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全日本プール Day2
SERCは西浜SLSC、総合優勝は日体大LSCへ
2015/05/21

The 28th Japan National Pool Lifesaving Championships

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第28回全日本
ライフセービング・プール競技選手権大会



28回目を迎えた全日本プール競技選手権大会。

2日目は溺水事故の救助シミュレーションでライフセーバーの実力を競う「SERC」からスタートした。

午後からは、個人・リレー種目で0.1秒を争う接戦が再開。さて、優勝杯は誰の手に?


文・写真=LSweb編集室




苦戦チーム続出の難関SERC

LSweb プール競技選手権の目玉種目ともいえるのが、SERC(シミュレーテッド・エマジェンシー・レスポンス競技)だ。

 救助技術が採点されるため、この種目で上位に入ることがライフセーバーたちにとっての大きな目標となっている。

 状況設定を考えるSERCワーキンググループは、約1カ月前からさまざまな事故を想定し、あらゆる可能性を検討しながら準備を行うのだが、今大会では「自然公園に遊びに来て事故に遭遇」というシチュエーションを設定した。近年にない状況設定で、面食らった人も多かったのではないだろうか。

LSweb 「今回はパトロール中ではない、一般人の立場で事故に遭遇したらどうすべきかを問う想定でした。ウォーターセーフティーを念頭に置いた設定で、実はやるべきことは非常にシンプルなのですが、シンプルだからこそ難しかったかもしれません。救助しなければ、というライフセーバーの性(さが)が前面に出てしまったチームほど、思ったより得点が伸びなかったかもしれませんね」
 と話すのは、ワーキンググループを率いた篠田敦子さんだ。

 状況設定が難しかったというのは、上位チームの(救助)達成率が昨年と比べて10%ほど低かったということでも証明されているだろう。そうした状況で優勝したのが、上位常連チームの西浜SLSCだった。
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 西浜SLSCはどう戦略をたてたのか、何が上位チームの勝敗を分けたのか、また個々の事例へはどう対処すれば良かったのかなど、SERCの詳細は改めてレポートするので、もうしばらくお待ちください。

ラインスローで強さを見せた柏崎LSC

 SERCで重点の置かれたウォーターセーフティーの理念。

 自分の身を守りながら(自助)、溺れている人を助ける(共助)方法の一つに「スロー」という技がある。その技術を競うのがラインスロー競技だ。
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 世界大会では10秒を切るタイムも出るこの種目。女子は柏崎LSCの高橋志穂が一投目で決め、大会新の13秒32を記録した。2位は銚子LSC。こちらも小林夏実が一投目で成功させた。

 男子は日本記録保持者の西浜SLSC、長竹康介が安定したスローと力強いドラッグで10秒76を記録し優勝。10秒90をマークした日本体育大学LSCの小椋隆継だが、長竹に0.14秒およばず僅差の2位となった。
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 3位と大健闘したのが柏崎LSCの高校生ペア、加藤 豪と片山雄起だ。柏崎LSCは男女ともにメダルを獲得。熱心なコーチの下、しっかり練習してきた成果が現れた。

 上位チームはどんなテクニックを用いているのだろうか。競技映像をリンクしたので、今後の参考にしてほしい。


★ ラインスロー競技映像 ★



ライバルの存在が刺激に

LSweb 道具の進化もあり、記録更新の期待が高かった100mマネキンキャリー・ウィズフィン。

 女子の最終組には、勝浦LSCの水間菜登と若狭和田LSCの山本裕紀子という、ハイパフォーマンスチームの2人が登場した。しかし、タイムは1分を切ることのない平凡な記録に。

「ベストが出なかったです」と悔しそうな表情なのは、1分00秒14の水間。

「最近、いつもそうなのですが、折り返し後の50m後半になると、マネキンがゆらゆらして滑ってしまうのです。脇を締めるようにしていますが、心拍数も上がってくる時間帯なので、意識がそこに集中できなくなるんでしょうね」と続けた。

 「潜水でゴーグルがひっくり返って出遅れました。マネキンピックアップで(水間)菜登ちゃんに追いついてきて、いける! と思っていたのですが、残り25mぐらいのところでマネキンが滑ってしまいました」と話すのは、1分01秒69で2位の山本だ。

 レース後、サブプールで話し込む2人に声をかけると、「お互いにマネキンを滑らせて、ツルツル祭りですわ(笑)」と山本。関西人らしい反応を見せた後、
 「(反発力の高いロケットフィンなど)フィンが変わり、自分の泳ぎが速くなったことで水の流れも変わり、その水流でマネキンがもっていかれるのだと思います」と冷静に分析することも忘れなかった。
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 「55秒ぐらいを出したいと思っていたので、負けたことは悔しいですが、それは不甲斐ない自分に対して。相手のことは素直に称える気持ちになります。競泳時代にはなかった感情ですね。なんでやろ?」と言う山本に、
 「それがライフセービングスピリットですよ。私も裕紀子さんのような刺激をもらえる人が現れてくれて、とても嬉しいです」と水間が笑顔で答えた。

