Competitions

LSweb
第29回全日本LSプール Day2
SERC、そして総合優勝の結果は!?
2016/05/29

LSweb
第29回全日本LSプール競技選手権大会2日目。

メインプールでは、第1種目であるSERC(シミュレーテッド・エマジェンシー・レスポンス競技)の準備が着々と進められていた。

その他にもラインスローや個人・リレー種目が目白押しの後半戦。

最後に総合優勝を手にしたのはどのクラブだろうか?


文・写真=LSweb編集室





今年のSERCシンプルが故に難しい

 全日本プール2日目。

LSweb 朝イチからスタートするのは、全日本プール大会のメイン競技ともいわれる「シミュレーテッド・エマジェンシー・レスポンス競技」、通称「SERC」から。

 この競技の最中だけはピンと張り詰めた緊張感が漂い、会場全体が水を打ったように静まる中、競技者の声だけがプール上に響き渡る。

 SERCは、通常起こりうる溺水事故の発生場面を想定して会場内にセッティング。1チーム4人で構成された救助者が、1分30秒の間に溺者や負傷者、目撃者などと対峙して救助・心配蘇生・応急手当などを行う実践的競技だ。

 限られた時間の中で救助技術が採点されるチーム競技だから、的確な状況判断やスムースな連携がポイントとなる。
 
 この競技の特徴は、状況設定が毎回まったく異なること。つまり今年のSERCの設定はこの大会のみであり、今後全く同じシチュエーションが使われることはない。

 こうした状況設定を考案するSERCワーキンググループは、昨今起こりうるさまざまな事故を想定しながら綿密に競技セッティングしていく。
 
 今回は「神奈川県のとある海水浴場、エリア内に離岸流が発生していて事故が起こっている」というシチュエーションが採用された。

LSweb 夏の海水浴場で起こりがちな至ってシンプルな設定だけに、選手には一連の基本的な救助活動が要求される。基本的技術や行動というのは誰が見ても出来不出来がすぐにわかるから出場する選手は案外やりづらかったかもしれない。

 SERCワーキンググループ責任者を務めた来島慎太郎さんは今回の設定を次のように解説してくれた。
 「今のライフセービング界全体の流れにおいて、心肺蘇生のガイドラインが変わったことから救命の連鎖という部分が注目されているので、そこにフォーカスする内容としました。
 救命の連鎖という、“救助をしてからCPRを行い救急隊の方にしっかりと引き継ぐ”というところまでの流れにしっかりと着目して作ったもので今回のキーポイントとなるところです。これは教本の最初にも載っている部分であり、その意味でも基本重視の状況設定といっていいですね」

 今年は31チームがエントリーしたSERC。基本を押さえた“救命の連鎖”というポイントを上手く掴み、73ポイントでみごと優勝を果たしたのは、救助活動のプロでもある東京消防庁LSCだ。
LSwebLSweb
 1分30秒という短い間に的確な救助活動を展開して見せてくれた東京消防庁の面々。競技終了の合図と共に送られる観覧席からの拍手がひと際大きく聞こえたことからも、その出来の良さが伺えた。

 続いて流経大LSCと成城学園LSCが67.8ポイントで同率の2位となった。
LSwebLSweb
 今回の加点ポイントやそれぞれの対処対応について、また、全体を通してよくできていた点やウィークポイントなど、SERCの詳細については、来島さんの話しを交えながら改めてレポートする予定。

 SERCが終わると次はラインスローだ。文字通り、救助ロープを溺者役に投げ、引き上げるまでのタイムを競う。

 昨年の女子は、柏崎LSCが素早い巻き上げからの一投目で決め、大会新記録をマークしたが、今年は一転してどのチームも一投目の成功率が思いのほか悪かった。

 そんななか、新島LSC河野・中村ペアが17秒48のタイムで優勝。2位には流経大LSC、3位に波崎SLSCが入った。
LSwebLSweb
 男子は、東海大クレストの木村・高梨ペアが11秒65の好タイムで優勝。0.79の差で2位に湯河原LSC、3位には銚子LSCが続いた。
LSwebLSweb

 タイム競技の性質上、少しでも早く投げようという思いとスピードは必要だが、それとともにスローイング時のコントロールの精度やロープがおまつり(絡まってしまう状態)で届かないといった部分も多く見受けられた。

三井、Sライフセーバーで6連覇!

