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2km06
第42回全日本ライフセービング選手権大会・レポートVol.2
挑戦と継続のビーチ編
2016/10/13

The 42nd Japan National Lifesaving Championships 神奈川県藤沢市・片瀬西浜海岸 2016.10.8-9

LSweb
今年の全日本は総合優勝を巡っても僅差の勝負が繰り広げられた。

大粒の雨が降ったこと、風や波のコンディションが刻々と変化したこと、ボードレースがキャンセルになったこと、そんな不可抗力を乗り越えて理事長杯を手にしたのは……。

総合優勝の行方を左右したビーチ競技の勝敗やいかに。全日本レポート後編をお届けしよう。


文・写真=LSweb編集室





2kmビーチランは下田LSCが制す

LSweb 大会初日——。午後から吹き上がった南からの強風の中で、この日の最終種目である2kmビーチランのガンが鳴った。

 女子は、國武あかね(白浜LSC)、小林果蓮(下田LSC)、金子真優(銚子LC)、遠藤夏葉(日体大荏原高校LSC)らが序盤を引っ張り、勝負は最後の折り返し地点へ。ここから差を広げたのが小林だ。

「自分は後半で競ったら弱いので、ラスト1kmから上げる作戦でした。でも入りが思ったより速くて、1kmで上げることができなかったので、とにかく粘って粘って、最後は意地で走りました。
 先輩でライバルの大井麻生(波崎SLSC)さんが今年は出ていなかったので、とにかく麻生さんにメダルを見せたくてがんばりました」という小林は駅伝部出身。「来年は納得できるレースがしたい」と、すでに来シーズンを見据えていた。

LSweb 男子は2000年代後半のライバル対決が記憶に残る、小出大祐(東京消防庁LSC)と浅見泰希(東京消防庁LSC)がチームメイトとして出場。そこに連覇を狙う須藤凪(下田LSC)、長距離が得意な中川慎太郎(西浜SLSC)、さらには日本体育大学LSCや日体大荏原高校LSCの脚力自慢が加わり、一斉にスタートを切った。

 レースはゴール寸前までもつれる激戦に。ラスト数メートルで小出を抜き去った須藤が二連覇を達成した。

「東京消防庁の浅見さんと小出さんは強敵だと思っていました。最後まで2人に食らいついて刺そうとは思っていたのですが、予選で走り比べができなかったので速さを実感できないまま決勝となり、けっこう危なかったと思います。
 小出さんが左を気にしている時に右から抜くことができたのは、ちょっとラッキーだったかもしれません」と須藤。
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 脚力を競う2kmビーチランは、下田勢がアベック優勝を成し遂げた。

LSweb 俊足自慢が顔を揃えたビーチリレー。

 女子は日体大LSCのアンカー長野文音が、先行する勝浦LSCを軽々と追い抜き1着でゴールラインを走り抜けた。

 アンカー対決となった勝浦LSCの我妻菜登は「3分の1ぐらいのところで並ばれました。(長野)文音は後半伸びるので、そこからさらに差が広がりましたね」と完敗の弁を口にした。

 一方男子は、1走の和田賢一が抜群のスタートを決めた式根島LSCを、バトンパスに絶対の自信を持つ日本体育大学LSCが追う展開に。インカレと同じメンバーで戦った日体大LSCは中盤で逆転に成功。アンカーの七海元紀がトップでゴールすると飛び上がって喜びを露わにした。

 ビーチリレーは日体大LSCがアベック優勝を決めた。
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オランダチャンピオンが参戦したビーチスプリント


 ビーチスプリンターのナンバーワンを決めるビーチスプリントには、男女ともに本命がいた。二連覇中の長野文音(日体大LSC)と森新太郎(銚子LC)だ。しかし、森はフライングで予選失格。その瞬間、観客からも大きな溜息がもれた。

 女子は長野が鮮やかに三連覇を達成。2位に入ったのは高校2年生の田中綾(昭和第一学園LSC)だ。
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 昨年4位から着実に順位を上げた彼女は、先輩たちに囲まれながら「緊張しました」とはにかんだ笑顔を見せた。3位は柴田夏希(大阪体育大学LSC)。柴田も昨年5位からのジャンプアップで、全日本初のメダルを獲得した。

