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LWC2016 日本代表は総合8位
メダルは過去最高の5個獲得
2016/10/05

Lifesaving world championships 2016 in Netherland

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2年に一度開催されるライフセービング競技の世界選手権大会が9月6〜12日の一週間、オランダで開催された。

プール、サーフ&ビーチでレスキュー競技の世界一を争うこの大会。今年は4年に一度開催される「ワールドゲームズ」(2017年にポーランドで開催)の選考大会ということもあり、各国とも強力な布陣を揃えての参加となった。

日本選手団はどう戦ったのか? フル代表として初めての世界大会に挑んだ西浜サーフライフセービングクラブ所属の上野 凌 選手にレポートしてもらった。(LSweb編集室)

文=上野 凌(西浜SLSC)
写真提供=日本ライフセービング協会





開催地と調整

LSweb ライフセービングの世界大会は2年に一度行われ、プール競技、オーシャン競技、ビーチ競技を1チーム6人で戦う。今大会、日本からはフル代表男女6人ずつ、ユース代表3人(男子2人、女子1人)が派遣された。今大会を振り返り、私目線で世界大会のレポートを書きたい。

 開催地のオランダと日本の時差は7時間。プール競技はオランダ西部に位置するアイントホーフェンで、オーシャン&ビーチ競技は北部、北海に面したノールトウェイクで開催された。

 プール会場からオーシャン会場まではバスで2時間かかる。そのため、今大会では、プール競技とオーシャン競技の間に移動日が設定されていた。

 大会5日前に日本を出発し、12時間のフライトの末、ドイツのデュッセルドルフ空港へ。それからバスで1時間半かけ、アイントホーフェンへ到着した。

 翌日からプール組はアイントホーフェンで、ビーチ組はノールトウェイクでそれぞれ最終調整を行った。眠ることを我慢すれば良いだけだったこと、晴れ間も見えていたことから、心配されていた時差はあまり影響しなかった。
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 長時間移動の疲れもあったが、2年間のHPT(ハイパフォーマンスチーム)合宿でもたくさんの指導をいただき、チームに帯同していただいた細川英範トレーナーにもコンディショニングしていただき、日を重ねるごとに、調子を向上させていった。

初日のSERCで2位!

LSweb 大会前日、最終調整を終えたプール組、ビーチ組がアイントホーフェンで再集合。いよいよ明日から本番が始まる。

 大会初日はSERCからのスタートだった。メンバーは世界大会6回目の出場となる長竹康介選手、3回目の三井結里花選手、初出場の平野修也選手と上野凌の4人。

 ロックアップエリアはプールの外の芝生で、通訳として宮部周作さんにも帯同していただいた。最初の種目であり、日本でも日体荏原高校ライフセービング部や館山SLSC、HPTの皆さんにご協力いただき、たくさん練習してきたSERC。ロックアップエリアではとてつもない緊張に襲われ落ち着きがなかった。

LSweb しかし、宮部さんのエールと、今までの練習を思いだすことで、冷静にスタートラインに立つことができた。

 2分間、50mプールで行うSERCは、各メンバーがそれぞれの範囲を的確に対処することが最も重要であった。
 チームメンバーは2分間、全力を尽くしたが、やり残したこともある。そんな心持ちのまま、開会式まで待機していた。そこへ、SERC2位! という速報が飛び込んできた。

 やってきたことが間違いではなかったという想いが溢れ、メンバーで喜びを分かち合った。まずは1枚目!という声。日本チームはいい波に乗り、スタートを切った。
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 その後、開会式。印象はとにかく派手だった。最初はILS会長の挨拶など普通だったのだが、途中からプールに不自然に浮かべられたマリンジェットが動き出し、フライボードとレーザービームによるド派手なショーが始まり、大興奮の開会式であった。

プール競技で銀メダル獲得!

LSweb これまでの世界大会、日本勢はプール競技の個人種目で16位以内であるB決勝に残ることすら難しいとされていた。
 しかし今大会、日本チームは、男子は安藤秀選手、女子は三井結里花選手、我妻菜登選手の素晴らしい泳ぎと技術でB決勝進出を果たし、チームは大きく盛り上がった。

 そして大会2日目のこの日、男子障害リレーで日本代表は2位となり、プール競技史上初のメダルを獲得した。

 メンバーは平野選手、西山俊選手、上野、安藤選手。予選5番通過であったが、日本記録を大きく更新して2番となった。2年前には考えられなかった目標タイムをクリアしての表彰台に、日本チームはさらに盛り上がった。

LSweb プール競技最終日となる3日目、三井選手は出場種目すべてでB決勝進出の大活躍。三井選手が作った勢いで男女ともにマネキンリレーでは日本記録を更新し、得点を重ねた。

 最終競技の男子メドレーリレーを残して、日本は10位。ワールドゲームズ自力出場(プール競技9位以内)はかなわない。日本チームに残された道はメダル獲得しかなかった。

 予選を8位通過だった日本。

 8コースから、一気にトップ争いへ。タイムは予選より3秒も早い日本新記録。しかし、電光掲示板を見ると4位。ところが、3位のオーストラリアがチューブをうまくつかめず失格に。その瞬間、日本チームの3つ目のメダルが確定した。

 そして表彰式中、ワールドゲームズ出場国の発表があった。日本は9位に滑り込み、目標の一つであったワールドゲームズへの出場権を獲得した。
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 プール競技終了後、選手、スタッフ、そしてオフィシャルとして一番近くで見守ってくださった、泉田昌美さん、齊藤愛子さん、田中えりかさんを含めた日本チーム全員で写真撮影。
 プール競技での健闘を称え合い、チームは残る二日間のオーシャン競技を見つめ、準備を始めた。

オーシャン競技でも銀メダル!