 タイム決勝で順位の決まる個人種目は、100mレスキューメドレーの女子からスタート。

LSweb 序盤から積極的にいった黒いキャップの銚子LSC栗真千里が上がり1分18秒40で優勝を決めた。2位には栗真と同じ銚子LSCの鈴木悠花が続き、3位には東海大クレストの塩原あかりが入った。

 男子は、昨日の200m障害物スイムを制して好調な湯河原LSCの安藤 秀が1分04秒94の大会新でフィニッシュ。2位には安藤と同じ湯河原LSCに所属の大島圭介が続いた。

 この2人はチーム種目のリレーでも大車輪の活躍を見せて大会を盛り上げ、総合順位でも所属クラブを上位に押し上げる原動力となっている。3位には日大LSCの池端琢拓海が入った。

 昨年は平凡な記録に終わった女子の100mマネキンキャリー・ウィズフィン。

 最終ヒート、この種目の日本記録保持者の勝浦LSC我妻菜登が4コースに登場。昨日の女子100mマネキントウ・ウィズフィンでは自身の日本記録を更新する好タイムで優勝を飾っており、この種目でも記録更新の期待がかかる。LSweb

 対抗馬には、お互いがよきライバルと認め合う若狭和田LSCの山本裕紀子が隣の5レーンに入った。
 他にも東海大クレストの船津美帆、日体大の渡邉来美といった実力者が揃った。

 スタートから抜け出しリードしたのは予想通り、我妻。しかし50mのターンから後半戦へしっかりと食らいつく山本。
 トップ争いはこの2人に絞られた。残り10mあたりで横一線に並ぶと5レーンの山本が猛然とラストスパートをかけてきた。

 結果は、58秒78の大会新記録で山本が逆転優勝。2位に我妻、3位に船津が続いた。

IMG_0013 みごと1位となった山本は、
 「オーストラリアから帰国したばかりでプールでの練習調整はほとんどできなかったんでぶっつけ本番でした。ただ、オーストラリアで基礎体力がめっちゃついたのでそのお陰でこの結果が出たんだと思います。
 全然疲れた感じがしない。今からでももう1本レースで泳げそう」
 といって笑った。早速オーストラリア遠征の効果が出たようだ。

 惜しくも2着となった我妻は、
 「54秒台もイメージできていたし、昨日は日本新も出せていたので調子そのものは悪くなかった。
 ただ、裕紀子さんが隣のレーンだったので息継ぎしたときに追い上げてきているのが視界に入って、ちょっと焦ったというか雑念が頭をよぎったのが良くなかったと思います。メンタル的な部分をもっと強くしていくことが必要ですね」
と、レースを振り返って話してくれた。

 男子は日本記録保持者の湯河原LSC西山 俊が、昨年のこの種目で優勝した西浜SLSCの園田 俊を押さえ、49秒35の大会新記録で優勝した。3位には日体大LSCの幡野圭祐が続いた。
LSwebLSweb

 大会もいよいよ大詰め。個人種目最後となる200mスーパーライフセーバーがスタート。

 女子は、昨年のこの大会で2分33秒の壁を破る2分32秒99という日本新記録で優勝した九十九里の三井結里花が、この種目前人未踏の6連覇を狙って最終ヒートに登場。注目のレースだ。

 スタートから前半戦は落ち着いたペースで泳ぐ三井に日体大の坂本佳凪子がぴったりとマークする展開。
 しかし、後半になると自力に勝る三井がペースを上げ、2位の坂本に3秒以上の差を付ける2分35秒16のタイムで優勝した。3位には伸び盛りの西浜SLSC上野真凜が入った。
LSwebLSweb
 みごと6連覇を達成した三井。

LSweb 「この種目6連覇は素直にうれしいです。でも、タイム的にはいまひとつ。全然納得していないです。前半でタイミングのよいスムースな泳ぎができなかったのがこのタイムに現れましたね」