 男子は荒井滉太郞(今井浜LSC)が初タイトルを獲得。インカレ優勝の七海(日体大LSC)が2位、石井雄大(東京消防庁LSC)が3位となった。

「インカレで悔しい思いをしたので、全日本では絶対に勝つと決めていました。とにかく絶対に勝つ!そう思ってスタートラインに着きました」と弾んだ声で答えた荒井だった。
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 今大会には2人の外国選手がオープン参加していた。一人はお馴染みのモーガン・フォスター(サウスブライトンSLSC)、そしてもう一人がオランダのビーチフラッグス&ビーチスプリントチャンピオン、ロバート・ヘンドリクス(ビアリッツSC)だ。

LSweb 「昨年の大会にフランスチームが参加したでしょう。あれを聞いて、本当に羨ましくて、羨ましくて。日本はビーチフラッグス大国だから、前々から全日本に参加したいと思っていたんです」と、念願の初来日を果たしたヘンドリクスは言う。

 子どもころ体操を習っていたという彼は、2002年の世界大会でビーチフラッグスを知り「これは僕向きだ!」と直感した。

 日本のビーチフラッグスを意識したのは、2006年の世界大会で前述のフォスターが金メダル、現在は日体大荏原高校LSCの監督を務める北矢宗志(西浜SLSC)が銀メダルを取ったのを目の当たりにしてからだという。

 オーストラリアに留学経験もあるヘンドリクスだが、今大会、惜しくもビーチフラッグスでの決勝進出には至らなかった。しかし、ビーチスプリントで決勝の舞台に立つと、重量感のあるパワフルな走りで8位入賞を果たした。

「もし一番端のコースでなければ、もう少し順位を上げられたと思いますが、そんなことを言っても仕方がないですよね。日本で多くの良い仲間に出会えたことは素晴らしい財産になりました。明日、オランダに帰ります」と、少しなごり惜しそうに話していた。

LSweb 特別な思いで決勝の舞台に立ったのは、ヘンドリクスだけではなかった。過去、何度も優勝経験のある本多辰也(東京消防庁LSC)も複雑な感情を抱えて決勝レースを走った。結果は8位。

「今井浜の後輩が優勝したのはとても嬉しいです。ちょっとしたことですが、アドバイスもできたし……。同時に悔しいというか、周りにどんどん置いていかれて、自分が走れなくなると感じたレースでした。
 こんな気持ちになるなんて、何なんでしょう。本当に何なんでしょうね」そういう本多の目からは、次から次へと涙が溢れていた。

「40歳でビーチスプリントの決勝に出るって、本当にすごいことですよ。ほんと尊敬しています」と本多に握手を求めた植木将人(西浜SLSC)。まもなく、自分が出場するビーチフラッグス決勝が始まろうとしていた。

ビーチフラッグス

LSweb 今年、全日本の会場は選手たちに最高のパフォーマンスをしてもらおうと、重機を入れて整備された。
 深いところから掘り起こされた砂は雨が降った後も柔らかい状態で、ビーチフラッグス会場では一歩ごとに深く足が埋まるような感じだったという。砂が足にまとわりつくようなコンディションはどう影響したのだろうか?

 女子ビーチフラッグスに並々ならぬ決意で出場したのが、但野安菜(勝浦LSC)だ。

 「世界大会では期待されたメダルが獲れず、不完全燃焼でした。あまりにも不完全燃焼で、どうしていいか分からないくらいでした。
 できることは、一度も倒したことのない遊佐(池谷)さんに勝って日本一になることだけだと思い、集中しました」という言葉どおり、最後は池谷雅美(柏崎LSC)との一騎打ちを制し日本一に輝いた。

 今後の目標は? と聞くと「20連覇ですかね!?」と白い歯を見せた。
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 2年ぶりに全日本の舞台に現れたレジェンド池谷でさえ、20連覇は成し遂げていない(全日本通算21勝)。但野の挑戦は始まったばかりだ。