LSweb オーシャン競技初日。
 この日、ボードレスキューで栗間選手、我妻選手ペアが2位に入り、2010年エジプト大会の3位を超え、オーシャン競技で過去最高の順位となった。

 2人乗りになったスピードは世界一。グングン追い抜き1位のオーストラリアにもあと一歩というところだった。

 男子も女子もA決勝に多くの選手が進出した。
 女子は三井選手がサーフレースで6位に入る活躍を見せた。男子はインの走力や、スキーのパワーの面で海外勢とは差が開き、サーフレース、スキーレースでは上位進出はできなかったが着実に得点を積み重ねた。

 大会最終日。前日の勢いそのまま、男女ビーチフラッグスでは植木選手が5位、但野選手が4位と上位に入った。日本のビーチフラッグス選手は大きく注目されていて、レース終了後会場は大きな拍手に包まれた。
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 海では男子がボード、オーシャンマンでそれぞれ2人が決勝に進出。女子サーフスキー、オーシャンウーマンでも三井選手は決勝進出を果たした。

 さらに、オーシャンウーマンではオーストラリア、ニュージーランドに次ぐ5位に入るレースでチームに感動を与えた。三井選手はこれで出場した種目すべてで決勝に進出し、得点を取り大きくチームに貢献した。
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 最終種目のオーシャンウーマンリレーは、ボード、スキー、スイムの順で行われた。
 ボードの我妻選手が後続に差をつけ、3位でバトンをつなぐと、スキーの山本選手、スイムの三井選手が差を守り、アンカーの栗間選手へバトンをつないだ。
 チームでつかんだこのメダルに日本チームは感動の涙を流し、劇的な幕切れで大会の全日程を終えた。
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世界大会をふりかえって

LSweb 今回の世界大会で日本は総合8位となり、過去最高成績に並んだものの、目標としていた総合6位には惜しくも届かなかった。個人種目すべてで決勝に進出した三井選手のように、各選手が個人種目でさらに点を取ることが次への課題となった。

 今大会の出場したメンバーは、過去の大会も合わせると全員が世界大会のメダリストとなった。「メダルを輝かせることができるのは今後の活動次第」という言葉を飯沼誠司監督から頂戴し、選手はここで得た経験を次なる目標へとつなげ、ライフセービングのさらなる発展に向け努力していくことを約束した。

 私自身は、高校3年生だった2013年から本格的に世界大会を目指し、プール、海で活躍できる選手になるべく日々トレーニングに打ち込んできた。HPTの合宿では練習の成果の確認と、新たな技術の習得をし、着実にレベルアップを図ってきた。

LSweb 小学生の頃憧れていた選手たちと同じユニフォームを着て、世界の舞台で戦うなんて当時の僕には夢にも思っていなかった。今回の世界大会出場が決まった時はそんな一つの夢が叶った瞬間だった。

 コーチをしてくださった方、一緒に練習してくださった方たちのためにも良い結果を出したかった。今回、個人的には2つの銀メダル、チームでは5つのメダルを獲得できたチームの一員として、戦えたこと、育てていただいた方々に喜んでもらえたことが何より嬉しかった。

 特に印象的だったレースは、もちろんメダルを取った2つのレースだ。どちらも全力を出し切った末の銀メダル。あと一歩だった銀メダル。嬉しさと悔しさどちらも残ったが、自分たち以上に喜んでくださった皆さんを見ることができたことは一生忘れられない経験となった。

 個人種目ではパワーで圧倒された。

 フィンや、スキーだけでなくボードでも1漕ぎの差が順位に大きく影響したと分析している。海外選手の横に立つと、自分より小さい選手は本当に少ない。もっと体を大きくしてパフォーマンスを向上させる必要があると感じた。
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 他チームを見ると、今回活躍した選手層は25〜30歳で学生などの若い選手は少なかったように思えた。
 日本の選手層は22歳までの大学生が多い。卒業後も続けることができるような環境づくりも競技力向上には必要であると感じた。LSweb

 今後個人的には、選手として世界トップクラスの選手になる目標を掲げつつも、日本チームが活躍できるような環境づくりにも力を入れていきたいと考えている。

 改めて、一緒に戦った選手の皆さん、スタッフの皆さん、日本からエールを送ってくださった皆さん、スポンサーの皆さんに感謝申し上げます。

 さらに日本のライフセービング界に貢献できるよう尽力していきます。今後ともご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
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☆☆★2016年世界大会総合成績★☆☆

1位:ニュージーランド(919点)
2位:オーストラリア(821点)
3位:フランス(607点)
4位:ドイツ(490点)
5位:イタリア(461点)
6位:南アフリカ(333点)
7位:スペイン(328点)
8位:日本(305点)プール競技総合9位、オーシャン競技総合6位
9位:イギリス(295点)
10位:オランダ(253点)

★★☆上野 凌 選手の出場種目と成績☆★★

[プール競技]
SERC:2位
200m障害リレー:2位
マネキンリレー:11位
100mトウウィズフィン:17位
200mスーパーライフセーバー:25位
[オーシャン競技]
ボードレスキュー:7位
ビーチリレー:9位
レスキューチューブレスキュー:11位
ボードレース決勝:10位
オーシャンマン決勝:13位
オーシャンマンリレー:8位










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