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パドルボードで世界に挑む
湯河原LSCの青木将展さんと西山 俊さん
2015/05/04

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湯河原ライフセービングクラブに所属する二人のライフセーバーが、今月、メキシコで開催される「SUP&パドルボード世界選手権大会」に出場する。

ライフセーバーにお馴染みのマリブボードより少し長い、12フィートのボードで世界に挑戦する青木将展選手と西山 俊選手に話を聞いた。

文・写真=LSweb編集室




NSAの日本代表として

LSweb 5月10〜17日にかけて、国際サーフィン連盟(International Surfing Association, ISA)認定の「第4回SUP&パドルボード世界選手権大会(ISA World StandUp Paddleboard and Paddleboard Championships, WSUPPC)が、メキシコの太平洋に面したリゾート地、サユリタで開催される。

 日本サーフィン連盟(Nippon Surfing Association, NSA)は、この大会に6人の代表選手を派遣するが、そのうちパドルボード部門(テクニカルレースとディスタンスレースの2種目)にエントリーするのが、湯河原LSCに所属する青木将展選手と西山 俊選手だ。

 ライフセービング日本代表として世界を経験し、長年にわたって現役のライフセーバーとして活動を続けている二人は、なぜ新しい世界へと一歩を踏み出したのだろうか。

——WSUPPCに出場しようと思ったきっかけは?


LSweb青木:僕と西山くんは湯河原LSCのメンバーとして活動しており、ライフセーバーの多くが興味を持つように「(ハワイの)モロカイレースに出たいね」という話をしていました。そして、2016年に出ようと計画していたところ、WSUPPCのことを知ったのです。

 モロカイレースに挑戦するなら、ただ出るだけでなく世界と五角に戦えるくらいの準備をしたいと思っていました。また最近は、(モロカイレースの)人気が高まりレベルも上がったため推薦がないと出場が難しいとも聞きました。国際大会への出場経験や、日本代表じゃないと出られないよ、という情報を仕入れた矢先のことでした。

 それで西山くんに「出てみないか?」と声をかけたところ、彼がすごく乗り気で、自分も後に引けず(笑)、彼に引っ張られている感じ出場することになりました。

西山:一言「行きましょう!」と返事をしました。

LSweb 青木さんは湯河原LSCの先輩で、僕がいろいろ悩んでいた時から相談にのってもらっていたので、一緒に大きなことをやるチャンスがあればぜひやりたいと思っていました。だからもう二つ返事で「僕、マーボーさんと出たいです!」と(笑)。

 もう一つ、NSAの代表として出場できることに、大きな意味があると思っています。僕はライフセービングのことをもっと知りたくて、そしてもっと強くなりたくてオーストラリアへ留学しましたが、そこでライフセービングと他のスポーツ団体の繋がりが強いことを知りました。

 カヌーやスイミングは競技としての共通点があるので、ある意味、繋がりがあるのは当然かもしれませんが、それだけではなく、サーフィンやSUPのインストラクター資格を取るためには、ライフセービングのブロンズメダリオン(日本のベーシックサーフライフセーバー資格に相当)を取得していなければいけないなど、さまざまな部分にライフセービングが入り込んでいます。

 日本でライフセービングの認知度を高めるためにはそういう活動が必要だし、ライフセーバー自身、もっと活動の幅を広げていかないとダメだなと思っていました。だから、今回のチャンスを得ることができたのは大きかったですね。
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ライバルは各国のライフセーバーたち!?

 WSUPPCは国別代表がメダルの数を競う、オリンピック形式で開催される大会。メキシコで開催される今大会では、①SUPサーフィン②SUPテクニカルレース③SUPディスタンスレース④パドルボード(PB)テクニカルレース⑤PBディスタンスレース、の5種目が行われ、それぞれ男女別に表彰がされる。
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 昨年、中米のグラナダで開催された大会には27カ国・地域の代表が参加。金メダルを量産したオーストラリアが総合優勝に輝いている。

——出場するにあたっての目標は?


LSweb青木:初めて出場する大会なので未知ですが……ベスト3が目標です。

 出場が決まった当初は、いろいろ経験してそれを吸収し持ち帰ることができればいいと思っていましたが、自分なりに情報収集して、いろいろトレーニングして、また西山くんからのオーストラリア情報などのデータを参考に分析した結果、現実的に目標を高く持ってもいのではないか、と自信が持てるようになりました。

西山:実は一昨年あたりから、オーストラリアのライフセーバーたちがPB部門に出場し始め、金メダルを量産するようになりました。アメリカやヨーロッパのライフセーバーも参加しています。

LSweb 各国男女各2名ずつのエントリーなので、オーストラリアの選手のタイムを基準に考えれば、ある程度の予想はできるのかなと。僕の場合は、5番を目指しています。