LSweb 男子ビーチフラッグスは、ベスト8の戦いで植木と北田尚輝(三浦海岸LSC)のランオフとなり、植木がダウンという波乱の幕開けとなった。

 順調に勝ち上がったのは三連覇を狙う和田(式根島LSC)、学生チャンピオンの堀江星冴(勝浦LSC)、そして得意のビーチスプリントで失格と悔しい思いをした森(銚子LC)、そして植木とのランオフを制した北田だ。

 表彰台を巡る争いで最初に脱落したのが北田。好調だっただけに涙が止まらない悔しい敗退となった。
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 続いてダウンしたのは、前のレースで太ももと足の指を突き指していた堀江。「普段はあの程度の接触でも耐えられるのですが……。簡単に転んでしまいましたね」と、インカレとの二冠には届かなかった。

LSweb ラスト1本は長身の森と、砂用のゴーグルをかけた和田との対決に。ビーチスプリントのベストタイムが10.4秒という森だが、ビーチフラッグスを研究し続ける和田には届かなかった。

 全日本三連覇を達成した和田は、感極まり涙、涙。

 少し落ち着いてから話しを聞くと、「今年は良いこともあったけれど、上手くいかないことも多くて、もうダメなのかなと思った時期もあったんです。なんだかホッとして」と涙の訳を話してくれた。そして「今後の目標は、もちろん全豪のビーチフラッグスで優勝することです」とキッパリ。そしてその先には……さらなる夢があるそうだ。

 熱戦がすべて終わると、スポットライトに照らされたメインステージでの表彰が始まった。個人、団体の表彰が終わるといよいよ総合成績の発表となる。

LSweb 第3位は創立20周年の湯河原LSC。第2位は総合五連覇を狙っていた西浜SLSC。

そして総合優勝は日本体育大学LSCが1998年の第24回大会以来、実に18年ぶりとなる栄冠を手にした。1位、2位、3位の得点差はそれぞれ1点という大接戦を制しての勝利だった。

 「ここまでの道のりは決して楽ではありませんでしたが、学生たち一人ひとりが課題と目標をクリアしてくれたことが総合優勝に結びついたのだと思います。ライバルと競い合い、高め合って、最高の結果が得られました。また来年、同じような結果が残せるように、学生も社会人もなく切磋琢磨していきたいと思います」とコメントしたのは日体大LSCの草柳尚志ヘッドコーチ。
 名門クラブが脈々と受け継いできたライフセービング魂が、全日本の舞台で存在感を表した今大会だった。

img_4993 ところで、今大会では夫婦で出場するライフセーバーの姿が目についた。

 例えば、湯河原LSCの青木将展・邦夫妻は夫婦でメダルを獲得し、柏崎LSCの池谷薫・雅美夫妻は2人ともビーチフラッグスで活躍。愛知LSCの鈴木雄三・千帆美夫妻は、ともに抽選で選出されてBLSアセスメントでA評価を得る、といった具合だ。

 ジュニアがいて、チームを牽引する人々がいる。日本のライフセービング界に足りないのは、ライフセーバーたちの心の支えになり、続けることの素晴らしさを教えてくれる、マスターズというグループだけだなぁと思った秋の日の夕暮れ時であった。(文中敬称略)

【第42回全日本ライフセービング選手権大会 成績表】



☆★☆ 「第42回全日本ライフセービング選手権大会」 表彰台 ☆★☆

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サーフスキーレース・男女

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サーフレース・男女

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オーシャンマン/オーシャンウーマン

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ボードレスキュー・男女

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2kmビーチラン・男女

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ビーチフラッグス・男女

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ビーチスプリント・男女

ビーチリレー・男女

ビーチリレー・男女

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レスキューチューブレスキュー・男女

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オーシャンマンリレー/オーシャンウーマンリレー

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総合1位・日本体育大学LSC、2位・西浜SLSC、3位・湯河原LSC

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おめでとう! 日体大LSC








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