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第8回全日本学生ライフセービング・プール競技選手権大会
東北地方で初開催のプールインカレ、総合優勝は男女ともに日体大が奪還!
2017/03/13

The 8th Japan National Inter College Pool Lifesaving Championships
2017.02.25-26 宮城県利府町・宮城県総合運動公園総合プール

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JLAが主催する今年度(2016年度)最後の競技会「第8回全日本学生ライフセービング・プール競技選手権大会」が、宮城県利府町の県立運動公園内プールで開催された。

東北地方で初めて開催されるインカレには、初出場の盛岡大学を含む37校が参加。

男女合わせて500人以上の大学生たちが、ゼロコンマ1秒を争うハイレベルな戦いを繰り広げた。



文・写真=LSweb編集室




来たるべき夏に向けて

LSweb 大学生ライフセーバーがしのぎを削る学生選手権。

 大会運営の中心を担うJLA学生室が掲げた今大会のテーマは「Grow up for summer 〜すべては夏のために〜」だ。

 東日本大震災から6年。津波による甚大な被害で海水浴場の閉鎖が続いていた被災地だが、開会式に祝辞を寄せた第2管区海上保安庁の保安官によれば、一昨年ごろから徐々に海水浴場の再開も始まり、少しずつ海辺に人が戻ってくるようになったそうだ。
 しかしその反面、水辺の事故も再び発生するようになり、2016年の海水浴シーズンには東北地方全体で29人が救急搬送され、そのうち6人が命を落としたという。

 ライフセーバーが必要とされている地域は、全国にまだまだたくさんある。

 プール競技が得意でも、得意でなくても、来たるべき夏に向けてライフセーバーとしてのスキルアップに励もう——。そんな学生ライフセーバーたちの思いが込められた8回目のプールインカレが、東北の地で開幕した。
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新旧対決激しいプールインカレ

 最初の決勝種目200m障害物スイムでは、女子も男子も日本大学2年生の成澤侑花と池端拓海が優勝し、仲良く二連覇を達成した。しかし2人とも昨年出した自分のタイムには及ばず、水から上がった顔には少し悔しそうな表情が浮かんでいた。
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LSweb 続く4×50m障害物リレー決勝では、男女ともに日大と日本体育大学がデッドヒートを繰り広げたが、男女で明暗が分かれる結果となった。

 女子は序盤で飛び出した日大に、4泳で日体大が追いつき逆転優勝。男子は日大が僅差のリードを堅守し、そのままゴールに飛び込んだ。男子は1位、2位が大会記録を更新する好勝負だった。

 逆転Vで湧く日体大女子の2泳、阿形芽衣は「誰か一人が突出しているわけではなく、皆同じくらいのタイムだったので、全員が自分の力を出しきればいけると思っていました」と息を弾ませた。

 予選は抑え気味に泳いだという日大男子。1泳の荒生拓人が「次はギアを上げていきます」と言ったとおり、決勝では他校の猛追を見事に振り切った。
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LSweb 200mスーパーライフセーバーは、泳力はもちろん、チューブやマネキン、フィンの扱いなど、ライフセーバーとして総合力が試される競技だ。この種目、女子は日大の成澤、男子は慶應義塾大学3年の上野凌が初優勝を手にした。

 女子の2位は、男子優勝の兄の背中を見てきた慶大の上野真凛、3位には帝京大学の石毛杏奈が入り、女子の表彰台は成澤も含め全員が大学2年生という顔ぶれに。今後の活躍も楽しみだ。
 男子は成蹊大学3年の森田大地が2位、明治大学4年の湯浅泰旺が3位と、上級生が格の違い見せたることとなった。

 続いて行われたのが4×50mメドレーリレーだ。プールインカレでは総合成績に反映されないオープン競技のため、この種目でプール大会にデビューする下級生も多い。

 今年この種目を制したのは、女子が日本女子体育大学、男子が大阪体育大学。初々しい1年生から、後輩の成長に目を細める4年生まで、共に頑張ってきた仲間が一緒に表彰台に上った。
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兄弟姉妹も熱戦を繰り広げる

LSweb 機材の進化や技術の進歩により、近年、タイムの向上が著しいフィン種目。大会初日に行われた100mマネキントウ・ウィズフィンでは、男子で56秒60の大会新記録がマークされた。

 優勝したのは、明大の湯浅。

 「スタートから40m付近まで潜水したことが勝因に繋がったと思います。潜ることでチューブの上部に水圧がかかり抵抗にはなるのですが、潜るのと潜らないのと両方試した結果、潜るほうが断然速かったので練習を重ねました」と言う湯浅は、大学4年間を工学部で勉強し、4月から大学院へと進む。理系らしく実験とデータに裏打ちされた泳法で勝利した。