 「そやな、ライフセービング競技のタイムって、ただのタイムと違うもんな。重くても、辛くても、タイムが遅くても、マネキンは放したらあかんって、私もチームメイトに言ってるし……」と、二人の会話はしばらく続いた。

 男子も最終ヒートにハイパフォーマンスチームのメンツが5人、ずらりと顔を揃えた。その中で勝ったのが、新島LSCの園田 俊。
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 「すごいメンバーと一緒で緊張しました。隣のコースには平野(修也)さんがいたので、50mのターンまではチラチラ横目で見ながら行き、そこからは前だけを見て泳ぎました。後半、けっこうバテてしまい、50秒を切れなかったのが残念です」と園田。優勝記録は51秒16だった。

 園田がチラチラ見ていた、という辻堂LSCの平野修也は7位。

 「この種目を泳ぐのは、今日が2回目なんです。今日の泳ぎですか? すべてがダメでした。ということは、まだ上にいける余地があるということですよね」と、ちらりと自信を覗かせた平野だ。

プレッシャーをパワーに変えて

LSweb 女子200mスーパーライフセーバーで優勝したのは、この種目を得意とする九十九里LSCの三井結里花。

 自身の持つ日本記録を3秒近く上回る、2分33秒02の日本新をたたき出した。圧巻だったのは、マネキンキャリーの後のトランジットだ。正確に計ったわけではないが、フィンとチューブを2〜3秒で装着し、後続との差を一気に広げた。

「普段はたぶん5秒かからないぐらいでトランジットしていると思います」と三井。本番の大舞台で集中できるのが、彼女の強さなのだろう。

 男子200mスーパーライフセーバーは、湯河原LSCの安藤 秀が2分20秒69で初制覇。安藤も三井と同じく、スムースなトランジッドが際だっていた。

 ラスト50mで猛然と追い上げてきたのが、日本体育大学LSCの坂本 陸。後半に強い坂本だが、僅かに及ばず2位に甘んじた。
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「速い選手と泳げるのは刺激になります」と坂本。表彰台では妹の坂本佳凪子とともに、仲良く銀メダルを授与されていた。

 優勝争いを演じた最終ヒートの一つ前には、かつての日本記録保持者である御宿LSCの林 昌広が出場。全盛期のタイムには届かなかったが、レース後、自ら隣のレーンの後輩たちに握手を求める姿には、ベテランらしい貫禄が漂っていた。

LSweb 2日間にわたる熱戦を締めくくったのが、4×50mメドレーリレーだ。

 女子は館山SLSCと銚子LSCが接戦を繰り広げ、0.06秒差で館山SLSCが優勝。男子は4泳の深井俊光が激泳を見せた、湯河原LSCが2位に3秒近くの差をつけ完勝した。

 中村美穂→鎌田香織→池永早弥佳→中嶋理乃と繋いだ館山SLSC。

 喜びに沸くメンバーに話しを聞くと、「実はぶっつけ本番の、初めましてメンバーなのです」という答え。しかし、それぞれが競泳やフィンスイムのバックボーンを持つ、実力者チームだ。

 クラブの入り口は常に広く開けている、という考えでライフセービング活動をしている館山SLSCらしい勝ち方だった。
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 湯河原LSCは大島圭介→菊地洸貴→安藤 秀→深井俊光と繋いだ。

 「(エースの西山)俊も、(コーチの青木)マーボーさんもいないので、逆に燃えました」と深井。2泳の菊地は西山の替わりというプレッシャーをはねのけ、見事、優勝。
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 「コイツ、昨日から緊張しまくっていましたから」とチームメイトにからかわれていたが、チームに貢献し晴れ晴れとした笑顔を見せてくれた。


 総合優勝は日本体育大学LSC。全日本プール三連覇を達成した。金色の優勝杯を手渡され、目を潤ませたのは主将の山口祐太と、女子主将の飯田亜実。

 「部の体制が変わったこともあり、いろいろあったんです僕らの代は。でも、まず一つ結果が出たので、少しホッとしたというか、自信が持てるようになったというか、もっともっとがんばらなければいけないというか、とにかく今はちょっと嬉しいです」と話す山口の後を継ぎ、
 「幹部としてはこれが始まり。学生としては今年が最後の年なので、これからも気を引き締めてやっていきます」と飯田が言葉を続けた。
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  “常勝”というプレッシャーをはねのけ、みごと勝利を手にした名門・日体大LSCだった。(敬称略)


★第28回全日本ライフセービング・プール競技選手権大会2日目 表彰★

SERC

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ラインスロー・男女

ラインスロー・男女

 
100mマネキンキャリー・ウィズフィン・男女

100mマネキンキャリー・ウィズフィン・男女

200mスーパーライフセーバー・男女

200mスーパーライフセーバー・男女

 
4×50mメドレーリレー・男女

4×50mメドレーリレー・男女

総合成績

総合成績

 
オフィシャル全員集合!

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オ・マ・ケ Happy Smile!

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