Competitions

第4回全日本学生ライフセービング・プール競技選手権大会
競技会レポートVol.2
2013/03/06

2013.3.2-3 静岡県・富士水泳場

創部6年目の快挙
団結力で男子総合優勝を勝ち取った流経大
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プールインカレ初日は、男子が日本体育大学と日本大学が同点トップ、昨年の覇者、拓殖大学が3点差で追いかけるという展開に。

また女子は、1位の日本体育大学と2位の日本大学が僅か1点差で競技を終了した。勝敗が決する2日目。各校はどう戦ったのだろうか。

文・写真=LSweb編集室





中高生のがんばりに拍手!


 大会2日目。大学生たちの熱戦の合間には、中学生・高校生の記録会も行われた。

 実施競技は、100m障害物スイム、ラインスロー、50mマネキンキャリーの3種目。ラインスローと50mマネキンキャリーは、大人と同じコンディションだ。
 それにもかかわらず、中学1年生から高校3年生までの男女13人が果敢に挑戦。中学生の中には見ているほうが心配になるほど華奢な身体で、自分の体重より重いのではないかと思われるマネキンを抱え、沈みそうになりながら必死に泳ぐ参加者の姿も見られた。
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 LSweb反対に、高校生では大学生顔負けのタイムを出す選手も。飯能高校3年の山本青空はラインスローで23秒11の記録を出し、本庄東高校3年の大澤凉汰は、マネキン水没の判定を受けたものの、50mマネキンキャリーで37秒05のタイムをマークした。
 
 水没していなければ、インカレでもベスト10に入る記録。記録会直前に初めてマネキンを触ったというのだから将来有望だ。拓殖大学の卒業生、清水雅也に憧れているという大澤は、4月から同大学で本格的にライフセービングを始めることが決まっている。頼もしい新人である。


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最上級生であることのプライドと情熱

 最初の決勝種目となった女子200m障害物スイムでは、栗真千里(日体大)が同種目4連覇の偉業を達成した。記録は大会新の2分20秒46。プールインカレが初めて開催されたのは、彼女が大学1年生の時。以来4年間、学生チャンピオンの座を守り続けてきた。LSweb

「4連覇がかかっていたので気合いが入りました。今回が自己ベストです。本当は2分20秒を切りたかったのですけどね…」
 
 身長150cm(自称)の小柄な栗真。記録達成までの努力は並大抵ではないはずだ。
「卒業後は東京都の体育施設で働くことが決まっています。仕事柄、泳げるしトレーニングもできる環境なので、競技会にも参加し続けたいですね。もちろん夏はガードもやります」
 栗真の卒業後は、誰が200m障害物スイムの新女王になるだろうか?

 男子200m障害物スイムは菊地 光(日大)が大会新となる2分03秒24で優勝。2位の石川直人(神奈川大学)も2分04秒58で大会記録を更新した。大学4年生の2人。そして夏は同じ浜でガードをする2人が、最後のインカレでワンツーフィニッシュを飾った。

 「いやぁ、日本記録を狙っていたのですが…」
 と言う菊地は、残念ながら記録には0.39秒届かなかった。菊地も石川も4月からは社会人として新しい環境に身を置くことになる。

LSweb 同じく最後のインカレとなったのが、男子200m障害物スイムで5位に入賞した佐口太一(岐阜聖徳学園大学)だ。海なし県、岐阜の大学に通う佐口と同期の加藤雅也はともに4年生。大学に後輩はいない。

 「大学のプールが建て替えで使えなくなったため、2人で市民プールに足を運び練習しました。夏は愛知LSCでガードに入っていますが、大学に後輩がいないため、ライフセービングを伝えることができず残念です。卒業しても、もしやりたいという後輩が出てくれば喜んで教えますよ」
 競技を終え、そう話してくれた佐口だった。

 今大会で最もエントリー数が多かったのが、女子13ヒート、男子24ヒート行われた男女50mマネキンキャリーだ。タイム決勝を制したのは、女子が名須川紗綾(文教大学)、男子が加藤 凌(早稲田大学)。男子は加藤以下、4位までが大会新をたたき出す白熱した戦いとなった。LSweb

 残念なことは、男子は参加162人中、約1/3にあたる50人が、女子は参加87人中10人が、マネキン水没などで失格になったことだ。接戦だからこそ各人が自己ベストを狙い、ギリギリの泳ぎをするわけで、その結果、失格が増えるのはある程度仕方がないことなのかもしれない。しかし、ライフセービング競技が救助を前提にしたものである以上、やはり失格ゼロを目指すのが本来の姿だと思う。