 教員生活の傍ら、しっかりと結果を出し続ける三井は、
 「今年から水泳部の顧問も始めたのでなにかと忙しいですが、卒業した教え子が何人も大学生になってライフセービングを始めてくれたんです。〝三井先生みたいなライフセーバーになりたい〟って。うれしいですね。この子たちも応援してくれているし不甲斐ない成績は残せないのでこれからも頑張ります!」と笑顔で話してくれた。

 続く男子は、名門西浜SLSCの若きエース、上野 凌が2分18秒76の大会新記録でみごと優勝。妹の上野真凜も同種目で3位入賞を果たしており、兄妹揃ってうれしい表彰台となった。
LSwebLSweb
 
 「昨日は100mマネキントウ・ウィズフィンで2着だったのでこのスーパーライフセーバーはひそかに狙っていました。ターゲットタイムは悪くても(2分)15秒台は狙えたしいけると思って臨んだのですが、フィンのトランジットでミスってしまいタイムロスがあったのでそこが悔やまれます。
 じつは今日オフィシャルで参加してくれている父さんの誕生日だったので、その思いも込めてしっかりと泳ぎ切りました」

 上野兄妹は揃って慶応大学に通っていて、同校のライフセービングクラブも中心となって引っ張っている。親思いで仲のいい兄妹、上野ファミリーにとって忘れられない1日となったことだろう。

 2位にはこれも西浜SLSCのヤングフェイス廣田 諒が続き、3位には東京消防庁の平野修也が入った。
 
総合優勝は湯河原? 西浜? それとも・・

 いよいよ大会最後を飾る種目、4×50mメドレーリレーのスタート。
LSwebLSweb
 女子は、日体大がいいペースで泳ぎ切り、1着でゴールしたが、残念ながら失格となり順位付かず。昨年惜しくも2着に終わった銚子LSCがみごと雪辱を果たし1分51秒20という大会新記録で優勝。メンバーの鈴木悠花、小林夏実、栗真千里、堤 茅咲は喜びを爆発させた。
 2位には日女体大LSCが続き、3位に西浜SLSCが入った。

 続く男子は、昨日のリレー2種目と同じ、湯河原LSC対西浜SLSCの一騎打ちとなった。最後の最後までデッドヒートを繰り広げた両チーム、わずか0.00.11差で湯河原に軍配が上がった。
LSwebLSweb
 大島圭介、西山 俊、安藤 秀、深井俊光と繋いだ湯河原。これで男子リレーの3種目全てを湯河原が制した。湯河原、強し!
 2位には惜しくも 西浜SLSC、3位に法政大SLSCが入った。


 2日間に渡る全種目が終了し、残すは総合成績の発表を残すのみ。

LSweb 昨年は学校クラブである日体大LSCが総合優勝を勝ち取ったが、リレー競技のところで書いた通り、今年は、地域クラブの西浜SLSCと湯河原LSCの活躍が個人、チーム種目共に目立っていた。

 さて、注目の総合優勝の栄冠に輝いたのは?……。
 総合得点96点で西浜サーフライフセービングクラブ! 2位には湯河原ライフセービングクラブ。その差は僅か3点差だった。

 続いて3位の表彰台には昨年の優勝クラブ、日本体育大学ライフセービングクラブが立った。

 意外にも西浜SLSCはこの全日本LSプール選手権での総合優勝は初めてのこと。昨年の2位からステップアップを果たし、みごと悲願の初優勝に輝いた西浜SLSCがまたひとつ勲章を手に入れた。(敬称略)


★第29回全日本ライフセービング・プール競技選手権大会2日目 表彰★

LSweb

SERC

LSweb

ラインスロー・男女

LSweb

100mレスキューメドレー・男女

LSweb

100mマネキンキャリー・ウィズフィン 男女

LSweb

200mスーパーライフセーバー・男女

LSweb

4×50mメドレーリレー・男女

LSweb

総合優勝








Competitions 記事タイトル一覧

年別アーカイブ