ、最初は伴走船をつけない予定だった。途中から伴走に方針変更となったが、当初、兵助丸さんには、大島から下田に戻るまでのボードと自分たちの運搬、そして緊急時のピックアップをお願いしていたのだ。

 そのため、計画段階では失敗も想定した準備を怠らなかった。決行時期を6月に定めたのも、パトロール準備が本格化する前というだけでなく、万が一、遭難した時に日が長い方が助かる可能性が高い、という理由が大きかったからだ。

 私が装備として検討したのは、一晩漂流しても大丈夫なだけの食糧や、体温を守るための非常用アルミシート、船舶から認識してもらうためのレーダー反射板や光反射テープの装着、防水ライトや、流されにくくするためのシーアンカー、非常時に使うナイフ、携帯電話と防水パックなど。

 また流されても漕ぎ切るために、想定(30km弱)の倍近い50kmを事前に漕ぐことも計画した。もっとも、この計画は腰を痛めたために実行できなかったが……。

いざ、決行

 6月21日、決行当日。朝4時に下田港に移動し、兵助丸の船長とブリーフィング。天気、潮の流れを確認したところ、条件もそろっていたので決行が決まった。

 兵助丸にボードや荷物を積み込み、熱川沖まで船で移動。そこから一旦、ボードで熱川のビーチに上陸し、そこから改めてスタートした。

 熱川出発は6時15分。最初の1時間は流れに乗り、時速7kmほどの速いペースで漕ぎ始めた。トレーニング時に多摩川で計測したスピードは、平均時速6km前後だったので、いい滑り出しとなった。
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 途中、何度か潮目が変わったが、基本的には穏やかなコンディション。空は曇っていて、気温・水温も少し肌寒い程度だったので、体力的な消耗は最小限だったと思う。

 ただ私は漕ぎ始めてすぐに、日焼け止めが溶けて目に入ってくるという事態に見舞われ、とにかく目が痛くてたまらなかった。

 後半は潮にやられたのか日焼け止めの影響なのかは不明だが、とにかく目が沁みて辛く、最後は半分くらい目を閉じて漕ぐ羽目に。終わった後もしばらく目がはれたままだった。
 日焼け止めは、日本製を使うべきだったかな。

 全体のペースは、50回ニーパドルして100回寝パド、を延々と繰り返し、30分ごとに休憩を取るというパターン。
 その際、位置確認と進路を話し合って決め、ジェル系の補給食もこのタイミングで採った。水分補給は、ボードを漕ぎながら電解質の入ったものをチューブで飲むようにしていた。
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 最後の1時間は潮流が逆になり、疲れも溜まって苦しい時間帯となった。漕行スピードも時速4km弱程度しか出ていなかったと思う。

 また体力的にも他の2人から遅れ始め、徐々に首の筋も痛くなってきて、最後は頭がもげるのではないかと思ったほどだが、首さえもてばなんとかなると思いがんばった。

 午前11時半、大島に到着。5時間15分での横断に成功した。

チャレンジを終えて

LSweb 私にとっては初のロング。無事に終わってホッとしている。
 
 これまでショートしかやってなかった人間として、数時間も漕ぎ続けるなど考えられず、体質的にもスプリント系なので不安だったが、5時間は思ったよりも短く感じられた。

 短距離や中距離とは運動の質が違ったこと、また完漕が目的だったので定期的に休憩をとり、体に負担をかけずないようにペース配分していたこともあると思う。
 メンタル的には仲間が近くにおり、伴走船もいたので、不安は感じなかった。

 終わってみれば、意外とすんなりと成功した感じだが、それは決行日時の選択から、ルート決め、天候や潮流の確認、事前の試漕、装備品のトライアルなど、入念な準備を重ねてきたからだと思う。

 また私以外の2人の経験値が高く、私の経験不足を補っていただいたことが大きい。井藤さんは、国内海外を含めロングレース経験が豊富。江田さんは、以前にスペックのサーフスキーで下田〜大島単独横断をした経験があり、伊豆の海を知り尽くしている、という強者たちだ。

 ライフセーバーは、岸(サーフ)から離れた沖(オーシャン)での経験値が少ない人が多いと思う。

LSweb 潮流と風向、その強さと風向きの組み合わせによっては、どれだけパドル力があったとしても太刀打ちできない状況があるし、場合によっては数時間漕ぎ続けなければいけない状況もあるかもしれない。

 オーシャンでのパドリングはとても楽しい反面、同時に気まぐれな自然の前に生身の自分をさらけ出すリスクもある。

 色々な人にもロングの楽しみを知ってもらい、挑戦してもらいたいと思う。ただ、安全第一は忘れないでほしい。

 その安全を確保するために、最悪の事態を想定して入念に準備を行う事や、必要な体力を身につけたり、自然を読む力を養ったりすることは、より海の知識や技術を身に着けていく事につながっていくと、今回のチャレンジを通して感じた。










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