LSweb 2位は慶大の上野。タイムは58秒43だった。プールから上がった上野は、「昨年12月に右肘をケガしたこともあって、思ったように練習ができませんでした。その間にキック力をつけようと、ドルフィン泳法の練習に力を入れてきたのですが、まだまだでしたね。この種目、世界の主流はドルフィンなので、5月の全日本までにはものにしたいです」と決意を新たにしていた。

 女子は東海大学湘南校舎3年の船津美帆と、同大学1年の船津まどか姉妹がワンツーゴール。

 優勝した姉の美帆は「就活でなかなか練習ができず、体力不足でタイムは出ませんでしたが、(妹の)まどかと1位、2位だったのが嬉しかったです」と笑顔を見せた。2人が同じクラブからエントリーできるのは、あと1年。姉妹対決の行方はどうなるだろうか?LSweb

 ところで、同競技の女子第9組には盛岡大学1年の高橋美月がエントリーしていた。東北地方の大学生がインカレに出場するのは彼女が初めて。東日本大震災を経験した彼女は、競泳の経験を活かし、人のためになることがしたいとライフセービングの世界に飛び込んできたのだ。

 始めて数カ月ながら、週3回の練習をこなして本番へ。
 「初めての大会で緊張しました。チューブの扱いに失敗して失格になってしまいましたが、またがんばって練習したいです」と、次への意欲を見せていた。

 初日の締めくくりとなる4×25mマネキンリレーは、男女ともに日体大が制した。女子は2位の日女体大に6秒差をつける圧勝、男子は昨年総合優勝の日大を押さえての勝利に湧いた。
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フィン種目で日本記録更新の快挙

LSweb LSwebラインスローから始まった大会2日目。優勝したのは男女ともに1投目で成功させた東海大クレストだった。

 男子の救助者役、高梨寛泰は昨年の全日本プールの優勝者で、この種目に自信を持って挑んだ。
 
 「勝因ですか? ひたすら投げることです。ひたすら投げて精度を高めました。プールで練習できる機会は限られているので、自分でロープを買い、試行錯誤しながら裏道や公園で投げ続けました」と会心の笑顔を見せた。ちなみに、高梨の巻き取りは8回だそうだ。

 一方、巻き取り10回で練習したのが女子の救助者役である川嶋望生。
 「高梨先輩に教えてもらった成果が出ました」と驚き半分、喜び半分の表情を見せていた。

 今大会で記録が更新されたのは、男女合わせて4競技。記録だけにフォーカスを当てれば、少し寂しい大会だったといえるかもしれない。LSweb そんな中、100mマネキンキャリー・ウィズフィン男子で、日体大の幡野圭祐が48秒58の日本新をたたき出した。

 幡野はレース後、淡々とした口調で「納得のいく練習ができていたので、普段通りにやれば大丈夫だと落ち着いてのぞめたのが良かったと思います。マネキンキャリーだけなら、練習の時からほぼ日本記録と同じタイムで泳げていました。
 ロケットフィンはまだ履きはじめて時間がたっていないので、練習すればもっと記録が伸ばせるとはずです」と振り返った。
 大学最後の大会で日本新をマークしたのに、興奮することなく冷静だったのは、すでに次の目標を定めているからなのだろう。

LSweb 日本記録の陰に隠れてしまった感があるが、100mマネキンキャリー・ウィズフィン女子も59秒23の大会新記録がマークされた。

 ただ一人1分を切ったのは、日体大の坂本佳凪子。昨年まで出ていたマネキントウ・ウィズフィンから種目を替えての優勝となった。
 
 「マネキンキャリーはこの(大会に出場している選手の)中で一番速いという自信があったので、前半は抑え気味で入り後半でスパートをかけました」と笑顔を見せた後、この後に行われ、4連覇がかかる50mマネキンキャリーに向け、気合いを入れ直していた。

LSweb 同種目女子7位に入賞したのが、慶大1年の藤巻紗月。実は藤巻、フィンスイム日本代表で、ジュニア/ユース時代には日本記録を連発していた実力者だ。

 藤巻は「ライフセービングを知ったのは、2013年にコロンビアで開催されたワールドゲームスの時。フィンスイムとライフセービングが同じ会場で行われていたので、興味を持ち、大学に入ってから、一つ上の(上野)真凛さんに声を掛けられ始めました。
 普段はモノフィンだし、ライフセービングは道具が多いので難しい部分もたくさんありますが、でもすごく面白いです。マネキンって重いけど体幹が鍛えられるし、ベーシック資格を取る時に波のある環境で泳いだのはきつかったけれど楽しかったので、フィンスイムと両立していきたいって思っています。メダルも獲りたいので」と意気込む。
 学生ライフセービング界に吹き込んできた新風に期待したい。

日体大がアベック総合優勝を手に

LSweb 大会終盤に行われた100mレスキューメドレー。女子は日体大4年の寺坂恵実が、日女体大1年の前川紗槻を0秒22差で押さえ、学生最後の大会を締めくくった。

