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「ライフセービングフォーラム2014」開催2014/03/13

東京都渋谷区・国立オリンピック記念青少年総合センター 2014.3.9

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大学生を中心に254人が参加!


3月9日、代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターにて、日本ライフセービング協会主催の「ライフセービングフォーラム2014」が開催された。

ライフセーバーというと、夏の海水浴場でパトロールしているイメージが強いが、活動にまつわる科学的データの分析など、一見地味な研究も行っている。

そんな、ライフセービング活動発展のための取り組みを紹介しよう。


文・写真=LSweb編集室





競技会で多いケガは?

LSweb 今回のフォーラムは、各運営マネジメントグループの報告に続き、前JLA副理事長で国際武道大学教授の山本利春氏による「ライフセーバーの救助技術と体力」と題した基調講演で幕を開けた。

 山本氏は、1980年代後半の実験データを元に、スイムレスキュー(器具を使わずに自力で泳いで溺者を救助する方法)、チューブレスキュー(レスキューチューブを利用した救助方法)、ボードレスキュー(レスキューボードを使った救助方法)それぞれの救助に要する時間、レスキュワーの身体的負担などを分析。さらにレスキュー(激しい運動)直後のCPRの精度を、安静時(運動してない状態)と比較するなど、非常に興味深いデータを示しながら講演した。

 講演内容の詳細は近日中にJLAホームページにアップされるということなので、ここでは細かい数値には触れないが、上記の実験データからは、レスキューにかかる所用時間、およびレスキュワーの身体的負担のいずれでも、レスキューボードの圧倒的な有効性が証明された。

 また日常的にトレーニングしているライフセーバーといえども、レスキュー直後のCPRでは安静時に比べて精度が落ちることが判明。しかし、ライフセーバー以外の被験者と比べると、その差(レスキュー直後と安静時の差)は小さいことも分かった。何のためにトレーニングするのか? という明確な答えが導かれた講演だった。

LSweb 続いて、風間隆宏氏(JLAライフセービングシステム開発委員会/西浜SLSC)より、2月1〜2日に行われた「クラブマネージャーキャンプ実施報告〜地域LSC運営の現状と課題〜」が行われた。

 初開催となるクラブマネージャーキャンプでは、ライフセービング活動を日本全国に広めていく土台となる、クラブ運営のあり方について活発な意見交換が交わされたようだ。

 クラブ運営に携わるライフセーバーにとって非常に興味深いこのテーマは、風間氏に改めてレポートしていただく予定なので、乞うご期待いただきたい。

LSweb 風間氏に続き、佐藤成晃氏(JLAライフセービングシステム開発委員会/キララLSC)が「海辺の安全に関する調査(都道府県へのアンケート)報告」を行った。

 これは都道府県の水難事故防止に関する考え方や、海水浴場設置基準、JLAとの協力関係などを知るべく実施されたもので、海水浴場の存在する38都道府県にアンケートを送付する形で行われた。

 アンケート回収率は50%。3月末を持って最終データを集計する予定だそうだが、現時点の集計データからは、ライフセービング活動の日本代表機関であるJLAの認知度が、地域によってかなりばらつきがありこと、そうした地域では行政との連携は取れていない、といった問題点が浮かび上がってきた。しかし、ライフセービング活動そのものの評価は非常に高い。今後、いかに地方自治体と協力関係を築いていくかが課題と言えるだろう。

 なお、この調査に関しても、最終データの集計後に、あらためて詳細をレポートしていく予定だ。

 フォーラム後半では、笠原政志氏(JLAコンディショニング科学委員会)による「HPTへのセルフコンディショニング教育の試み」と、JLA主催大会でトレーナーステーションを開設し、選手のケアをしてくれる国際武道大学トレーナー部の清水伸子氏(国際武道大学大学院コンディショニング科学研究室)による「トレーナーステーション利用者からみた障害の実態」という2つの研究報告が行われた。
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 ライフセービング競技は砂浜や海、プールといった不安定な場所で行われるスポーツだ。その不安定さをいかに克服するかが、競技でのパフォーマンスの向上、ひいては安全で迅速なレスキューに繋がるという観点から、笠原氏はセルフコンディショニングの大切さを、清水氏は実際の症例に基づいた予防策を提案。具体的なトレーニング方法などは、JLAが配布するパンフレットやホームページで発表されることになる。

LSweb ところで、清水氏の報告の中に分かりやすいデータがあったので紹介しよう。国際武道大学のトレーナー部は2003年から2012年までの10年間、計30大会にトレーナーステーションを設置している。その間、トレーナーステーションを利用した選手はのべ1854人、平均すると1大会61.8人を処置した計算だ。

 そのうち最も多かった症例が、いわゆる肉離れなどの「筋・腱障害32.6%」、続いて「痛み23.1%」「ねんざ11.9%」「創傷(切り傷)10.1%」「打撲8.2%」「脱臼3.1%」となっている。

 症例部位は「大腿部後面17.5%」がトップ、以下「足部・足趾11.4%」「肩関節10.5%」「膝関節10.4%」「足関節9.2%」「大腿部前面8.1」「下肢部8.0%」「腰背部7.9%」と続く。
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 つまり、ライフセービング競技会で最も多いケガは、砂浜を全力疾走するビーチスプリントやビーチフラッグスでのモモの裏の肉離れであり、素足で競技するという特性上、切り傷や擦り傷などを足に負うことも多いというわけだ。

 慢性的な痛みが強くなるといった症例も決して少ないわけではないが、競技会でのケガの6割以上が突発的なものである。こうした状況を頭に入れておけば、ある程度のケガは防げるのではないだろうか。

 有意義な研究発表が行われた今年のライフセービングフォーラム。大学生を中心に254人が参加し、3時間半におよぶプログラムを終了した。


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