青木:持久力は僕の方がありますね。でも西山くんはオーストラリア仕込みのパワーがあるので、スプリント系では断然、彼の方が速いです。

西山:青木さんは、体力を消耗しないで漕ぐ、エコなパドリングテクニックが洗練されています。

青木:ティスタンスレースは21km。2時間半ぐらいのレースになるでしょう。
 
 レース展開は自転車のツール・ド・フランスみたいに、前で引っ張ったり、ちょっと疲れたから後ろに付くよ、という感じでチームで戦っていくことになると思います。最後はラストスパートとなるので、お互いの良いところを組み合わせていければ、結果がついてくる可能性がありますよね。

西山:(PBの)日本チームは2人ですが、他国の選手もライフセーバーが多く顔見知りもいるので、敵だけどお互いに協力する場面も出てくると思います。

 ライフセービング競技だと接触は日常茶飯事ですが、距離を漕ぐパドルボードの場合は、いかに体力を使わずに漕ぐかが大切になります。ライフセーバー同士だからこそ、そのあたりのことは言葉をかわさなくても分かり合えると思うのです。
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ニューボードの乗り心地は?

 二人が出場するのは、21kmのディスタンスレースと、複雑なブイを周回する5.5kmのテクニカルレースの2つ。乗り慣れたマリブボード(10フィート6インチ)ではなく、長距離用に設計された12フィートのパドルボードで大会に挑む。
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今大会に備え、特注したボード。全長・幅ともに特殊な形状となっている

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これが通常のマリブボード。左の写真と比べると違いが分かるだろう

 オーストラリアのブラボー社で造られ、日本に届いたばかりの2艇のパドルボードは、全体的な幅も狭く、ノーズやテールの形も違う。
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西山選手のノーズ。ボートの船首形状をしていて波切りがよいイメージを受ける

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青木選手のノーズ。西山選手のそれより若干平たく見える

 
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青木選手と西山選手が使うボードは、それぞれ微妙な違いがあるものの、どちらもノーズは波を切り裂いて進むような厚みにあるとんがった形状で、テールは引き波をなるべく少なくするように幅約20cmほどの細さだ。さらにボトムも緩やかに丸みを帯びたラウンド形状となっている。さて、乗り心地はどうだっただろうか?

——進水式前の予想と、実際に乗ってみての感想は?


LSweb青木:マリブボードより長い分、漕ぎ出しの初動が重いと覚悟していましたが、思った以上に軽く漕ぎ出すことができました。

 ノーズの形が影響しているのでしょうが、インでは波を超えるというより、波を切るという感じです。ボード(板)というより、ボート(舟)という感じですね。

西山:パドルで作った推進力が消えない、と感じました。

 マリブボードの場合、ガシッガシッというか、グングンというか、パドルするたびに進んで、抵抗でスピードが落ちて、進んで、スピードが落ちて、の繰り返しとなりますが、パドルボードはスピードが落ちずに流れていく感じです。だからそれに合わせてパドル自体も前から後ろへ大きく流すような感じになるのだと思います。

青木:マリブボードのニーパドルと、パドルボードのストロークが同じぐらいの速さですかね。どちらもニーパドルなら、パドルボードのほうが1.5倍くらいのスピード感覚です。

LSweb西山:う〜ん、僕はまだどのくらいか数字で表すことができませんが、全然違うことは確かです。速すぎて、おっとっと、という感じになりますよ(笑)。

 長いことと、テールの幅が狭いので、波に乗るのは少し難しいかもしれないです。ボトムが丸みを帯びているので直進性はあります。ただ少し不安定なので、インアウトはちょっと練習が必要かな。

 それにしても、レースに出る出ないを抜きにして、すごく楽しい乗り物です。

 マリブも含め、パドルボードってすごくシンプルなアイテムじゃないですか。
 板きれに乗って手で漕ぐ、ある意味すごく原始的な乗り物ですよね。だからこそ、自分の力で進める楽しさがあると思うのです。

 この気持ち良さを、もっと多くのライフセーバーにも知ってもらいたいなぁ。これだけスイスイ進むと、ちょっと遠出したくなりますよ。
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 ライフセーバーの新たな可能性を探して、メキシコへ旅立つ青木選手と西山選手。二人の活躍が楽しみだ。なお、大会期間中は公式ウェブサイトで最新ニュースが配信される。

 また、二人は新たな挑戦に際してクラウドファンディングで資金を募っている。残り期間はあと3日。彼らの挑戦を応援したいという人は、ぜひチェックしてみてほしい。

    
 
★☆★ WSUPPC/第4回SUP&パドルボード世界選手権大会公式ウェブサイト ★☆★
LSweb isawsuppc.com

★ 青木将展クラウドファンティング告知ページ ★
https://moon-shot.org/projects/91

★ 西山 俊クラウドファンティング告知ページ ★
https://www.makuake.com/project/paddleboard/

 
    








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