 日大の先輩後輩対決となった男子は、4年の那須凛斗が2年の池端をかわし勝利を収めた。

 「この種目にはずっと力を入れていましたが、なかなか結果が出ませんでした」という那須は、「後輩の(池端)拓海の調子が良く少し不安でしたが、学生最後に1位になれて本当に嬉しいです」と喜びを爆発させた。

 その那須に駆け寄った池端は、「凛斗さんが勝って興奮しました! 僕、本当は先輩っ子なんですよ。生意気な後輩だったと思うけれど、先輩たちは僕らを引っ張り、鼓舞してくれる尊敬できる存在。凛斗さんたちのような上級生になれるよう、次は僕らがかんばっていきます」と宣言。強豪日大は不滅のようだ。
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 50mマネキンキャリーは女子9ヒート、男子24ヒートの長丁場となった。

LSweb 4連覇がかかる日体大の坂本は女子最終ヒートに登場。スタートから落ち着いたレース運びで、マネキンをピックアップしてからもグングン加速し、危なげなくゴール。学生選手権負けなしの偉業を達成した。

 ちなみに坂本は出場した個人、リレー種目すべてで優勝を手にし、学生最後の大会を終えた。

 男子は前の種目で日本新を出した日体大の幡野が優勝。2位の中京大学3年、岡田充弘は0秒09差で涙をのんだ。「マネキンをピックアップした時に指が滑ってしまって……」と言った後、「全然ダメでしたね」と潔く負けを認めた。

LSweb 今大会では、エントリーが一人という大学が2校あった。そのうちの1校が盛岡大学であり、もう1校が大東文化大学だ。
 
 50mマネキンキャリーに出場した大東大1年の山田修嗣は、高校まで競泳に打ち込んできた経歴を持つ。「学校に先輩はいませんが、競泳時代の先輩が他大学でライフセービングをやっていると聞き、僕もやってみたいと始めました。初めてのことも多いですが、楽しいです。波崎SLSCに所属し、学校を越えた繋がりができたことも魅力です」と、笑顔を見せた。

 最終種目はプールインカレ特別種目、3人で200m泳ぐメドレーリレーだ。フィンを装着した選手が1泳と4泳を担当するこの種目、どのチームも1泳にエースを投入した。
 そのエースが期待通りの活躍を見せのが日体大だ。女子は坂本、男子は幡野が渾身の力で泳ぎきりそれぞれ2位以下に4秒近くの差をつけて圧勝した。
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 坂本→寺坂→阿形と繋いだ女子。抱き合って喜ぶメンバーの中で唯一の3年生である阿形は「本当に逞しい、頼りになる先輩たちでした。追いつけそうで、最後まで追いつけませんでした」と勝利に酔いしれた。LSweb

 幡野→岩井浩大→川嶋駿介と繋いだ男子は、川嶋が3年生、岩井が2年生。「先輩から受け取ったバトンをしっかり繋げていきたい」と口にした川嶋は、満面の笑みで優勝した女子とハイタッチを交わした。

 特別種目の勢いのまま、総合優勝も日本体育大学が男女ともに制し理事長杯を手にした。

 「先輩たちへの感謝の気持ちがいつも以上のパワーになりました」と女子主将の阿形が言えば、応援のしすぎで声が枯れてしまった男子主将の岸田興喜が、「チーム力はあるので、全員が自分の力を出し切ることに全力投球した結果が優勝に結びついたと思います」と続けた。LSweb

 昨年の優勝校、女子の東海大学湘南校舎と男子の日本大学はともに2位。3位は女子が日本女子体育大学、男子はプールインカレ初の表彰台となる成蹊大学だった。また男子6位には東洋大学、女子6位には青山学院大学、9位には慶應義塾大学が入るなど、新興クラブの躍進が目立った大会でもあった。

 最後に、全校が受けたBLSアセスメントにおいて、JLAが主催する大会で初めてC評価が1チームもなかったことを付け加えておきたい。(文中、敬称略)
男女とも総合優勝を果たした日本体育大学

男女とも総合優勝を果たした日本体育大学



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【第8回全日本学生ライフセービング・プール競技選手権大会 成績表】



☆★☆ 「第14回神奈川県ライフセービング・プール競技選手権大会」 表彰台 ☆★☆
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200m障害物スイム・男女

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200mスーパーライフセーバー・男女

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100mマネキントウ・ウィズフィン・男女

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100mマネキンキャリー・ウィズフィン・男女

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100mレスキューメドレー・男女

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50mマネキンキャリー・男女

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4×50m障害物リレー・男女

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4×50mマネキンリレー・男女

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ラインスロー・男女

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メドレーリレー・インカレバージョン・男女

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4×50mメドレーリレー(Open)女子

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4×50mメドレーリレー(Open)男子

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インカレプール総合成績・男女

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インカレグッズ・デザイナー








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