チーム力を発揮して

 ダブルポイントシステムが採用された今回、団体種目の結果が総合成績の行方に大きな影響を与えることになった。

 大会2日目に行なわれた団体種目は3つ。午前中に行われた4×50m障害物リレーでは、日本大学が男女ともに1位となり、総合優勝へ向けた幸先の良いスタートを切った。
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 続くラインスローでアベック優勝を果たしたのが流通経済大学だ。男子の救助者役、難波優介は昨年のチャンピオン。本来なら競技開始前に溺者役がロープを持って入水し所定位置まで泳いでいくべきだが、難波は溺者役の大河原悠希を手ぶらで泳がせ、所定位置で振り返ったところにロープを投げ渡した。
 その確実性に、観覧席が一瞬、ざわめく。そしてスタートガンの合図と同時に難波はロープをたぐり寄せ、想定通り一発でロープを溺者役まで届かせると、昨年のタイムを0.04秒上回る12秒10で競技を終えた。

「投げ方はいろいろ研究し、試しました。昨年、結果が出てからはある程度自信が持てましたから、技に磨きをかけるというか、練習をさらに重ねましたね」
 と難波。一方、溺者役の大河原も、
「溺者役にもポイントがあります。例えば、引かれる時にはなるべく水面に出ないほうがいいとか」
 と勝敗のポイントを教えてくれた。
 女子は救助者役、溺者役ともに2年生。難波の指導の下、肩が痛くなるほどロープを投げ、練習を積んだそうだ。

 ラインスローは練習の成果が如実に表れる種目だと思う。入賞したチームはどこも、時間を割いて練習を重ねてきたはずだ。特に男女ともに入賞した東海大学清水校舎や、順天堂大学、帝京大学、早稲田大学といった学校は、男女が互いに協力し合い、試行錯誤と練習を繰り返してきたことがうかがえる。

 最終種目のインカレバージョン・メドレーリレーは、女子が日本体育大学、男子が日本大学の勝利で幕を閉じた。どちらも大会新での優勝だった。
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 すべての競技が終わり、閉会式までに時間は、学生委員が機転をきかせたインタビューで盛り上げた。そしていよいよ結果発表だ。

 男子総合優勝は2位の日本大学に13点差をつけた、流通経済大学が嬉しい初優勝。女子総合優勝は日本大学の猛追を2点差で逃げ切った、日本体育大学が第1回大会からの4連覇を達成した。

 昨年、1点差で男子の総合優勝を逃した日本大学は、今年も2位。2連覇中だった拓殖大学は、3位に終わった。
 女子は昨年4位の日本大学が躍進して僅差の2位。3位は昨年2位から順位を落とした東海大学湘南校舎だった。
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 創部6年目で総合優勝を達成した流経大は、優勝を目標に掲げ、週2回の朝練と自主練で実力アップし、同時に、団体種目すべてで入賞を果たすなど、チームが一丸となる団結力で勝利を手にした。
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 「我がクラブの学生たちは、例えば高校時代にインターハイに出場したり、ジュニアオリンピックに出場した経験があるような子どもではありません。今まで、ごく普通の人生を歩んできた学生たちです。その彼らに、やればできる、努力は報われるという経験をさせてあげられたことが、最後の置き土産になりました。この優勝経験は、これからの人生で大きな財産になるはずです。教育者冥利につきますね」
 と感慨深げに語ったのは、同クラブ設立に尽力したJLA理事長でもある小峯 力 同大学教授だ。4月からは中央大学で教鞭を執ることが決まっている。

 「学校を去る小峯先生のためにも、絶対に優勝したかった」
 と話していたのは、主将を務める園田 俊。チーム全員が一致団結し、最高のプレゼントを贈ることができた。
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 閉会式も終わり、優勝記念の写真撮影をしようと集まった流経大に対し、昨年の覇者、拓殖大から「万歳三唱」のエールが贈られた。それに返礼する流経大。

 そんな光景を横目で見ていた日大の菊地 光は、
 「優勝候補と言われながら、毎年2位。何かを変えないとダメなのでしょうね」
 と言った。何かとは? と質問してみると、
 「チームの団結力かな。僕たちは集まって練習するにしても、基本的には個人主体の自主練習です。彼らは目標を共有し、一から十まで皆で一緒にやっていますよね。それが結果に結びついたのかなと思います」
 と答えてくれた。

 今大会のテーマは「Circle of Lifesavers 〜新たな一歩〜」。学生室競技部部長の西 玄汰によれば、ライフセーバー仲間の輪を広げ、ライフセービング界のさらなる飛躍の一歩となれば、という思いを表現した言葉だそうだ。

 プールインカレを最後に卒業する4年生にも、「Circle of Lifesavers 〜新たな一歩〜」を贈りたい。社会人になっても、ライフセービングスピリットとライフセーバー仲間の絆を忘れず、新しい世界で自分の力を発揮して欲しい。

=敬称略。
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